DQⅣ世界に、迷い込みて候   作:虚夢想

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Lv21 おてんば姫現る

 

 

   [壱]

 

 

 エルフの里で摩利支天浄魔光剣の付加術を終えた俺とミネアは、フォルス達の帰る頃合いを見て、ソレッタへとキメラの翼で降り立った。

 実は里を出る前、フェルミナさんから「フォルス達は洞窟を出て、ルーラで近くの街に転移したと世界樹が言っております」と連絡を受けたからである。

 パーティから外れると流石に、フォルス達の動向がわからないので、木々を通じて物事を見れるという世界樹に、フェルミナさんからお願いしてもらったのだ。

 結果、世界樹は了承してくれたので、俺達はすぐに連絡を受けれたのである。

 ある意味、世界樹スゲーと感じたところであった。

 これから先、時々利用させてもらうとしよう。

 一応、時間経過的な事を言うと、フォルス達は移動と探索で2日以上はかかったようだ。色々と大変だったに違いない。

 まぁそれはさておき、ソレッタの目と鼻の先に降り立った俺達は、看板が立っている村の入口に向かい歩を進めた。

 すると入口付近には、フォルス達の姿があったのである。

 出発前の打ち合わせの時、集合場所はソレッタと言っておいたからだが、なぜ中に入らないのか気になるところだ。

 ちなみにその中には、青色のとんがり帽子みたいなのを被った少女もいた。

 恐らく、あれがアリーナなのだろう。

 青いマントに黄色いワンピースと黒いタイツ、そして、肩より長いブロンドの髪は先端部がくるっとカールしていた。

 もう見た目の特徴は、ほぼイラスト通りであった。

 身長は150cmほどで、年は15、6歳くらい。北欧系の顔つきで、パッと見は可愛らしい女の子といったところである。

 また意外と細身であり、とてもではないが武闘家にはみえなかった。

 今は俺の方をチラチラ見ながら、フォルスと何やら話してるところである。

 

(新しいメンツがいるな。ということは、あれがアリーナか。どうやら、ミッションは上手くいったようだな。にしても……小さくて細すぎだろ。あの体型で、ゲームではアホみたいな一撃繰り出してたけど、この世界でもそうなんかな。肉弾戦は結局のところ、筋肉量とダメージは比例すると思うんだけどね……ン?)

 

 などと考えていた、その時であった。

 なんと、そのアリーナと思わしき少女が、突然、こちらに向かって駆けてきたのである。

 フォルス達の慌てる声が聞こえてきた。

 

「ちょ、ちょっと待ってください、アリーナさん!」

「姫! 何をなさるつもりじゃ!」

「アリーナ姫様! いけません!」

 

 続いてアリーナが、走りながら大きな声を発した。

 

【ちょっと試すだけよ!】

 

 わけのわからんやり取りであった。

 

(何言ってんだ、アイツ等……ところで試すって、何?)

 

 あれよあれよという間に、アリーナは俺との距離を詰めてきた。

 そして距離にして6メートルくらいになったところで、アリーナは「セヤァァァ!」という掛け声と共に、なんと! 俺に飛び蹴りをかましてきたのだ。

 

「ノワァァ! いきなり何すんねん!」

「キャッ、ジュライさん!」と、ミネア。

 

 俺はマ〇リックスのネオばりに仰け反り、飛び蹴りを避けた。

 低く仰け反った俺の眼前を特急アリーナ号が颯爽と通過していく。

 そしてアリーナは着地するや否や、俺に振り返ったのだ。

 

「チッ! 避けられた! やるわね。なら、これならどう!」

 

 アリーナは、態勢が整わない俺の顔に目掛けて、今度はハイキックを見舞ってきた。

 それは迷いのないハイキックであった。

 避けないとモロである。殺す気か!

 俺は咄嗟に後ろへ飛び、それを間一髪で躱した。

 そして俺とアリーナは、少し間合いを開け、対峙したのである。

 

(コイツ……頭おかしいのか。いきなり俺に、肉弾戦仕掛けてきやがった。なんなんだよ、一体……。と、とりあえず、襲いかかった理由を訊いてみよう)

 

 俺はアリーナに問いかけた。

 

「おい、そこのチンチクリン! いきなり飛び蹴りかましてきやがって! 俺になんか恨みでもあんのか?」

 

 アリーナはブンブンと頭を振ると、ニコニコと口を開いた。

 

「ううん、恨みなんかないよ。ただ、試してみただけよ」

「た、試してみた? って、何を?」

 

 すると予想外の返答が来たのであった。

 

「だって、貴方強いんでしょ? フォルス君やシンシアさんがそう言ってたもん。だからよ。今のは挨拶みたいなもんね」

 

 これを聞き、頭が痛くなってきたのは言うまでもない。

 

(おいおいおいおいおい……おてんばってレベルじゃねぇぞ! コイツ……リアルじゃ、ただの戦闘中毒者(バトルジャンキー)やんけ。ゲームでもこんなんだったか? 初対面なのに、いきなり挨拶がわりの飛び蹴りって、凄いアホやんか。やだ、もう……こんなアホな女の子だったとは……サントハイム王はわけわからん予知夢見てる場合じゃねぇよ……ったく)

 

 俺がそんな事を考える中、アリーナは続ける。

 

「でも、私の蹴りを連続で躱すし、貴方、確かに強いわね。私、ワクワクしてきちゃった。さぁ続けましょ」

 

 某少年漫画の戦闘民族みたいな事を言い始めた。

 もはや戦闘中毒者としての末期症状である。

 フォルスとシンシアとミネアは、そんなアリーナに対し、微妙な視線を投げかけていた。

 表情を見る限り、(何なの、この子は……)って感じである。

 対してマーニャは、それを面白そうに眺めている。

 ブライとクリフトはアチャーといった感じで、頭を押さえているところだ。

 これを見てもわかる通り、まぁこの子は異常なのである。

 この戦闘から一刻も早く離脱したいところだ。

 

(駄目だ、コイツ……早くなんとかしないと……)

 

 などと考えていると、アリーナは次の行動に出た。

 

「来ないなら、こっちから行くわよ!」

 

 と、その直後、アリーナは拳を構え、俺に突進してきたのであった。

 

(この戦闘民族に、これ以上付き合うのはゴメンだ……女に手を出すような事はしたくないが、やむを得ん……)

 

 というわけで、戦闘を終わらすべく、俺はアリーナに向かい、半身に構えたのである。

 そして、アリーナが間合いに入った次の瞬間、俺は一気に距離を詰め、迫りくるアリーナの額に目掛けて、右手の人差し指と中指を伸ばし、幽震尖(ゆうしんせん)を打ったのだった。幽震尖……幽震掌の指先集中型バージョンである。

 ちなみにその際、アリーナは俺を殴ってきたが、それは左手で受け止めておいた。

 それは、かなり強烈な右フックだったが、受け止めた事で、俺はアリーナの強さの秘密が少しわかったのであった。

 まぁそれはさておき、アリーナは殴りかかる姿勢のまま、金縛りにあっていた。

 これで一安心である。

 

(ふぃ~、止まってくれた。しかし……さっきコイツの拳を受け止めたお陰で、強い理由がなんとなくわかったよ。コイツ……確かに近接格闘の天才だ。攻撃する時、完成度は低いが、鬼紋修咒みたいな霊的補助を先天的にできる才能があるんだ……。だからこんな細い身体でも馬鹿力が出るのか。なんつー迷惑な奴……受けた手が痛いし……)

 

 末恐ろしい娘である。

 と、そこで、ブライとクリフトが慌てて、金縛り中のアリーナに駆け寄ってきた。

 

【姫!】

【姫様!】

 

 2人はアリーナに駆け寄るなり、俺をキッと睨みつけてきた。

 

「ジュライ殿! これは一体何をしたのじゃ!」

「そうです。一体何をしたのですか!」

 

 かなりご立腹のようだが、被害者は俺なので、言っておかねばなるまい。

 

「心配しなくていいよ。俺に襲い掛かってきたから、一時的に動きを止めさせてもらっただけだ。話にならなかったんでね。さて……」

 

 俺は身動きできないアリーナの正面に行き、話を切り出した。

 

「今から不動術を解くけど、それにあたり1つ言っておくことがある。もう襲い掛かるのはナシな。いいか、コレは約束だからな」

 

 金縛り中に声は出せないが、耳は聞こえるので念を押したのだ。

 まぁそれはさておき、俺は術を解く為、そこでアリーナの額を軽く撫でた。

 と、その直後、アリーナはバランスを崩し、尻持ちを着いたのであった。

 アリーナは下唇を噛み、悔しそうに俺を見ていた。

 そしてウルウルと目を潤ませ、泣き出したのである。

 

【ま、負けちゃったァァァ! ぐやぢいぃ……ウワァァン!】

 

 第一声がそれかと思ったが、不安だったので、俺はもう一度念を押しておいた。

 

「いや、勝ち負けとかじゃなくてさ。もう俺に襲い掛からないでね。言っとくけど、俺は戦いは嫌いなんだよ。どちらかというとね。わかった?」

 

 するとアリーナは勢いよく立ち上がり、俺を睨んできた。

 そして、力強く俺を指さしたのであった。

 

「貴方! 次は私が勝つわ!」

「あのぉ、もしもし……会話できてる? 俺は戦いたくないって言ってるんだが……」

「もっと強くなって見せるわ! それまで待ってなさい!」

「お~い、聞こえてますか?」

「負けないんだから!」

 

 それだけ告げると、アリーナは踵を返し、フォルス達のところへと向かったのである。

 はっきり言って色々とついていけない子であった。

 

(こいつぁ、やべぇ……話し合えないニオイがプンプンするぜ! つか、会話にすらなってねぇし……。サントハイム一行は色々と癖が強すぎだろ……)

 

 俺がそんな事を考える中、ブライがぶっきら棒に言い放った。

 

「ふん……あのアリーナ姫様が、そんな忠告を守るわけなかろうて」

「よかった……立ち直られたみたいです。それでこそ、いつもの強くて美しいアリーナ姫様だ」と、クリフト。

 

 コイツ等は完全に他人事であった。

 俺は怒りのあまり、思わずブライにクレームした。

 

「おい、爺さん! アンタ、姫の教育係だろ! まず人への挨拶ってもんを教えとけよ! 初対面の俺に向かって、いきなりドロップキックの挨拶って何なんだよ! 初めてされたわ、そんな挨拶!」

「そんな事ができるなら、とっくにしておるわ! あのアリーナ姫様に、そんな道理が通用するわけなかろう。儂はもう半ば諦めとるんじゃ……」

「職務放棄かよ。どうなってんだよ、サントハイム王国……」

 

 この国の将来が不安になったのは言うまでもない。

 まぁそれはさておき、この後、正式にサントハイム一行は俺達の仲間として加わる事になった。

 旅の目的が達成できた俺達は、その後、ミントスへとルーラで戻り、ヒルタンホテルで身体を休める事にしたのである。

 そして、そこでミネアが今後を占った結果、西の方角に導きがあると出たので、俺達は翌日の早朝、西にあるキングレオ大陸へと向かい、出港したのであった。

 

 

   [弐]

 

 

 船は水飛沫を上げ、穏やかな大海原を走るように進んで行く。

 空は曇っていたが、雨は降りそうにない。

 だが少し風がある為、今日は甲板にいるとやや肌寒い日であった。

 とはいえ、そのお陰もあり、船は順調に進んでいた。やはり帆船は、風がないと進まないからだ。

 まぁそれはさておき、ミントスの港を出た俺達は、今後、暫し長い船旅となる予定である。

 トルネコと船長が言うには、ミントスからキングレオ大陸の北東にあるハバリア港までは、航路的に7日から10日は掛かるそうだ。

 そんなわけで出航前、その間の食料や日用品などをミントスで購入し、船に積み込まねばならなかったのである。

 それはなかなか面倒な作業であった。

 ゲームみたいにこういうところを無視できるといいのに……と思ったのは言うまでもない。

 

(しかし……船旅って簡単にはいかないよな。遠くには行けるからいいけど……その為には色々と必要な物があるし……。トルネコは船乗りの男に、前払いで給金出してるって言ってたけど、船の維持費も結構掛かるんだろうな。まぁそんな事はどうでもいいか。それにしてもフェルミナさんから聞いた世界樹の伝言……あれ、本当なのか。だとしたら、一体何が起きてんだよ。はぁ……頭痛いわ。つか、ピサロ達は今何してんだろ? この間、予想外の登場だったヘルバトラーに戒めの秘紋を施して以降、音沙汰なしだしな。ま、そのうち来るだろうから、準備はしといた方がいいだろうけど……ン?)

 

 色々と考え事をしながら甲板で海を眺めていると、ミネアとマーニャがやって来た。

 ちなみにだが、フォルスとシンシアは、少し離れた所で仲良く談笑中だ。

 サントハイム組はトルネコに質問タイム中のようである。

 たぶん商人の情報網をあてにして、サントハイム失踪事件関連の聞き込みでもしているのだろう。

 時折、アリーナがチラチラと俺を見てるのが怖いところだ。

 どうか喧嘩吹っ掛けてきませんように、である。

 

「ジュライさん、どうしたの? 何か考え事してるの?」と、マーニャ。

「いや、ただ海を眺めてただけよ」

 

 ミネアが俺の隣に来る。

 

「そうですか。でも、難しい表情してましたよ。もしかして……フェルミナ様に言われた事でも考えてらしたんですか?」

「まぁ多少ね。って……そういや、ミネアも聞いてたんだったな」

「はい、一緒にいましたから」

 

 フェルミナさんは、ミネアのいる前で世界樹の伝言を話したので、憶えていても不思議ではない。

 まぁとはいえ、聞いていても、俺同様、わけはわからなかっただろうが。

 

「ミネアはどう思う? あの話……」

「気になる事を言ってましたね。地の奥底に穿たれた穴から、得体の知れない存在が現れ、蠢いていると言ってましたね。それによって大地の活力が弱っているとも言ってましたし……」

「まぁそれも気になるけど……もう1つ気になる事を言ってたんだよね。邪悪な太古の意思が、徐々に具現化しつつあるだったか……どういう意味なんだろうね」

「それも確かに気になりますね。ちょっと……嫌な話でした」

 

 ミネアはそう言って表情を落とした。

 

(邪悪な太古の意思が、徐々に具現化しつつあるねぇ……地獄の帝王の事なんだろうか? 世界樹はその辺の事は詳しく言ってくれなかったし、さっぱりわからん。まぁいずれにせよ、面倒な事が起きなきゃいいけどな。ああ、早く帰りたい……なんで俺はこんな所にいるんだろ……とほほ)

 

 世界樹は恐らく、それらの異変は察知できても、深い部分はわからないのだろう。

 

「ま、今考えたところで、わかるわけもないか……ン?」

 

 するとマーニャが不思議そうに俺を見ていたのである。

 

「マーニャさん、何? 俺の顔になんかついてる?」

「ジュライさん……今、ミネアって言ったわね」

「ああ、言ったよ」

 

 マーニャはニヤリと笑った。

 

「なんだぁ……よかった。という事は、2人は私が思う以上に仲良くなってたわけね」

「言ってる意味が分からないんだけど。俺達、別に喧嘩してないよね、ミネア?」

 

 俺はそう言ってミネアを見た。

 ミネアはニコニコと答える。

 

「はい、してませんよ」

「なんだ、それなら良かったわ。実は昨日の夜、ミネアが鏡の前で、笑ったり、怒ったり、真顔になったり、おかしな事してたから心配してたのよ。ジュライさんと喧嘩でもしたのかと思っちゃった」

「ちょっと姉さん……変なこと言わないでよ」

 

 ミネアは恥ずかしそうにマーニャへと視線を向けた。

 

「へぇ、そうなんだ。美容の為に、表情筋を鍛える練習してたの?」

「ま、まぁそんなところです。あまり深く考えないでください。恥ずかしいので……これに関しては、もう終わりです」

 

 ミネアは頬を赤くしながら、話を閉めた。

 あまり触れない方が良い話題なのかもしれない。

 と、まぁそんなやり取りをしつつも、船はキングレオ大陸にあるハバリアへと向かって進み続けるのであった。

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