【完結】最終戦国武闘伝 〜バイオレット・ダークネス〜   作:無敵ざかり

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第三章からは四節まであります。ので、ギャグ回は明日公開です。


第三節 暗誕秘話/魔邪天氷

グレイテスト・シーザーは如何にして誕生したのか?

 

時は第百回戦国武闘会が開催される前まで遡る。

 

暗黒皇(ダーク・カイザー)計画。

 

不穏な気配の漂うその計画は、全てのサムライのオール・デリートを目指す絶滅計画の一部であり、妙な様子の魔光が先導し、氷牙が財力をつぎ込み、邪眼も加わった。

 

ゴッドと密接関係にある魔光から独立し、神殺しの魔弾《ゴッド・ジェノサイダー》を開発するにまで至った邪眼。

 

闇文明の超獣のみが所属するその派閥内においては、光やゴッドと組むことを肯定的に捉えるものは少なく、ゴッドに敵対心を持つものも多くいた。

 

邪眼という派閥の中にもまた派閥がある。

 

特に、極神戦争でゴッドに反旗を翻した《オルゼキア派》の残党のゴッドに対する闘争心は凄まじいものだった。

 

ゴッドと協力関係にある魔光が、神々に牙を向いた暗黒凰を模した暗黒皇(ダーク・カイザー)を作り出そうと言うのだから、これを支援したい邪眼の超獣は多くいた。

 

そういった超獣達は、魔光がゴッドを裏切ろうとしていると考えていたのだ。

 

……当主であるロマノフⅠ世はあまり乗り気ではなかったが。

 

 

 

 

超銀河銃(ギャラクシーガン)。それは、サムライを滅するための究極の兵器と言われている。

 

その銃の使い手に選ばれたのは、《シーザー》という超獣だった。

 

他の超獣にとっては、これといった印象のない、そもそも何家の何世かも分からない、なのにいつの間にか邪眼に所属していた超獣……程度にしか思われていない。

 

なぜシーザーが超銀河銃(ギャラクシーガン)の使い手に選ばれたのか。それは邪眼家のナイトの間で話題となり、最終的に、シーザーには秘められた潜在能力があり、ロマノフⅠ世がそれに気づいていたから選ばれた……いう事になった。

 

超銀河銃をシーザーが手にした時、凄まじい量の火のマナがシーザーの体に流れ込み、その体躯を巨大化させていった。

 

それはまるで、火の超獣と融合しているようであった。

 

みるみると姿が変わっていった。

 

変わり果てたシーザーに、もはやそれまでの面影はなかった。

 

 

 

 

一族を率いるナイトの長は、魔弾を超えた力、極魔弾を使用することができる。ロマノフⅠ世は戦国武闘会で覇権を取るべく禁じられし煉獄の極魔弾を開放した。

 

それは禁忌の力であり、使えば戦国武闘会はおろか世界に影響を及ぼしかねないものだった。

 

ロマノフⅠ世は、禁じられし煉獄の極魔弾を邪眼の祈祷師に解放させ、暗黒王の魂を手に入れた。

 

筋書きの通りに……

 

暗黒王。それはかつて、世界を絶望に(おとしい)れた存在。

 

ロマノフⅠ世は、暗黒王の魂に相応しい者を選ぶための邪眼のナイト同士のトーナメントを開催した。

 

 

 

 

「貴様こそ、王にふさわしい……」

 

トーナメントの決勝戦、大邪眼バルクライ王は、そう言って倒れた。

 

優勝候補のバルクライ王を倒し、トーナメントの頂点に立ったのはシーザーだった。

 

ロマノフは、シーザーを器に暗黒王の魂を封じ込めた。

 

さらにシーザーの体が巨大化し、また似ても似つかない姿へと変化した。

 

二度の変貌を経てたどり着いた姿。

 

それは究極にして最強のナイト。

 

こうして、ナイト達の手によって、"暗黒皇(ダーク・カイザー)"が、そこに誕生した。

 

魔力を巧みに操る蒼神龍を超え、偉大な星龍にも匹敵するほどの力を得たシーザーは、グレイテスト・シーザーと呼ばれるようになった。

 

グレイテスト・シーザー。

 

それは造られた、見せかけの皇帝。

 

 

 

 

時は今現在まで……ナイト達の会議が行われている時まで戻る。

 

魔光のネロ・グリフィス、ブラッディ・シャドウ。

 

邪眼のロマノフⅠ世、アウグストⅢ世。

 

氷牙のマクシミリアン王、アクア・マルガレーテ卿。

 

天雷のロレンツォと、大抜擢(だいばってき)されて緊張しているアヴァラルド。

 

魔光の城にて、錚々(そうそう)たるメンバー達によって会議が行われていた。

 

「ともかく、グレイテスト・シーザーはまたも試合を制し、武闘会を勝ち進んでいるわけだ」

 

「トドロキ……でしたかね? あのサムライは無様に負けましたなぁ!」

 

ネロ・グリフィスの発言に対し、アウグストが無遠慮に絡む。

 

「ほう、そなたには、あれが無様に見えたのかな?」

 

ロレンツォがその言葉に反応する。

 

「あれが無様以外の何に見えると言うのです? そうそう……無様といえば、魔光騎聖殿はあの無様なサムライ相手にさらに無様に瞬殺されたのでしたなぁ」

 

「……」

 

魔光騎聖ブラッディ・シャドウは沈黙を貫いている。

 

「アウグスト……お前は邪眼皇弟を名乗る騎士だ。その事を忘れるな」

 

ロマノフがアウグストにそうつぶやく。

 

(やぶ)から棒に何をおっしゃるのです。当然忘れているはずが無いではありませんか」

 

「……だといいがな」

 

「そうそう! 負けるといえば、確か明日、紫電の試合がありましたなぁ! そろそろ紫電にも……無様に負けて欲しいものですなぁ……!」

 

「ふむ……相手は誰だったかな?」

 

マクシミリアン王が、あごに手を当てて考えながら言った。

 

「我に記憶できぬ対戦カード、ただ一つとしてあらず。あの卑怯者、ハンゾウですよ」

 

その口ぶりからすると、アクア・マルガレーテ卿は戦国武闘会の全ての対戦カードを記憶しているらしかった。

 

「おおー! そうでしたかあ! ロレンツォ様に膝をつかせたあの! そう、ロレンツォ様はどこぞの誰ともしれん相手に負けたのでしたなぁ!」

 

「アウグスト」

 

ロマノフが釘を刺すが、アウグストは止まらない。

 

「これは紫電も、ジ・エンドかもしれませんね……! 正々堂々と正面から戦うことを好む紫電では、卑怯にどんな手でも使うハンゾウには勝てないかもしれません! おぉー……奴が卑怯者に負けるところを想像すると、もう私は……いや、待てよ? 紫電もまた、負けじと卑怯な戦法に手を染めるというのも悪くは……」

 

ドン! と、テーブルを叩く音がした。

 

テーブルを叩いたのは、ロマノフだった。

 

「紫電は、卑怯な手など使わん……」

 

「……おや、これは、失礼しました……」

 

流石のアウグストも頭を下げる。

 

全く、邪眼家同士で何をやっているのやら……と思い、頭の中でアウグストの評価を下げながら、アヴァラルドはなおも緊張していた。

 

「……随分紫電に肩入れしているようだが、筋書きは、分かっているな? ロマノフよ。お前の、目標は」

 

ネロ・グリフィスがロマノフに圧をかけた。

 

「……分かっている! 我が目標は唯一にして絶対! 全てのサムライのオール・デリート!」

 

暗黒の意志に囚われたロマノフは、第100回戦国武闘会を前に、サムライを含む世界のすべてをデリートすると宣戦布告した。

 

それは、オリジンの上層部が考えた、サムライとナイトの対立を深めるための戦略だった。

 

それは筋書きに過ぎず、実際は、ロマノフは暗黒の意思に囚われてなどいない。

 

しかし、オリジンの命令を受けたネロ・グリフィスが、ロマノフへ命令を下し、そのような行為をすることになった。

 

だがその行為は、悪役(ヒール)的パフォーマンスとして超獣達に受け入れられた。

 

それもそのはず、戦国武闘会において、過激な発言をパフォーマンスとして行う超獣は少なくないのだ。

 

極端な例を挙げれば、有名な選手の一人、ベルヘル・デ・ディオスなんて、"生まれた時から、全てを奪い、全てを破壊する事を定められた存在"と名乗っている。実際のところは、彼は子煩悩な親に育てられた、いわゆるボンボンだ。そのイメージを払拭するため、そんな過激な背景を後付けしている。

 

そして多くの超獣達は、それが設定だと知りながら、本当のことであるかのように楽しんでいるのだ。

 

彼の親はというと、息子の活躍を大変喜び、ペンライトを振って彼の試合を観戦している。ライブか何かと勘違いしているような気もする。

 

そして、ネロ・グリフィスですら、武闘会に出場した時の決め台詞は『死と恐怖で支配しよう』だ。つまり、悪役(ヒール)仕草というのは、かなり浸透してしまっている。

 

なぜなら、自信たっぷりな悪役(ヒール)仕草は、華々しい英雄(ヒーロー)仕草と同様に、人気を獲得できるからだ。

 

人気を獲得できるということは、平和な世においては特に大きい。

 

戦争で勝つことがヒエラルキーを決定する要素で無くなれば、人気を獲得することでヒエラルキーが決定されるようになる。

 

平和な世では、"人気である"というだけで、一定の力(物理的な力ではない)を得られる。ゆえに、英雄(ヒーロー)仕草や悪役(ヒール)仕草を行う選手は少なくない。もっとも、"格好いいから"というだけの理由で行っている者や、"その気はないが普通にしているだけで英雄(ヒーロー)っぽい"という選手もいるのだが(紫電は後者の典型的な例である)

 

さて、悪役(ヒール)仕草が浸透してしまっているせいで、ロマノフの宣戦布告は、オリジンの上層部の思惑通りの効果はなかった。本当に超獣世界のすべて……つまり、"地上の超獣達をすべて殲滅する"という宣言なのだが、超獣達はまさか本気で言っているとは思わず、パフォーマンスとして楽しんだ。

 

しかし、上層部とて無能ではない。狙いはそれだけではなく、もう一つあった。

 

もう一つの狙いとは、その宣戦布告をさせることにより、ロマノフに精神的負担を与え、冷静さを奪うことだったのだ。

 

オリジンの上層部はロマノフの頭脳を危険視し、冷静さをあらかじめ摘んでおこうと考えたのだった。

 

「……そう……分かっている……我が目標はサムライのオール・デリート……」

 

「そうだ。乗り気ではないのだろうが、それがお前の目標だ。しっかりと、務めは果たせよ。決勝では、ちゃんとグレイテスト・シーザーに超銀河銃(ギャラクシーガン)を使わせろ。断れば、邪眼家がどうなるかは……分かっているな?」

 

大帝ネロ・グリフィスはさらにロマノフに圧をかける。

 

ロマノフは拳を握りしめた。

 

「それも分かっている……だが一つ、一つだけ聞きたい。なぜ、大帝はサムライの絶滅計画を進めようとする。なぜ、急に人が変わったように、そんなことを」

 

「…………」

 

ロマノフになら話しても良いのではないか? とネロ・グリフィスは思った。

 

しかし、イナバ・ギーゼに逆らったら……イナバ・ギーゼと、その背後にいるオリジンなる勢力を相手に共に戦って欲しいと、ロマノフに助けを求めたら、イナバ・ギーゼはどう出る?

 

Ⅱ世を傷つけて苦しめて、私をイナバ・ギーゼの(がわ)に着かざるを得なくさせるのでは?

 

駄目だ。それは駄目だ。

 

やはり、話せない。助けは、求められない。私は、サムライを滅ぼそうとする乱心した大帝を演じなくてはならない。それが筋書きだ。

 

ネロ・グリフィスは長い沈黙の後、答えた。

 

「サムライは全て下賎(げせん)で下等。下賎(げせん)で下等な者どもはこの世から消した方がためになるからな。それだけだ」

 

その言葉を聞いて、ロマノフは静かに立ち上がり、魔銃に手をかけ、構えた。

 

「やめておけ。邪眼家がどうなってもいいのか?」

 

「我は……我はもう自分を抑えられない。このロマノフⅠ世が、今ここで……刺し違えてでも貴様を、ネロ・グリフィスを倒す!」

 

その時、ロマノフにすがりつく者がいた。

 

「ど、どうか……どうかお止め下さいませ……魔光大帝の怒りに触れたら、私達など消し炭にされてしまいます……」

 

アウグストは震えながらロマノフに懇願(こんがん)した。

 

挑発的な言動を取ることが多いアウグストだが、越えてはならない一線は理解している。魔光大帝の怒りに触れてはならないということは。だからこそ……

 

どうか、どうか……とアウグストは繰り返しつぶやいた。

 

ロマノフは魔銃を下ろし、椅子に座り直した。

 

「守るべきものがそばにいるというのは、良いものだな」

 

ネロ・グリフィスは遠い目をしながら言った。

 

ロマノフは、両手の拳を、血が出るほどに握っていた。

 

 

 

 

次回予告

 

「帰れーーッ! 戦国武闘会はお前らなんかが来るところじゃない!」

 

シノビに対する観客の大ブーイング!

 

「我らシノビは、これから大勢でお前たちを存分にいたぶるのだよ」

 

大勢の味方を呼び寄せるハンゾウの反則行為!

 

「ハ、ハンゾウ殿……なぜこのような事を……」

 

紫電も戸惑いを隠せなかったが……

 

「おのれえぇ!! ハンゾォォォォオオオオーーッッ!!」

 

卑怯なハンゾウに対し、紫電の怒りが爆発する!

 

次回、《卑怯! 邪悪なるハンゾウ!》

 

「てめえだけは、この紫電が許さねえぜ!!」

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