DQⅣ世界に、迷い込みて候   作:虚夢想

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Lv48 剣闘に検討を重ねてゆきます

   [壱]

 

 

 俺の毒舌を聞き、この場はギスギスとした空気が漂いだした。

 チャオルと呼ばれていた少年も表情を強張らせている。

 エドガンさんとリバストは静かに成り行きを見守ってるところだ。

 メダル王は前屈みになって俺を睨んでいる。

 さて、どう出てくるかな。

 

「お前……何者だ? 親父は今、秘境のロザリーヒルにいる筈。あんな辺鄙な所に、普通の旅人は立ち寄らんからな。魔物連れてる所を見ると、ただの旅人じゃねぇ……デスピサロの手先か。親父に何をした……」

「何もしてねぇよ。それに、デスピサロとは何の関係もない。確かに、アンタの言う通り、ロザリーヒルでラモンさんに会ったが、そこでアンタの事や、エルの民の話を聞いて、興味からここに来ただけさ」

「興味で来ただと……ふざけた事を言いやがって。ここはな、海流の関係で普通の手段じゃ来れねぇ島なんだよ。優秀な船乗りがいねぇとな。おい、チャオル、船は見たか?」

 

 メダル王はそこでチラッと少年を見た。

 少年は首を左右に振る。

 

「いいえ、オズボーン様。上から見てましたが、周囲の海に船は停泊してませんでした。私が周囲の監視をしていたら、いつの間にかこの方々がこちらに向かっていたのです。恐らく、向こうの森の中から来たのだと思いますが……」

 

 どうやらこの塔の上で常時、周囲の監視をしていたようだ。

 だが魔法の絨毯には気づいてないようである。

 俺もその辺を考慮して、この砦には絨毯で近づかなかったからだが。

 

「ほう……船がないのか。しかも、森ねぇ。それはますます怪しいな。お前等、どうやってこの島に来た? 返答次第では、ただでは帰さんぞ……」

「それは言えないなぁ」

「お前……今、親父に会ってエルの民の事を聞いたと言ったな。どうやってこの里の事を聞き出した。親父が旅人に、エルの里の話なんぞするわけがない。みだりに口にしてはならない掟だからな」

「へぇ、そうなのかい。だが、ラモンさんから直接聞いた事に嘘偽りはないよ」

 

 メダル王は俺を睨んだまま、少年に向かって手を伸ばした。

 

「おい、チャオル……キセキをよこせ!」

「は、はい」

 

 少年は慌てて、玉座の後ろへ行き、そこから一振りの剣を取り、メダル王に手渡した。

 それは白く淡いオーラを纏う西洋風の美しい長剣であった。

 神秘的な模様が彫られた黄金の刀身で、霊的な力が宿っているのが感じられる。

 恐らく、魔法剣の類の業物だろう。

 するとメダル王は立ち上がり、俺に向かってその剣を正眼に構えたのである。

 

「信じられるか! お前ら、さては魔物だな! ぶっ殺してやる!」

 

 と、次の瞬間!

 メダル王は俺に向かい、一気に間合いを詰めてきたのだ。

 それは凄まじい速さの踏み込みであった。

 

「え?」

「でやぁ!」

 

 メダル王は俺を一刀両断するかの如く、剣を振り下ろす。

 

(チッ! これはまずい、下手な避け方をするとやられる。剣を抜く暇はない。ならば……)

 

 俺は剣の軌道を見切り、半身になると、逆にメダル王へと踏み込んだ。

 その刹那、メダル王の振るう刃は凄まじい速さで、俺の真横を通過する。

 そして間合いを詰めた俺は、メダル王の胸に向かい、掌底を打ち込んだのである。

 

「なッ!? グッ!」

 

 だがしかし、メダル王はそこで何とか後ろへ飛び、衝撃を逃がしたのだ。

 お陰で完全には、ヒットしなかった。

 半分くらいは力が削がれた感じである。

 コイツ……相当できるようだ。

 俺は少し下がり、メダル王と間合いを取った。

 メダル王も警戒したのか、後ろへと下がる。

 俺達は暫しの間、無言で対峙した。

 程なくしてメダル王は、掌底を受けた胸をさすりながら、忌々しそうに口を開いたのだった。

 

「俺の一撃を躱して、更に踏み込んでくるとは。チッ……厄介な魔物め!」

 

 盛大に勘違い中のようだ。

 恐らく、俺達がラモンさんに何かしたと思ってんだろう。

 誤解を解かねば。

 

「心配しなくても、ただの旅人だよ。それと言っておくが、魔物でもない」

「信じられると思うか、魔物を連れてるくせに!」

 

 メダル王はそう言ってエドガンさんをチラッと見た。

 まぁ確かに、信用はしてもらえそうにないパーティー構成である。

 とはいえ、こんな納得できん喧嘩はしたくない。

 どうするか悩むところである。

 よし! 決めた!

 俺も疲れたし、ここは疲れ知らずの彼にバトンを渡すとしよう。

 

「なかなかやるねぇ、オズボーンさん。仕方ない……ここは……リバストさん、出番ですよ!」

 

 俺はすぐさまリバストの背後に回り、メダル王へと押しやった。

 

「なッ!? ちょっと待て、なんで私が!」

 

 リバストは心外だとばかりに俺を見る。

 

「勇者リバストの力を見せる時ですよ、さぁ出番です! このわからず屋に教えてあげてください。大丈夫、貴方は強いです。貴方なら勝てると思います。でも油断は禁物ですよ」

「だから、なんで私が戦わねばならんのだ!」

「貴方はエルの民と、一番関係が深いからですよ。だからです。というわけで、レッツゴー! どりゃぁ!」

 

 俺は問答無用で、リバストを突き飛ばした。

 リバストはヨロけつつ、メダル王の前へと踊り出る。

 許せ、勇者リバスト。

 

「クッ、なんという強引な男だ……仕方ない。これもエルの民と関わった運命か……」

「なんだなんだ、今度はそっちの野郎か!」

 

 メダル王はリバストを睨みつける。

 リバストは渋々ではあるが、まどろみの剣を正眼に構えた。

 メダル王も構えをとる。

 2人の間に緊張が走る。

 少年は玉座の陰で怯えながら、成り行きを見守っていた。

 俺も少しワクワクしてきたところだ。観客として。

 そんな中、エドガンさんがこちらにやって来た。

 

「ジュライ殿、上手いこと逃げたな」

 

 エドガンさんはジトーとした冷ややかな流し目を送ってきた。

 

「逃げたとは心外ですね。俺はリバストさんが適任と思っただけですよ」

「モノは言いようだな。だが、これはこれで楽しみではある」

 

 などと話をしていると、メダル王が間合いを詰め、リバストに斬りかかった。

 

「まぁいい、ならお前からだ!」

「フン」

 

 リバストはそれを素早く剣で受ける。

 カキィンという甲高い金属音とともに、2人は鍔迫り合いになった。

 暫しその状態が続いたが、埒があかないと思ったのか、メダル王は後ろへ下がり、今度は下段から素早い斬撃を繰り出したのである。

 リバストはそれを剣で受け流す。そして、体を入れ替え、上段からまどろみの剣を振り下ろした。

 するとメダル王は即座に反応し、斬撃を剣で受け止めたのである。

 文章にすると単純に見えるが、それは一瞬の出来事であった。

 両者共に相当な武芸者である。

 またもや、鍔迫り合いが続く。

 そして、2人は互いに間合いを取り、また相手の出方を窺うのである。

 一分の隙も無い、まごうことなき剣豪達の戦いであった。

 

「ほぉ……やるなぁ、メダル王。リバストさんに引けを取らない剣裁きだ。優秀だからエルの民の長にしたと、ラモンさんも言ってたもんな」

「うむ、あの男はかなりの剣士だ。キングレオのグレン将軍より強いんじゃないか」

 

 などと俺達が会話していると、メダル王が慌ててリバストに掌を突き出した。

 

「ちょ、ちょっと待て!」

 

 そして、俺達の方へと視線を向けたのである。

 

「おい、お前……今、何て言った!」

「今? 何のことだ?」

「今、言ってただろ。親父が俺をエルの民の長にしたと! どういう事だよ!」

 

 なぜか知らないが、メダル王は目を大きくしながら驚いていた。

 正直、わけがわからん反応である。

 

「どういう事って……そのままの意味だよ。アンタ、ラモンさんの跡を継いで、エルの民の長になったんだろ? ラモンさんはそう言ってたよ。ですよね、エドガンさん?」

「ああ、確かにラモン殿はそう言っておったな」

「ちょっと待て、そんな話は初耳だ! つうか、なんで俺が長なんだよ。俺は親父の代理でここにいるだけだ! ふざけんな!」

「ふざけてないよ。確かにそう言ってた。なぁリバストさんも聞いたよな?」

 

 俺はそこでリバストにも証言を求めた。

 リバストは頷く。

 

「ああ、私も聞いていた。ラモン殿は確かにそう言っていたぞ。ところで、どうするのだ、メダル王とやら? まだ続けるのか?」

「ラモン殿って……なんなんだよ、お前ら……デスピサロが放った魔物じゃねぇのかよ」

 

 メダル王は呆然としながら、緊張の糸が切れたように、ゆっくりと剣を下ろした。

 ようやく戦意が失せてくれたようだ。

 面倒な野郎である。

 

「だから、さっきからそう言ってんだろ! いきなり喧嘩売ってきやがって!」

「俺はてっきり、お前らが親父を手にかけて、ここに来たのかと思ったよ。すまん」

「オズボーンさんよ、まずは人の話を聞こうや。いきなり殺されかけるとは思わんかったわ」

「悪い、悪い。俺もこんなしがない辺鄙な島にいるもんだから、世の中に疎くてさ。まぁ許してくれや。すまねぇ」

 

 などと、メダル王は軽い口調で謝ってきた。

 ぶん殴ってやりたい衝動にかられたが、今は我慢するとしよう。俺って大人やわ。

 まぁそれはさておき、メダル王は仕切り直しとばかりに玉座に腰かけ、偉そうにふんぞり返った。

 少年もぎこちない動きで、玉座の脇に控える。

 

「ところで、アンタ等、一体何者だ? 俺と剣を交えられるくらいだから、相当な剣士だろ? 違うか? おっとそういや、自己紹介しとくか。俺はオズボーン・エル・ゲント・ロンメダールで、コッチの小さいのがチャオルだ。で、アンタ等はどういう素性の旅人なんだ?」

 

 メダル王は今度は打って変わり、なれなれしく話しかけてきた。

 ラモンさんが変わった息子とは言ってたが、まさかここまで適当な奴だったとは。

 ある意味、予想外の男である。 

 

「ったく、なんなんだ、アンタのその変わり身の早さは……豹変しすぎやろ。まぁいい、俺達は――」

 

 とりあえず、ここまで来た経緯を簡単に纏めて、俺は話しておいた。

 といってもロザリーヒルでの出来事だけだが。

 そして、リバストの正体もそこで打ち明け、俺達はメダル王の警戒を解く事に成功したのである。

 因みにだが、リバストの正体を知ってもメダル王は大して驚かなかったのは意外だった。チャオル君はかなり驚いてたが……。 

 

「――、という事がロザリーヒルであったんだよ。だからここに来ただけだ。ただの興味ってやつさ」

「ほぉほぉ、そういう事だったのか。どおりで只者じゃねぇ筈だ。しかも、数百年前に先祖と共に戦ったアネイルの英雄も一緒とはねぇ。というか、俺は亡霊と戦ってたのかよ。おまけに、すげぇ強いしよ」

 

 オズボーンさんは感心したようにリバストを見ていた。

 まぁそんなわけでリバストは今、フードを捲り、自分の姿を晒しているところだ。

 

「さて、オズボーンさん、俺達も経緯を話したんだ。アンタの事を少し訊かせてもらっていいか?」

「ん? そうだな。何を聞きたい?」

「なんでメダル王なんて名乗ってんだい? ラモンさんから、夢にメダル王が出てきたとかなんとかは聞いたけど、それが関係してんのか?」

 

 するとその直後、オズボーンさんは真顔になり、固まったのであった。

 この態度を見る限り、どうやら核心に触れたようだ。

 

「ゆ、夢……いや、そういえば、そんな事を言ったような……言わなかったような」

 

 そう答えるオズボーンさんは、シドロモドロになって目が泳いでいた。

 なんか都合の悪い事があるのだろう。

 もしかすると、コイツに憑いている亡霊が関係してるのかもしれない。

 とりあえず、訊いてみるか。

 

「アンタの背後に妙な亡霊が見えるんだが、そいつが関係してるのか?」

 

 俺はそこで亡霊を指さした。

 するとここにいる者達はポカンと口を開け、首を傾げたのだった。

 オズボーンさんを除いて。

 

「ジュライ殿……何を言っておるのだ。私には何も見えぬが……」

「うむ、私もだ」

「僕も見えないですけど……」

 

 リバストとエドガンさん、それとチャオル君は首を傾げながら、亡霊がいる辺りを見ていた。

 どうやら、彼等には見えてないようだ。

 というか、リバストも見えんのかい。

 だがオズボーンさんだけは落ち着かない様子で、亡霊へと振り返っていたのである。

 これはもう、見えているとみてよさそうな反応だ。

 

「ぼ、亡霊だって……そんなのどこにもいねぇんだけどな。み、見間違いじゃねぇのか」

 

 しらを切っている感じであった。

 これは藪蛇だったかもしれん。

 触れないでおくとしよう。

 

「いや、オズボーンさんが知らないのなら別にいいよ。あんま害はなさそうだし」

「え? ア、アンタも変な事を言う奴だな。亡霊が見えるなんてよ。じゃあ聞くけど……どんな亡霊が見えるんだよ」

 

 オズボーンさんは恐る恐る訊いてくる。

 俺は正直に答えておいた。

 

「どんなか……そうだな、王様みたいな恰好をした威厳ある爺さんの亡霊だよ」

 

 するとその直後であった。

 メダル王はギョッと目を大きくし、勢いよく玉座から立ち上がったのである。

 

「お、おお、王様みたいな爺さんだと……ななな、なにを……言ってんだか。へ、変な事を言う旅人だぜ。まったくもう……」

 

 メダル王はそう言ってゴクリと生唾を飲み込んだ。

 明らかに動揺している感じであった。

 ちょいと踏み込みすぎたようだ。

 明るく誤魔化しとこう。

 

「あははは、なぁんてな。冗談だよ、冗談」

「え? な、なんだ冗談か。脅かすなよ……心臓に悪いぜ、ったく……」

「そうそう、冗談だよ。今んところはな」

「へ、今のところ?」

 

 オズボーンさんは、鳩が豆鉄砲食らったような中途半端な顔になっていた。

 ついつい余計な事を言っちまったようだ。反省。

 

「ああ、なんでもないよ。気にするな」

「そ、そうか。それはともかく、アンタ等、今夜はどうすんだ? もう外は夜だが」

 

 オズボーンさんは開かれた窓を指さした。

 確かに、外はもう真っ暗であった。

 完全に夜である。

 

「今日はそうだな……この里で休ませてもらうとするか。そういや、エルの民の里には宿屋ってあるのかい?」

「ああ、宿屋の真似事してる奴ならいるぞ。入り口の近くにある建物だ」

「へぇ、じゃあ、今夜はそこで休ませてもらおうかな。いいかい?」

「ああ、構わんよ。チャオル、案内してやってくれ」

「はい、オズボーン様」――

 

 

   [弐]

 

 

 自称メダル王との謁見を終えた俺達は、チャオル君の案内で宿屋へとやってきた。

 宿屋は入り口の近くにある平屋の四角い石造りの建物であった。

 ベッドの絵が書かれた看板がある以外は、至って普通の家屋である。

 

「ジュライ様、こちらがエルの里の宿屋です。そして、僕の家でもあるんですけどね。といっても、泊まりに来る旅人なんて、ここ何年もいませんが。さぁどうぞ、こちらです」

 

 チャオル君はそう言うと、宿屋の扉を開き、俺達を中へと案内してくれた。

 どうやら、この子の実家のようだ。

 というわけで中に入ったわけだが、宿屋の中はシンプルの一言であった。

 入ってすぐに無人の木製カウンターがあり、その先には、20畳くらいの宿泊スペースが広がるという感じだ。

 宿泊スペースには古びた木製のベッドが幾つかあり、病院の大部屋のように並んでいた。

 またそこには、戦士風の恰好をした若い男が1人だけベッドに腰掛けており、入ってきた俺達をじっと見ているのである。

 まぁそんな感じの宿だ。

 それはさておき、チャオル君はカウンターの奥に向かい、大きな声で呼びかけた。

 

「父さん! お客さんだよ!」

 

 程なくして、青い布の服を着た髭面のオッサンがこちらへとやってきた。

 やや小太りのオッサンで、頭にはトルネコのような帽子を被っている。

 そのせいか、どことなくトルネコっぽい見た目のオッサンであった。

 

「ん? 誰だ? って、チャオルじゃないか。もう今日の見張りは終了か?」

「いや、違うよ。また戻らなきゃならない。帰ってきたのは、この方々を宿に泊めてほしいからだよ」

 

 宿の主人は俺達に視線を向ける。

 その際、エドガンさんを見るなり目を大きくしたが、すぐに営業スマイルに戻った。

 さすがは商売人である。 

 

「おお、お客さんでしたか。新しい旅人を泊めるのは久しぶりですよ。さてそれじゃあ、まずは挨拶といこうかね。ようこそ、旅の宿へ。お泊りは、1人10ゴールドです。お客様は30ゴールドになりますが、よろしいですかね?」

 

 俺は頷くと、代金をカウンターに置いた。

 

「30ゴールドね。ここに置いておきますよ」

「はい、確かに。ありがとうございます。では、お泊りはそちらになりますので、ゆっくりとお休みになってください」

 

 宿の主人はそう言って、宿泊スペースを指さした。

 するとそこでベッドに腰かけていた男が立ち上がり、こちらにやってきたのである。

 鋼の鎧に鉄の盾、それから破邪の剣といった量産型武具を装備していた。

 よく見かける旅の戦士という出で立ちの男だ。

 

「見ない顔だな……旅の者か? しかも、スライムを連れてるなんて珍しい」

「ええ、そうですが……貴方は?」

 

 チャオル君がこちらにやって来た。

 

「ああ、ジュライさん、紹介しますね。この方は旅の戦士で、アルゴさんです」

「へぇ、旅の方なんですか。ン? でも、3年ほどこの島に誰も来てないって、さっきチャオル君は言ってなかった?」

「ええ、そうですよ。この方は3年前、この島に来た旅人ですから」

「は? 3年前?」

 

 その話を聞くや、アルゴという男は恥ずかしそうに、頭をポリポリとかいたのだった。

 

「ああ、その少年の言う通りだ。恥ずかしい話だが、俺は3年前、船が難破して命からがらここに辿り着いた旅の者さ」

「そうなんですよ。で、行く当てもないというので、うちの宿でしばらく居候してもらってるんです。時々、外の魔物退治とかしてもらったりして」

「へぇ、船が難破して居候ですか……それはお気の毒に。大変でしたね」

「まぁな。ところで、アンタ達は何しにここに来たんだ?」

「いや、特に理由はないですよ。成り行きでここに来ただけですから」

「そうか……俺は天空の鎧を探しにこの辺りに来たんだよ。この海の向こうにある岬の洞窟が怪しいと思っているんだが、荒波と魔物に船をやられてね。この有り様さ」

 

 アルゴという男はそう言って、残念そうに窓の外へ目を向けたのである。

 なんとなく既視感のある内容だった。

 もしかすると、こういうキャラがゲームにもいたのかもしれない。

 

「まだそんなことを言ってるんですか、アルゴさん。天空の鎧なんてあるわけないですよ。そんな話、聞いたことないですもん」

「そうかなぁ……俺に情報くれた者の話だと、天空の鎧はこの辺りにある可能性が高いと言ってたんだがね。まぁ絶対にとは言い切れんが……」

 

 天空の鎧の情報か。

 気になるので、情報の出所を訊いてみるとしよう。

 

「へぇ、そんな情報出回ってるんですね。因みに、誰から聞いたんです?」

「俺は一応、バトランドの兵士なんだが、王宮に出入りしている占い師から、天空の鎧がここにあると聞いてな。だから王の命令で捜索に来たんだよ」

 

 どうやら、バトランドの兵士のようだ。

 ライアンの事を知ってるかもしれない。が、今はそれよりも、占い師というのが引っかかるところである。

 

(ミネア……なわけないか。あの姉妹はその頃、モンバーバラにいただろうし……)

 

 探りを入れてみよう。 

 

「へぇ、バトランドの兵士だったんですね」

「ああ。だが、こんな荒々しい海とは思わなかった。占い師の女も、今はその時ではないからやめておけと言ってたんだ。だが、凶暴な魔物が増えていたから、王様も気が気じゃなくてね。それで捜索することになったわけさ」

「それはまた大変な任務を受けたんですね。ところで、その占い師ですが……何者ですか?」

「さぁな。何者と言われると俺もよくわからん。王が言うには、旅の夢占い師だそうだ。なんでもバトランド王曰く、すごくよく当たる占い師らしい。それと、長い金髪の美しい女だったのだけは憶えているよ」

 

 髪の色からすると、ミネアではなさそうだ。

 そもそも、ミネアは夢占い師というジョブじゃなかった気がするし。

 それはともかく、夢占い師なんてドラクエⅣにいただろうか?

 Ⅵには出てきた気がするが……まぁいい、今は考えてもわからんだろう。

 

「美しい金髪の女で、旅の夢占い師ですか……気になりますね」――

 

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