DQⅣ世界に、迷い込みて候   作:虚夢想

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Lv45 既知との遭遇

   [壱]

 

 

 デスピサロは眉間に皺を寄せ、かなり険しい表情でこちらを睨み付けていた。

 ロザリーはこの突然の展開に呆然としている。

 俺達の間に無言の時が過ぎてゆく。

 まず最初にデスピサロが口を開いた。

 

「その名前の間違え方……聞き覚えがあるぞ。貴様……以前、勇者の村を襲った時にいたジュライとかいう妙な魔法使いだな。チッ……またココに来るだろうと思っていたが、そのような姿で、ようやくお出ましか。小賢しい人間めッ!」

 

 それを聞き、俺は山奥の村でも同じように名前を間違えたのを思い出した。

 魔物どもを束ねるだけあって、デスピサロはなかなか記憶力が良いようだ。が、ここは惚けておこう。

 

「さあ、何の話かな? ピスタチオ君。それはそうと、なかなか笑わして貰ったよ。山奥の村であんなにイキってた自称魔族の王とやらが、まさか少女監禁マニアのロリコン性癖だったとはね」

「ろりこん? わけの分からぬ事を言いやがって! 貴様……そのような術を使って我等を誑かそうというつもりだろうが、そうはいかんぞ。出てこいッ! 卑怯者めッ!」

「え!? この白い鳥が喋っているの!?」

 

 ロザリーもようやく、事態が飲み込めたようだ。

 つーか、気付くのが遅い。

 案外、天然娘なのかもしれない。

 

「まぁまぁ、そう怒りなさんな。変態魔王さん。ちょっと世間話でもしないかい?」

「貴様ァァァ!」

 

 デスピサロは凄い形相で剣を抜き、斬りかかってきた。

 完全にブチ切れたみたいである。

 つーわけで、俺は式を羽ばたかせ、奴の斬撃をヒョイと避けた。

 その刹那、式が止まっていたバルコニーの手摺りを、奴の剣が稲妻のような速さで切り裂いた。

 そして俺はというと、式を部屋の中へと侵入させたのである。

 室内を見回すと、フロアの中央に天蓋付きベッドがあったので、俺はその最上部に式を着地させた。

 因みにだが、そのベッドの周囲には高級感漂うカーテンが付いてるので、なかなかブルジョワジーな感じであった。

 このベッドでロザリーとピサロは、随時、合体行為をしているのかもしれない。

 想像しただけでムカつくシチュエーションであった。

 おのれ……ロリコンの変態イケメン魔王め!

 まぁそれはさておき、デスピサロは血相を変えて、こちらにやってきた。

 ついでにロザリーも。

 

「本当に怒りっぽいねぇ。あまり感情的になりすぎると判断を誤るよ、ピスタチオ君。少し話がしたいだけなんだがなぁ。落ち着いて話さないかい? ピンサロ君。色々と訊きたい事があんだよね」

「黙れ! 小賢しい鳥め! さっきからフザケた事ばかり抜かしやがって! 俺の名はデスピサロだ! ならば、イオナズンで吹き飛ばしてくれるわ!」

 

 デスピサロは聞く耳持たずといった感じで、コチラに向かい掌を突き出した。

 どうやら、極大爆裂呪文を使うみたいである。

 さっきボロクソにこき下ろしたのも影響しているのだろう。

 癇癪起こして聞かん坊になったみたいだ。

 

(あらら……こんな狭いところでイオナズンかよ。不味いな……この式じゃ、多分、避けきれん。コイツのナルシーな行動にイライラしすぎて、ちょいとばかし言い過ぎたか……ン?)

 

 と、その時であった。

 なんと、ロザリーが両手を大きく広げ、俺達の間に入ってきたのだ。

 

「お待ちください! ピサロ様!」

「なんのマネだ、ロザリー……今は下がっていろッ!」

「退きません! 私もピサロ様にお話ししたい事があるのです」

「何……話したい事だと……」

 

 なんか知らんが意外な展開になってきた。

 今はロザリーの作った流れに便乗して、奴を会話の席に着かすとしよう。

 

「そうだよ~、ピンサロ君とやら。俺も言い過ぎたよ~。まだムカついてるから、本当は謝りたくないけど、ちょっとだけ謝るよ。メンゴメンゴ。だから、まずはロザリーちゃんの話を聞こうよ~」

「何を抜かすッ! 貴様が言うな! コソコソと隠れ、我等を偵察する腰抜けの貴様に、そんな事を言われる筋合いなどないわッ! 卑怯な人間めッ! 本体はどこにいるッ!」

 

 と、そこで、ロザリーは俺にキッと鋭い視線を向けたのである。

 ちょっと怒ってる感じであった。

 

「貴方! どこのドナタか知りませんが、今はややこしくなるので黙っていてください!」

「え? 俺? お、おう……わかったよ。黙ってるから、続けて……」

 

 ゲームでは悲壮感漂うエルフっ娘だったが、意外と気の強い部分も持ち合わせているのかもしれない。

 それはさておき、仕切り直しとばかりに、ロザリーは穏やかに問い掛けた。

 

「ピサロ様……先程の話ですが……本当なのですか?」

「フン、人間を滅ぼすという話か?」

「はい……」

「本当だ」

「なぜ……そのようなことを」

「ロザリー……お前は知る必要が無いことだ」

「そんな……」

 

 2人は無言になった。

 重苦しい空気が辺りに漂い始める。

 話が進まないので、空気を読まずにログインしてやった。

 

「じゃあ、俺もシツモーン! 何で滅ぼすんだよぉ、ピスタチオ君? 誰かからそう命令されたん?」

「貴様は黙っていろ!」

「別にいいじゃんか。減るもんじゃねぇんだし、教えてくれよ。俺の想像だと、魔界の使者かなにかに、要らん事を吹き込まれたんだろうと考えてんだけど」

「な!? 貴様……」

 

 デスピサロは眉間に皺を寄せ、こちらを睨みつけてきた。

 直情型なので、顔に出るみたいだ。

 ある意味、わかりやすい奴である。ウケるw

 それはさておき、どうやらビンゴなのかもしれない。

 

「え? マカイの使者?」

 

 ロザリーはそう言って首を傾げていた。

 するとデスピサロは、苦虫を噛み潰したような表情でこちらを指差し、声を荒げたのである。

 

「誰が貴様なんぞに教えるか! コソコソ探る小賢しい人間風情が!」

 

 あんまり触れてほしくない話なのだろう。

 ならば仕方がない。

 遠慮なく触れてやるとしよう。

 

「へぇ……その反応だと、どうやら、当たらずとも遠からずって感じのようだな。なんとなく状況がわかってきたよ。アンタを(そそのか)したのが何者なのか知らんが、1つだけ忠告しておいてやるよ」

「忠告だと……」

「アンタは利用されてるだけだ。黒幕はアンタより遥かに狡猾だからな。引き返すなら、今な気がするがね」

「何を言うかと思えば……下らん! 俺は自分の信念で動いている! 黒幕なんぞおらぬわ!」

「でも……アンタって魔界の王とやらの血を引いてんだろ?」

 

 デスピサロは眉を吊り上げ、こちらを睨んだ。

 

「貴様……どこでそれを知った?」

「風の噂ってやつさ」

「フン……まぁいい。魔界で覇権争い中である俺の父が黒幕だとでも言うつもりか? 下らぬ! 今のアイツにそんな余裕などはないわ!」

「はぁ? 魔界で覇権争い?」

「チッ……お前には関係ない話だ。忘れろ!」

 

 デスピサロは罰が悪そうに、少し目を泳がせていた。

 ちょいとばかり口が滑ったようだ。

 まぁそれはさておき、ここでまた新たな情報が入ってきた。

 なんか知らんが、魔界は魔界で、あまり纏まってないのかもしれない。

 

(しかし……ゲームにない話がポンポンと出てくるな。というか、コイツ……結構口が軽くね? おまけに直情型だし、こりゃ都合良くエビルプリーストに洗脳されるワケだわ……)

 

 などと思っていると、ロザリーの声が聞こえてきた。

 

「ピサロ様……今の話は本当なのですか?」

「フン……本当だ」

「マカイとは一体……」

「ロザリー……お前は知らぬ方が身の為だ」

 

 さっきとほぼ同じやりとりであった。

 つーわけで、俺もさっきと同様、ビッグウェーブに乗っておいた。

 

「あ~あ、見てらんねぇな。そんな事言わずに、教えてあげればいいじゃんか。お前、女心ってもんがわかってねぇなぁ。そんなだから、変な電波を飛ばされんだよ」

 

 デスピサロは頭に来たのか、またイキリ返してきた。

 

「だァァかァァらァァ! 貴様は黙っていろと言ってるだろがッ! さっきから貴様のせいでややこしくなるんだろうがッ! コソコソ隠れてかき回しやがって! 出てこい! この卑しい人間がァァァァ!」

 

 と、次の瞬間、デスピサロはこちらに向かい、持っている剣を思いっきり投げつけてきたのであった。

 俺は式を羽ばたかせ、それを回避した。

 剣は天井に衝突し、カランカランと床に転がった。

 どうやらマジ切れしたようである。

 

「どこにいるッ! 出てこいッ! ぶっ殺してやるッ!」

 

 仕方ない、少し相手してやるとしよう。

 つーわけで、俺は奴に言ってやった。

 

「しゃあねぇなぁ……じゃあ、ちょっと待ってろ」

「何……」

 

 というわけで、俺は式を一旦屋上へと戻した。

 そして式の術を解いて呪符を回収した後、俺は孔雀破魔秘紋法という術を行使したのである。

 俺は霊力を練り、術を発動させる幾つかの印契を組みながらマントラを唱えた。

 その直後、俺の全身から孔雀の羽のような青白い霊気のオーラが発せられたのだ。が、現実世界の時よりも大きなオーラだったので、俺は少し驚いたのである。

 他の呪術もそうだが、やはりこの世界では、いつもより効果が強く出るみたいである。

 孔雀破魔秘紋法……物理的にも霊的にも護身の力を高める奥義の1つである。

 ドラクエ的に言うなら、真紋の一族版アストロンといった感じだろうか。

 で、なぜこの術を選んだのかだが、防御一点張り効果の副産物として、緩やかではあるが、多少の飛行が可能だからである。

 ただ、1つ難点があり、この術を行使している間は、常に最終印契を組み続けなければいけないので、これを行使しながら他の術は使えないという事であった。

 

 話は変わるが、この孔雀破魔秘紋法は密教の孔雀明王咒経とは関係がない。

 これは真紋の一族が伝承する魔の力を退ける独自の咒法である。

 恐らく、摩利支天浄魔光剣と同様、術を行使した後の感じが孔雀のようだったから、ご先祖様はこの名前を付けたのだろう。

 ついでに言うと、山奥の村で襲撃された時、これを使ってトンズラしようと思っていたのであった。

 まぁ早い話が、戦略的撤退時によく使う術なのである。

 つーわけで、話を戻そう。

 

 孔雀破魔秘紋法を発動した俺は、数メートル下にあるバルコニーへと静かにフワリと舞い降りた。

 すると、デスピサロとロザリーは目を見開き、驚きの声を上げたのである。

 

【な!? いつの間に! おのれぇ……やはり貴様だったのか! どこから来た!】

【だ、誰ですか、貴方は……】

 

 俺はとりあえず、術を行使したまま紳士的に返事しておいた。

 

「やぁ久しぶりだね、いつぞやは世話になったよ。元気にしていたかい、ピスタチオ君」

 

 デスピサロは血走った目を俺に向け、腕を突き出すと、すぐさま行動に出てきた。

 

【丁度いい! 貴様は始末せねばならないと思っていたところだ! 死ねッ! イオナズン!】

 

 その直後、奴の掌から光り輝く魔力の塊が放出され、俺の眼前で大爆発が巻き起こったのであった。

 建物全体が震撼するかのように、振動が起きる。

 また、爆風によって、室内の土埃やベッドのカーテンも一気に舞い上がった。

 だが、俺は無傷であった。

 俺の周囲は濃い霊気の放出によって空間が歪んでいるので、術を行使している間は、ほぼほぼ無効化できるのである。

 ちょっとやそっとの事では、この孔雀破魔秘紋法の壁は突破出来ないのだ。

 そしてデスピサロはというと、そんな俺を見て、苦虫を噛み潰したような表情になっていたのであった。

 

「チッ……全く、効果がないだと……おのれぇ、ならば!」

 

 そう言うや否や、デスピサロは床に転がっている剣へと駆けた。

 俺はその隙を見逃さず、次の手に出た。

 孔雀破魔秘紋法を解き、俺はすぐさま縮地のマントラを唱える。

 そして、呆然としているロザリーの前に素早く移動すると、俺はそこで彼女を抱き寄せたのである。

 

「キャッ……な、何をするのです!」

 

 ロザリーは突然だったのでビックリしていたが、ここは我慢してもらおう。

 それと、抱き寄せてわかった事だが、ロザリーちゃんからラベンダーのような良い香りがした。

 身体は華奢な感じだが、肌も白く美しい。目もクリッとしてて可愛かった。清純系の美少女という言葉が相応しい女性である。

 そしてデスピサロはというと、そこで剣を手に取り、俺に向かって正眼に構えをとったところなのであった。

 デスピサロは俺達を見るなり、眉と口を吊り上げ、凄い形相で睨んできた。

 

「貴様ァァァ! その薄汚い手でロザリーに触れるな! ロザリーから離れろ!」

「まぁまぁ、そう怒らないでくれよ。俺はアンタと少し話がしたいんだ。ロザリーちゃんに危害は加えないよ。ただ抱き寄せただけさ」

「話だと……貴様と話す事などないわッ!」

 

 埒が明かないと思ったので、俺はロザリーちゃんに耳打ちした。

 

「君はロザリーちゃんと言うんだったっけ? 君からも言ってくれないかなぁ。俺と落ち着いて話をしようと……」

 

 ロザリーはぎこちなく俺に振り向いた。

 その表情はキョトンとしており、心ここにあらずといった感じであった。

 多分、この展開についていけないんだろう。

 無理もないところだ。

 

「え……は、話?」 

「奴の暴走を止めたいんだろ?」

 

 するとロザリーはそこで真顔になり、コクリと頷いたのである。

 

「わかりました……やってみます」――

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