[壱]
お告げ所の女性は、俺達の目の前で神隠しにあった。
かなり衝撃的な出来事を目の当たりにした為、仲間達は険しい表情で身構えていた。
ライアンやフォルス、そしてクリフトに至っては剣を抜き、身構えているくらいである。
しかし、それ以上は何も起きなかった。
このお告げ所内に、重苦しい静寂の時が続く。
左右の人工池からは水の流れる音が、ピチャピチャと不気味に小さく響いていた。
また、俺達の背後では、燃え盛る祭壇の炎がパチパチと音を立て、怪しく揺らめいている。
そんな中、フォルスが恐る恐る言葉を発したのであった。
「な……何が起きたんですか……一瞬で消えてしまいました」
「おのれ、魔物の仕業か!?」
ライアンは剣を構えながら、周囲を威嚇するように見回した。
「一瞬で消えたじゃと……」
「そんな馬鹿な事……クッ」
ブライとクリフトは、険しい表情で武器を構える。
「一瞬で消えるだなんて……」
あの空気を読まないアリーナですらも、この現象を前にして怯えたような表情であった。
それほど衝撃的な消失現象だったのである。
トルネコやシンシア、そしてマーニャとミネアに至っては、無言で固まっていたくらいだ。
恐らく、ちょっとしたパニック状態なのだろう。
この現象を前にして、頭の中で整理が追い付かないに違いない。
とはいえ、その後は特に何も起きず、不気味な静寂が続くだけであった。
俺も霊的感覚を研ぎ澄ませるが、それ以降、おかしな邪気というモノは感じなかったのである。
今は完全に鳴りを潜めている状態だ。
俺はそこで、女性が消えた場所に視線を向けた。
なぜなら、そこにはまだ残りカスのような邪気が、僅かに残っていたからである。
(今の現象は恐らく……龍脈の乱れから来てるのは間違いない。だが……一体、何が起きたんだ。しかも一瞬だが、かなりヤバげな邪気も感じたし……チッ……ここは一旦退いたほうが良いかもしれないな……)
と、そこで、青褪めた表情のミネアが、俺の隣に来た。
「ジュライさん……な、なぜ消えたのですか? あの方は今、地獄の帝……ウグッ」
俺はそこでミネアの口を手で塞いだ。
「それ以上は言わない方がいい……あの人はそれを口にして消えたんだ」
ミネアは目を大きくしながらコクコクと頷いていた。
状況を理解したのだろう。
俺は入口を指差し、皆に言った。
「ここは今、何かが監視してる……一旦、離れよう」
仲間達は無言で頷いた。
そして俺達は、このお告げ所を後にしたのであった。
[弐]
お告げ所の外に出た俺達は、やや離れた森の中にまで行き、そこで一旦休憩することになった。
というのも、ブライが先程の神隠しが気になってしょうがないそうで、どこか落ち着いたところで話をしたいと言い出したからだ。
恐らく、サントハイム城で起きた失踪事件と、さっきの出来事を重ね合わせているのだろう。
そんなわけで、休憩となるわけだが、俺はその際、簡易な魔除けの結界を施す事にした。
なぜなら、流石にあの消失現象を見せられたら、迂闊な事はできないからだ。
しかも、ここはゲームだとエスタークが封印されている地に近いので、警戒はするに越したことはないのである。
俺は周囲の木々に8枚の霊符を貼り付け、その中心である地面に鋼の剣を突き刺した。
そして、摩利支天浄魔光剣を発動させ、続いて浄化のマントラを唱えたのである。
その直後、霊符はそれに共鳴するかのように淡く輝き、この場に清らかなる霊気が漂い始めたのであった。
これで一応、魔除けの簡易結界は完成だ。
ちなみにこれは、木々と大地の霊力を借りた魔除けの結界である。
名を浄魔八葉印の結界という。
簡易ではあるが、かなり強力な部類の結界術である。
現実世界でも時々使う事がある魔除けの咒法の1つだ。
とはいうものの、現実世界は銃刀法の兼ね合いもあるので、真剣ではなく、木刀や錫杖を用いる場合が殆どだが。
まぁそれはさておき、結界を発動させたところで、早速、フォルスが訊いてきた。
「ジュライさん……今、一体何をされたんですか?」
「ああ、これか。これは魔除けの結界を施したんだよ。この辺りに良くない霊気を感じるんでな。さっきあんな事があったから、まぁ念のためだ。とりあえず、これで邪悪な何かは早々に近寄って来れないだろう。ン?」
するとそこで、ミネアは不思議そうに剣を見ていたのである。
「どうかした、ミネア?」
「この剣は敵を倒す為だけじゃなく、こんな使い方も出来るんですね……」
「本当よね……ジュライさんて変わった魔法を色々と使うから、私達も驚く事ばかりだわ」
2人はそう言って霊符や剣を見ていた。
真紋の一族が使う武具は、基本的に術具でもあるので、この反応は仕方ないだろう。
「まぁ俺等が使う武具は、術の触媒にする時もあるからな。単純な武具ではないんだよ。でも、俺からすれば、この世界で使われているルーラのような転移魔法や、ホイミのような回復魔法の方が驚きだけどね」
「え? そうなのですか?」
「そうなの? 初耳なんだけど」
ミネアとマーニャは意外だったのか、キョトンとしていた。
他の仲間達も同様である。
よく考えたら、仲間達にも話してない内容であった。
「俺のいた所じゃ、御伽噺でもない限り、そんな魔法は見たことないからな。コッチに来て、まずそれに驚かされたよ。たぶん、俺の世界とこの世界じゃ、魔法発動の法則が違うからだろうけど」
これは前から思っていた事だ。
俺の呪術もここだとかなり強力になってるので、そもそもの法則が違うのだろう。
「魔法発動の法則……そういう考えもあるんですね」
ミネアは興味津々といった感じである。
こういう不思議系が好きなんだろう。
「あくまでも俺の見立てだけどね。まぁそれはともかく、話を始めるとしようか。で、何が訊きたいんです、ブライさん?」
俺はそこでブライに視線を向けた。
「ジュライ殿……お主は先程、お告げ所の預言者に向かって、そこから離れろと言っておったが……あの時、何かわかったのか?」
誰かはするだろうと思っていた質問である。
「まぁ少しね……」
「一体、何があったのじゃ。目の前で人が消えるなどという現象は、儂も初めて見たのでな」
「私もです」と、ミネア。
他の者達も、その言葉に頷いていた。
これは無理もない。
俺も同じ思いだからである。
「さてね……流石に俺も、なぜ消えたかまではわかりませんよ。ただ……あの時、下にある龍脈で異変が起きていたのは、間違いないんです」
俺はそう言って地面を指さした。
ブライは首を傾げる。
「リュウミャク? ……何じゃそれは?」
フォルスとシンシアには以前話したので、大体は理解してる筈だが、他の仲間達は知らないのか、ブライ同様に首を傾げていた。
この際なので話しておくとしよう。
「話すと長くなるんで簡単に言いますが……この大地にはですね、我々の体内で血を送る血管のように、霊力……いや、ここでは魔力と言った方が良いか……その魔力を送る血管みたいなモノが幾重にも張り巡らされているんです。それの事を俺達は龍脈と呼ぶんですが、そこで異変があったという事ですよ」
「リュウミャクとは儂等が言う自然界の魔力の事じゃな。それはわかるが、異変とは一体何なのじゃ?」
「実はあの時、突如、龍脈の流れに乱れが起きたんです。まるで強引に流れを変えるような邪悪な力が働いたと言いますか……。まぁとにかく、そういった流れを感じ取ったので、俺はあの時、離れろと言ったんですよ」
ブライは眉根を寄せ、怪訝な表情になった。
「お主……自然界の魔力の流れを探れるのか?」
「ええ、仕事柄、常にそれは意識してるのでね。そういう修練も積んできましたし」
「ふむ、なるほどの。それはわかったが、となると、1つ疑問が湧くの……あの預言者は一体どこに行ったのかという事じゃ。お主、何かわかるかの?」
「それはわかりませんよ。ただ……この世界には、なんとなくいない気がしますけどね」
と言った、その直後。
【え!?】
全員が驚きの表情で俺を見たのである。
「どういう意味なのですか?」と、フォルス。
「その言葉通りの意味だよ」
ブライは目を細めた。
「この世界にはいないじゃと……なぜそう言える。何か根拠はあるのか?」
「根拠ですか……まぁあるにはありますよ」
「ほう、聞かせてもらおうかの」
「では言いましょうか。根拠ですが……それは俺です」
と言った次の瞬間、仲間達は全員、眉根を寄せたのであった。
その表情は、何言ってんだコイツ……といった感じである。
フォルスが訊いてくる。
「ジュライさんが根拠……どういう事ですか?」
「この間、皆に話しただろ。俺はこの世界の人間じゃないと……。恐らくだが、俺もこの龍脈の乱れによって、ここに来てしまったと推測しているんだよ。だからさ。それとさっき、あの預言者も言ってたが……どうやら、地の底とやらで何かが起きているようだ。しかも、かなり不味い事態がな……。恐らく、この龍脈の乱れの原因を作ってるのが、今回の黒幕なんだろう。問題はそれが何なのかって事だよ……」
仲間達はゴクリと息を飲む。
「黒幕……何か心当たりはありますか」と、ミネア。
俺はそこで、お手上げとばかりに両手を上げ、頭を振った。
「さあね……それはまだわからないよ。ただ……今は向こうの方角に、あまり良くない龍脈の流れを感じるけどな」
俺はそう言って、お告げ所のある岬の更に向こうを指さしたのである。
ゲームならばそこは、アッテムトと呼ばれる鉱山の町がある方角であった。
ちなみにこれに関しては、ゲームの知識がどうとかではなく、俺の霊感によるモノである。
(今言った通り、やはり、ちょっと良くない龍脈の流れを感じるな。ハバリアにいた時は気にならなかったが、ここまで近づくと……俺の霊感にも少し引っ掛かって来る。たぶん、現地に行くと、もっとすごい邪気を感じるのだろう。それはともかく、ゲームならば、封印された地獄の帝王がいる筈だが……さて……)
俺がそんな事を考えていると、マーニャの声が聞こえてきた。
「あの方角だと、アッテムトの方かしらね」
どうやらこの世界にも、アッテムトは存在するようだ。
「マーニャさん、アッテムトとは何ですか?」と、フォルス。
「アッテムトは町の名前よ。昔は金の採掘で結構栄えていたらしいんだけど、今はちょっと……色々とね。キングレオでは金の鉱山がある町として有名な所だけど……私は嫌いかな」
マーニャはそう言って言葉を濁した。
「なるほど、昔は鉱山だった所なのですね」
「いえ、フォルスさん。今でもアッテムトは鉱山の町ですよ。全盛期よりは少ないですが、まだ金は採掘されています。ですが、 坑夫も少ない上に、そこに住む人々は坑道から湧き出る有毒ガスの影響で、身体に不自由を来たしてるので、作業はあまり進まないそうです。ですから、あまり行かない方が良いかもしれませんね」
ミネアがそう補足した。
どうやらゲームと同じ有り様のようである。
「え、有毒ガスが出てるんですか?」
「最初は出なかったそうなんだけど、ある時から出るようになったみたいね。私……あの町はあまり好きじゃないわ。皆、何かに憑りつかれたかのように……自分の身体の事なんてお構いなしに坑道へ入っていくのよ。まるで金に魅入られてしまってるみたいに……」
マーニャは気味悪そうに、そう呟いた。
言われてみると、ゲームでもそんな感じであった。
そして、最終的に彼等は、掘り出してはいけないモノに辿り着いてしまうのだ。
金……生きる為には必要ないのに、なぜか人の欲望をかきたてる鉱物である。
なぜそこに金の鉱脈が出来たのかが気になるところだ。
物事には原因があって結果があるからである。
(そういや以前、原子力工学を研究してる親戚の准教授と、錬金術の話をした事があったが、その時、こんな事を言っていたな。確か……79番目の元素である自然界の金は、超新星爆発の衝撃で物質が核融合して生まれた物だから、中世の錬金術師達は金を作れなかったんだよ、と。でも、理論上は人工的に金を作れるとも言っていた。確か……隣の80番目の元素である水銀に、ガンマ線を当てて原子核を崩壊させ、核融合させる事が出来れば、金になると。まぁだから、現状はそんな事やる奴も設備もないから無理だと言ってたが……気になる話ではある。もしかすると、超新星爆発並みのエネルギーのぶつかりが、かつてこの地で起きていたのだとすると……そういう事もあるのかもしれない。って、あるわけないか。こんな事を考えるなんて、俺もどうかしてるわ。そんな事が起きてたら地形が大きく変わる上に……って……Ⅵの頃から比べると、地形はめっちゃ変わってるな。……いやいやいや、無いってそれは。あれはゲームだから、メーカーの事情でそうなってるだけだ。大体、そんな事あったら、生命の大量絶滅も免れんだろう。忘れよ、忘れよ。大体ここは、ゲームの世界じゃないか。馬鹿馬鹿しい……ン?)
そんな風に脳内で問答していると、アリーナが不安げに俺を見ていたのである。
とりあえず、訊いてみる事にした。
「どうかしたか、アリーナ? 珍しく、不安そうな顔してるけど」
「ねぇ……さっき女の人が消えちゃったけど……もしかして、お父様達もあんな風に消えてしまったのかな……なんて、思ってしまって……どうなんだろ?」
アリーナは歯切れが悪い喋り方であった。
いつものおてんばぶりは鳴りを潜めている状態だ。
悪い方にばかり考えてしまうのだろう。
「姫様……そんな風に考えてはいけません。まだ決まったわけではないのですから」
クリフトは慌ててフォローした。
「ジュライ殿、お主はどう思うんじゃ? 今、アリーナ様が仰った風に考えておるのか?」
ブライは遠慮せずにそう訊いてきた。
たぶん、アリーナと同じことを考えてるのだろう。
悪い方向に考えたくなるのも無理ないところだが、安易に結論を急いではいけないので、ここは言っておかねばなるまい。
「はっきり言いますが、手掛かりがないので俺にはわかりませんよ。それを知る為には、前にも言いましたが、サントハイム城に行かないとね。行けば……天眼通の咒法で何かわかるかもしれないんで。俺から言えるのはそれだけです」
アリーナは目を丸くしながら俺を見ていた。
「テンゲンツウ? 何それ?」
「ジュライ殿が言うには、物に宿った人の思いを見る魔法らしいですぞ。それがうまくいけば、陛下達がいなくなった原因がわかるかもしれないそうです」
「ええ!? 本当に!?」
アリーナは驚きの声を上げると、俺にズンズンと迫ってきた。
そして俺の手を取り、アリーナは声高に告げたのである。
【こうしてる場合じゃないわ! ジュライ、急いで行くわよ! サントハイムへ!】と――
[参]
ハバリアを出港した俺達は、次の目的地であるサントハイム大陸へと向かった。
船長の話だと、5日の航海でサランの港に着けるとの事であった。
そして俺達は予定通り、5日後の夕刻にサランの街へ到着したのである。
航海中は雨にも遭わなかった上、魔物にもそれほど遭遇しなかったので、それも良かったのだろう。
この間の航海で経験したが、荒れた海原を進むのはなかなか大変だからである。
で、そのサランの街だが、ゲームでは港が無かったと記憶しているが、この世界では港湾が整備されていた。
やはり、大きな港がないと海上輸送ができないからだろう。
規模的にはコナンベリーやハバリアよりやや小さいが、まぁわりと大きな港町であった。
船の上から見た感じだと、街の中心には塔のように大きな教会があり、その周囲に幾つもの石造りの家屋が軒を連ねていた。
人口は1万人以上は優にいそうである。この世界では、まぁまぁ大きな部類の街だ。
クリフトは航海中、「サントハイムは信仰の熱い国なので、民は皆、穏やかで優しい者達ばかりですよ」と言っていたので、もしかすると、宗教施設を中心に栄えていった街なのかもしれない。
また、一応、王城が近くにある事もあり、城下町的な機能も持っているみたいである。
ちなみにアリーナが言うには、「サランは、サントハイム城の庭みたいなモノだわ」との事だ。
まぁそれはさておき、船を降りた俺達は、まず宿へと向かった。
日も落ちてきているので、サントハイム城には明日向かう事になったのである。
というわけで、俺達は港の近くにあるサランの宿に入り、受付のカウンターへと進んだ。
カウンターの向こうには、中年のおじさんが暇そうに1人で立っている。
もしかすると、宿泊客はあまりいないのかもしれない。
「えっと、10名宿泊したいんですが、部屋に空きはありますか?」と、フォルス。
「おお、団体さんだね。空いてるよ」
と、そこで、ミネアとマーニャがニコニコしながら、俺の所にやって来たのである。
「ジュライさん、私達と3人で泊まりましょ」
「それは良い考えですね。ジュライさん、一緒に泊まりましょう」
姉妹はそう言って互いを見た。
どことなく、何かを競ってるような雰囲気であった。
まぁとはいえ、俺も男だ。やぶさかではない。
美女とは泊まりたいところである。
後は、流れに身を任せてみようぞ。
ただし、3人部屋があるかどうかだ。
「まぁそれはいいんだけど、3人部屋なんてあんの?」
俺はそこで交渉人のフォルスを見た。
フォルスはおじさんに確認すると、こちらに振り返った。
「あるみたいですよ」
と、そこで、トルネコは意味ありげに微笑んだのである。
「ほほほ、若い方々は良いですな。ジュライ殿が羨ましい」
「ジュライ殿は英雄気質がありますからな。ハハハ」
ライアンもそれに続く。
オッサン連中の遠回しなセクハラ発言が気になるところだ。
「アンタ等またかいな。勘ぐりすぎですよ。ン?」
するとその時であった。
【おお! アリーナ姫様! お久ゅうございます。ブライ様もお元気そうで】
俺達に近づいてくる1人の戦士がいたのである。
だが、サントハイム組は知らない人なのか、3人は互いに顔を見合わせていた。
「ええっと、どちら様?」と、アリーナ。
「私は昔、サントハイムに仕えていた戦士です。今はこんな旅の戦士の格好ですし、城内でもあまりお顔を合わす機会もございませんでしたので、わからないのも無理はございませんな」
「あら、そうだったの。という事は……貴方は無事だったのね」
すると戦士はそこで、周囲を気にしながら小声で話し始めたのであった。
「実はその事で……アリーナ様にお伝えしたき話がございます」
「伝えたい話? 何かしら?」
「実はあの日の朝……王様は夢のお告げを城の皆に伝えようとしたのです。残念ながらその朝、私は用事でお城を出てしまっていたのですが……出発前に大臣がこう申しておりました。地獄の帝王について王様より話しがあるらしいと……」
「地獄の帝王についてですって……」
アリーナはそこで俺にチラッと視線を向けた。
戦士は頷くと続ける。
「はい、アリーナ様。そしてこれは、私の想像なのでございますが……サントハイム城から誰もいなくなってしまったのは、その夢のお告げが関係してる気がしてならないのです。アリーナ様もどうかお気をつけてくださいませ。ではこれにて……」
それだけを告げ、戦士はこの場から去って行ったのである。
アリーナはそこで俺に振り返った。
その表情は不安の一言である。
「今の話……やっぱジュライの言った通りなのかな」
「予知夢の話か?」
「うん……ブライも船の中で話してくれたけど、サントハイムの王様は代々予知能力があったんでしょ? なら、それが原因なのかもしれないと思って……」
アリーナはそう言ってシュンと肩を落とした。
「今は色々と考えたくもなるだろうが、全てはサントハイム城に行ってからだよ。今日はとりあえず、ゆっくり休め」
俺はそう言って、アリーナの肩にポンと手を置いた。
するとアリーナは俺の手を取り、祈る仕草をしながら、畏まった仕草で言葉を紡いだのであった。
「ジュライ……明日は宜しくお願いします」と――