【完結】最終戦国武闘伝 〜バイオレット・ダークネス〜 作:無敵ざかり
「ごきげんよう。紫電」
「ロマノフに、何をしている……魔光大帝!」
「人の心配をしている場合ではないぞ、紫電よ。我らはこの大軍をもって、戦国の世の頂点に立つ貴様を叩き潰す……やがて驚異となる貴様をな」
「驚異となる……? どういうことだ?」
Ⅱ世を人質に取られているネロ・グリフィスは、古代の軍勢の、オリジンの脅威になりうると思われた第百回戦国武闘会の優勝者を……つまり紫電を倒し、連れ帰れという命令を受けていた。
それを知る
「そこの超獣、巻き込まれたか? 案ずるな。紫電なら、必ずお前を逃がしてくれる」
捕らえられているロマノフはシーザーに語りかけた。姿も声も変わっているシーザーがシーザーだとは、ロマノフを含めた誰もが気づいていなかった。
「いえ……私は……!」
「カエサル。魔光の皆が見ています。今は黙っていた方がいいかと」
思わず正体を言おうとしたシーザーを、ギャラクシーが小声で制止した。
ネロ・グリフィスが邪眼に圧力をかけ、シーザーを脅していた……それが、紫電達の推測だった。ゆえに、カエサル=シーザーということはこの場では明かさない方が良いと考えたのだ。
「さて……紫電、お前は戦いが好きだったな。喜べ、我ら全員でお前と戦ってや」
ネロ・グリフィスの言葉を、ロマノフがさえぎった。
「逃げろ紫電! ギャラクシー! 我は人質だ! 人質には価値がある!お前達に言うことを聞かせるまで、ネロ・グリフィスは我を殺さない! だから逃げろ! 今のお前達にできることはそれだ! 逃げろ!」
「だ……だが……」
紫電は迷っていた。
魔光の精鋭の大軍相手に命懸けで戦うのはさすがに避けた方が良い……つまり、ロマノフの言う通り逃げるべきなのか。それとも、ロマノフを助けるために、この場で魔光の大軍に挑むべきなのか。勝てる確率は……? と。
「何より……何より拙者とお前は友だ! ロマノフ! 友を置いては行けない!!」
「お前と我は……友ではない! だから気にせず行け!! 紫電!!」
「ロ、ロマノフ……すまない! ギャラクシー、カエサル、拙者に掴まってくれ!」
「はい!」
「こ……こうか……?」
二人が紫電に掴まる。そして……
「ここは逃げるッ!」
紫電の鎧が展開し、紫電のマナをエネルギー源とし、サムライの開発したブースター『キリモミ・ヤマアラシ』が火を噴く。
紫電が試合でも使うキリモミ・ヤマアラシ。それが試合中では使われない最大出力を発揮した。
一瞬のうちに、紫電達は高速で彼方へと飛んで行った。
「追え! フェルナンド以外全員行け! 奴らを追え!」
ネロ・グリフィスは魔光の騎士達に紫電達を追わせた。
紫電は、ギャラクシーのアドバイスを聞き、魔光の騎士達の目を
ネロ・グリフィスは紫電達を追う魔光の騎士達の小さくなった姿を眺めていた。
「フン、こしゃくな真似を……あの大軍から逃げれるものか」
バキン、と、音がした。
そちらを見ると……
ロマノフが
「貴様! 手枷を壊そうと思えば壊せたのか! ……そうか! わざと壊さずにいたな! そうすれば、
ネロ・グリフィスの推測は当たっていた。
「そういうことだ。お前は奇襲をしかけ、我を
ロマノフが
「フン……確かに、我ら二人からなら、逃げられるかもしれんな……」
「逃げるつもりなどない……二度目の宣言になるな。ネロ・グリフィス! ここで貴様を、刺し違えてでも倒す!」
ロマノフは、再びネロ・グリフィスに魔銃を向けた。
「私が、目に入らないとでも言うのかな?」
その前に、フェルナンドが立ち塞がった。
「私を倒さずに、ネロ様に戦いを挑めるとでも?」
「フン。そう来ると思っていたわ。相手をしてやる。かかって来るが良い」
「それは……こっちの
フェルナンドの放った魔弾が、ロマノフの力を奪い、衰弱させていく。
「お得意の衰弱か」
「ああ。衰弱した体で、この巨体は倒せまい」
フェルナンドの槍がロマノフに迫る。
「そう来ると思っていたぞ!」
ロマノフは二丁の銃剣タイプの魔銃でフェルナンドの魔銃を受け止めた。
「受け止めるか。それならば、このまま押し潰してやろう」
「ぐっ……!」
フェルナンドの巨大な槍が、ロマノフの体を押し込んでいく。
ロマノフの足が、地面にめり込んでいく。
そしてとうとう、膝を着く。
「終わりだ」
フェルナンドが一層力を込める。
「かかったな」
ロマノフが不敵に言った。
「……何?」
バキィィン! と音を立ててフェルナンドの槍が折れる。
「まさか……武器の破壊を狙っていたのか!」
「100年折れなかったフェルナンドの槍を折るとは……!」
ネロ・グリフィスも驚きを隠せなかった。
「そのまさかよ! そんな武器程度、我なら折れるわ!」
そしてロマノフは、一気に懐に飛び込み、両手の魔銃の剣部分をフェルナンドに突き刺し、持ち上げた。
「ゼロ距離はよく効くぞ。それが二発だ!」
「させるか!!」
持ち上げられたフェルナンドはロマノフを殴り倒そうとするが……
「遅い! 魔弾ロマノフ・ストライク!!」
二発の魔弾が、フェルナンドを空高く打ち上げた。
「フェルナンド!」
ネロ・グリフィスの声が響いた。
そして落下し、大きな体が、どしゃり! と音を立てた。
「ネロ様……申し訳ありません……」
フェルナンドは生きてはいたが、もう戦えなかった。回復には少し時間を要するだろう。
「フェルナンドよ、我の方が一枚上手だったらしいな!」
「ふむ、ふむ……」
その頃、ロレンツォは、天雷の城で、天雷のナイト達と共に集めた情報に目を通していた。
「なるほど……」
そう、ロレンツォは、"これが最後の武闘会"という噂の
「見当がついたぞ」
ついに膨大な量の情報に目を通し終え、そして一言放った。
「オリジン……!」
一方、闘技場内のボルシャリオ達は……
「ミラクル・ショー! こっちも数え終わったぞ!」
「シャルルさん! ありがとうございます! 死亡者の合計数は……なんと! 残りのソウル・キャッチャーの数と同じとは!」
「ジャストで足りたか! 幸運だったな!」
「すぐにみんなを復活させるでち!」
そして紫電達は森を利用し、上手く魔光のナイト達から逃げ切っていた。
そして、ある場所に到着していた。
「ここは……?」
シーザーが聞き、紫電が答える。
「拙者とロマノフが密かに会うときに使っていた廃城だ。この階段から地下室へと繋がる。地下なら見つかりにくいだろう。ひとまずここに隠れておこう」
紫電、シーザー、ギャラクシーの三人は紫電が魔導具に灯した炎を明かりにして階段を下り、地下へと潜っていく。
そして地下室へと着いた。
「確かここに
紫電は
「ここで……紫電とロマノフ様が……」
「会っていたのですね」
シーザーとギャラクシーは、彼らにとっては大きくない部屋の中を見回す。
蜘蛛の巣も
「さて……一旦落ち着いたところで、シーザー。拙者は貴殿に聞きたいことがある」
「私に……?」
「ああ。拙者達は、魔光大帝が邪眼に圧力をかけたとロマノフから聞いている。そして魔光大帝がシーザーを脅して武闘会に出場させたと考えているのだが……合っているか?」
「魔光が……邪眼に圧力をかけたというのは……合っている……だから……私は……グレイテスト・シーザーになった……だが……私が……直接脅された訳では……ないな……」
「そうなのか?」
「ああ……脅されたのは……ロマノフ様の方だ……邪眼家の騎士達が……どうなってもいいと思うなら……逆らえと……そう言われたらしい……」
「ふむ……では貴殿は、ロマノフが脅されているのを知って、邪眼家を守るためにグレイテスト・シーザーになって戦国武闘会に出場したということか?」
「まあ……結果的には……そうなるが……」
「結果的?」
「ああ……私には……昔の記憶がない……気がついたら邪眼家の……城の中にいた……それが私の……最初の記憶だ」
「記憶を失っているのか?」
「かもしれないし……あるいは……そもそも……思い出す記憶が……ないのかもしれない」
「どういうことだ?」
「人工的に……作り出された……超獣なのかもしれない……ということだ……」
「……なるほど。魔術で、成長した状態で生み出された……かもしれないということか。子供時代が存在せず、既に大人の状態で生み出されたのならば、まるで記憶を失ったような感じにはなるな……その線も考えられるか……」
「当時の私は……思考することすら……出来なかった……何を……考えれば……いいのかすら……分からなかったのだ……そんな時……ロマノフ様が
「そうだったのか……」
「そして私は……紫電や戦国武闘会について……考えるようになったのだ……そして……私は……ロマノフ様を通して……魔光が私に何を期待しているのかを知った……決勝戦で……
「それも計画のうち……か……」
「私は……戦国武闘会を勝ち上がることだけが……私の存在意義だと思っていた……しかし……決勝戦で紫電が気づかせてくれた……勝つことが……私の存在意義ではないと……負けても……私は私でなくなったりはしないと……気づかせてくれた……であれば……私には……もう戦う理由はない……私は戦いが嫌いなのだから……」
「やはり戦いが嫌いだったか。なぜ嫌いなのだ?」
「……意味が分からないからだ。なぜ、傷つけあう必要がある」
「戦う意味が分からない、か……守るための戦いならどうだ?」
「守るための……戦い?」
「例えば、天雷の騎士は平和な世を守るため、武闘会とは無関係な争いを取り締まるために戦っている。守るための戦いだ」
「……なるほど……確かに……それなら悪くないかもしれない……」
「そして、拙者達にも守りたい者が今、いるだろう」
「……ロマノフ様……!!」
シーザーは思わず立ち上がった。
「そうだ。ロマノフを助けるため、拙者は魔光と戦いたい。魔光大帝は家臣達を皆拙者達の追跡に向かわせた。拙者達が逃げ、魔光が追う。奴らはそう認識しているだろう。だから、少しここに潜伏した後、裏をかく。拙者達が追うのだ。魔光大帝を。拙者達が魔光大帝の元へ行けば、守りは手薄になっているはずだ。つまり、ロマノフを助けられる可能性がある」
「……私にも……私にも協力させてくれ!」
「もちろんだ。ありがとう。シーザー。だが、もう一つ言わせてくれ」
「……なんだ……?」
「戦国武闘会の素晴らしさについてだ。シーザーは戦う意味が分からないと言った。それは楽しさが分からないからだろう。楽しさというのは主観的なものだから、分からないのは仕方ない。だが……戦国武闘会のもう一つ重要な側面、それは理解し合えるということだ」
「理解……し合える……?」
「自分で言うのもなんだが、拙者は強い。だから、
「……そんなことが……?」
「ああ。戦国武闘会は称え合う戦い。"例え悪しき計画を企む超獣であっても、戦国武闘会で称えられれば、そんな計画を忘れてしまう"……という言い回しがあるくらいだ。超獣達の仲を良くし、悪事を未然に防ぐ……つまり、戦国武闘会は世界平和の維持に貢献している……と言えるのだよ。戦国武闘会も、守るための戦いと言えるのだ」
「守る……ため……武闘会も……」
シーザーは沈黙し、そして口を開いた。
「ありがとう……紫電……そうだな……紫電が私を救ってくれたのも……武闘会があったから……だものな……」
「ああ、そうだな。きっと、武闘会がなければ、拙者達は出会うことが出来なかった」
「もしかしたら……少し……戦いを……好きになれるかもしれない……特に……戦国武闘会のことは……」
「ありがとう。シーザー。そしてギャラクシー。共にロマノフを救い出そう」
「ああ……」
「ええ」
「次は貴様だ……ネロ・グリフィス。我は貴様を、刺し違えてでもこの場で倒す!」
ロマノフは、これ以上ネロ・グリフィスの暴挙を見過ごせなかった。特に、紫電を狙うという、暴挙中の暴挙は。
「ネロ様……お気をつけ下さい……奴は本気です……やらなければ……やられるかもしれません……」
倒れているフェルナンドが、ネロ・グリフィスに助言する。
「ああ、分かった。奴はここで始末する。拘束できんのなら、人質としての価値もない。先程、闘技場内で蘇生活動を行っているナイト達から連絡があった通り、ソウル・キャッチャーは全て撃ち尽くしたそうだから、殺して持ち運んでも人質としては機能しないしな。新たなソウル・キャッチャーが完成する頃には、ロマノフの蘇生はもう不可能だろう」
ネロ・グリフィスは紅の刃の付いた魔銃を握る手に力を込める。
「かかって来い、ネロ・グリフィス!」
「かかって来るのは貴様の方だ! どちらが格上か思い知らせてやろう!」
「魔弾ロマノフ・ストライク!」
「魔弾チェーン・スパーク!」
ロマノフが撃ち出した闇の魔弾を、ネロ・グリフィスは光の鎖の魔弾で絡め取り、引きちぎった。
「フ……この程度では届かぬか」
「当たり前よ。来るならもっと本気で来い」
「その言葉……後悔することになるぞ!」
ロマノフは、今度は、魔弾ロマノフ・ストライクを連射する。
いくつもの魔弾がネロ・グリフィスに襲いかかる。
「これは防げるかな!? ネロ・グリフィス!」
ネロ・グリフィスは襲いかかる魔弾をチェーン・スパークで絡めとるが、全てには対応できない。
一つの魔弾がネロ・グリフィスに着弾した。
そして――その傷口から光の鎖が飛び出し、他の魔弾を絡め取り、残りの攻撃を防いだ。
「なっ……!?」
「我も舐められたものよ。この程度、肉を切らせれば対応出来るわ」
「体に魔弾を仕込んでいたのか……! ネロ・グリフィスの力は痛みを……ダメージを受けると起動する力……! しかし体内に魔弾を仕込むとは……暴発が怖くないのか!」
体内に魔弾を仕込めば、体の中の魔力に反応し意図しないタイミングで爆発――暴発する危険性があった。
「怖くないのかだと……怖いさ。だが、やらなくてはならないッ!」
ネロ・グリフィスは魔弾デュアル・ザンジバルを発動。魔弾は茨でロマノフを絡め取り、衰弱させた。
「クハハハハ! この程度の魔弾では、我は倒せんぞ!」
ロマノフはわざと攻撃を受け、あえて魔銃から出る茨に絡め取らていた。ロマノフは茨を引っ張り、じりじりとネロ・グリフィスを自分に近づける。
その時、ネロの体が爆発した。
「クク……クフハハハハハ! 言ったであろう! 暴発すると!」
「……違うな。これは暴発ではない」
ネロ・グリフィスの体が、また爆発した。
二度、三度と……
「な……に……?」
「体内の魔弾に魔力を集中させ、わざと爆発させているのだよ」
「そんな……そんなことをすれば……」
「我はダメージを受けるな。そして、ダメージを受ければ、我の力が起動する。魔弾を発動する力が!」
「馬鹿な! お前も死ぬぞ!」
「そうかもな。だが、死なない可能性に賭けるしかない。お前に勝つにはな!」
茨が増殖し、ロマノフをさらに絡めとった。トゲがその身体に突き刺さり、さらに力を吸い取っていく。
「な……! あ……! あ……あ……」
ロマノフは衰弱しきった。完全に力を吸い取られた……そして、完全に力を吸い取られた者は……死ぬ。
「ネ……ネ……ロ……グ、リ……フィ、ス……」
ロマノフはまだ立っていたが、倒れるのは時間の問題だった。
「ハァ、ハァ、賭けに勝ったのは……私のようだな!」
ネロ・グリフィスは、傷を押さえながら膝をついた。そして思う。
すまない……ロマノフ……すまない……! 私は乱心した大帝を演じ続けなければいけない……! と。
「クフ……クハハハハハハハハッ!」
ロマノフが高笑いする。
「……何が、おかしい?」
「クフフ……サムライのオール・デリートを命じられた我を殺す者がいるとしたら……サムライの誰かか……邪眼が魔光を裏切ったとして、邪眼と同じく魔光に圧力をかけられている氷牙の何者かだと思っていたが……魔光大帝直々に葬ってもらえるとは……光栄だよ、ハァハハハハハハハハハッ!」
「……死にゆく者の
「ネロ・グリフィスよ……実の所はな……我はお前を、尊敬しておったのだぞ……聖魔合一を掲げ、光からも闇からも
ネロ・グリフィスは目を見開き、思った。
ロ……ロマノフ……そんなふうに思ってくれていたのか……! 私も……私もお前のことは尊敬していた……! 無愛想だが、名門邪眼家の当主でありながら、決して
「そんなお前と戦えたのは、かえって良かったかもしれんな……! クハハハハハハッ……!」
ロマノフも膝を着く。
「……言いたいことはそれで終わりか? ソウル・キャッチャーは尽きた。お前は復活できん。言いたいことがあるならば、言えるうちに言っておけ」
「ガハッ……!」
血を吐くロマノフ。
「フフ……とうとう、この時が、邪眼皇ロマノフⅠ世の最期だ! 観衆がいないのが惜しいな!」
立ち上がりながら、ネロ・グリフィスは心の中で
すまない! 許してくれ、とは言わない。ロマノフ。すまない! すまない! と……
「後は頼んだぞ、紫電……我はここまでのようだ……だが……我らは再び立ち上がる……!」
そう言って、ロマノフは事切れた。
邪眼皇ロマノフⅠ世、戦国の世に散る。
そして太古の軍勢オリジンは、超獣世界への侵攻を開始した。
「超獣世界に住む超獣達……"地上の超獣達"の実際の強さはどれほどか……シミュレーションを超える強さがあるのか、見せてもらおうじゃないか。試しに実戦を挑んでみる。そういうことも必要だ。試さなければ、何も変わらないからね。さぁ……始めよう」
次回予告
「魔導具は、語ることすら禁じられ、歴史の闇に葬られたのであります」
フルスロット・サージェントが語る真実とは!?
「無事か? フルスロット」
共に戦うアレクセイとフルスロット!
「どいていろ。《魔弾ストリーム・サークル》」
オリジンの戦士、スペルギア・ファントムの猛攻が止まらない!
「魔導具もなかなか、悪くないな」
ナイトのアレクセイが魔導具を使う!?
次回、《アレクセイ駆ける》
「「「インフェルノ・サイン!」」」