【完結】最終戦国武闘伝 〜バイオレット・ダークネス〜   作:無敵ざかり

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第二節 優勝大本命・トドロキ

「皆様、お待たせいたしました! 只今より、牛若剣士トドロキ選手VS暗黒皇(ダーク・カイザー)グレイテスト・シーザー選手の試合がまもなく開始いたします!」

 

闘技場の中では、トドロキとグレイテスト・シーザーが距離をとって向かい合っていた。

 

「やあやあ! 我の名はトドロキ! 牛若剣士トドロキなり! 我は天下を目指す者! 我はやがて武を極める者なり! お主はなんと申す者か! 名を名乗れい!」

 

「……いや、知ってるだろ、名前」

 

トドロキに対し、観客席のベンケイがツッコミを入れる。

 

「……我の名は……暗黒皇(ダーク・カイザー)グレイテスト・シーザー……この武闘会にて……サムライを撃ち抜き……銀河を穿(うが)ち……騎士の勝利とする……もの……なり……」

 

「…………いや、意外とノリいいな」

 

グレイテスト・シーザーにも、ベンケイがツッコミを入れる。

 

 

 

 

「あのちっこいのが、グレイテスト・シーザーに勝てるのかねえ?」

 

「正直言って望み薄だろうな。私はグレイテスト・シーザーが勝つと思う。あの試合でシデン・ギャラクシーに敗れたとはいえ、奴の強さは本物だ。トドロキは負けるだろう」

 

「だろうな、そしてグレイテスト・シーザーも紫電も倒して、俺が優勝するんだよな」

 

「いや、優勝するのは私だ」

 

「俺だよ」

 

「私だ……まあ、どっちが決勝戦に出ることになっても、決勝戦がチーム戦なら助っ人として参加するのは間違いないがな」

 

「そいつぁ違いねえ」

 

「さて、トドロキがどう足掻くか、見せてもらおうじゃねえか」

 

「ああ、どんな戦い方をするか楽しみではあるな。勝てはしないだろうが」

 

「いや……どうかな……?」

 

サムライのコンビ、観客席のバイオレンス・迅雷・ドラゴンと迅雷の精霊ホワイト・ヘヴンは他の多くの観客達と同様に、トドロキはグレイテスト・シーザーには勝てないと思っていたが、二人の師匠、聖霊王ジンライは、トドロキが勝つ可能性も見据えていたようだった。

 

 

 

 

「紫電、お前はこの試合、どうなると見る」

 

観客席で、シャルル公が聞いた。

 

「うむ……若すぎるルーキーとして勝ち上がってきたトドロキの実力は確かなものだろう。体は小柄だが、グレイテスト・シーザーといい戦いができるのではないか?」

 

紫電は、以前グレイテスト・シーザーと戦った時の感覚を思い出し、そのだいたいの強さをイメージし、噂のトドロキならそれに追いつけるかもしれない、と思っていた。

 

「どうかなって感じだぜッピ。あの小僧、そこまでやれるかなって思うぜッピ」

 

紫電の友であり、かつての武闘会で共に戦った一人、《ボルコフ・紫苑(しおん)》はトドロキに対して懐疑的だった。

 

「いえ、どうですかなッピ。(ふた)を開けてみるまで誰が勝つかは分からない……それが戦国武闘会ですからなッピ」

 

同じく紫電の友であり、かつての武闘会で共に戦った一人、《バルルン・紫蔵(しぞう)》は、この試合の行く末の可能性を、何パターンか考えていた。

 

「バルルン、また頭の中でシミュレーションしてるッピな? どんな戦いを予想してるのか、教えてほしいッピ」

 

同じく紫電の友であり、かつての武闘会で共に戦った一人、《ボルット・紫郎(しろう)・バルット》は、タラコおにぎりを食べながら、バルルンの予想を聞きたがる。

 

「ギャラクシーさん、あなたはどうなると考えるッピ?」

 

同じく紫電の友であり、かつての武闘会で共に戦った一人、《騎神凰翔ハクツル・ザーク》は、ギャラクシーに試合の予想を聞く。

 

「そうですね……私も紫電と(おおむ)ね同意見です。ただ……ボルコフさんにも同意します」

 

「トドロキが勝つかもしれない……とまでは思えないって感じでちかね?」

 

「ええ……素直に言いますとそうです」

 

バルックの問いかけに、ギャラクシーは端的に答えた。

 

「だが、バルルンの言う通り、どうなるのか分からないのが戦国武闘会だからな。自慢ではないが、拙者もダークホースとして第一回戦国武闘会を勝ち上がったわけだし……分からんぞ」

 

紫電もタラコおにぎりを一口かじり、言う。

 

そう、戦国武闘会で勝つのが誰なのか。それは誰にも分からない。分からないから……なおのこと、面白い。

 

「ふん……またサムライとナイトの試合か」

 

観客席でそういうのは、蒼神龍チェンジ・ザ・ワールドだった。

 

「……見飽きましたか?」

 

ギャラクシーが問うと、チェンジ・ザ・ワールドは答えた。

 

「対戦カードとしては見飽きた。だが、戦国武闘会の試合を見飽きるわけは無い」

 

チェンジ・ザ・ワールドもまた、戦国武闘会を深く愛していた。

 

紫電とギャラクシーは、くすりと微笑んだ。

 

 

 

 

「おっとトドロキ選手、何かを取り出して着込んでいるぞ! これは鬼神装甲かー!?」

 

展開された鎧が自動でガシャガシャとトドロキの身を包んでいく。

 

その髪が、風にはためき波打つほどに長く伸びていく。

 

「ただのトドロキと呼ぶんじゃねえよ……《鬼神装甲クロウ・トドロキ》……! 今のオラの事はそう呼べ!」

 

「やっぱりか……あいつ……鬼神装甲を着込むと荒っぽくなるみたいなんだよな……トドロキー! あんまりでかい口を叩くと後で痛い目を見る事になるぞー!」

 

「うるせぇ! 観客はお静かにして、おとなしく試合をご覧くださいやがれ!」

 

観客席から甲高い声で呼びかけるベンケイに、クロウ・トドロキがこれまた甲高い声で、滅茶苦茶な言葉遣いで叫んだ。

 

「……いや……あの超獣にも参加してもらおう……こちらは"二人"なのでな……」

 

グレイテスト・シーザーがそう言うと、その影の中に潜んでいた騎士《魔光騎聖ブラッディ・シャドウ》が姿を現した。

 

「そう! これは2対2のチーム戦です!」

 

《ミラクル・ショー》もフォローをする。

 

「そうか! よし来い! ベンケイ!」

 

「あ、そっか。チーム戦だったか。いっけねぇな、忘れてたぜ……つーか命令するんじゃねーよ! まったくもう……」

 

クロウ・トドロキがベンケイを呼び、ベンケイが羽をパタパタさせながら観客席から降りてくる。

 

「準備はいいか? ベンケイ」

 

「あったりめぇよ。トドロキ。準備が早えのが僕のいいとこの一つよ」

 

「っしゃ! 初めっか! お前も準備はいいか? グレイテスト・シーザー!」

 

「…………ああ」

 

「両者準備が整ったようだ! それでは、デュエマ・スタートオォ!」

 

まずはグレイテスト・シーザーが魔弾を連射する。

 

それをひらりひらりとかわしていくクロウ・トドロキとベンケイ。

 

ベンケイがブラッディ・シャドウに上から滑空して飛びかかり、翻弄する。

 

そしてベンケイは、足に握った魔導具《風来杖 パラッパ・ベンケイ》に力を込めた。

 

通常、魔導具を使うにはマナというエネルギーを消費する必要があるが、紫電を初めとする一部の特殊技能を身につけた超獣は、マナの消費量を少なくすることができる。そして、ベンケイも特殊技能を身につけた超獣だった。

 

「受けてみな! パッパラパラッパ!」

 

ベンケイの魔導具から繰り出される炎と、ブラッディ・シャドウの魔銃から繰り出される魔弾が、互角の攻防を繰り広げる。

 

グレイテスト・シーザーはベンケイを撃とうとするが、射線上に頻繁に味方のブラッディ・シャドウが入り込んでくるため、撃てずにいた。

 

そしてブラッディシャドウは気づいた。

 

小僧(トドロキ)がいない。と。

 

クロウ・トドロキは、跳び上がりブラッディ・シャドウの上にいた。ゆえに、グレイテスト・シーザーとブラッディ・シャドウの視界から消えていた。

 

ブラッディ・シャドウの上からトドロキが迫る。

 

それに気づいたブラッディ・シャドウとグレイテスト・シーザーだったが、僅かに遅かった。

 

魔弾が発射されるより先にクロウ・トドロキが魔導具《轟剣 レイジング・ザックス》を振るい、ブラッディ・シャドウを粉砕した。金属が碎ける音が響く。ブラッディ・シャドウとグレイテスト・シーザーの発射した魔弾は、虚しく空を切った。

 

「見たか! これがオラ達の力だ!」

 

「これぞ無敵のコンビネーション!」

 

クロウ・トドロキとベンケイが、高らかに勝ちどきを上げる。

 

「ほう」

 

「やるな!」

 

観客席で、シャルル公と紫電達も感心していた。

 

「早くも二対一! 危うし、グレイテスト・シーザー選手!」

 

実況がこだまする。

 

「さあ来い! お前もぶっ倒してやるぜ!」

 

鬼神装甲クロウ・トドロキが、暗黒皇

(ダーク・カイザー)グレイテスト・シーザーに魔導具を向け発声する。

 

「そうか……」

 

どこかけだるげに、それに平然と答えたグレイテスト・シーザーが少し腰を落とす。

 

そして、クロウ・トドロキ目掛けて猛烈に加速を伴って突進した。

 

言葉を発する暇もなく奥義《ベンケイ・バーニング》を発動しながら間に割り込んだベンケイを、指一本動かすことなく勢いに任せて体当たりで吹き飛ばした暗黒皇(ダーク・カイザー)が、クロウ・トドロキの目と鼻の先に瞬時に迫る。

 

その直後、クロウ・トドロキは意識を失った。

 

「また……やり過ぎたか……」

 

グレイテスト・シーザーが、ぽつりとつぶやく。

 

「な……なんというパワーとスピードだーッ! グレイテスト・シーザー選手……一気に形勢逆転! なんという強さ! なんという力なんだァーーッ!」

 

驚愕する《ミラクル・ショー》の実況が会場に轟いた。

 

「あんなに……」

 

グレイテスト・シーザーは、あんなに強かったか? と、観客席のシャルル公や紫電達は思う。

 

神速の剣技に吹き飛ばされ、障害物に勢いよく叩きつけられたトドロキに、ベンケイが駆け寄り、気付けを行う。

 

「お……おい! トドロキ! しっかりしろ、トドロキ!」

 

「あ……ああ……」

 

気を失っていたトドロキがようやく意識を取り戻す。

 

「……立てるか?」

 

「大丈夫だ……!」

 

トドロキが、生まれたばかりの子鹿のように身を震わせながら立ち上がる。

 

「まだまだ……こんなもんじゃ……負けてられねぇ……!」

 

その場に散乱していた鬼神装甲がトドロキの身を包んでいく。

 

魔導具がトドロキに力を与え、輝かせる。

 

「ト……トドロキ……?」

 

戸惑うベンケイをよそに、鬼神装甲に包まれたトドロキの体は輝きを増していく。

 

「こ……これは……!? トドロキ選手の身に何が起こっているんだァーッ!?」

 

「これは……!」

 

シャルル公達も目を見開いていた。

 

「少年……!?」

 

アヴァラルドもまた、同様だった。

 

「ううおぉぉ……! はああぁぁーっ!」

 

鬼神装甲に身を包まれ輝きを放つトドロキが()える。

 

それはもはや装着という言葉を使うのではなく、融合と表現する方が相応しい。

 

トドロキの中の薄まった竜の血が、今目覚め、一人のヒューマノイドは一体の竜と化した。

 

その竜の名は、ヴァルキリアス・ムサシ。

 

それだけではない。

 

その身から炎が飛び出し、それがサムライの形となっていく。

 

「……あれは、拙者?」

 

紫電がぽつりとこぼした。

 

「こ……これは…………紫電!? いや、本人ではありません! 炎だ! 炎が紫電の形になっている! しかも、二人!!」

 

《ミラクル・ショー》はまた驚きを隠せずにいた。

 

トドロキが今まで見てきた紫電の……最強のサムライの姿。その記憶が、知識が、火のマナの輝きと共に炎となり、そして紫電の姿になった。

 

二体の炎の紫電が、グレイテスト・シーザーへ跳びかかる。

 

「「シデン・ソウリュウザン!」」

 

グレイテスト・シーザーはとっさに左手に持った武器を盾に変形させて猛攻をしのぐ。

 

「うおおおおぉぉぉっ! 我が太刀筋、見切れるかぁ!」

 

さらに、ヴァルキリアス・ムサシの刃が迫る。追撃に次ぐ追撃。

 

文字通り炎が跳び回る闘技場は、今年一番の猛暑と化した。

 

観客を守る防壁は、ガラス窓のように飛んでくるものは防げても、熱は完全には防げない。

 

あまりの熱気に、観客席のリキッド・ピープル達が後方へ退避していく。

 

「暑いっち……!」

 

「うむ、なんて暑さだ……!」

 

観客席のバルックとシャルル公も、この暑さには驚きだった。

 

二体の炎の紫電と、ヴァルキリアス・ムサシの斬撃が乱舞する。

 

地面が斬撃の余波でえぐれ、一振りごとに凄まじい衝撃派と轟音が巻き起こる。

 

ついに、グレイテスト・シーザーは右手の武器も盾に変形させた。それは、完全に守りに(てっ)するという……(てっ)しなければ敗れてしまうと宣言したも同然と言える。

 

「す……すげぇ……トドロキ……! お前すげぇよ……!」

 

ベンケイは驚きながら、ヴァルキリアス・ムサシの……トドロキの勇姿を見届けようとしていた。

 

「猛攻が止まらない! まさかの変貌を遂げたトドロキ選手相手に、グレイテスト・シーザー選手、まさかまさかの防戦一方ーッ!」

 

実況のミラクル・ショーも、観客達も興奮していた。

 

「これ……本当に勝っちまうんじゃないか……?」

 

「いや、紫電とギャラクシーでようやく勝てた相手を一人で押してるんだ……勝つどころか……」

 

「優勝大本命と言ってもいいんじゃないか……!?」

 

「あの若さだ……まだまだ更に強くなってもおかしくない。もしや、いずれ戦いを極める者となるのでは……」

 

「そうだ……奴が優勝大本命だ!」

 

観客席に大きなどよめきが起こる。

 

「とどめだぜ! グレイテスト・シーザー!」

 

ヴァルキリアス・ムサシの一太刀がグレイテスト・シーザーを斬り伏せた。

 

「おぉっ!」

 

アヴァラルドは声を上げて、両手の拳を握って立ち上がった。サムライが、ナイトに勝ったというのに。

 

他の観客達も様々な反応をしていた。

 

「か……勝っちまった……」

 

「まさに合戦を極める者……まさに戦極竜!」

 

 

 

 

「まだ終わりではない……!!」

 

暗黒皇(ダーク・カイザー)が、再び起き上がる。

 

まるで、何者かに起こされたかのように。まるで不死鳥が蘇るように、立ち上がった。

 

「なっ……!」

 

グレイテスト・シーザーの目を見たヴァルキリアス・ムサシに、隙ができた。

 

そして、ヴァルキリアス・ムサシに対し、豪雨のごとく魔弾が打ち込まれる。

 

あまりのダメージに、グレイテスト・シーザーやシデン・ギャラクシーにも匹敵する体躯を誇るヴァルキリアス・ムサシから、小さなヒューマノイドへと戻ってしまうトドロキ。

 

そこへ、グレイテスト・シーザーが撃ち出した魔弾が直撃した。

 

クロウ・トドロキが吹き飛び、そして壁に激突する。

 

「ト……トドロキーーッ!!」

 

「少年ッ!」

 

「トドロキ!」

 

ベンケイと、アヴァラルドと、紫電の声がこだました。

 

「こ、これ以上は無理だ! 棄権! 僕達は棄権する!」

 

ベンケイが悲鳴のような声を上げて宣言する。

 

しかし、それを否定する声があった。

 

「しねぇよ……棄権なんか……」

 

トドロキの声だった。

 

「よせ! 本当に死んじまうぞ!」

 

ベンケイはふらふらと歩き出すトドロキを引き留めようとする。が、しかし……

 

「戦国武闘会は死んだって復活できるだろ」

 

トドロキは止まらない。止まるつもりがない。

 

「そ……それはそうだが……だが! 例え体の傷がすぐ癒えても、心に刻み込まれた傷は……! そうして戦えなくなった奴は何人も……!」

 

戦国武闘会は死別も悪意もない真の平和の祭典。だが、死ぬということは想像以上にショックの強いことでもあった。死んだ時のショックが忘れられず、引退する選手達もいたのだった。例え、善意の渦巻く環境だとしても、悲劇というものはあるのだ。それは、ある者の運命もまた、同じように……

 

「……大丈夫だ。武闘会に参加した時から……いや、武闘会に参加することを夢見た時から、死を体験する覚悟はできてる」

 

「トドロキ! わざわざ恐怖を味わうことは無いだろう!」

 

ベンケイが止めようとしても、トドロキはなおも止まらない。ただただ、グレイテスト・シーザーの前に立つために、ゆっくりゆっくりと歩いていく。

 

「心配してくれてありがとな。お前は見ててくれ。わりぃな……ちょっと死んでくる」

 

トドロキは戦士だった。サムライだった。最後まで、戦い抜く覚悟と誇りを持っていた。

 

「サムライたる者、闘いに生き、闘いに果てる。それがサダメ。さあ……かかってきやがれ!! 暗黒皇(ダーク・カイザー)!!」

 

クロウ・トドロキが天まで届くような大声で啖呵を切る。

 

「……!」

 

観客席のとある少年は、トドロキのことを超獣世界で一番格好いい超獣だと思った。

 

本当に格好いいのは、勝つことじゃない。最後まで戦うことなんだ……と、少年はそう感じた。

 

紫電達も、アヴァラルドも、他の観客達も、固唾(かたず)を飲んで、決着を見届けるべく、試合を見つめる。

 

そして、グレイテスト・シーザーが放った凶弾が、クロウ・トドロキの体を装甲ごと貫いた。

 

「我、此処において後悔せずッ……!」

 

 

 

 

「……ロキ……トドロキ!」

 

「あ、ここは……?」

 

「医務室だ! 武闘会の闘技場の医務室!」

 

「……そうか……オラ、負けちまったよ。

でも、かっこよかっただろ? 優勝はできなかったけど……せめてお前の前でかっこつけたかったんだ。オラは逃げないぞってさ」

 

「……トドロキ……バカだな……お前はバカだ……だが、成長したな……お前はバカなままがいい。これからも、バカなまま生きて、バカなまま成長していってくれ」

 

「言われなくても、そうするつもりだよ」

 

「かっこよかったぞ、トドロキ。最高にな」

 

ベンケイはトドロキに寄り添いながらそう言った。

 

「圧倒的な力を前にしても逃げることなく立ち向かう……サムライながら見事だったぞ、少年」

 

二人の元に、アヴァラルドが現れた。

 

「アヴァラルド。見てくれてたのか」

 

「ああ。あのグレイテスト・シーザー相手にあそこまで戦えるとはな。すごいな君は。そして、ドリームメイトも。息絶えた少年をすぐに医務室まで引っ張ってきて、ソウル・キャッチャーを使っての蘇生を頼み込んだそうだな。医療班が到着するのを待つより、生存している選手の仲間がいるならば、その仲間が医務室まで死亡者を運んだ方が、蘇生までにかかる時間は少し短くなる。素早く蘇生するほど、蘇生後の体力の回復は早くなる。それを知っているのだな」

 

《グレイテスト・シーザー》の名前が出た途端、トドロキが口を閉ざした。

 

「まあ……そうだよ、知ってるよ。でもそんなことより、トドロキ……」

 

トドロキにはやはり刺激が強すぎたのか……そう思ったベンケイの耳に、トドロキの口から放たれた言葉が入る。

 

「グレイテスト・シーザーの……あのナイトの目を見た時分かったんだけど……哀しそうな目をしてたんだ」

 

「…………え?」

 

全くの予想外の発言に、ベンケイが首をかしげた。

 

「それは、どういう……?」

 

アヴァラルドも理解出来ていなかった。

 

「それより、アヴァラルド。オラに言いたいことがあるんじゃないか?」

 

「……君と戦えなかったのは、残念だよ。ぜひ手合わせ願いたかったというのに……」

 

「じゃあこれから戦おうよ!」

 

「え? し、しかし、どこで戦うというのだ……? 選手村は種族や勢力ごとに場所が分かれているから、サムライの特訓の場で戦えば私がアウェーに、ナイトの特訓の場で戦えば、君がアウェーになるが……」

 

そう。他種族や他勢力の衝突を避けるため、選手村では種族や勢力ごとに違うエリアに分けられていて、不用意に他のエリアに立ち入ることも、推奨されなかった。

 

「ヒューマノイドの特訓の場で戦えばいい! 大昔は敵対してたらしいけど、火文明と光文明はこの時代は結構仲良いんだから、みんなアーク・セラフィムのお前を受け入れてくれるって! それに、お前は違うけど、アーク・セラフィムの半分は火文明と友好関係にある自然分明なんだし! ヒューマノイドの知り合いも友達も、オラたくさんいるからさ!」

 

「う、うーむ……それなら良い……のだろうか……? し、しかし、君の友達に私のようなよそ者が混ざって大丈夫だろうか……」

 

「何言ってんだよ、アヴァラルドだってもうとっくにオラの友達だって! ほら、早く行こ行こ!」

 

「友達……私が……友達……? ふふ……そうか……」

 

トドロキはアヴァラルドを引っ張って、ヒューマノイド達の選手村のある場所へ向かおうとした。

 

それをすぐに追いかける者が一人。

 

「おいトドロキ! 待てって! 本気なのかよーっ! まだ体の傷、治りきってないんだぞーっ!」

 

ベンケイは、"もう立ち直るとはね、こいつ(トドロキ)の心の強さを甘く見てたぜ!"と思い、本当に成長したな。と感じていた。

 

トドロキとベンケイ(ふたり)アヴァラルド(ひとり)が加わった三人の友情は、きっと、これからも続いていくのだろう。

 

 

 

 

次回予告

 

「貴様こそ……王にふさわしい……」

 

王にふさわしい者とは誰だ!? 王とは何だ!?

 

「分かっているな? ロマノフよ。お前の、目標は」

 

ネロ・グリフィスに逆らえるナイトはいない……

 

「分かっている! 我が目標は唯一にして絶対! 全てのサムライのオール・デリート!」

 

そう、ロマノフⅠ世でさえも……

 

「務めは果たせよ。断れば、邪眼家がどうなるかは……分かっているな?」

 

ネロ・グリフィスが、ロマノフを脅迫する!

 

次回、《暗誕秘話/魔邪天氷》

 

「このロマノフⅠ世が、今ここで……刺し違えてでも貴様を、ネロ・グリフィスを倒す!」

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