DQⅣ世界に、迷い込みて候   作:虚夢想

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Lv25 魔獣と悪鬼

 

 

   [壱]

 

 

【――神となった私の力を見せてやろう!】

 

 バルザックはそう言って、ズシンズシンと音を立てながらゆっくりと近づいてきた。

 と、そこで、今度は玉座の方で、異変が起きたのである。

 なんとキングレオが魔物へと変身したのだ。

 ゲームと同じく、4本の手と4本の足を持つ雄のライオンのような姿であり、茶色の鬣と紫色の体毛で覆われたその身体は、まさに魔獣という表現が相応しい姿であった。

 見た目はライオンそっくりだが、こんなのが現実世界のサバンナにいたら、大パニック間違いなしである。

 変身し終えたキングレオは、挨拶とばかりに雄叫びを上げた。

 

【私も相手をしてやろうではないか。貴様等を八つ裂きにしてやるわ!】

 

 凶悪な魔物2体が俺達に迫りくる。

 俺はキングレオとバルザックを注視しながら、室内を見回した。

 

(チッ、2体同時か……想定はしてたが、ちょいと不味いな。とりあえず、フォルス達にはキングレオを相手してもらい、俺がバルザックの相手をするしかないか。でも……少しだけ手助けしてやるとするかな。効果はどれだけあるかわからんけど……)

 

 俺はそこで5枚の呪符を取り出し、力を開放した。

 呪符は白い鳥に変化して飛び立ち、キングレオの周りを取り囲む。

 キングレオは鳥に気を取られていた。

 

【なんだこの白い鳥は? どこから来た?】

 

 すると程なくして鳥は、呪符へと戻った。

 

【何!?】

 

 キングレオが訝しむ中、俺はそこで、仕上げの印を組みマントラを唱えた。

 その直後、俺の指先から霊力の迸りが発生し、1枚の符に到達したのである。

 そして呪符による五芒星の不動結界を発動させたのだ。

 ちなみにこれは、アークデーモンに使った不動結界である。

 

【グアアァァ! か、身体が重い……なんだこれは……グググ】

 

 キングレオは悲鳴を上げながら、ゆっくりともがいていた。

 とりあえず、多少は効果あったようだ。

 

(悪魔のような邪気を放つ魔物じゃないから、ちょいと不安だったが、とりあえず、不動結界はある程度効果はあったようだ。これだけ動きが鈍れば、今のフォルス達でも十分いけるに違いない)

 

 持続時間は2分ほどだが、その間にダメージを蓄積できれば、なんとかなるだろう。

 というわけで、俺はフォルスに指示を出した。

 

【フォルス! キングレオの相手はお前達に任せた。とりあえず、少しの間だが、ある程度動きを封じたから、そいつをこっぴどくしばいてやれ! こっちの化け物は俺が対応するから!】

【わかりました!】

 

 フォルス達はキングレオの周囲を取り囲んだ。

 だがしかし、モンバーバラの姉妹だけは行かなかったのである。

 姉妹は今、バルザックに険しい表情を向け、対峙しているところであった。

 やはり、仇のバルザックだけは自分達で何とかしたいのだろう。

 

(やっぱ行かないか……できればマーニャとミネアも、キングレオ側に行ってほしかったが……。たぶん、言っても聞かないだろうな。仕方ない。一緒に戦うしかないか……ン?)

 

 と、そこで、バルザックが立ち止まり、俺に視線を向けたのである。

 どことなく奴は警戒してる風であった。

 

【そうか……貴様が、デスピサロの言っていた厄介な奴か。なるほどな……キングレオ王に妙な魔法をかけた今の戦いぶり、相当の手練れだな。これは、気を引き締めてかからねばなるまい……】

 

 バルザックはそこで棍棒を構え、俺達を静かに見据えた。

 今の奴からは、先程までのような、自分の力に酔った気配は消えていた。

 得体の知れない術を使う俺を警戒してるのだろう。

 と、そんな中、マーニャは気持ちが(はや)ったのか、突如、前に出たのであった。

 

「バルザック! 今日こそ、父の仇を討たせてもらうわ!」

「マーニャさん! 前に出過ぎだ!」

 

 するとそこで、バルザックはニヤリと笑ったのであった。

 

【グフフフ、馬鹿な奴だ! 自分から殺されに来るとはな。まずはお前から始末してやろう! 死ね!】

 

 バルザックは棍棒を振りかぶりながら、一気に間合いを詰めた。

 

「え!?」

 

 マーニャはバルザックの素早い動きに対応できず、立ち尽くしていた。

 想定外のスピードだったのだろう。

 

(チッ、不味い!)

 

 俺は慌てて縮地のマントラを唱えた。

 そして次の瞬間、バルザックはマーニャを摺り潰すかの如く、一気に馬鹿でかい棍棒を振り下ろしたのであった。

 ミネアの悲鳴じみた声が響き渡る。

 

【キャァァ、姉さん!】

 

 その直後、大きな轟音と振動を発生させ、謁見の間の石床は大きく陥没したのである。

 間一髪であった。

 俺はギリギリでマーニャを抱きかかえ、床を転がりながらなんとか回避したのだ。

 もう少し、縮地の唱紋修呪を使うのが遅かったら、マーニャは見るも無残な姿になっていた事だろう。

 程なくして、バルザックは俺達にゆっくりと振り向いた。

 

【チッ……横やりがはいったか。もう少しで、姉の方を父の元に送れたのにな……忌々しい】

 

 思った通り、相当な化け物のようだ。

 キングレオと戦っている者達も、今の衝撃音でこちらに振り返っていたくらいである。

 彼等はそのあまりの攻撃力に、驚愕の表情を浮かべていた。

 石の床を大きく陥没させるような攻撃を見たら、誰だってそうなるだろう。

 俺はそこで、マーニャを介抱しながら立ち上がった。

 マーニャは陥没した床を見て、青褪めていた。身を震わせながら、ゴクリと生唾を飲み込んでいるところだ。

 こうなっていた未来を想像したのだろう。

 

「マーニャさん……一旦、ミネアのところまで下がるよ」

「う、うん」

 

 俺はそこでマーニャを抱きかかえ、縮地のマントラを使った。

 そして、ミネアがいる所まで素早く後退したのである。

 縮地の使いすぎで、明日は筋肉痛になるかもしれない。トホホ。  

 まぁそれはさておき、ミネアは俺達を見て、安堵の表情を浮かべた。

 

「よかった、姉さんが無事で。ありがとう、ジュライさん」

「ジュライさんがいなかったら、私……今、死んでたわ」

 

 マーニャは怯えた様子で、まだ震えていた。

 その表情に、いつもの陽気さはない。

 

(トラウマにならなきゃいいが……。まぁでも、ここは俺の指示に従ってもらうとしよう。こんなイヴェント、早く終わらせてしまいたい。とっとと天空城に行って、帰る為の方法を探りたいし……)

 

 などと考えつつ、俺は2人に指示を出した。

 

「許せない気持ちはわかるが、あの化け物は、マーニャさんとミネアだけじゃ無理だよ。俺が前で戦うから、マーニャさんとミネアは、少し離れた所から魔法で支援してよ」

「わかりました。姉さん、そうしましょう。私達が前で戦うには、ちょっと力が足らないです」

「そうね。怒りで、私達のやれる事を忘れていたわ」

 

 とりあえず、これで暴走はないだろう。

 

「じゃあ、後方支援よろしくね」

「でも、ジュライさん、大丈夫なの……アイツ、とんでもない化け物よ」と、マーニャ。

「心配しなくていいよ。寧ろ、ああいう化け物は、俺の専門分野だから」

 

 俺はそう言って、バルザックへと視線を向けたのであった。

 

【グフフフ……作戦会議は終わったかな。ウジ虫共。どうだ、今の私の力は! もはや人には到達できぬくらいの力だろう。だが私の力はこんなモノではないぞ。それを見せてやろう!】

 

 バルザックはそう言うや否や、俺達に向かい両手を突き出したのである。

 

(魔法が来るな。恐らく、ヒャダルコだろう。ゲームじゃ、コイツのヒャダルコに泣かされたし)

 

 そんな事を考えつつ、俺はそこで霊壁の呪符を取り出した。

 と、その直後、奴は呪文を詠唱したのである。

 

【喰らうがいい! マヒャド!】

 

 想定外の魔法であった。

 

(チッ、マヒャドかよ! つーことは、コイツ、ゲームよりも超強いやんけ!)

 

 俺は慌てて3枚の呪符の力を開放し、霊力の壁を前方に張り巡らせた。

 そして次の瞬間、俺達に向かい、無数の氷の矢が吹雪の如く襲い掛かってきたのである。

 それは凄まじい数の氷の矢であった。

 1つ1つは30cmほどだが、数が半端ないのである。

 

(この数をこれで防ぎきれるか……たぶん、無理やな。アカン……突破されるわ)

 

 氷の矢は霊力の壁にぶち当たり、砕けてゆく。が、しかし、やはり完全に防ぎきる事は出来なかった。

 なぜなら、霊壁の強度が均一ではないので、漏らす箇所がどうしても出てくるのである。

 矢が細かい上に多いので、流石に完全には防げないのだ。

 その為、いくつかの氷の矢は俺達に着弾し、ダメージを受ける事になってしまうのであった。

 とはいえ、ダメージ的にはヒャドを喰らったような感じなので、防御としてはまずまずの結果だろう。

 バルザックは忌々しそうに言葉をこぼした。

 

【グヌヌ……そのような術で私のマヒャドを防ぐとは……クッ】

 

 これは奴にとっても想定外だったようだ。

 お陰で、少し隙が出来ていた。

 というわけで、俺はそこですぐさま行動に出た。

 縮地のマントラを唱え、俺は一気に奴の懐へと入り込んだのである。

 そして、幽震掌を奴の鳩尾に打ち込んだのだ。が、しかし、手応えがなかった。

 なぜなら、奴の霊体が動きを止めていないからだ。

 

(おいおい、幽震掌が効かないのかよ! どうなってる。クソッ)

 

 奴の笑い声が聞こえてきた。

 

【グフフ……今、何かしたのか? ちょこまかと動きやがって!】

 

 バルザックはそう言うや否や、俺に掴みかかろうとしてきた。

 その為、俺は縮地の唱紋修呪を行使して、それを掻い潜り、また奴との間合いを取ったのである。

 今日はちょっと縮地の使い過ぎだ。明日が怖いところである。

 

(チッ、幽震掌が効かないとはな……まぁいい。さてどうするかな。手っ取り早く倒すには、魂の縁切りをしないといけないし……。仕方ない……今回は不動術なしでするしかないか。面倒くさいけど……)

 

 と、そこで、ミネアの声が聞こえてきた。

 

「ジュライさん、今、回復します。ベホイミ!」

 

 俺の周囲に癒しの白い光が降り注ぐ。

 その光により、マヒャドで受けた傷が癒されていった。

 ありがたい魔法だ。

 続いてマーニャが呪文を唱える。

 

「ジュライさん、奴の守りを下げるわ。ルカニ!」

 

 その直後、ルカニのモノと思われる紫色の霧が、バルザックを覆ったのである。

 だがしかし、奴は霧に包まれながらも、不敵な笑みをこぼしていたのであった。

 

【グフフフ……1つ良い事を教えてやろう。今の私にそんな魔法は効かんぞ。効果が持続する補助系の呪文は、全て無効化できる身体なのだからな。グハハハ】

 

 俺はそれを聞き、ゲームでコイツと戦闘した時の記憶が、脳裏に過ぎった。

 

(そういや、コイツって……ゲームでも補助系の呪文は全然効かなかったよな。どうやって倒したんだっけ……あ! そうだ、思い出したわ。ゲームだと、物理攻撃とマーニャのメラミで倒したんだ。……なら、アレも効果があるかもな。やってみるか)

 

 というわけで、俺は迦楼羅焔の火炎呪を使うことにしたのである。

 手印を組み、マントラを唱え終えると、俺の前に直径1メートル以上はあろうかという火炎の球が出来上がる。

 そして俺はかめ〇め波を撃つかの如く、両手を突き出し、火炎呪を放ったのであった。

 炎の球はバルザックに容赦なく襲い掛かる。 

 

【何!? メラゾーマか! グアァァ!】

 

 バルザックは不浄を焼く迦楼羅焔に包まれながら、後方へと吹っ飛んでいった。

 その直後、バルザックはジタバタと苦しそうに、もがきだしたのである。

 と、そこで、モンバーバラ姉妹の声が聞こえてきた。

 

「え!? ジュライさん……メラゾーマも使えるの!」

「ジュライさん、流石です。色んな魔法に精通してるんですね」

 

 なんか知らんが、メラゾーマと勘違いしてるようだ。

 後で訂正しておこう。

 まぁそれはさておき、思った通り、かなり効果があったようである。

 

【なんだ、この魔法は……これはメラゾーマではない! か、身体が焼ける! グアァァ!】

 

 俺はそこでマーニャに指示を出した。

 

「マーニャさん、メラミだ。メラミを打て! どうやら奴は、炎の魔法に弱いようだ」

「わ、わかったわ! メラミ!」

 

 マーニャは俺の指示通りにメラミを放った。

 直径50cmほどの炎の球が、もがくバルザックを襲う。

 そして奴は更に悲鳴を上げたのである。

 

【グギャァァ! 熱い熱い熱い! ギャァァ!】

 

 かなり効果的な攻撃だったようだ。

 するとバルザックは堪らず立ち上がり、怒りの形相でこちらへと向かってきた。

 

【オノレェェ! いい気になりやがって! ぶっ殺してやる! 死ねぇぇ!】

 

 なりふり構わずといった感じであった。

 どうやら相当堪えたのだろう。

 

(さて……弱点もわかった事だし、そろそろ降魔といこうか。エスターククラスになるとわからないが、今のコイツ程度の進化なら、何とかなるだろう。それにコイツは、俺達の業界風に言うなら、神は神でも、祟り神や荒神(こうじん)の類だ。進化の秘法という邪悪な呪いによって、今まで沢山の命を取り込んできた報いを受けさせないといけない……。力に捕らわれた哀れな男に、降魔の鉄槌を下すとしよう)

 

 俺はそこで鋼の剣を抜き、摩利支天浄魔光剣を発動させた。

 青白く輝く炎のようなオーラが刀身から放たれる。

 俺はそれと同時に、奴に向かって駆けだした。

 その刹那、バルザックは俺に向かい、棍棒を勢いよく振り下ろしてきたのである。

 今の奴は怒りによって、隙だらけの状態であった。

 俺はそれを避け、ガラ空きになった奴の懐へと踏み込む。

 そして、奴の鳩尾に剣を突き刺し、浄化のマントラを唱えたのであった。

 すると次の瞬間、いつぞや倒したアークデーモンのように身体から閃光が発生し、奴の身体は崩壊し始めたのである。

 

【か、身体がァァ、崩れてゆくぅ! 何故だァァ! わ、私の身体がァァ!】

 

 奴の皮膚は溶けるように、ただれ始めていった。

 ドロドロとした肉片が床にボトボトと落ちてゆく。

 それはまるでホラー映画のスプラッタシーンかのように、悍ましい姿となっていた。

 そして次第に、奴の身体は骨を残して全て削げ落ちてゆき、見るも無残な姿へと変わっていったのである。

 今の奴は、頭部だけが辛うじて、化け物の姿を保っている状態であった。

 だが、そこも直に崩れ始めてゆく事だろう。

 それに伴い、奴の魂に括られていた女達の魂も、解放されて宙に舞い上がっていった。

 それはまるで、蛍が一斉に飛び立ったような光景であった。

 俺はそこで剣を仕舞い、崩れ行くバルザックに視線を向けた。

 と、そこで、モンバーバラ姉妹がやってきたのである。

 

「ジュライさん、バルザックを倒したのね」

「ありがとうございました、ジュライさん。仇を討ってくれて……」

「ああ、奴はもう終わりだよ。このまま崩れてゆくだけだ」

 

 姉妹は安堵の息をを吐き、俺に身体を寄せてきた。

 

「ところで、なぜバルザックはこんな姿になったの?」と、マーニャ。

「ああ、それか。それはな、俺が進化の秘法を無理やり解いたからだよ」

 

 すると、姉妹は目を大きく見開いた。

 

「え!? 無理やり!?」

「そ、そんな事ができるんですか?」

 

 俺はとりあえず、個人的な見解を話す事にした。

 

「進化の秘法といったか……これはね、ある種の呪いなんだよ。さっきコイツは、若い女達の肉体と魂を取り込んで、自分の身体を魔物へと進化させたと言ってたが……それができたのも、奴の魂に女達の魂が括られていたからに他ならないんだ。だから俺は、奴の霊体の中枢をこの剣で破壊したんだよ。それによって、魂同士の縁も切れてしまうからね。恐らく、それが原因で、今の肉体崩壊が起きているんだろう。まぁ要は、身体を維持できなくなったって事さ。恐ろしい邪法だよ……まったく」

「やだ、なによそれ……」

「そんな事になってるなんて……」

 

 姉妹は俺の見解を聞き、言葉少なであった。

 衝撃の事実といったところだろう。

 

「捕らわれていた女達の魂も、これで成仏するはずだ……ン?」

 

 と、そこで、バルザックの口がわずかに動いたのである。

 

【く、ぐるじい……だ、だずげて……】

 

 奴の魂は邪法の影響で汚れている為、悪霊みたいなモノであった。

 それもあり、浄化の力で徐々に焼かれるのが辛いのだろう。

 俺は剣を抜くと摩利支天浄魔光剣を発動し、マーニャに差し出した。

 ちなみにだが、摩利支天浄魔光剣は俺の手を離れても多少は持続する。といっても数十秒程度だが。

 

「マーニャさんにミネア……これでコイツを楽にしてやってくれるか」

 

 2人は首を傾げる。

 

「え? なぜ?」

「なぜですか?」

「コイツは2人の仇だが……エドガンさんの研究によって、道を踏み外した哀れな奴でもある。エドガンさんの娘である2人の手で、最後くらいは楽に死なせてやってよ。2人が恨んでばかりでは、死んだ父さんも悲しむだろうしな。それでもう……復讐は終わりにしよう」

 

 姉妹は顔を見合わせる。

 程なくして2人は頷いた。

 

「わかったわ。よく考えたら……お父さんの発見した秘法が原因だものね」

「これで終わりにします」

 

 姉妹は共に剣を握り、バルザックの頭部に突き立てた。

 その刹那、バルザックは生命活動を止め、この世を去ったのであった。

 と、その時であった。

 隣で戦っているフォルス達の方から、大きな声が響き渡ったのである。

 

【お前達の勝ちだ! 好きにしろ!】

 

 声の主はキングレオであった。

 キングレオは観念したのか、憮然としながら床に座り込んでいた。

 たぶん、バルザックが死んだので、心が折れたのだろう。

 というわけで、俺達も早速そこへと向かった。

 フォルスとシンシアが労いの言葉をかけてくる。

 

「お疲れさまでした、ジュライさん。あんな魔物をよく倒せましたね」

「あの化け物を倒したんですね。凄いです」

「ああ。ところで、どうしたんだ急に?」

「それがですね。ジュライさんがバルザックを倒したのを見て、突然、こうなったんですよ」と、フォルス。

 

 続いてアリーナがブー垂れた。

 

「なによもう……せっかく、あの変な術も解けて、面白くなってきたところなのに!」

 

 コイツは俺の施した不動術が気に入らなかったようだ。

 まさに戦闘中毒者(バトルジャンキー)である。

 まぁそれはさておき、俺はキングレオに問いかけた。

 

「おい、キングレオさんよ。もう負けを認めたって事でいいんだな?」

 

 キングレオは溜息を吐きながら、俺に視線を向けた。

 

【今のバルザックを倒すような奴と、これ以上戦ってもしょうがない。もう我々の負けだ。後は煮るなり焼くなり、好きにしろ!】

 

 どうやらマジで観念したようである。

 というわけで、俺達はキングレオ城での戦いに勝利したのであった。

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