DQⅣ世界に、迷い込みて候   作:虚夢想

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Lv7 天空人の末裔

   [壱]

 

 

 シンシアのルーラで俺はブランカへと舞い降りた。

 ちなみにだが、俺とシンシアの他に2人の同行者がいる。フォルスとローグさんである。先程の会話の流れで、彼等も一緒に来ることになったのだ。

 それとブランカに来るにあたり、俺とシンシアとフォルスは一応変装中である。

 やはり、デスピサロの一件があったばかりなので、これは当然の対応であった。

 とはいえ、あまり凝った変装はしてない。俺とフォルスは頭に木の帽子を装備し、付け髭である。これらの装備品はシンシアの所有物である。なんで付け髭を持っているのかは謎だが。それと、シンシアはモシャスで人間風に変化してるところだ。 

 まぁそれはさておき、ブランカは堅牢な石の城壁に囲まれた城塞都市であった。

 ゲームでは気にしなかったが、その高さたるや10mは優にあるだろう。それらが200m以上の壁となって連なっているのである。

 まるでヨーロッパの王城を見てるような気分であった。

 しかも、ゲームと違って沢山の生身の人間がそこかしこにいるのだ。

 ある者は談笑したり、またある者は買い物をしたりと様々な人間模様が繰り広げられている。

 また、俺達がいる石畳の大通りには沢山の荷馬車も行き交っていた。

 それらの光景はもはやゲームとはとても思えない姿であった。

 これは確実に現実である。

 

(中世欧州のような様式だけど、確実にこれはゲームじゃないわ……現実だ。つか、リアルドラクエって意味分からんぞ。なんで俺はこんな所にいるんだろう。悲しくなってきた、トホホ……。おまけに、なんなんだよこの臭いは……どこかに肥溜めでもあんのか。街が動物園みたいに、獣の糞尿が入り混じったようなニオイがするぞ。クサッ……)

 

 俺は思わず、服の袖で鼻を覆っていた。

 そんなわけで俺は今、景観にも圧倒されているが、臭いにも圧倒されているところなのであった。

 全くもって異世界は予想外な事ばかりだぜ。

 

(これは想定外やわ……まさかドラクエの街がこんな臭かったとは……こういうリアルはいらんぞ、ったく。知りたくないドラクエの陰の部分を見てしまった気分だ。まぁでも、馬の糞がアイテムとして手に入れられるゲームだったから、しゃあないか)

 

 俺はそこで3人の同行者達の表情を見た。

 すると3人は平然としていた。

 なにも思わないのだろうか?

 訊いてみることにした。

 

「あのさ、君達はこのニオイ大丈夫なの?」

「やっぱ臭いますよね……村に住んでた時は木の香りで気にならなかったんですけど、ここに来たら、流石に僕もそう思ってしまいました」と、フォルス。

 

 フォルスは村の外から出たことにないので、やはりこの異臭は鼻につくようだ。

 だが、他の2人はキョトンとしていた。

 

「まぁ確かにちょっと臭いますね。でも、大きな街はどこもこんな感じですよ」

「ジュライさん、街の中には沢山の人々が生活しているし家畜もいるから、こればかりは仕方ないな。ほら、そこにも馬を飼育してる建物があるだろ。貴方が住んでたところもこんな感じじゃないのかい?」

 

 シンシアとローグさんは、何でもない事のようにそう言った。

 これは否定しておかねばなるまい。

 

「いやいやいや……ローグさん、俺が住んでた所は特殊な場所を除いて、こんなニオイはしないですよ。なもんで、俺はちょっと驚いてるところです」

「でもニオイがきついのは街外れだけですよ。ブランカ城がある中心部に行くとそこまでは臭わないと思いますから」

 

 シンシアはそう言って微笑んだ。

 その無邪気な笑顔を見て、俺はなぜか複雑な気分になった。

 

「そうなの……だったらいいんだが……っていうか、良いのか、シンシアは? エルフの里は世界樹の爽やかな香りで満たされてたぞ」

「私は気になりませんよ。そういうモノだと思いますから」

「そ、そうなん……だったらいいよ」

 

 地元の方々は免疫耐性ができてるようだ。が、俺は少々カルチャーショックを受けているところであった。

 よく考えたらここは、現実世界のような最先端技術のインフラの恩恵がない世界だから、衛生状況ははっきり言って心許ないに違いない。

 この先に待ち受けている数々の苦難が容易に想像できる。

 早く帰りたい気分であった。

 

(あ~あ……思ってたとおりだが、文化がだいぶ違うよな。はぁ……俺、魔物よりも生活様式のほうが不安やわ。エルフの里で水浴びくらいはしたけど、数日風呂にも入ってない上、服も着回してるから、それもなんとかしたいんだよね。里での食事も、見たことない木の実や果物と、味気ない穀物料理ばかりだし……まぁおいしいモノも中にはあったが……。おまけにこの世界、ティッシュの類がないから、クソしたときの対処がよくわからんのよ。今は降魔道具の鞄に入れておいたポケットティッシュでなんとか凌いでるけど、それもそろそろ限界だ。現実世界に帰れるなら気にしなくてもいいが、今のところはまだ帰れる保証はない。早く代替えを見つけないといけないな。そのためにも、パルメロさんとフェルミナさんから貰ったコレらを売っぱらって換金しないと……)

 

 俺はそこでパルメロさんから貰った『破邪の剣』と『鋼の剣』、フェルミナさんから貰った『まもりのルビー』に視線を向けた。

 これらは一応、先の戦いのお礼として貰った物だ。

 2つの剣はとりあえず、今は腰に差しているところだ。まもりのルビーはネックレス状のアクセサリで現実世界のルビーと同様、赤い宝石である。

 正直言うと、こんなのより、この世界のお金が欲しかったところだが、売れば金になるのでありがたく貰っておいた。

 ゲームだと、これら3つの売却価格は6000ゴールドくらいは見込めるだろう。

 まぁゲームと同じという保証はどこにもないが、とりあえず、現時点での金策として利用させてもらうつもりである。

 でも、まもりのルビーは売るかどうか悩み中だ。それなりにレアアイテムだからである。

 何れにしろ、まずは破邪の剣の売却額を見てから決めるつもりだ。

 それと、鋼の剣は売らないで取っておくことにした。呪術の術式を施せば霊剣化できるので、これは降魔道具として使えるからだ。このあいだ遭遇したデスピサロの一件で利用価値が高まったのである。

 ちなみにだが、破邪の剣はすでに魔法剣化されてるのでこの処置は出来ない。というか、やろうと思えばできるのだが、妙な霊気を纏う宝石が柄の部分に埋め込まれてるので、それを取り除くのが面倒くさいのである。よって、売却する事にしたのだ。

 ゲームなら破邪の剣の方が優れているが、物の価値は使う者によって変わるという事である。

 

 話は変わるが、このあいだパルメロさんに話を聞いたところ、この世界での金稼ぎはゲームと同じというわけにはいかないようである。

 パルメロさん曰く、魔物を倒してもゴールドは得られないそうだ。

 俺がその質問したら、ポカンとしながら首を傾げて、「何言ってるんですか、ジュライさん……魔物を倒したら、ゴールドになるなんて有り得ませんよ。魔物も人も死んだら屍になるだけですから」と、言われたのである。

 その話を聞いたときは少し戸惑ってしまった。

 この世界はゲームのような世界だが、ゲームではないという事なのだろう。

 彼曰く、人間同様、死んだ魔物は時間とともに朽ちてゆくそうである。話を戻そう。

 

「さて、それじゃあ行くとしようか。ジュライさんは武器屋に行きたいんだったな?」

「ええ」

「だったらこっちだ。俺についてきてくれ」

 

 ローグさんの後に続き、俺達は移動を開始した。

 大通りを暫く進むと交差点があり、ローグさんはそこを左に進路をとった。

 俺達はそれに続いてゆく。

 進むに従い、次第にニオイも薄くなっていったが、それでも少し鼻についた。これはもう我慢するしかないようだ。

 それはさておき、このブランカはゲームと比較にならないほど大きな街であった。

 人口も結構いそうな気がする。俺の見立てでは数千人は暮らしてるんじゃないだろうか。それほどの街であった。

 ただ、庶民の生活レベルはやはり中世の様式なので、現代日本のような華やかさはない。

 とはいえ、多くの人々は笑顔であり、街は生き生きとしていた。良い雰囲気の街である。ニオイはあれだが……。

 そんなこんなで移動を続けると、目的の武器屋らしきモノが見えてきた。

 剣と盾の看板が掲げられているのでここで間違いないだろう。

 一応、位置的な事を言うと、武器屋はブランカの左端の地域である。建物の後ろは城塞なので本当に端っこであった。

 石造りの四角い平屋の建物で、規模はそれほど大きくはない。なので展示武具は少なかった。色褪せたカウンターの向こう側にある壁に、武具が少々並んでいるだけだ。しかも、ちょっとしょぼい部類の武具である。

 それと、カウンターの向こうには、髭を生やしたムキムキのゴツいオッサンが頬肘を付きながら立っており、今は大きな欠伸をしているところであった。

 そんなわけで、あまりやる気の感じられない武器屋である。

 

(なんか品揃えがよくない武器屋だな……ゲームだと序盤の店だからしゃあないか。まぁでも、魔物の脅威もリアルにあるからゲームみたいな品揃えってことは幾ら何でもないだろう。あれは都合上そうしてるだけだし……)

 

 などと思いつつ、俺達は店員の方へと向かった。

 ローグさんはカウンターの前に行き、オッサン店員に話しかけた。

 

「久しぶりだな、ギャロ」

「おお、ローグじゃねぇか。久しぶりだな。調子はどうだ?」

 

 どうやら、このオッサンとローグさんは知り合いのようだ。

 

「まぁボチボチやってるよ」

「へへ、元気そうで何よりだ。ところで、何か探し物か?」

「用があるのは俺じゃなくて、こちらの方だがな」

 

 ローグさんはそう言って俺に視線を向けた。

 

「ああ、そちらさんか。ここは武器の店だが、何か探し物ですかい? 今はブランカ城から武器の大量発注があって、良い武器や防具はあんまりないんですが、それでもよけりゃあ、まぁ見て行ってください」

「そういう事だったんですか、なるほど。まぁそれはともかく、私は武具を買いに来たのではなくて、売却で来たんですが、いいですかね?」

「ああ、売却のほうか。で、何を売るんですかい?」

 

 俺はとりあえず、破邪の剣をカウンターの上に置いた。

 

「これなんですけど、幾らくらいですかね?」

「おお、こりゃ、破邪の剣じゃねぇですかい。刃こぼれもないし、中々良いモノ持ってますね、お客さん。今、城が良い武器を欲しがってるからウチはちょっと他より高く買いますよ。2800ゴールドでどうですかい?」

 

 中々良い値段である。

 確かゲームだと、元の売値は3500ゴールドくらいだった気がするので、この店に売り払うとしよう。

 

「じゃあ、その金額で引取お願いします」

「まいどあり。じゃあ2800ゴールドはここに置いておきやすね」

 

 男はそう言うとカウンターの上に幾つかのコインを置き、剣を壁に立てかけたのである。

 コインは大きいモノで500円玉くらいのサイズがあり、他はそれより少し小さい物であった。

 ちなみにだが大きいのが金貨で小さいのが銀貨である。色で貨幣の単位が違うのだろう。

 まぁそれはさておき、俺はそのコインを肩掛け鞄の中に仕舞った。

 そこでローグさんの声が聞こえてきた。

 

「ところでギャロ……今、ブランカ城が武器を大量購入したと言ってたが、やはりデスピサロの件が影響してるのか?」

「だろうな。西の大陸にあるサントハイム王国が魔物達にやられちまったから、明日は我が身とブランカ王も焦ってるのさ」

「確かにな……その可能性はないとは言い切れん」

「いやな世の中になっちまったもんだよ」

 

 2人はそう言って表情を落とした。

 少し重い空気だったが、俺はもう1つ用事があったので、それを聞いてみる事にした。

 

「あのぉ……お話のところすいませんが、このお店に服とかパンツっておいてあるんですかね?」

「服はあるぞ。布の服や旅人の服くらいはな。ところで今言った……パンツってなんだ?」

「パンツといったらパンツですよ。早い話が下着です。ないんですか?」

 

 すると俺以外の者達は首を傾げていた。

 この時、嫌な予感がしたのは言うまでもない。

 そしてその予感は的中する。

 

「ジュライさんは服の下に何か着ているんですか? 僕達はこの服だけですけど」と、フォルス。

「この服だけってお前……それじゃあ、あれか、ノーパンか?」

「ノーパン? ってなんですか?」

 

 会話がかみ合わない。

 

「ええっと……つまり、君達はその衣服の下に何も穿いてないのかって事だよ」

「はい、そうですが」

「何も穿いてませんよ」

 

 シンシアとフォルスは平然と言ってのけたのである。

 

「え? シンシアもか?」

「はい」

 

 この文化の違いに、俺は少し眩暈がした。

 とはいえ、少し嬉しい気もしたのは内緒だ。

 あるのか知らんが、台風の時期はショータイムかもしれない。

 それはさておき、気になるところもある。

 

「じゃあフォルスは、チンポジとかどうしてんだよ。スースーと風通し良すぎるから、動きにくいだろ?」

「チンポジって何ですか?」

「そりゃあ、お前……」

 

 俺はそこで言葉が止まってしまった。

 質問しておいてなんだが、悪気のないフォルスはシンシアの前でも遠慮なく訊いてくるからだ。

 

「ねぇジュライさん、チンポジってなに?」

 

 するとシンシアも無邪気な笑顔で訊いてきた。

 う~ん……この笑顔守りたい。

 というわけで、俺は強引に話を終わらせることにした。

 

「ナハハ、チンポジは俺の地域の方言で、風邪をひくという意味さ。なんでもないよ。うん、だから気にしないで。というか、忘れて」

 

 シンシアの笑顔を守りたかった……というのは嘘だが、このノーパン民族達に現実世界の常識を語ることほど滑稽な事は無いからだ。

 

(おいおいおい……シンシアもノーパンなのか。もしかしてフェルミナさんとか、まだ見ぬアリーナとかミネアとかマーニャも……俺、色んな意味で、この世界の女性を見る目が変わりそうだ。そういや、中世欧州もノーパンが主流だったって聞いたが、まさかこの世界でもそうだったとは……)

 

 そして、ここは異世界だというのを俺は改めて痛感したのであった。

 

 

   [弐]

 

 

 武器屋で衣服を購入後、俺は街の中心部にある道具屋でキメラの翼や薬草等を幾つか購入した。

 そして俺達はブランカ城へと向かったのである。

 なぜここに向かうのかというと、武器屋のオッサン曰く、世界を救う勇者の旅立ちをこの王様が激励してくれるかららしい。

 その話を聞いたシンシアが乗り気になり、フォルスを焚きつけたのだ。

 彼は今、やる気になっている。

 俺の言葉も聞き入れてくれないくらいに。

 

(あ~あ……激励受けたところで何も変わらんから行っても意味ないよ、と忠告したのに、なんで行くかな。まぁいいか……シンシアにはルーラで連れてきてもらった恩があるし、暫く付き合うか……ン?)

 

 城へと向かう大通りを歩いていると、武装した4人組の一団が前からやって来た。

 そう言えばゲームでも、こういう奴等がいたような気がした。

 するとフォルスは先頭にいる戦士風の男と肩がぶつかったのである。

 戦士風の男が謝ってきた。

 

「おっとごめんよ。大丈夫だったかい?」

「こちらこそすいません」

「僕達は魔物の親玉を倒す為の旅をしているんだ。それじゃあ、先を急ぐんで」

 

 4人組はそれだけを告げ、この場から去って行った。

 デジャブを感じるやり取りであったが、それから暫く進むとブランカ城が見えてきた。

 2階建てではあったが、中々に大きな城である。横に広いタイプの城だ。

 まぁそんなこんなで、城の中に入った俺達は2階へと行き、そこで王様との謁見をすませた。

 ちなみにだが、その時のやり取りはほぼゲームと同じであったので割愛する。

 その後、少し城内に留まって情報収集し、俺達はブランカ城を後にしたのであった。

 城の外に出た頃には、空はずいぶんと薄暗くなっており、夜のような様相となっていた。

 

「もう夜だな……さてどうする? そろそろ帰るか?」と、ローグさん。

 

 俺は頷いた。

 

「ええ、帰りましょうか。ン? どうしたんだフォルス?」

 

 するとフォルスは、嬉しそうな表情で周囲を見回していた。

 

「僕は初めて街というモノを見ました。大きいんですね……そして沢山人がいます。なんだか、それが新鮮で……もう少し見ていたいんです。いいですかね?」

 

 今まで隔離された中で生きてきたから、その反動が来たのだろう。無理もない。

 

「なるほどね。俺は構わないけど、皆はどう?」

 

 俺の問いかけに、シンシアとローグさんは頷いた。

 

「いいわよ、フォルス」

「構わんよ。魔物が襲ってくる気配もないしな」

「ありがとうございます。ン?」

 

 フォルスはそこで、付近にあるブランカ城のお堀に視線を向けた。

 するとそこにはローブを纏う老人が1人おり、三日月と満天の星空が映り込んだ水面を悲しげに見つめているところであった。

 フォルスはその老人の方へ歩み寄った。

 

「先程から池を見てますが、なにかいるのですかね?」

 

 老人はフォルスの声に振り向く。

 

「いや、なにもおらん。この水面に浮かぶ月を見ていたら、ふと悲しい話を思い出しての」

「そうだったのですか。どんな話なんですか?」

 

 老人は水面に目を向けながら話し始めた。

 

「こうして水に映った月を見ておると昔の事を思い出すのう。その昔……北の森の中に木こりの親子が住んでおった。木こりの息子は森の中で美しい娘と出会って結婚までしたのじゃが……木こりの息子はある日雷に打たれて死んでしまったのじゃ。息子は死んだが、親父の方は今も1人で木こりをしておるそうじゃ」

「昔、そんな事があったのですか」

「悲しい話じゃのう。では若いの、ワシはこれで失礼するよ。散歩の途中なんでな」

 

 そして老人は、この場から立ち去っていった。

 これは多分、フォルスの出生に関わる話だろう。

 話に出てきた木こりとは、恐らく、俺が殺されそうになったあのおじさんかもしれない。

 とはいえ、フォルス自身は気付いてないだろうが……。

 

(フォルスは勇者の資質はあるが、俺が奴を救ってしまった事で魔物に復讐するという旅の目的がない状態だ。このままだといつまで経っても、天空城に行かないかもしれない。仕方ない……導かれし者達に会わせる為、少し目的を与えてやろう)

 

 というわけで俺も話に便乗した。

 

「そういや、俺も昔……そういう話は聞いた事があるな」

「え? 本当ですか?」

「俺が知ってるのはこんな話だけどな。その昔……山奥に住む木こりの若者が天空人(てんくうびと)の女性と恋に落ちた。だが古より、天空人と地上人(ちじょうびと)の恋は禁じられていたのだった。そして、禁断の恋の天罰として、なぜか禁を破った天空人の女性ではなく、その若者が雷に撃たれて死んでしまったという。いったい、この若者が何をしたというのだろうか。悪いのは禁を破った天空人の方なのに……。しかし、その時、2人の間にはすでに赤子が生まれており、その赤子が……案外、お前の事だったりしてな。デスピサロも言ってたが、フォルスは天空人の末裔なんだろ?」

 

 この場にいる者達は皆、俺の話を聞いてゴクリと息を飲んでいた。

 

「ジュライさん……今のは一体、どういう意味ですか?」と、フォルス。

 

 するとシンシアは俯きながら、ボソリと呟くようにこう言ったのであった。

 

「ジュライさんて……色んな話を知ってるんですね。でも今は……その話……聞きたくない」と――

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