転生ラージャンぶらり旅   作:黒木箱 末宝

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月一投稿ギリギリセーフ!(今年二度目)

誤字脱字報告ありがとうございます!

スマホの画像整理してたらハチャメチャ遅れました。
端末に大漁の画像を保存するの、止めようね(一敗)。
電池パック膨らんでクソ程焦ったしトラウマになったゾ。



【狩り】不穏な痕跡

 ──時間はドスファンゴが主人公の住居を荒らす前に巻き戻る。

 

 拠点から出発した俺は、下見の際に見付けた薬草やキノコを採取しながら、気配と足音を抑えて目的地へと進んでいた。

 

主目的(メインターゲット)は生肉。そのついでにこうして他のアイテムを採集して、余裕があったら光蟲(ひかりむし)を集める。今回の動きはこれで行こうか)

 

 周囲を警戒しつつ脳内で予定を立てる。そうでもしないと俺の悪癖である収集癖が鎌首をもたげてしまうからだ。

 

(でも我慢するのもストレスなんだよな~……そのうちバックパックやポーチを作って、荷車を作るのもいいかもな!)

 

 そんなことを考えていると、目的地であるファンゴが出現する場所まで到着した。

 ターゲットは小さめの雌ファンゴだ。繁殖期の雄猪は臭い御香みたいな臭いがして手間をかけなきゃ食えたもんじゃない。だから発情臭のしない雌を狙う。

 

(取れちゃったからって九州の友達に送って貰ったが、アレは臭かった……ホントに……)

 

 過去を懐かしみつつ、ゆっくりとドスランポスの爪で作った片手剣を抜き、臭いも無く()()の見えないファンゴに近付く。

 意識をファンゴに向けず、さも横を通るだけと言わんばかりに、されども静かに近付く。

 そしてファンゴの側に付いたその瞬間、上体をもたげて両手を掲げ、剣を握り締め──振り下ろした。

 

(今出せる全力! これなら脊髄を断てなくても、致命傷にはなるはずだッ!)

 

 剣を強く握り締めて放った一撃は、寸前で気付いたファンゴに身体を動かすことで狙いをズラされた。

 

「ッビギィッ!?」

(外した、だが手応え有りだ! それにこの吹き出す様な出血は……大動脈を切れた!)

 

 反撃を警戒して離れた俺を、ファンゴが血走った目で睨みつける。そして前脚で地面を掻き始めた、突進の前兆だ。

 

(逃げるんじゃなくて反撃してくるのか!? それなら好都合だ、このまま都合の良い場所まで来てもらおう!)

 

 俺はファンゴの突進を避け、その後も地面を叩いたり舌を出して見せて挑発し、ファンゴを拠点近くの川まで引き付ける事に成功した。

 血抜きと運搬を兼ねた行動だが、ランポスやマッカオの群れがいたら出来なかった選択だった。

 

 軈て、ファンゴは失血により力尽きた。

 それを引き摺って川に漬け、肉を冷やしつつ骨のナイフで腹を開き、内臓を取る。この時に膀胱と腸を傷付けないよう注意する。

 

(もし失敗したら()()が漏れ出して肉が台無しになる……)

 

 無事に取り出した内臓類だが、俺は寄生虫が怖いのでこれを川下に捨てる。現代だったら「川を汚すな!」とか「もったいない!」とか怒られるが、ここはモンスターハンターの世界。捨てた内臓に小型魚竜である魚達が群がると、跡形も無く内臓は消え去った。

 

 

 

 下処理を終えた獲物を引き摺り帰宅する。

 そんな俺を出迎えたのは、酷く破壊された拠点だった。

 

(──……まあ、あれだ。めちゃくちゃ残念だが、実際は“だろうな”って感じだな)

 

 周囲を警戒して音と臭い、そして気配を確認する。

 大きな音は無く、臭いは残り香のみ。気配も無し。

 

(もうこの辺にはいない……結構前のことか)

 

 一先ずの安全を確認した俺は獲物を置き、拠点を壊した対象を特定する事にした。

 

 改めて鼻に意識を集中して臭いを嗅ぐ。

 獣臭とわずかな血の臭い。この酸っぱいツンとくる脂っぽい臭いは……ストレス臭だ。

 

 次に物理的な痕跡を確認する。地面に残った足跡は、狩った獲物であるファンゴにそっくりだ。

 足跡の歩幅、サイズや深さから見るに、対象は巨大なドスファンゴと解った。

 

 そして最後。父であるラージャンが壁に刻んだ、大きな拳跡のマーキング。その拳を切り裂く様にし刻まれた牙によるマーキング。

 

(ラージャン相手に喧嘩を売るとは……余程のバカか世界を知らんアホか──もしくは、己の強さに自信があるのか……)

 

 そこで改めて対象の情報をまとめていると、ある違和感に気付いた。なんて事の無い確認作業なので、もう一度臭いを嗅ぐ。

 

 すると、発情期の雄ファンゴの臭いを嗅ぎ取ることができなかった。

 

(──そうか、幾ら手負いとは言え、ドスファンゴがラージャンに喧嘩を売るのは変だと思ったんだ)

 

 俺は脅威たる敵──手負いのドスファンゴを倒すため、拠点に残ったアイテムの確認を始める。

 

(俺の拠点を荒らした()()は、おそらく子を得る事ができなかった妙齢の雌ドスファンゴ、しかも手負い……本気で殺しに行かないと俺が死ぬな……)

 

 拠点の入口は破壊されているが、中は無事だ。そこから使える装備と武器、素材を持って出る。

 入口付近に設置していた物は全滅。器具は全て破壊されており、干し肉も魚の燻製も土まみれだ。まあ、洗って焼けば食えるだろう。それに、目当ての物── ()()()()()()()()は残ってる。

 

(瓶や壺は全滅か……水は無いし、キノコは……凄いな、特産キノコと厳選キノコだけ器用に食われてる)

 

 だが目当ての毒テングダケ、マヒダケ、クタビレタケ等の有害なキノコは残っていた。

 それと合わせて、前の狩り──と言うか乱闘──で得たモンスターの爪や牙、骨の貯蔵は十分。

 微妙に寝付けない時に作った木のコップをそこに組み合わせれば、立派な武器が作れるはずだ。

 

(よし、やるか! ──その前に飯だな)

 

 入れた気合が抜ける様なマヌケな音が腹から鳴る。空腹なのを忘れていた。

 

 そうして俺は次の狩りに備え、ファンゴの脚を丸焼きにして食らうのだった。

 

 

 

 ■

 

 

 

 主人公の家族であるラージャン達が、肉を片手に高所から主人公の行動を覗き見ていた。

 原因は主人公だった。ファンゴの後脚のみ毛皮を剥いで外し、切れ目を入れて焼かれているそれの香りは、遠くに居るラージャン達の鼻腔をくすぐり食欲を強く刺激したのだ。

 

 そうして生まれたのが、寝転がり身を隠しながら肉を齧り、行儀悪く家族を観察するラージャン一家だ。

 

 暫く主人公を観察していると、遂に何か動き始めた。三日月状に曲った枝を手に取った主人公は、それを削り、両端に細い草のロープを張り弓を作った。

 

 続いて主人公は真っ直ぐに磨いた棒をいくつか作ると、その先端に溝を掘り、同じく溝を掘ったモンスターの爪や牙をはめ、解したモンスターの腱を巻いて固定した。

 最後に反対側へ裂いたマッカオの羽根をはめて腱で固定すれば、矢の完成だ。

 

 主人公は試しに矢を遠くの木へ放つ。ラージャンの力で引かれた弓は弾けるように矢が放たれた。

 そして、矢は見事に木を貫通した。

 

「──ホホホホホ!」

「──キャッキャッ!」

 

 主人公の生み出した、新しい知恵の力。

 その力を目にした父ラージャンと弟ラージャンが、興奮から声を漏らし、直後に互いの口を塞ぐ。

 

 母ラージャンは、そんな未知の技術に興奮する父ラージャンを見ながら「コイツは昔からこうだったな」と自分達の出会いを思い起こした。

 

 

 かつて母ラージャンは孤高であり、孤独だった。

 己の強さを自信とし、それに見合う雄を求めては戦い、そして弱い雄を幾度も追い払っていた。

 

 そんなある日、母ラージャンは一匹の雄ラージャンを追い払った後、己の老いを実感する事になる。

 

 雄ラージャンと戦った後、息が上がっていたのだ。

 

 以前なら軽く追撃を入れるほどに元気だったが、この時の母ラージャンは、人で言う所の三十代を迎える歳だった。

 母ラージャンは思った。“己は、このまま子を成せずに死ぬのか?”と。

 

 そうして絶望に苛まれた最に、奴が現れた。

 先程戦っていた雄ラージャンを引き摺り現れた、後に番となるラージャン──父ラージャンである。

 

 母ラージャンは歓喜した。己より遥かに強い雄の登場に。このまま孤独を知らずに生きられる希望に。

 

 そうして母ラージャンが襲い掛かると案の定、父ラージャンは強かった。冷静沈着──恐ろしく冷え切った目で観察する父ラージャンに、母ラージャンは苛立ちを覚えた。

 強いと言っても、それは雌ラージャンの中での話。しかし母ラージャンは、雄との力量差を技術や知恵を使って戦い覆してきた。単純な力勝負は受け流す事で己の力にし、関節を極めたり、組み付いて絞め落としたりして勝利を掴んで来たのだ。

 

 母ラージャンは今までの雄と同様、父ラージャンへと技を掛けようとする。だが単純な力量差に避けられ、掴めたとしても筋肉量に負けて技を掛けられなかった。

 だがある時を境に、父ラージャンは敢えて技を受けるようになった。そして技を極め、振り解く度に、その冷たい目が宝石の様に輝く様になって行った。

 

 それが母ラージャンが父ラージャンに惚れた要因であり、宝石等の光り物を好む様になった理由だった。

 

 

 母ラージャンは、そんな愛しい雄と番になり、強く賢い子を二匹も持てた事に、改めて幸せを感じるのだった。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

★オマケ

 

■主人公

・今までの“得る為の狩り”ではなく“駆除の為の狩り”に、知恵と知識とある程度の害意を総動員し、敵を仕留めにかかるつもり。

・拠点を破壊された事はそんなに怒っていないが、食べ物をダメにされたり奪われた事にはそこそこ怒ってている。

 

■父ラージャン・弟ラージャン

・主人公の見せる新技術に興奮している。

・早速弟が作った大弓を父ラージャンが空に放つ。結果、矢は雲を越えて消えた。

・興奮し過ぎて暫く静かになった。

 

■母ラージャン

・父ラージャンから宝石の様な目を向けられる主人公に、少しだけ嫉妬していたりする。

・それ以上に主人公が強く賢く愛おしいので、嫉妬心は父ラージャンへの欲求へと変換されている。

・千里眼の護石を何度も付け外しして感覚を掴んだ。以後、何時でもあのドスファンゴを殺れると家族に伝えている。




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