DQⅣ世界に、迷い込みて候   作:虚夢想

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Lv37 移民の町

 

 

   [壱]

 

 

 フレノールでの朝食の後、俺達はオーリンのキメラの翼で、砂漠のバザーへとやって来た。

 この世界に来てから何回も体験していることだが、相も変わらず、凄まじい移動手段である。

 とはいうものの、シンシアから以前聞いた話によると、キメラの翼やルーラといった移動手段は、行った場所ならどこでも行けるわけではないようだ。

 なんでも、その地を加護する大地の精霊と天空の神との契約によって行われているそうで、契約外の地域は転移出来ないそうである。ゲームでもそういう場所は意外とあったので、理解できる話であった。

 しかし、俺からすると、それを差し引いても凄い移動手段には変わりない。羨ましい限りである。

 現実世界でも是非使いたい魔法の1つであった。

 と、まぁそんな事はさておき、見回したところ、バザーは砂漠のオアシスみたいな場所で行われているようだ。

 しかも、砂漠地域なだけあり、カラッとした暑い気候である。

 気温は体感だと30度くらいだろうか。

 思ったほど暑くないので、ホッとしているところである。

 周囲を見回すと、遊牧民が使いそうな丸形のテントが幾つか確認できる。

 また、それらは長い間、風雨に晒されているのか、結構色褪せており、ベージュとも茶色ともいえない微妙な色合いとなっていた。

 まぁそんな感じのところなのだが、思ったほど人はいなかった。

 なので、あまり活気というモノはない。

 どちらかというと、店仕舞い的な雰囲気が漂っていたのである。

 おまけに片づけ作業中のテントもあるので、より一層そんな雰囲気になっているのであった。

 

「ふむ……旅商人の祭りと聞いたが、そんな感じではないな。もう仕舞いか?」と、リバスト。

 

 この反応は当然である。

 俺も同じ気分だからだ。

 

(あらら、ずいぶん寂しい感じだな。リバストの言う通り、もう店仕舞いかもな。そういや、砂漠のバザーって5章の時点で、終了してたんだっけ? ゲームしてたの随分前だから、その辺の事を忘れてるわ……でも、移民の町って確かココだったよな。って事は、もうやってないんだろうな……)

 

 などと考えていると、メイの驚く声が聞こえてきた。

 

「そんな……もうバザーが終わってる……え、なんで!? ついこの間、私が来た時はバザーが始まった頃だったのに……なんで、こんなに早く終わるのよ……」

 

 続いて絶倫カップルも残念そうに溜息を吐いた。

 

「でも見たところ、バザーはもう終わりのようだね」

「うん、終わりみたいね。残念だわ。オーリンさんに、なにか掘り出し物をとでも思ったけど……」

 

 この女性はベロニカというらしい。

 オーリン曰く、キングレオ城で生贄にされそうになっていた踊り娘とのことだ。

 ゲーム通りの素性なので、安心したところである。

 まぁそれはさておき、メイはショックなのか、呆然と立ち尽くしていた。

 恐らく、若干、浦島太郎状態なのだろう。

 俺は確認の為、近くにいるターバンを巻いたオッサンに訊いてみる事にした。

 

「あ、すいません、ちょっと訊きたいんですけど、砂漠のバザーってもう終わりですかね?」

「ン? なんだ今頃、バザーに来たのか。そりゃ残念だったな。バザーは10日ほど前に終わっちまったよ。毎年、40日間開催される砂漠のバザーは今年も大盛況だったぞ。最終日には、サントハイム王の友人にして、商売の神とも言われる主催のヒルタン様もお見えになったしな。大盛り上がりだったぜ。アンタも残念だったな。また来年、頑張れよ」

 

 商人はそれを告げると、アディオスと言わんばかりに手を振りながら去って行った。

 バザーは間違いなく終了のようだ。

 とりあえず、メイに確認するしかないだろう。

 

「メイ、やっぱりバザーは終わりのようだ。そこで疑問なんだが、メイが以前来たのは、本当にバザーが始まった頃だったのか? 終わり頃じゃなくて」

「それは本当よ。だって、バザーが開催されて10日目くらいの時に、私は来たんだから……」

「となると、メイがここに来てから今日までで、40日前後経過してることになるな。それまでの記憶ってあるか?」

 

 メイはしょんぼりと肩を落とし、無言で頭を振った。

 ちょっとパニクってるのだろう。

 恐らくその間、魔物達に拉致されて操られていたのかもしれない。

 可哀想だが、今はその事に触れないでおこう。

 

「メイ……ちょっと落ち着こうか。まずは君の仲間がいるかどうかだ。とりあえず、探してみよう」

「う、うん」――

 

 それから1時間程度、バザーの敷地内を適当に探索してみたが、メイの仲間達と会うことはなかった。

 すると、メイは疲れたのか、崩れるように砂地に膝をつき、ワンワンと泣き出したのであった。

 

「私……1人ぼっちになっちゃった……ううぅ、うわぁぁぁん」

 

 オーリンさんやベロニカ、それとリバストは、困ったように顔を見合わせていた。

 周囲の商人達も、何事かといった感じで、こちらに視線を向けている。

 ちょっと注目の的であった。

 

(ここに来て緊張の糸が切れたかな……まぁ無理もないか。旅の途中、年齢を聞いたら17歳と言ってたし。まだまだ子供だ。……仕方ない。年長者っぽく、振舞っとくとするか)

 

 俺はメイに近寄り、落ち着かせる意味も込めて、正面から軽く抱きしめてやった。

 

「はいはい、泣かない泣かない。とりあえず、落ち着け。泣いたところで、何も解決せんぞ。まずは冷静になろう……何か良い方法が思い浮かぶかもしれないし」

 

 この突然の行動にメイは驚いたのか、少しビクッとしたが、徐々に泣き止んでいった。

 どうやら落ち着いてきたのだろう。

 

「ジュライさん……どうしよう、私……グス……」

「そうだな……とりあえず、メイが拉致された時の状況って、どんな感じだった? メイは旅芸人だってこの間言ってたけど……」

「拉致された時? そんなのわかんないわよ。というか、私は拉致なんてされてないもん。だって私……仲間と5人でココに来て、入口近くの武器屋で腕輪を売ろうと交渉しに来ただけなんだから。そしたら横から、私ならその10倍以上で買いますよって言う人が現れて……それからバザーの外れに案内されて……あれ? ……そこから記憶がない……」

 

 メイは頭を抱え、呆然としていた。

 話が本当ならば、ソイツが魔物の手の者だったのだろう。

 そこから色々とあって、エビルプリーストに実験体としてストックされてたのかもしれない。

 

「そっか……で、仲間もその時、一緒に居たのか?」

 

 メイは頭を振る。

 

「ううん……私だけだった。お店が混んでたから、私だけで行ったのよ。仲間達はたぶん、他のお店を見て回ってたかも……」

「なるほどね。まぁなんとなく、当時の状況はわかったよ。ン?」

 と、その時であった。

 

【あれ? ジュライさんじゃないですか!】

 

 聞き覚えのある声が、どこからともなく聞こえてきたのである。

 俺は声の聞こえた方向に視線を向けた。

 するとなんと、そこにはいつぞやの拗らせ青年がいたのである。

 もしかすると、移民の町を作りに来たのかもしれない。

 

「おお、ホフマンじゃん。妙なとこで会うな。つか、宿屋の店番はどうしたんだよ?」

 

 ホフマンはニカッと笑った。

 

「エッへっへ、実は僕、ヒルタン老人から大きな仕事を任されたんですよ」

「へぇ、やるじゃないか。で、何を任されたんだ?」

 

 ホフマンは両手を大きく広げ、周囲を見回しながら答えてくれた。

 

「このバザーの跡地に町を作るんですよ。ヒルタン老人は、友人であるサントハイム王からその手腕を買われ、この不毛な砂漠の地に町を作ってくれないかと、お願いされていたみたいなんです。それで以前、いつか自分の町を作りたいという夢を話していた僕に、ヒルタン老人はこの計画を持ってきたんですよ。それに僕も砂漠出身ですしね」

 

 意外なところからの移民の町開発プロジェクトであった。

 ゲームでは突然バザーの跡地に現れ、移民の町を作り出したホフマンだが、よく考えてみれば、無政府状態とはいえ、他国の土地を勝手に占拠して町作りなんて、リアルではある意味不可能なのである。

 信用もない上に、行為自体が侵略に他ならないからだ。

 だが、サントハイム王の友人というヒルタン老人の後ろ盾があれば、それも可能なのである。

 というか、サントハイム王とヒルタン老人が友人なのは意外であった。

 ただ、ヒルタン老人は若い頃、世界に詳しいと豪語するほどの冒険家だったらしいので、そこでサントハイム王と知り合う何かがあったのかもしれない。

 まぁ何れにしろ、ちゃんとした整合性が取れている移民の町プロジェクトであった。

 

「へぇ、なるほどね。ヒルタン老人から見込まれてんだな。やるじゃないか、ホフマン」

「それもこれも、ジュライさんのお陰ですよ。ところで、何かあったのですか? 外が少し騒がしかったものですから、様子を見に来たんです」

「ん? ああ、それか。ちょっと仲間が取り乱しちゃってね」

 

 俺はそこでメイに視線を向けた。

 メイはポカンと俺達を見ていた。

 

「あの……ジュライさん、この人は?」

「この青年はホフマンと言ってね、以前、俺と一緒に旅してたんだよ」

「初めまして、私はホフマンと言います。よろしくお願いしますね。ところで……マーニャさんやミネアさんやフォルスさん、それから、シンシアさんとトルネコさんの姿が見えませんね」

 

 ホフマンはそう言って、辺りをキョロキョロ見回した。

 

「そういや、ホフマンは知らないんだったな。今、俺は訳あって、フォルス達とは旅してないんだよ。まぁ後で合流する予定になってるけどな」

「そうだったんですか。それはそうと、ジュライさんは砂漠のバザーが目的で来られたんですか?」

 

 俺は頭を振り、メイに視線を向けた。

 

「違うよ。俺は彼女の護衛として付いてきただけだ。でも……彼女はここで、ちょっと前に色々とあったらしくてな。それで、困った事が起きてるんだよ」

「困った事?」

「実はな……」――

 

 俺はとりあえず、詳細な部分は伏せ、逸れてしまった旅芸人の仲間の事や、その時期等を話しておいた。

 話を聞き終えたホフマンは、顎に手を当て、ボソリと言葉を発した。

 

「逸れた旅芸人ですか……ん? 旅芸人……」

「何か心当たりがあるのか?」

「いえ、心当たりというか……今、旅芸人という4人組がソコの中にいるんですよ。ここに住まないかと、僕が声掛けしたんですけどね。旅芸人達はバザーが終わった後も、ココにいたので」

 

 ホフマンはそう言って、少し離れたところにある大きめのテントを指さした。

 俺はメイに話を振った。

 

「だって、メイ」

「あの……その4人組の旅芸人て、名前はなんというんですか?」と、メイ。

「名前ですか? ええっと……確か、ワリフトとプライ……それと、ネリス……もう1人は……すいません、忘れました」

 

 メイはそれを聞き、安堵の息を吐いた。

 どうやら、仲間達の名前と一致したのだろう。

 

「たぶん、その4人組は私の仲間です。よかった……」――

 

 その後、メイは仲間達と合流した。

 仲間達はメイが突然いなくなったので、色々と探すのに奔走してたようだ。

 よく1ヶ月以上も待っていたな、と思ったのは言うまでもない。

 ゲームではすぐに離れ離れになっていたが、この世界のメイの仲間達は、意外と連帯感が強いみたいである。

 というわけで、俺もこれでようやく、お役御免となれそうだ。

 その後、町外れにて、メイやオーリンさん達とお別れする事にした。

 ちなみにホフマンは今、町作りに奔走しており、ここにはいない。

 ホフマンの張り切る姿を見るに、次にココへ来た時は、少しは町っぽくなってるのかもしれない。

 今から楽しみである。

 というわけで、そろそろ去るとしよう。

 

「じゃあ、メイにオーリンさん、それからベロニカさん、ここでお別れですね。色々とありがとうございました」

 

 オーリンは頭を振る。

 

「ジュライさん、礼を言うのは私の方です。わざわざ遠方から師の書簡を届けてくださったのに、こんな事しかできなくて申し訳ない」

「それは気にしなくていいですよ。それより、ベロニカさんを大事にしてやってください」

 

 俺の言葉を聞き、2人は照れくさそうに微笑んだ。

 

「まぁでも、もし気が変わったら、エドガンさんに会ってやってください。今もコーミズ村にいるんで。俺も暫くはソコにいますから」

「ジュライさん、ありがとう。師には、何れ……とお伝え下さい。リバストさんもお元気で」

「うむ。其方も達者でな」

 

 続いてベロニカさんも。

 

「ジュライさんにリバストさん、せっかく来てくれたのにごめんね。でも、色々とキングレオの話も聞けてよかったわ。マーニャにもよろしく言っといてね。ウフッ、勇者さん」

 

 ベロニカさんはそう言って艶っぽく微笑んだ。

 いかにも、マーニャの同業者って感じである。

 

「参ったなぁ……俺はただの旅人ですよ。勇者はちゃんと別にいますから」

 

 このカップルは今後もフレノールの地で、あんあんを続けてゆくことだろう。羨ましい限りである。

 俺はそこでメイに視線を向けた。

 するとメイは、寂しげな表情で俯いていたのである。

 

「どうした、メイ? ははぁん……さては、俺と離れるのが嫌になったな」

 

 と、その直後であった。

 メイは潤んだ顔を上げ、なんと俺に抱きついてきたのだ。

 ちょっと予想外の行動であった。

 

「おいおい……どうしたんだよ、急に」

「ジュライさん……こんな私を今まで護ってくれてありがとう。私……貴方の事が……いや、なんでもないわ……」

 

 メイはそこで俺から離れ、いつものようにニコリと笑った。

 

「私……もう少しで、またアリーナ様に迷惑かけるところだった。これでいいのよ、これで……。ジュライさん、お元気でね。それとアリーナ様をよろしくお願いいたします」

 

 もしかするとメイは、俺の事が少し好きになっていたのかもしれない。

 とはいえ、魔物に襲われる緊張下での感情だから、ストックホルム症候群に似た一時の気の迷いだろう。

 それはともかく、なぜここでアリーナが出てくるのかよくわからんが、俺はとりあえず、頷いておいた。

 

「お、おう……わかったよ」

「それとジュライさん……あまり女の子に優しくし過ぎないでね。勘違いする子もいるんだから……」

「勘違い? って、どういう事?」

 

 メイは少し困った表情になった。

 

「え? それを聞くの? それはね……ええっと……と、とにかく、そういう事なのよ。これからは気を付けてね。では、エイシュンさんにリバストさん、お元気で」

「ああ、メイもな。じゃあ、皆も元気でな。縁があったらまた会おう」

「では去らばだ」――

 

 そして、俺とリバストは彼等に見送られながら、キメラの翼で空高く舞い上がり、砂漠のバザーを後にしたのであった。

 

 

   [弐]

 

 

 キメラの翼の力で、キングレオに降り立った俺とリバストは、そこから2日ほど徒歩で南下し、コーミズ村へと帰って来た。

 そして翌日、俺は早速、エドガンさんの作業場にある炉に改良を施し、刀工作業に取り掛かったのである。

 まずは玉鋼がないので、たたら製鉄からではあったが、素材に関してはエドガンさんの作業場に沢山ある良質な砂鉄や、コーミズ村で作られている木炭や水、それから土を利用した。

 特に、この村で木炭が作られていたのが幸いだったところだ。

 なぜなら、良質な鋼を作るには、木炭を使って鉄の炭素含有量を調節しないといけないからである。

 それはかなり大変な作業ではあったが、量が少ないので2日程度で終わった。

 そして、出来上がった鉄の塊から刃に使う玉鋼の部分を分離し、ようやく鍛造工程へと入るのである。

 鋼の鍛錬はかなりの重労働であったが、疲れ知らずのリバストさんがいたお陰で、順調に進んでいった。

 現代なら電動ハンマーがあるので1人でも可能な作業だが、そんなモノがない昔は2人以上の刀工によって、人力で鍛錬が行われるのが常だからである。

 英霊召喚してよかったと思った瞬間であった。

 ちなみにだが、リバストさんは生前、鍛冶屋の息子だったのもあり、助手を快く引き受けてくれた。

 若い頃は親の手伝いもしていたらしく、鍛冶の経験も少しはあるそうだ。

 だが、俺の鍛造法はリバストさんも見た事がない方法のようで、かなり興味津々であった。

 それはエドガンさんも同様である。

 2人の話だと、この辺りでは、日本刀のように何回も折っては伸ばしを繰り返す鍛造方法はしないそうだ。

 とはいえ、鋼を叩いて鍛造していく行為は普通に行われており、高額な剣は殆どこの製法との事であった。

 また、エドガンさん曰く、銅の剣のような安い剣は、溶けた銅を型に流して作り上げる量産武具だそうである。

 おまけに、銅を溶かすときに別の溶かした金属の中に入れると言っていたので、もしかすると銅の剣は、真鍮や青銅に近い合金素材の剣なのかもしれない。

 意外なドラクエトリビアを知った瞬間であった。 

 まぁそんなこんなで、順調に刀を作り上げていったわけだが、最後の仕上げだけは霊木が必要なので、俺はエルフの里に行き、世界樹の枝をかき集める事になった。

 そして、最終工程へと進むのである。

 呪術付加を施し、且つ、焼き刃土を塗った刀身を燃え盛る霊木と木炭の中にくべるのだ。

 それらの工程を終え、ようやく剣となるわけである。が、コレで終わりではない。

 最後の刀研ぎが大事だからだ。

 俺が調合した真霊水と砥石を用いて、霊気を籠めて磨き上げねばならないのである。

 これを行う事で、不浄を焼き尽くす摩利支天浄魔光剣の完成となるのだ。

 真霊水は、刀の鍛錬の時にも用いていた。

 ちなみにこれは、俺の霊力と水を霊薬と共に混ぜた代物である。

 摩利支天浄魔光剣は、この真霊水を鍛造から使い続ける事により、この刀自体が真紋の術具となるのである。

 というわけで俺は今、コーミズ村にあるエドガンさんの地下作業場にて、最後の研ぎ工程をしているところであった。

 ここまで結構日数を要した。

 2週間は経過しただろう。

 俺1人だったら、こんなに順調にいかなかったに違いない。

 リバスト様様である。

 

 話は変わるが、刃渡りは少しでも間合いを多くとれるよう、1メートルほどある長刀にしておいた。

 イメージ的には、佐々木小次郎が使っていたとされる物干し竿のような感じだろうか。

 ちょい長いが、扱えない事はないサイズである。

 ただ、ここまでの長さになると、背中で背負わないと移動が厳しい。

 なので、刀を抜きやすくするために、鞘の上の方に切り込みを入れ、少し細工をしておいた。

 なぜなら、普通の鞘だと、俺のリーチが足らないので、刀を抜く事ができなくなるからだ。

 ゲームやアニメでは、背中に剣を背負うスタイルをよく見かけるが、実際は普通の鞘だと、抜刀がほぼ不可能なのである。

 つまり、見た目はカッコいいが、実用には向かない帯刀スタイルなのであった。

 というわけで話を戻そう。

 

 俺が最後の研ぎをしていると、近くで腕を組みながら眺めているリバストが話しかけてきた。

 

「ジュライ殿……お主、その武具の製造法を一体誰から習ったのだ?」

「これは親父からだよ。俺等の一族は、古来より、一子相伝で奥義を伝承してるんでな。門外不出の秘奥義の1つってやつさ。だから、一族以外の者が見ている前で、こんな作業してるのが異例ではあるんだよ」

「ほう……という事は、我等が見ているのは不味いのではないか?」

 

 リバストはそう言って、付近にいるエドガンさんをチラッと見た。

 

「まぁ俺が住んでいた所ならな。でも、この世界なら別にいいよ。それに、この製法は赤の他人が見たところで、すぐに理解は出来ないだろうからな」

 

 スライムエドガンがプルプルと震える。

 

「確かに……私が見ていても何をしているのか全然わからない。ただ、あの剣の鍛錬法は少し勉強になったよ。マーニャとミネアは、意外と男を見る目があるのだなと感心したモノだ」

「また、その話ですか、エドガンさん……」

 

 そうなのである。

 この親父は、俺と娘をくっつけさせようとしてくるのだ。

 美人姉妹だし、悪い気はしないが、あからさま過ぎるのが面倒なところである。

 

「それだけ、私は君を見込んでるという事だ。まぁそれは今は置いておこう。それより……君がこの間言っていた件だが……一応調べてみたよ」

「で、どうでした? グレイスの古文書とやらに記述はありましたかね?」

 

 スライムエドガンはプルプルと小刻みに震えた。

 

「君が言っていた大魔王とやらの名前だが……一応、記述があった。といっても、最後の方に少しだけだがな。しかし、グレイスの民が地獄に落ちたのは、その大魔王ではなく、悪魔によってみたいだが……」

 

 この話を聞く限りだと、どうやらグレイスの古文書とは、ドラクエⅥにでてきたあの地域に関連するモノなのかもしれない。

 

「そうですか……ところで、そのグレイスの古文書ですが、エドガンさんは一体どこで手に入れられたのですか?」

「あの古文書は、西にある洞窟の研究所で見つけたのだよ。地下の洞窟湖に沈んでいたのだ……頑丈な金属の箱の中に入れられてな。古文書の他に、なぜか絨毯みたいなモノも一緒に入っていたが……。ま、何れにしろ、あの洞窟は謎が多い。まだまだ何かが隠されている気がするがな……」

「へぇ、あの洞窟で見つかったんですか。しかも、絨毯ねぇ……」

 

 非常に気になるアイテム名であった。

 まさかとは思うが、あの便利アイテムを想像してしまうところである。

 

「その絨毯は魔法の鍵があった研究室の床に敷いてあるよ。綺麗だったんで、とりあえず、使う事にしたのだ。欲しいなら好きにしてくれればいい」

「もう使ってるんスか。まぁいいですけど……」

 

 今度行った時、確認するとしよう。

 まぁそれはさておき、ドラクエⅣとⅥの地図を思い浮かべてみると、このキングレオとグレイス城の辺りはなんとなく近い位置関係だった気がする。

 煙のないところに火は立たないので、少し調べる余地はありそうだ。

 もしかすると、何かが出てくるかもしれない。

 

(フォルス達が来るのはまだ10日ほど先だから、ちょっと探検してみるか……ン?)

 

 と、その時であった。

 玄関の方から、何者かの声が聞こえてきたのである。

 

【ごめんください、ホイミンです】

 

 それを聞くや、スライムエドガンはピョンと飛び跳ね反応した。

 

「おお、来たか。ちょっと行ってくるよ、知り合いが来たんでね」

 

 そしてスライムエドガンは階段を飛び跳ね、玄関へと向かったのであった。

 

(ホイミン? もしかして、あのホイミンか……そういや、ゲームでもここにいたスライムは友達と言ってたような……もしそうなら、どうやって人間になったのか、訊いてみたいところだ。つか、なんか最近、ゲームにおけるNPCキャラとばかり遭遇するな……)

 

 などと思いつつ、この突然の来客に心踊る俺なのであった。

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