【完結】最終戦国武闘伝 〜バイオレット・ダークネス〜   作:無敵ざかり

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第四章 超銀河一閃
第一節 つかの間の休息、決勝戦まであと少し


1VS1のルールの準々決勝で、紫電は聖霊王エルレヴァインに打ち勝ち、準決勝へと進んだ。

 

ギャラクシーと共に挑んだ2VS2のルールの準決勝で、紫電は、準々決勝で大邪眼バルクライ王を破った《薩摩の超人(サイゴウ・ジャイアント)》とぶつかった。

 

以前はボルシャリオとラルックの力を借りなくては融合できなかったため4VS4以上の試合でなくてはシデン・ギャラクシーになれなかったが、その時にはもう、紫電とギャラクシーは自分達の力で融合することができるようになっていたため、シデン・ギャラクシーとして戦うことができた。

 

ボルシャリオとラルックの力で何度か融合させられると、自分達の力で融合できるようになるようだった。

 

森獣(しんじゅう)ツンネイチャー》と共に隙の見当たらない攻撃を繰り出す薩摩の超人(サイゴウ・ジャイアント)だったが、シデン・ギャラクシーには及ばず、敗れることとなった。

 

試合に勝利した後、ギャラクシーと共に闘技場の控え室で体をクールダウンさせていた紫電の元に、二人の竜が訪れた。

 

「武者殿! 大和殿! ここまで来てくださるとは!」

 

「やあ。紫電」

 

「決勝戦へと進んだな。今回もまた、お前の優勝かな?」

 

ボルメテウス・武者・ドラゴンとボルシャック・大和・ドラゴンが紫電に語りかける。

 

「いやあ、それはまだ分かりませぬよ!」

 

「さすが我の弟子だ」

 

ボルメテウス・武者・ドラゴンがそうつぶやいた。

 

「紫電は二足歩行型の竜なのだから、私の弟子だろう?」

 

ボルシャック・大和・ドラゴンが割って入る。

 

「いや、紫電は我の弟子だ」

 

「いやいや、私の弟子だ」

 

二人の師が、紫電は自分が育てたと言わんばかりに会話に花を咲かせる。花というより、火花だが。

 

「二人の弟子ですよ……」

 

紫電はぽつりと呟いた。火花はまだ咲いていた。

 

 

 

 

散々火花を咲かせた後、武者・ドラゴンは口を開いた。

 

「そうだ紫電……もう一つの準決勝の試合について知らせておこう。」

 

武闘会の闘技場の控え室に、試合を見られるモニターはない。試合を控えて緊張している選手や、試合を終えてクールダウン中の選手に、試合を見せて興奮させるのは如何(いかが)なものかという配慮(はいりょ)によるものである。

 

「はい。決勝の相手は一体誰になったのですか?」

 

「…………グレイテスト・シーザーだ」

 

と言って、黙り込む武者。今度は大和・ドラゴンが口を開く。

 

「準決勝に誰が進んだか、覚えているか?」

 

「はい。バイオレンス・迅雷・ドラゴンが1対1のルールの準々決勝で迅雷の精霊ホワイト・ヘヴンに勝ち、準決勝に進んだのでしたな。あれは見事な試合だった……拙者の試合と日程が被っていなくて、見れてよかった……恨みっこなしの親友との戦いというのも、また素晴らしい……」

 

正確には日程が被っていても、自分の試合の一つ前、一つ後の試合でなければ、直接見ることができるが、自分の試合が控えていると観戦に集中できないこともあるし、試合の後だと、先程の自分の試合の内容が気になって、これまた観戦に集中できないこともある。よって、しっかりと試合を見たいなら、やはり自分の試合と日程が被っていない方が良い。

 

「準々決勝で星狼王(せいろうおう)マスター・オブ・デスティニーを倒したグレイテスト・シーザーと、バイオレンス・迅雷・ドラゴンが2対2のルールの準決勝で戦うことになり、迅雷の精霊ホワイト・ヘヴンが助っ人として参加した」

 

「ほう。それで、グレイテスト・シーザーは誰と組んだのですかな?」

 

グレイテスト・シーザーは一体誰と組んだのか? 以前戦った時の感覚から、紫電はグレイテスト・シーザーの実力をそれなりに把握していた。

 

トドロキとの戦いを見たところでは、紫電(じぶん)の見立てよりは強かったらしいが、それでも、迅雷コンビを相手にするならば、相当に強い者と組む必要があると……

 

迅雷の二人に勝ったのなら、余程の手練(てだれ)と組んだに違いない。紫電はそう思っていた。

 

「…………一人だった」

 

「……え?」

 

続けて、大和は重々しく語る。

 

「奴は誰とも組まず、一人でホワイト・ヘヴンと迅雷・ドラゴンを打ち破った……」

 

1人で戦うことは、反則ではない。

 

例えば、2対2のチーム戦なら1人か2人で。4対4のチーム戦なら、1〜4人で戦うように。というのが武闘会のルールである。

 

もっとも、わざわざ少ない人数で戦おうとする選手は、まずいないのだが。

 

「紫電、気をつけろ。奴は底が知れない」

 

武者ですら、かつて世界を救った竜ですら、暗黒凰を打ち倒した竜ですら、暗黒皇(ダーク・カイザー)の力を危惧していた。

 

「武士道とは死ぬこと……という言葉もあるが、やはり生きてこそだと私は思う」

 

太古の時代から、一万年以上もの時を生きているボルシャック・大和・ドラゴンが述べると説得力が違う。

 

「……ギャラクシー、拙者達は、いっそう気を引き締めた方がいいらしいな」

 

「ええ、そのようですね」

 

 

 

 

時は少しだけ(さかのぼ)り……

 

もう一つの準決勝の試合。

 

迅雷・ドラゴンとホワイト・ヘヴンは、続けざまに撃ち出されるグレイテスト・シーザーの魔弾を受けて地に伏していた。立ち上がろうとする二人。グレイテスト・シーザーが、銃を剣に変形させ、二人に迫っていく。

 

傷つけたくない。血を見たくない……! 殺したくない!

 

シーザーは心の中で叫びを上げながら、迅雷・ドラゴンの鎧を纏った硬い鱗に覆われた体を、たやすく鎧ごと斬り裂いた。

 

「ぐわあああぁぁぁーーっ!!」

 

迅雷・ドラゴンが悲鳴をあげる。鮮血がしぶきをあげる。シーザーの体が返り血で赤く染まる。

 

何故だ……? なぜ戦わなくてはならないのだ……? 戦争でもないのに、なぜ戦う……?

 

戦国武闘会とは、なんだ……? なぜ戦わなくてはならないのだ……?

 

いや……分かっている……理由など分かっている……なぜ私は、今更そんなことを考えているのだ……

 

ロマノフ様のため……私は……試合に勝つ……勝たなくてはならない……勝ち上がらなくてはならない……! 優勝しなくてはならない……! それが私の、存在する理由……! 存在意義なのだから……!

 

試合を勝ち上がらなければ……私は……! 私ではなくなってしまう……!

 

傷つけなくてはならない。悲鳴を聞かなくてはならない。一方的に蹂躙しなくてはならない。悲しみを抱えながら、シーザーは鮮血に染まった剣を振りかざす。

 

「バ……バカな……グレイテスト・シーザー……! これ程とは……!!」

 

「ぎゃあああぁぁぁーっ!!」

 

虚ろな目のシーザーは、ホワイト・ヘヴンと迅雷・ドラゴンを斬りつけ続けた。

 

 

 

 

時は現在へと戻り……

 

「紫電、お主に客人が来ているのだ」

 

武者が客人とやらを連れて、後ろから紫電に話しかけた。

 

「客人?」

 

紫電は身に覚えのない来客に、首をかしげ、振り返る。振り返ってみると、そこには見上げるほどの巨体を持つ超獣が、下半身がアースイーターの巨人がいた。

 

「お初にお目にかかる。紫電殿」

 

巨人は紫電に話しかけた。

 

「そなたは……シノビ……か?」

 

どことなくシノビらしさを感じ取った紫電はそう問いかける。

 

「いかにも。我が名はドルゲユキムラ。終の怒流牙(ラスト・ニンジャ) ドルゲユキムラである」

 

「何の用があって拙者に会いに来たのかな?」

 

シノビと言えば卑怯、という印象を持っていた紫電は、決めつけるのは良くないと思いつつも、疑ってかかっていた。

 

「我から話そう」

 

武者・ドラゴンが間に入った。

 

武者が念じると、巨大、という言葉では言い表せないほど巨大な剣、超銀河剣が飛んできて、少し遠くの床に着地した。あまりの大きさに距離感が狂い、遠くにあっても近くにあると思ってしまうほどだった。

 

「それは……絶大な力を秘めていますね……この世界を破壊しかねない程の……」

 

紫電は驚きつつもそう述べた。

 

「やはり、分かるか……これは超銀河剣(ギャラクシーブレード)。対グレイテスト・シーザー用の魔導具だ。シャルル殿……いや、ボルシャリオ殿から聞いたのだが、奴もまた、決勝戦には強力な武器を持ち出してくる可能性がある。もし、強力な武器を使う奴に勝てないと思ったら、この魔導具を使うといい」

 

武者はその魔導具、超銀河剣(ギャラクシーブレード)を、いざとなったら使うことを紫電にすすめる。

 

「そういえば、最強最悪の魔弾を止められるのは拙者達くらいしかいないと、ボルシャリオは言っていたな……しかし、そこまでして勝つ理由とは? 勝利を求める気持ちは、拙者、誰にも負けませぬが、世界を破壊しようとしてまで勝とうとは思いませぬ」

 

「世界を破壊しかねない力を持っているのは、グレイテスト・シーザーも同じだ。極秘の調査によれば、グレイテスト・シーザーも世界を破壊しかねない武器を持っているようなのだ。奴が持ち出してくる可能性のある強力な武器とは、それのことだ」

 

武者は話を続ける。

 

「奴は試合中、時折正気を失ったような様子を見せることがある。奴が決勝戦に世界を破壊しかねない武器を持ち出し、そして正気を失い世界を破壊したら、大変なことになる……それを食い止めるため、もしもの時には、この魔導具を振るう覚悟をして欲しいのだ」

 

「世界を破壊から守るためですか……しかしこの剣を振るえば、それもまた、世界は無事では済まないのでは? 世界を破壊から守るために戦った結果、世界を破壊してしまっては意味がないではありませんか」

 

紫電のその疑問に、ドルゲユキムラが答える。

 

「その時は、我ら怒流牙(どるげ)をはじめとしたシノビ達で世界を守ろう。グレイテスト・シーザーの持つ武器は銃型のようだから、それから世界を守るのは難しいが、この魔導具は剣型だ。ならば、我らシノビ達で世界を守ることができる。紫電殿は、グレイテスト・シーザーを倒すことだけを考えて欲しい」

 

「シノビが、世界を守る? 本当にそんなことが……?」

 

「うむ、信じられないのも無理はない。シノビの今までの行いを振り返ってみればな。だが、この世界を守りたいという気持ちに偽りはない。悪役を演じていたのは、サムライとナイトに協力してもらうため、共通の敵を作り出す必要があったからなのだ。そう、シノビというサムライとナイト共通の敵ができることで、サムライとナイトに同じ思いを抱えてもらうための。この世界を守るためには、サムライとナイトの協力も必要になるだろうからな」

 

「む……そんな理由が……あったのか……シノビが……この世界を守るために……サムライとナイトにいずれ協力をさせるために……サムライとナイトの共通の敵となるため……もしや、あれはそのための、演技だったのか……」

 

紫電は卑怯者、ハンゾウのことを思い出していた。

 

「ハンゾウの事、悪く思わないでやって欲しい。本来は性根の優しい奴だ。全てはこの世界を守るためだったのだ」

 

「……」

 

沈黙する紫電。

 

「紫電、思うところは色々とあるだろうが……」

 

大和・ドラゴンが紫電にそう声をかけた。

 

「そうですね……ハンゾウ殿相手には、やりすぎてしまった……」

 

「何、ハンゾウは作戦として、紫電殿をわざと怒らせたのだ。気に病むことはない」

 

落ち込む紫電に、ドルゲユキムラは気に病まないよう言った。

 

「……」

 

「ではまた、決勝戦の日に会おう。」

 

ドルゲユキムラはそう言うと煙に身を包んで姿を消した。

 

 

 

 

気に病むことはないと言われた紫電だったが、この世界を守るための行動をした相手に力任せに怒りをぶつけて叩きのめしてしまったことは、すぐには割りきれなかった。

 

「……」

 

そんな紫電の思考を、ある者達の言葉が止める。

 

「あのー……」

 

「……?」

 

「ちょっといいかな、紫電……選手……」

 

「話があるんだとよ」

 

ある者達とは、トドロキとベンケイだった。

 

 

 

 

「トドロキよ、では、そなたは、グレイテスト・シーザーが悲しそうな目をしているように見えたのが気になるというのだな」

 

武者は落ち着いた声色でトドロキに聞いた。

 

「う、うん……そうなんだ……」

 

武者、大和、紫電というサムライの大物達に囲まれ、トドロキは緊張気味に答えた。

 

「ふむ……間近で見て戦った者にしか、分からないこともあるのかもしれんな」

 

「紫電はどう思う?」

 

大和が聞いた。

 

「うむ……トドロキよ、拙者も奴と戦った時、違和感は感じていたのだ。その違和感の正体が何なのか、分からずにいたのだが……悲しみこそが、もしかしたらその違和感の正体だったのかもしれない」

 

「紫電選手も感じてたか……それと、オラ、あいつが戦いを楽しんでないような気もして、それも気になったんだ」

 

「拙者も……そう感じていた。奴の戦いぶりからは、"楽しさ"が全く感じられなかったのだ。かといって、"勝ちたい"という気持ちも感じられなかった。奴はただ、(うつ)ろだった」

 

戦国武闘会で超獣が戦う理由は主に二つ。一つ目は、"楽しいから"である。

 

紫電やトドロキは、楽しいから戦う超獣だ。

 

二つ目は、"勝ちたいから"である。

 

"サムライに負けてたまるか"や、"ナイトに負けてたまるか"……あるいは、"サムライにもナイトにも負けてたまるか"といった動機で戦国武闘会に出場する超獣達もいる。

 

「奴は……グレイテスト・シーザーは、まるで、"勝ちたくないのに勝たなければならない"と思っているかのような……そんなふうに、拙者には感じられた……」

 

「"勝ちたくないのに、勝たなければならない"……?」

 

「奴は戦いが、嫌いなのかもしれない……」

 

「……? 超獣って基本的に戦いが好きなものだろ? だからここまで戦国武闘会が盛り上がったわけだし……まあ、戦いに興味がない奴はいるかもしれないけど、嫌いまで行く奴って……」

 

戦いが嫌いな超獣などまずいない、というのが、トドロキと紫電にとっての真実だった

 

「うむ。だが中には……嫌いな者がいてもおかしくない。どんなものでも、好きな者も嫌いな者もいるからな……」

 

「戦いが嫌い……か……じゃあなんで、グレイテスト・シーザーは武闘会に出てるんだろう……?」

 

「権力者に脅されてんじゃねーのか?」

 

ベンケイがズバリと言う。

 

「ええっ!? なんの意味があって、脅して武闘会に出場させるんだよ!?」

 

トドロキは理解ができない。

 

「武者さんよ。さっき聞かせてもらったあんたらの話によると、グレイテスト・シーザーは正気を失うことがあって、世界を破壊できる武器を持ってるってことだよな」

 

「うむ」

 

「もしかしたら、その武器を使えるのは奴だけなのかもしれねえ。だとしたら、みんなが注目する場で世界を破壊したいと思ってる愉快犯が、奴を脅して、武闘会に出場させる。武闘会で奴が正気を失って世界を破壊すれば、愉快犯の思うツボってワケさ」

 

「でも、邪眼のお偉いさんのナイトを脅せる権力者なんているかなあ?」

 

トドロキが疑問を呈する。

 

「邪眼? なんで邪眼のナイトの話になるんだよ」

 

「いや、だって、グレイテスト・シーザーって闇のナイトだろ? 闇のナイトってことは、邪眼か魔光かのどっちかだろ? あいつ、皇って肩書きだろ? てことはどのくらいか知らないけどお偉いさんなんだよ。で、魔光のグレゴリアスがあいつに対してタメ口だったじゃないか。ってことは、魔光のお偉いさんじゃないってことだよ」

 

「ふうんなるほど……少なくとも自分とこのお偉いさんにはタメ口聞かないだろうからな。魔光じゃなさそうってのは、納得できるな。けどよ、あいつの肩書き、邪眼のなんたらとかじゃなくて、暗黒皇(ダーク・カイザー)だぜ? 別に邪眼のナイトでもないんじゃねーの」

 

「邪眼と魔光以外に、闇のナイトなんて聞いたことがないじゃないか」

 

「うーん……じゃあ邪眼なのかねえ……しかしあいつ、お前の言う通り、"皇"の肩書きを持ってるからなあ……邪眼の"皇"ってことは、ロマノフやアレクサンドル級の地位を持ってるってことだぜ?」

 

「そうなの? そんなに偉いの? 皇って」

 

実際はグレイテスト・シーザーの"皇"の肩書きは見せかけに過ぎないのだが、ベンケイ達がそれに気づけるはずもない。

 

「ああ。まぁ当主のロマノフは実質さらに一つ上の(くらい)だが、そのロマノフですら、"皇"に言うことを聞かせるのは簡単じゃない。最近は、アレクサンドルの奴が、結構権力握ってやがるらしいしな」

 

ベンケイ達が知るはずもないが、アレクサンドルはロマノフを敬愛し、敬愛しているからこそ、邪眼の実権を握るべきは自分だと考えている。ロマノフを当主としたまま、自分が邪眼を動かすのを、アレクサンドルは理想としている。

 

ロマノフは甘い。このままではいずれ内外から寝首をかかれると。

 

ロマノフをずっと当主でいさせるために、アレクサンドルは邪眼の実権を握りたいのだ。

 

が、ロマノフもまた、それを知らない。アレクサンドルは、誰にもそれを話したことがない。

 

「ロマノフに圧力かけられても、アレクサンドルはある程度好き勝手出来ちまうってことだ。つまり、ロマノフがアレクサンドルと同じく"皇"の(くらい)を持つグレイテスト・シーザーを、権力をもって脅してるってのも考えづらい。脅したところで言う事聞かないだろって話だからな。ってことは、邪眼の"皇"レベルの超獣を権力をもって脅せる奴なんているのかって話で……」

 

その時、ギャラクシーが核心をつくような口調で言った。

 

「魔光大帝……ですか……?」

 

「「「!!」」」

 

魔光大帝ネロ・グリフィス。全てのナイトの中で、最も権力を持つ存在。その魔光大帝なら、邪眼の"皇"を権力をもって脅すことも可能かもしれない。

 

「でも……だとしたらあの魔光大帝が……なんで……? 魔光はいけ好かない奴もいるけど、戦国武闘会を、死人が出ない本当の平和の祭典にしてくれたいい奴らじゃないか。その時からずっと魔光のトップのネロ・グリフィスが、世界を破壊しようとするなんて変だとオラ思うんだけど……」

 

「そこなんだよな……」

 

ベンケイにも、理由は分からない。

 

「ん……? いや……思い出した……! アヴァラルドが言ってた! 最近、魔光は様子が変だって……!」

 

「そう言えば言ってたな……お貴族様は大変だなと思って聞き流してたが……」

 

「私の名を呼んだかな?」

 

「「うわっ!」」

 

トドロキとベンケイの後ろに、いつの間にかアヴァラルドが立っていた。

 

「おどかすな! お前! いつから控え室(ここ)に!」

 

ベンケイは羽をパタパタさせて抗議する。

 

「いや、本当についさっきだ。走っている少年達を見かけたので挨拶でもと思って後をつけたら、ここに入って行ったのが見えたのでな」

 

「後をつけるな! その場で声をかけろ!」

 

「貴族たるもの、大声を出すのは品がない……」

 

「黙って後をつけるのはいいのかよ! 貴族として! それも品がないだろ!」

 

「……」

 

「なんとか言え!」

 

「ガシャドクロ君は細かいことにこだわるのだな」

 

「……ベンケイだよ! 一瞬誰のことかと思って反応遅れたじゃねーか!」

 

おどけているようで至って真面目なアヴァラルドと、ワーワーと抗議するベンケイ。

 

「少し、いいだろうか」

 

紫電が口を開くと、二人はそちらを見た。

 

「すまない、ロマノフ……貴殿達に、以前ロマノフから聞いた、極秘の話をしよう……貴殿達になら伝えても大丈夫だろう……武者殿と大和殿も、聞いて下され」

 

「うむ」

 

「ああ」

 

「魔光の上層部で、全てのサムライをオール・デリートする"絶滅計画"の実行が決まった……とのことだ」

 

「「え!?」」

 

「「「何!?」」」

 

「絶滅計画は魔光大帝ネロ・グリフィスの意思によるもので、なぜ大帝がそのような意志を持ったかは不明。そして魔光大帝は……焦っているらしい」

 

「焦っている……?」

 

「なんでだ?」

 

武者にもトドロキにも、その理由は分からない。もちろん紫電にも、そしてロマノフにも。

 

「分からぬ……だが全てのナイトの中で最も強い権力を持つ魔光大帝は、邪眼と氷牙に圧力をかけ、協力させているようだ。そして、極魔弾というものを解放させたらしい。ロマノフ曰く、ただならぬことが起きているそうだ」

 

「そんなことが……」

 

アヴァラルドも驚きを隠せない。

 

「ロマノフも言っていた……今の魔光大帝はどうもおかしいと……」

 

「そうか……やっぱりおかしいのか……」

 

トドロキ達は、なぜ? と考える。

 

ベンケイが口を開く。

 

「ともかくだ。この場で推測できることは、何らかの理由で乱心した魔光大帝が、邪眼と魔光に圧力をかけて、グレイテスト・シーザーに世界を破壊させようとしてるんじゃないかってことだな。それ以上は考えても分かんねえよ。紫電さんよ。話に付き合ってくれてありがとな。だけど、これ以上話し合ってもしょうがねえ。これ以上邪魔するつもりはないぜ。あんたは決勝戦に備えてくれ」

 

「いや、邪魔ではない。非常に大事な話であった。だが、そうだな……これ以上ここで考えても、分かることはないだろう。グレイテスト・シーザーは魔光大帝に脅されている……それをこの場での結論としておこう。だがまだ気になるのは……グレイテスト・シーザーが本当に悲しみを抱えながら戦っているのかということだな……」

 

紫電はその一点が気にかかっているようだった。

 

「実はオラもそこはちょっと自信ない……本当にあいつが悲しみを抱えているのか……紫電選手は、決勝戦で、もう一度グレイテスト・シーザーと戦うだろ? だから紫電選手になら、今度こそ、あいつがどんな気持ちを抱えているのかを、本当に分かるかもしれないって……一回戦っただけじゃ分からなくても、二回戦えば……」

 

トドロキは唯一決勝戦グレイテスト・シーザーと戦える紫電に、託したかった。

 

「……うむ。奴が本当に悲しみを抱えているのか、本当に虚ろなのか、よく意識しながら戦えば、分かるだろう。戦いとは相互理解の側面も持つからな。こと殺し合いではなく、(たた)え合うべき競い合いである戦国武闘会においては、なおさらだ」

 

紫電はその実力と人気ゆえに反感を買ってしまうことも多いが、そんな相手とも、修練や試合を通して理解し合ってきた経験を持つ。なればこそ、グレイテスト・シーザーのことも理解出来るかもしれない。そう思っていた。

 

「できればあいつを、救ってあげてほしいんだよ、チャンピオン……頼む!」

 

トドロキは紫電に頭を下げて頼んだ。

 

「おいお前トドロキ、何もそこまで……」

 

ベンケイは驚く。トドロキがグレイテスト・シーザーのために頭まで下げることに。確かにトドロキは気のいい奴だ。だが、そこまでするとは……

 

「そうだ。頭を下げることなどない。拙者は頼まれずとも、もう奴を救うつもりだ。貴殿の言う通り、拙者はチャンピオンだし、拙者とギャラクシーは超聖竜(ちょうせいりゅう)だ。超聖竜(ちょうせいりゅう)とは、世界すら救える存在。ならば、一人や二人くらい、救えるはずさ」

 

誰かを救うというのがどれだけ難しいことか。だが、それが必ずしも不可能ではない。ということを、紫電は知っている。紫電を含め、救われたことのある超獣はたくさんいるのだから。

 

「ありがとう……紫電!」

 

トドロキは自分の事のようにお礼を言った。

 

 

 

 

後日――

 

白い鳥が空高く飛んでいた。

 

見事なまでの晴天。

 

例え可能性が100万分の1でも、優勝という夢が叶うなら。そう願って戦ってきた超獣達の頂点が、この日決まる。

 

雲一つない晴れ間の下、今、超聖竜(スーパーチャンプ)シデン・ギャラクシーと、暗黒皇(ダーク・カイザー)グレイテスト・シーザーが対峙(たいじ)する決勝戦の火蓋(ひぶた)が、切って落とされようとしていた。

 

 

 

 

次回予告

 

「助けてくれえぇーっ!」

 

超銀河弾(ギャラクシーショット)が観客を襲う!

 

「このままでは……世界は……!」

 

世界を絶望が包む!

 

「超銀河・一閃!!」

 

超銀河剣(ギャラクシーブレード)が、ついに振るわれる!

 

【嫌だ……それは嫌だあぁぁーー!!】

 

グレイテスト・シーザー、最期の時。

 

次回《第百回戦国武闘会・決勝戦》

 

「決勝戦に勝ったのは……ボルバルザーク・紫電・ドラゴンだ!!」

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