DQⅣ世界に、迷い込みて候   作:虚夢想

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Lv50 導かれし者達、再び

 

   [壱]

 

 

 ポツポツと雨が降り始める中、魔法の絨毯で船に近づくにつれ、フォルス達の姿が見えてきた。

 甲板にはフォルスとシンシア、マーニャとミネアの姿があった。

 他にも船乗り達の姿がある。

 だが、フォルス達は敵と思っているのか、身構えていたのだ。

 とはいえ、ある程度近づくとフォルス達も気づいたようで、戦闘態勢を解いてくれた。

 そして、俺達に向かって両手を振り、大きな声で呼びかけてきたのである。

 

「ジュライさぁぁん!」

「本当にジュライさんだ!」

「よぉフォルスにシンシア。元気にしてたか」

 

 続いてマーニャとミネアがこちらに寄って来た。

 

「ジュライさん、なんですか、その乗り物は!」

「やだ、凄い乗り物じゃない。って……おとう……じゃなかった、スライムもいるし」

 

 エドガンさんはぴょんと飛び跳ねた。

 スライム転生の件を口外するなと、エドガンさんは姉妹に言ってあるので、マーニャも言葉を選んだようだ。

 進化の秘宝に通じる案件なので、それもやむ無しだろう。

 

「マーニャとミネアも元気そうだな。これは旅先で手に入れた乗り物さ。つーわけで、ちょっと雨宿りさせてくれよ、フォルス」

「いいですよ、どうぞどうぞ」

「じゃあ、甲板借りるよ」

 

 俺は魔法の絨毯をフォルス達の船に着艦させた。

 その際、船のクルー達も作業の手を休め、こちらをガン見していた。

 恐らく、この魔法の絨毯に驚いてるのだろう。

 俺達の方を指差し、「おい、アレ!」などと言ってる船乗りもいたからだ。

 もしかすると、エドガンさんを見て驚いてるだけの可能性もあるが。

 まぁそれはさておき、俺はそこで魔法の絨毯を丸め、フォルス達に向き直った。

 

「いやぁ、雨が降ってきてさ。ちょうどよかったよ。ところで他の皆は?」

「他の方々は下の船室にいますよ。呼んできましょうか?」

「いや、いいよ。雨もポツポツ降ってきてるし」

 

 と、そこで、ミネアとマーニャが俺の前に来た。

 

「見違えました、ジュライさん。サランの町で別れた時と全然雰囲気が違うから」

「そうよ、更にカッコよさが増したというか。服や装備品も全然違うもんね。なんか凄腕の剣士に見えるわよ」

 

 今の俺は白く長い陣羽織みたいな衣服と、その下に忍者のような濃紺の装束を着ているので、サランの時とはかなり雰囲気も違うだろう。

 背中の見慣れない太刀も相まって、微妙に佐々木小次郎風ファッションとなっているからだ。

 

「それと新しいお仲間もおられるのですね。ス、スライムもいますし、どういった方々ですか?」

 

 ミネアはエドガンさんをチラッと見た後、リバストに目を向けた。

 お父さんと言いたいところだが、我慢してるのだろう。

 俺も姉妹の意を汲んで答えるとしよう。

 

「ああ、この剣士はリバストだよ。さる錬金術師のお陰で現世に召喚できたのさ。で、コッチは旅先で仲間になった、喋るスライムのエドっちだよ」

「エ、エドっち?」

 

 エドガンさんは目を大きくしながら俺を見た。

 咄嗟の俺のアドリブに驚いたのだろう。

 

「スライムはともかく、その方はリバストさんなのですか!」

「ジュライさん、どうやってリバストさんを仲間にしたの。あの人……幽霊だったような」

 

 フォルスとシンシアは若干、引き気味に驚いていた。

 まぁ元はというか今もだが、亡霊だし、仕方のないところだ。

 

「うそ……リバストさんなの。それと、エドっちって……プッ」

 

 マーニャは少し吹き出し気味であった。

 ゆるキャラ風にしたので、ウケは良さそうだ。 

 

「そうなのですか。でも、リバストさんと旅しているとは思いませんでした。頼もしい方々と旅されてたのですね。そして……その絨毯も気になります。どういった物なのですか?」

 

 ミネアはさすがに、冷静で知的な受け答えである。

 

「これは魔法の絨毯というらしい。エドガンさんの研究所で見つけた物さ。細かい事はまた後で教えるよ」

「え、お父さんの研究所に!? こんな物があったのですか?」

「それがあったんだよ」

「でも凄い乗り物ですね。空を飛べますし。いいなぁ」

 

 ファルスは羨ましそうに絨毯を見ていた。

 

「だろ。ほんとうに便利なんだよ、これが……ン?」

 

 俺はそこでフォルスの頭に目が止まった。

 なぜなら、見慣れない兜を被っていたからである。

 それは頭頂部も僅かに覆う、金色のサークレット風の兜で、額の部分には青く丸い宝石がはめ込まれていた。

 その宝石からはただならぬ霊的気配を感じられる。

 また、左右には魚のヒレを思わせる造形の物があり、普通の兜と違い、一風変わった感じになっているのだ。が、この造形は見覚えのある物であった。

 ゲームのパッケージに描かれていた主人公の兜と、そっくりだったからである。

 もしかすると、あの装備を手に入れたのかもしれない。

 

「おや……フォルス。変わった兜被ってるじゃないか。もしかして、それ……」

 

 するとフォルスは、ようやく気づいてくれましたか、とばかりにニコリと微笑んだ。

 

「気付きましたね、ジュライさん。そうです。僕達、スタンシアラという国に行って、この天空の兜を手に入れたんですよ。凄い兜ですよ。魔物を寄せ付けない強さを感じるといいますか。とにかく、凄いです」

 

 フォルスは饒舌になり、嬉しそうにそう答えた。

 どうやら、スタンシアライベントを無事に完了してきたようだ。

 

「へぇ、それが天空の兜なのか……なるほどね。でも……」

 

 俺はそこで言葉に詰まってしまった。

 なぜなら、形に違和感を覚えたからである。

 リアル天空の兜を見たからだろうか。

 イラストだと気にならなかった部分が、あるモノを連想させたからだ。

 

「ン、どうかしましたか?」

「いや、大したことじゃないんだが……なんかその兜、形が魚っぽくね? お前が被ってると、その髪の影響で緑色の魚に見えるというか……」

 

 するとその直後、この場が一瞬シーンとした。

 そして堰を切ったように、マーニャが天空の兜を指さし、腹を抱えて笑い出したのである。

 

「アハハハハハ、さ、魚……確かに! ハヒィハヒィ、言われてみると魚っぽいわ。緑色の突撃魚みたい、アハハハハ」

「ね、姉さん……わ、笑いすぎです……プッ」

 

 ミネアは服の袖で口を覆った。

 笑いを堪えてるようだ。

 

「ジュライさん……苦労して手に入れたのに、それはないですよ」

 

 フォルスが恥ずかしそうに抗議してきた。

 

「そ、そうですよ。いくら何でも、さ、魚って……」

 

 シンシアもそうは言いつつ、少しニヤけていた。

 内心、思ってはいたのかもしれない。

 まぁとはいえ、苦労して手に入れた天空装備だし、一応謝っておこう。

 

「悪い悪い、別に馬鹿にするつもりで言ったんじゃないよ。形の事なんて気にするな。凄い防具なのには変わりないんだし。でも、手に入れるの大変だったんじゃないのか?」

 

 ゲームだとパノンのイベントだった気がするが、ここではどうだったんだろうか。

 するとそこで、マーニャが溜息を吐いた。

 

「そうよ。聞いてよ、ジュライさん。あそこの王様、余を笑わせる事ができたなら、褒美として天空の兜を授けようなんて言い出してきたのよ。私達、笑わせようと、一生懸命頑張ったのに、無反応だし。嫌になっちゃったわ。私の渾身の笑いの舞いを見せたのに……」

「まぁまぁ、姉さん。あれはどうにもなりませんよ。でもパノンさんという旅芸人のお陰で、何とかなりましたので、それで良しとしないと」

 

 寒いギャグでも披露したのだろうか。

 見てみたいものである。

 それはさておき、やはりパノンのイベントだったようだ。ここは一安心である。

 でも知らんふりはしとこう。 

 

「へぇ、そんな事があったのか。大変だったんだな。ところで、この船はどこに向かってるんだ?」

「今、バトランドに向かってるところです。そこに天空の盾があるという情報を得たので」

 

 行き先も同じみたいだ。

 ラッキー。

 

「バトランドか。なら、俺も同行させて貰うかな」

「本当ですか! それは頼もしいです。でも、今日はイムルという村が目的地なんですよ。そこから徒歩でバトランドに向かうんで、ちょっと遠いですけど」

「いいよ。おっと、それはそうと……雨も降ってきたし、中で話そうか。そのほうがゆっくりと話できるし」

「ええ、そうしましょう」――

 

 

   [弐]

 

 

 甲板の下にある船室の中に入ると、他の導かれし者達が勢揃いであった。

 全員が俺の顔を見るなり、驚きの眼差しを向けている。

 1か月ぶりの再開だ。

 皆、元気そうである。

 

「おや……って、ジュライさんじゃないですか! どうやってここに!」

「やぁトルネコ、ちょっとした移動手段を手に入れてね。それはともかく、皆も元気そうじゃないか」

 

 俺はそこでトルネコ以外の者達に目を向けた。

 アリーナにクリフトにブライ、それとライアンの姿があった。

 皆、変わりはないようだ。

 因みに全員、中央のテーブル席に着いていた。

 テーブルには地図が広げてあるので、旅の打ち合わせでもしてたんだろう。

 

「ジュライ殿、お久しぶりですな。お別れした時と姿が随分変わりました。見違えましたぞ。只者ではない雰囲気がありありと感じられる」

 

 ライアンは顎に手を当て、感心したように俺を見た。

 他の者達も、ウンウンと頷いている。

 某無双ゲームキャラ風のコスチュームだが、この世界でも通用しそうな出で立ちのようだ。

 

「まぁな、そういうライアンも、装備がガッチリしてるじゃないか」

 

 俺はそこでライアンの得物をチラッと見た。

 ライアンの腰には、リバストの持ってる剣と同じ物がぶら下がっていた。

 そう、渦を巻く、まどろみの剣である。

 

「この前、スタンシアラに立ち寄った際、仕入れたのだ。さすがに破邪の剣では心許ないのでな」

「へぇ、ン?」

 

 と、そこで、クリフトが立ち上がり、俺の前に来た。

 続いて、アリーナとブライも。

 

「お久しぶりです、ジュライさん」

「ジュライ殿、元気そうじゃな」

「へぇ、雰囲気変わったね、ジュライ。でも私、そういう格好は嫌いじゃないよ。強そうだし」

 

 アリーナの戦闘民族的な価値観は相変わらずのようだ。

 コイツは戦闘服以外、興味ないのかもしれない。

 

「それはそうと、背中の剣……もしや、目的の剣を作る事ができたのですか?」

 

 と、クリフト。

 

「ああ、無事作れたよ。代用品で作ったから、未知数な部分もあるがな」

「ほほう、それが、ジュライさんの作られた剣ですか。変わった雰囲気の剣ですな……後でじっくり見せてくださいよ。私はこう見えて武器商人でもありますからな」

 

 などと言いながら、トルネコも興味深そうに剣を見ていた。

 この世界では見られない(こしらえ)なので、武器屋なら気になるところだろう。

 と、そこで、アリーナが勢い良く前に来た。

 

「それはともかく、ジュライ……ようやく、私達とまた旅をするのね。いい機会だわ、早速、上で手合わせするわよ」

 

 アリーナはそう言うや、ボクサーのようなファイティングポーズをとった。

 脳筋ぶりも相変わらずのようだ。

 

「いきなりそれかよ。そんなことよりさ、アリーナに贈り物があるんだ。以前立ち寄った所で面白い物を手に入れたんでな」

「贈り物? 何よそれ」

「これだよ」

 

 俺はロザリーヒルで購入したキラーピアスを手渡した。

 ゲームでは、両耳につけるアリーナ専用の強力武器である。

 因みにこのキラーピアスは、神秘の力の反響を利用した武器だとラモンさんは言っていた。

 1度の攻撃で2度の打撃を与えるとの事だ。

 話を聞く限り、ゲームと同じ効果があるようだが、試したわけではないので実際のところはわからない。

 ゲームに習って買ってみただけである。

 銀色のティアドロップ型の形状で、中心にブルーサファイア風の美しい宝石が入ってるのが特徴だ。

 因みに、7500ゴールドの定価で買った。

 破壊の剣を売って得た金があるので購入はできたが、高い買い物なので少々痛い出費だ。

 だが、これも天空城へ行く為の出費と思い、割り切ったのである。

 

「なにこれ? すごい綺麗だけど……何かの宝石?」

 

 アリーナはキラーピアスを見るや、眉根を寄せた。

 するとそこで、なぜかモンバーバラ姉妹が割って入ってきたのである。

 

「ああ、なんでアリーナ姫だけ! なんで私には何もないのよ!」

 

 微妙に怒ってるのか、マーニャは頬を膨らましてる。

 しかも、なぜかミネアまで、鋭い眼光を俺に向けていた。

 

(あれ……なんか2人とも怒ってない? もしかして拗ねてるのか? 勘違いしてるな、こりゃ……)

 

 アリーナだけに、ガチ宝石をプレゼントしたとでも思ってるのだろう。

 誤解してるようなので、言っておかねばなるまい。

 

「あのな、何か勘違いしてるようだが、これは武器だよ」

「え、武器? これが?」

 

 皆、ポカンとしていた。

 多分、初めて見る武器なんだろう。

 

「ああ、そうだ。女性専用の武器さ。ただ、力のない女性にはあんまし効果がないみたいだけどね。ほら、やるよ、アリーナ。多分、お前の強い相棒になるだろう」

 

 アリーナはキラーピアスを受け取ると、眉根を寄せて首を傾げた。

 

「武器に……全然見えないんだけど。これは普通の女の子が喜ぶ装飾品じゃないの? 私、こういうのあんまり興味ないよ」

 

 一応、自分が普通じゃないという自覚はあるようだ。

 まぁお姫様だし、こんな宝石っぽいのは見飽きてる事だろう。

 

「違うんだな、それが。これは1度の攻撃で2度攻撃できる代物なんだよ。店主曰く、肉体と神秘の力の両方で攻撃するんだとさ」

 

 アリーナは目を大きくし、嬉しそうに微笑んだ。

 

「ええ!? 嘘、本当に!? どうやって使うの?」

「両方の耳に当てがってみるといい。神秘の力で、耳たぶに貼り付くそうだ」

「へぇ、じゃあやってみよ」

 

 アリーナは早速、耳にキラーピアスを当てた。

 すると、ふわっと淡く宝石が輝き、ピタリとアリーナの耳に貼り付いたのである。

 これは霊的な見方をすると、アリーナの霊体とキラーピアスがリンクしたような感じであった。

 もしかすると、この世界における神秘の力とは、霊体と繋がる力の事をいうのかもしれない。

 

「ねぇ、なぜか知らないけど、凄く体が軽くなった感じがする。これもこの武器の力なの?」

 

 アリーナは俺に近づくと、両掌を見た。

 

「さぁな。俺は着けた事ないからよくわからんよ」

「ふぅん、でも1度で2度攻撃できるのよね」

「そう言ってたよ」

「よし、じゃあ、ハァァッ!」

 

 と、その直後、なんとアリーナは俺に向かい、正拳突きを見舞ってきたのだ。

 

「のわぁ!」

 

 俺は咄嗟に腕をクロスしてガードし、それを防いだ。が、しかし、次の瞬間、重い衝撃が立て続けに腕を駆け抜け、俺は後方へと吹っ飛ばされたのだった。

 この突然の事態に、俺は少々パニクった。

 

(こ、この脳筋娘……俺に試し打ちしてきやがった。なんで、ねぇ……なんで俺にしたの? 普通、敵にやるもんだろうがァァァ! このアンポンタン娘!)

 

 アリーナはそこで、悔しそうに口を尖らせた。

 

「あ~あ、今のを防ぐなんて。今度は決まったと思ったのにな。さすが、ジュライね。でも……これ凄いかも。守りに入ってるジュライをあんなに吹っ飛ばせたし」

 

 これには俺も、ちょっとキレかけた。

 

「アリーナ……お前、なんで俺で試すんだよ! 危ないじゃないか! 大怪我したらどうすんだ!」

「だって、ジュライで試したほうがわかりやすいもん」

 

 駄目だ、コイツ。

 というか、すっごい馬鹿なのを忘れてた。

 他の皆も少し引き気味であった。

 彼等もアリーナの習性を再確認したことだろう。

 

「アリーナ、やっぱそれ返せ! お前にはまだ早い」

「ヤダ。これ気に入ったもの」

「仲間を攻撃するような奴にはやらんわ。返せ!」

「ヤダ」

 

 アリーナは耳を押さえながら後ろに下がる。

 するとそこで、ブライが含み笑いをしてきたのだった。

 

「ふっふっふっ……甘い、甘いのう。ジュライ殿はまだわからぬようじゃな。アリーナ様に、そんな道理なんぞ通用せんのじゃよ。まったく修行が足らんわい」

「ブライ様、そこまで言わなくても……」

 

 お前が言うなと思ったのは言うまでもない。

 それはさておき、アリーナはやはりアリーナであった。

 脳筋の戦闘民族である。

 余計な物を与えたのが悔やまれるところだ。残念。

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