DQⅣ世界に、迷い込みて候   作:虚夢想

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Lv33 追憶の英雄譚

 

 

   [壱]

 

 

 デスタムーアと名乗った大きな醜い腕が消え去った後、俺はその場に腰を下ろした。

 高度な咒法を連続行使したので、流石に疲労困憊なのである。

 面倒な展開ばかり続くので、早く普通の日常に戻りたいと思う、今日この頃であった。

 

(はぁ……なんなんだよ、この展開は……。しかし……サントハイム失踪事件の犯人が、まさか大魔王デスタムーアだったとはね。まぁとはいえ、この世界はゲームのようでいて、ゲームのような世界ではないから、某シナリオライターの設定とはまた違うかもしれん。つか、この世界は一体何なんだ。不思議世界過ぎて頭痛いわ、ったくもう……。それはともかく、デスタムーアって、ドラクエⅥで死んだんじゃないのかよ。なんでそんな奴が、いきなり出てくるんだ……ン?)

 

 と、そこで、ミネアとマーニャが慌てて駆け寄ってきた。

 

「ジュライさん! 大丈夫なの!」

「ジュライさん、大丈夫ですか! すぐ治療します。ベホイミ!」

 

 ベホイミの白く美しい癒やしの輝きが、俺を優しく包み込む。

 先程の戦いにおける傷は嘘のように治癒していった。

 相変わらず、凄い効能の魔法である。

 

「ありがとう、ミネア。お陰で助かったよ」

「いえ、お気になさらないでください。それよりも……お身体は大丈夫ですか? あの恐ろしい腕はジュライさんを掴み、物凄い勢いで、天井に押さえつけておりました。その後も執拗に狙っていたので、心配だったのです」

 

 ミネアはそう言いながら、青褪めた表情になっていた。

 

「そうよ、ジュライさん。本当に大丈夫なの? かなりヤバい魔物のような気がしたわよ……」

 

 マーニャも同様である。

 姉妹は深刻に受け止めているようだ。

 まぁ俺も、対応を間違えると死んでいた可能性があるので、わからんでもないところである。

 

「ああ、大丈夫だよ。まぁヤバかったのは事実だけどね。ン?」

 

 と、そこで、他の仲間達も集まってきた。

 

「ジュライ……大丈夫なの? あの大きな手に押さえつけられてたけど……」

 

 アリーナは俺の前で屈み、心配そうに覗き込んできた。

 おてんば姫もこの怒涛の展開で、流石に毒気を抜かれてしまったようだ。

 

「ま、とりあえず、なんとか生きてるよ。心配しなくていい」

 

 続いてフォルスが申し訳なさそうに謝ってきた。

 

「すいません、ジュライさん。僕は何もできませんでした。あまりにも突然だったので、身体が動かなかったのです……」

「そんな事、別に気にしなくてもいい。あんなのが突然現れたら、そう簡単に対応は出来んよ。ましてや、フォルスは経験も浅いからな」

「すまぬ、ジュライ殿……私も突然で対応ができなかった。勇者殿を助けるよう、お告げ所で言われたのにも関わらずだ。面目ない……」と、なぜかライアンも。

 

 この2人は義理堅い者達なので、変に気に病んでいるのだろう。

 真面目過ぎるのも考えものである。

 

「ライアンさんもですか、そう気にしなくてもいいッスよ。ま、俺も咄嗟のことで判断が遅れましたけど、なんとかなったんでね。それよりも、今は今後の事を考えるべきです」

「確かに、そうですな。しかし、ジュライ殿、今の腕は一体何だったのだ? あんな悍ましい魔物の腕は、初めて見るが……」

 

 ライアンはそう言って険しい表情になった。

 他の仲間達もその言葉に頷く。

 するとミネアが、恐る恐る俺に訊いてきたのである。

 

「ジュライさん……あの腕は、デスタムーアと言ってましたが……もしかして、知っているのですか? 先程、ジュライさんも『なんで奴が』と言っておられましたし……」

「え? そうなの?」

 

 アリーナはそれを聞き、目を大きくしながら俺を見た。

 仲間達もそこで俺に視線を向ける。

 その表情は一様に、『え、本当に?』といった感じだ。

 あの突然の展開で、俺も思わず口走ってしまったが、変に言い訳すると不信感を与えかねない。

 どうやって話そうか、悩むところである。

 

(あ~あ、ちょっとやっちまったかな。ついつい口にしてたみたいだ。俺も動揺してたってことか……あんまりフォルスに偉そうな事は言えんな。まぁいい……にしても、なんでデスタムーアなんだよ、ったくもう……。仕方ない、ある程度は話すしかないか……)

 

 もう腹を括るしかないだろう。

 

「デスタムーアか……まぁ知ってるといえば、知ってるが……それは面識があるというわけじゃない。御伽噺(おとぎばなし)的な意味で知っているというだけだよ」

「御伽噺? 気になります……それはどういった話なのですか?」

 

 ミネアは身を乗り出してきた。

 興味津々のようである。

 他の皆も同様であった。

 本当はあまり触れたくない話題だが、ここは今後の為にも話すとしよう。

 もうどうにでもなれ! ってやつだ。

 というわけで、開き直った俺は、某スペースオペラ風に語ることにした。

 

【遠い昔、遥か彼方の銀河系で……とある世界を支配しようとしていた悪しき存在がいました。その存在の名は、自称大魔王デスタムーア。デスタムーアは夢と現実の狭間の世界に身を起き、配下の魔王達を使って、次々とその世界の主要な場所を侵略していきました。デスタムーアにとって驚異となる存在を生み出す可能性がある神殿や、究極魔法を編み出しそれを伝える魔法都市、すんごい武具を褒美としてくれる妙な王様がいる城等々……それらは次々と、デスタムーアによって滅ぼされていったのでした。その世界に住まう人々は次第に、魔物の侵略によって、絶望の縁に立たされてゆきます……】

 

 仲間達はゴクリと生唾を飲み込み、俺の話に聞き入っている。

 あの腕が自ら名乗った事もあり、より一層、恐怖を引き立てているのだろう。

 俺は話を続けた。

 

【だがしかし……事は順調に進んでいるように見えたが、そこでデスタムーアは、ある事に気が付きました。それは……滅ぼした魔法都市や神殿が、人々の心の中で、まだ存在し続けているという事でした。そこでデスタムーアは次の行動に出ます。なんとデスタムーアは、夢の世界を実体化させ、そこにある魔法都市や神殿、そして……夢の世界を束ねるゼニス王の城をも封印してしまったのです。結果的にデスタムーアは、主要な4つの場所を封印してしまいました。さぁ大変だ!】

 

 と、そこで、マーニャが間髪入れずツッコミを入れてきた。

 

「ちょっと待って、ジュライさん! 今、夢の世界を実体化って言わなかった?」

「ああ、言ったよ」

「そ、そんな、とんでもない事ができるの……そのデスタムーアって魔物は……」

「御伽噺ではできる事になってたよ」

「うそ……」

 

 マーニャは口元を押さえ、少し怯えた表情になった。

 他の者達も困惑気味の表情である。

 

「夢の世界を実体化じゃと……」

「御伽噺とはいえ、とんでもない魔物ですな。今の話を聞く限り、地獄の帝王より、厄介な魔物な気がしますよ」

「トルネコ殿の言う通りだ。やっている事は神の領域だぞ」

 

 他の仲間達も同様である。

 夢の世界を実体化するなんて言われたら、誰だってこうなるだろう。

 ゲームだと影が薄いジジイ姿の大魔王だが、やってることはヤバい奴なのである。

 

「それはともかく、続きをお願いします」

 

 ミネアはそう言うと、目をキラキラと輝かせていた。

 こういう壮大な御伽噺が好きなようだ。

 

【じゃあ、続けるね。ええっと……それで、その夢の世界をも手中に収めつつあるデスタムーアは、次なる手に出ます。なんとデスタムーアは、自分の作り出した狭間の世界へ、沢山の人々を拉致していったのです。それらの人々は多種多様で、世界に名をはせる武芸者や大賢者と呼ばれる偉人等もいました。そこでデスタムーアは人々に何をしていたのかというと……絶望させた生活をさせーの、欲望に塗れた生活をさせーの、牢獄に入れられた生活をさせーのをして、愉快に楽しんでいたのです。デスタムーアが、なぜこんな生活を人々にさせていたのか? それはなんと……それがデスタムーアの活力になるからなのでした。自称大魔王は、人々の負の感情を糧に生きているのです。さぁどうしよう。こんな出鱈目でおかしな栄養補給をする自称大魔王に、一体、誰が立ち向かえるのでしょうか? 人々は益々絶望し、自称大魔王は益々活発になります……このままではデスタムーアの天下となるのも時間の問題だ!】

 

 俺はそこで話を切った。

 記憶の引き出しを探る為である。

 ゲームをやってたのは結構前なので、ストーリーを思い出す必要があるのだ。

 思い出したところで、俺は話を再開した。

 

【人々の負の感情を喰らい、活力を得続ける自称大魔王デスタムーアの勢いは止まりません。配下の魔王達も順調に侵略を続け、飛ぶ鳥を落とす勢いで世界を蝕んでゆきます。だがしかし……そんな時でした。とある国の若い王子が立ち上がったのです。彼は、両親である王や王妃が眠ったまま目覚めない為、その原因と思われるデスタムーア配下の魔王を倒すべく旅立ちました。そして彼は、頼もしい仲間達と共に、魔王へ戦いを挑んだのです。一度は返り討ちにあったものの、最後に勝利したのは王子達でした。そこで異変が起きます。なんと! 夢の世界の封印の一部が解けてしまったのです。そうなのです……この魔王は、夢の世界の封印の1つをデスタムーアから任されていたのでした。そうとわかった王子達は、この調子で他の魔王達も倒し、夢の世界の封印を1つ、また1つと解いてゆきました。それは大変な道程でした。だがしかし……3体の魔王は倒したものの、4つ目の封印を司る魔王が見つかりません。王子達は途方に暮れました。しかしある時……旅の途中で、王子達はとある噂話を耳にします。それは、『伝説の武具を4つすべて集めた者は神の城に行ける』というモノでした。その後、王子達は苦難の末、伝説の武具を4つ揃えることになります。それらはラミアスの剣、スフィーダの盾、セバスの兜、そして……オルゴーの鎧と呼ばれるものでした】

 

 するとそこで、マーニャとミネアは目を見開き、驚きの声を上げた。

 

【え!? オルゴーの鎧!】

 

 コナンベリーでリバストが話してくれた天空の鎧の話を覚えていたようだ。

 

【そう、オルゴーの鎧だ。で、その4つの武具を揃えた王子達は、旅の途中で見つけた神秘的な祠へと立ち入り、そこでとある城へと導かれる事になります。すると、そこはなんと、夢の世界を束ねるゼニス王の城だったのです。が、しかし……ゼニス王の城は、デスタムーア配下の最強の魔王が支配しており、魔物の城と化していました。そこで王子達は、城を支配する魔王と戦うことになります。そして……長い戦いの末、王子達は見事、デスタムーア配下の最強の魔王を打ち倒したのです。これにより、最後の封印が解かれました。封印されていたゼニス王の城は空高く舞い上がり、夢の世界へとようやく戻る事が出来たのです。めでたしめでたし……だが、これで終わったわけではなりません。まだ狭間の世界には、自称大魔王のデスタムーアがいるからです……え?……狭間の世界?】

 

 俺は気になる事が脳裏に過ぎった為、そこで話を止めた。

 なぜなら、色々と腑に落ちない点や疑問が出てきたからである。

 ミネアが催促してきた。

 

「ジュライさん、その後はどうなったのですか? 続きが気になります」

「続きか……最終的に王子達は大魔王を倒し、世界に平和を取り戻したよ。ま、俺が知ってるのはこんなとこだ」

「ええ、終わりですか!? 最後だけ、やけに簡単に纏めましたね。その後の展開が気になるんですけど……特にオルゴーの鎧の部分が、非常に気になります」

「ミネアの言う通りだわ。オルゴーって……リバストさんの話に出てきたヤツよね。ジュライさん、どういう事なの? 今の話……単純な御伽噺じゃないような気がするんだけど……」

「悪いな、ちょっと忘れちゃったみたいだ。まぁでも、結末はデスタムーアの負けだったよ」

「そうですか……でも気になります」

 

 ミネアは釈然としない表情であった。

 まぁ無理からぬところである。

 

(マーニャとミネアには悪いが、話はこれで終わりにする事にしよう。それはともかく、ドラクエⅥって……確か、狭間の世界を創造したのは、デスタムーアという設定だったよな。ってことは、ある意味、世界の創造神だ。エビルプリーストは魔界に魔族の神がいると言ってたが……魔界とは狭間の世界の事じゃないだろうか。もしそうだとすると……色々ときな臭い疑問が出てくる。しかも、さっきデスタムーアは妙な事を言っていた。『天空の神にも、こればかりは邪魔はさせぬわ!』と……。あの口振り……恐らく、マスタードラゴンとデスタムーアは互いに通じている気がする。以前、旅の途中で、天空の神がサントハイムの人々を消した説を冗談でしたが、もしかすると、あながち的外れでもないのかもしれない……)

 

 ゲームのデスタムーアならばと注釈がつくが、奴ならサントハイムの人々を狭間の世界に拉致する事は可能だからだ。

 とはいうものの、デスタムーアはゲームでは死んだという事になっている。

 この世界はゲームと同じような世界観ではあるから、そこも同じだとは思いたい。が、どうも違うのかもしれない。

 ただ……この世界に来てから、ずっと気になっている事があった。

 それは何かというと、理由はどうあれ、この世界はゲームで語られていない部分も、ちゃんと整合性がとれているところだ。

 原因と結果の法則が、現実的にちゃんと結びついているからである。

 

(デスタムーアについても、そこに謎があるのかもな。例えば……あの後、デスタムーアは負けはしたものの滅びなかった……とか。滅びなかったが、力は殆ど失った……とか。そして、力をなくしたデスタムーアに、やんごとなき理由があってマスタードラゴンは手を貸した……とか。あるいは……ン?)

 

 ふとそんな事を考えていると、シンシアが興味津々の表情で俺に話しかけてきた。

 

「あの、ジュライさん。今の御伽噺、初めて聞きました。凄く気になるんで、もっとじっくり聞きたいんですけど……」

 

 シンシアのこの表情を見る限り、ドラクエⅥの伝説は知らないのかもしれない。

 とはいえ、今は話す事ができないので、やんわりと断ることにした。

 

「悪いな、シンシア。俺もこの後は、どんな展開だったのかうろ覚えでね。また思い出したら、話してあげるよ」

「じゃあ、思い出したらお願いしますね。凄く気になるお話だったんで……」

 

 と、そこで、眉間に皺を寄せた難しい顔のブライが、俺の前に来た。

 

「ジュライ殿……今の御伽噺はともかく、一体全体、陛下達はどこに行ってしまったのだ? 先程のデスタムーアとやらが、どこかに攫ってしまったとでもいうのか?」

「まぁあの様子から見て、まず間違いなくそうだと思いますよ」

「なら、一体どこへ行ったというのじゃ」

「それはわかりませんが、もしかすると狭間の世界……ですかね」

「狭間の世界じゃと……あれは御伽噺じゃと、お主が今、言っておったではないか」

 

 俺は覚悟を決め、皆に話す事にした。

 

「そう……ブライさんの言う通り、これは俺のいた世界における御伽噺ですよ。ですが……俺は今、そんな世界に身を置いてるのでね。そうとしか言えないんです」

 

 ブライは首を傾げた。

 

「なんじゃと……どういう意味じゃ?」

「そのままの意味ですよ。旅の途中でも言いましたが、この世界で皆さんが使われている魔法は、俺の世界じゃ、御伽噺として出てくるモノばかりなのでね」

 

 するとその直後、ミネアが驚きの眼差しを俺に向けたのである。

 

「え!? という事は……私達のこの世界は、御伽噺の世界だとでもいうのですか?」

「さぁてね……最初は俺も、御伽噺の世界に迷い込んだのかと思ってたんだが……なんかちょっと違うんだよね。だから、頭が混乱してるところだ」

 

 俺はそこで大きく溜息を吐いた。

 これは本音である。

 この場に暫し、シンとした静寂が訪れる。

 仲間達は互いに顔を見合わせながら、なんともいえない困った表情をしていた。

 俺の話が衝撃的なので、ちょいパニックなんだろう。

 

(この世界は一体何なんだろうな? 御伽噺の世界ならまだしも、ゲームの世界だからなぁ。しかも細部が微妙に違うし……それに加えてこの勾玉だ。なんでこんなモノがここに……)

 

 俺はそこで、勾玉を掌の上に置き、マジマジと見た。

 それは黒曜石のように黒光りする勾玉であった。

 しかも、邪気の残りカス付きである。

 

(天空シリーズに日本的な文化ってなかったよな。Ⅲにはジパングがあるからわかるが……。しかし、勾玉ねぇ……古代日本の祭祀に使われていたモノだが、今でも神社で御守りとして目にする事はある。なんでこんなモノが……ン? 神社……)

 

 と、そこで、この世界に来る原因となった出来事が、脳裏に過ぎったのである。

 それは何かというと、あの山中にあった集落跡での出来事だ。

 

(そういや、あの旅の扉みたいな青白い霧の渦が現れたのは、神社跡と思われる場所だったな。ってことは、この勾玉はあの場所に関連するモノか? う~ん……わからん。ああもう、今日は考え過ぎて頭が痛いわ。つか、神社とゲーム世界が通じてるって意味わからんぞ。いるかどうかはともかく、神社って神を祭ってる所だろ。なんでそんな事が起きるんだ。大体、神や悪魔や物の怪、そして悪霊などというモノは、深い信仰や業によって生み出されるモノだ。もし神がいるとするならば、それは……え!? って事は、まさか……ン?)

 

 ふとそんな事を考えていると、アリーナがシュンとしながら俺の前にやって来た。

 

「ねぇ、ジュライ……御伽噺の事はよくわかんないけど、お父様達は生きているのかな。どう思う?」

「う~ん、それなんだけどね。わかんない……というのが正直なとこかな。まぁでも、これは俺の勘だけど……多分、生きているんじゃないかな。確証はないけど」

 

 すると、アリーナは少し明るい表情になった。

 

「え! 本当に?」

 

 続いて、ブライとクリフトが俺に詰め寄って来た。

 

「何!? どうしてそう思うんじゃ?」

「本当ですか!?」 

「根拠はないですよ。あくまでも勘です。まぁいずれにせよ、黒幕を何とかしないと、王様達は戻ってこれないかもしれませんね。というわけで……」

 

 俺はそこで言葉を切り、フォルスに視線を向けた。

 物語を進める必要があるからである。

 

「さて、フォルス……つーわけで、この先は、お前の宿命に掛かっているといっても過言ではない」

「え!? 僕ですか? それはどういう……」

「決まってるじゃないか。この先は、お前が天空の勇者にならなきゃ話にならないんだよ」

「で、でも……本当に僕はそんな力があるのですか? 村の皆や、ミネアさんはそう言ってましたけど……」

 

 ある程度強くなったとは思うが、気弱フォルスはまだ健在のようだ。

 そもそもの旅の動機が、母を訪ねて三千里状態だから仕方ないところである。

 とはいえ、コイツには勇者になってもらわないと、俺は一生帰国できない気がする。なので、強引に導くとしよう。許せ、フォルス。

 

「いいか、フォルス……これはお前の宿命なんだよ。天空の勇者になれなければ、お前はこの先、母には一生会えんということだ。ならば、次にすべきことは1つだろ。天空装備を揃えて、天空城に行くんだ。いずれにしろ、粗方の謎は、恐らく、そこで解けるはずだからな。但し、ここから先……俺は旅から外れさせてもらうから、そのつもりでいてくれ」

 

 すると、フォルスは目を見開き、少し慌てた表情になった。

 

「ええッ!? そ、それはどういう事ですか?」

 

 ほかの皆も同様である。

 

「ジュライさん、どういう事なんですか? 旅から外れるって……私、ジュライさんがいないと不安なんですけど。フォルスにはまだ貴方が必要なのに……」

「そうよ、ジュライさん。ここまで来てどういう事なの?」

「そうですぞ。ジュライ殿、一体どういう事なんじゃ」

「ジュライ、駄目よ。まだ貴方に色々と教えてもらうんだから」

 

 やや騒然とする中、ミネアが俺の前に来た。

 

「ジュライさん……何か理由があるのですね?」

 

 俺は頷くと、祭壇に突き刺さした鋼の剣に視線を向けた。

 

「あれが理由だよ。今は結界を解くわけにいかないんでな……つまり、今の俺は武器がないって事だ。というわけで、俺は一旦コーミズに戻り、剣を打ちに行く。だからその間は、旅から外れさせてもらいたいんだ。いいな?」――

 

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