【完結】最終戦国武闘伝 〜バイオレット・ダークネス〜   作:無敵ざかり

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第四節 アレクセイ駆ける

時は以前に(さかのぼ)り……

 

「会場にお集まりの皆様! お待たせいたしました! 只今より邪眼銃士アレクセイ候選手VSフルスロット・サージェント選手の試合を行います! それではデュエマ・スタートオォ!」

 

「お手合わせ願います! アレクセイ殿!」

 

フルスロット・サージェントなる魚人のような超獣は、二つの魔導具を手にしていた。

 

「水のサムライ……か……」

 

「光の魔導具!?」

 

「光の魔導具を実際に見るのは、俺は初めてだな……」

 

観客達は思い思いの感想を口にする。

 

「行きますぞ! 《天扇 ハタフリ・ハフリーズ》! 《流楯(りゅうじゅん) スプラッシュ・ディフェンサー》!」

 

フルスロットは右手に薙刀(なぎなた)のような形の光の魔道具を持ち、左手で水の盾型魔導具を構えながら、アレクセイに向かって突進していった。

 

アレクセイもフルスロットを撃つが、弾丸は盾型魔道具に弾かれる。

 

「我が一撃を受けてみよ!」

 

フルスロットがアレクセイに攻撃をしたが間一髪で回避された。そして……

 

「いい腕だな。だが、魔導具キラーとは、 武を滅ぼす者とは私の事。その厄介な盾、使えなくさせてもらう」

 

アレクセイがフルスロットの持つ盾型魔導具《スプラッシュ・ディフェンサー》を睨みつけると、その魔導具は考えられないほどに重くなり、地面にめり込んだ。

 

「なんと!? お、重い! 重すぎますぞー!」

 

「一時的なものだが……お前はしばらくその盾型の魔導具を使えんぞ。私もこの力は一度使ったらしばらくの間使えないのだが……お前のその薙刀(なぎなた)のような魔導具と我が魔銃とで、勝負といこうではないか」

 

「ええい! 仕方ありませんね! すみませぬ! 《スプラッシュ・ディフェンサー》よ!」

 

フルスロットは盾型魔導具から手を離し、薙刀(なぎなた)のような魔導具《ハタフリ・ハフリーズ》を両手で持って構え、そして跳び上がった。

 

しかし……

 

「あのフルスロットとかいう選手、隙だらけでは? あんな風に空中に跳び上がっては、隙を晒しすぎだ。空中では体勢の立て直しが難しい。棒立ちより危険だ」

 

アレクセイは隙だらけのフルスロットの背後に回り込み、魔弾を撃つ。

 

「いや、あの光の魔導具は、もしかすると……」

 

「もっと勇ましく!」

 

フルスロット・サージェントは、空中でぐるりと体を回転させて体勢を立て直し、魔導具で魔弾を弾いた。

 

「何!? 羽も持たないただのサムライが、なぜそんなことができる!?」

 

「隙が無くなった! そうか! それが、あの魔導具の力か……!」

 

観客達は光の魔導具の力に驚く。

 

「体勢を立て直して隙を無くすか。だが、これはどうだ! 魔弾バレット・バイス!」

 

アレクセイがフルスロットに向かって先程とは異なる魔弾を連射する。

 

フルスロットは魔導具を振り回して魔弾を叩き落とすが、全てには対応できず、二発の魔弾が命中する。

 

「む……」

 

それにより、フルスロットの持つ知識が奪われていく。

 

「ええい、食らうであります!」

 

フルスロットは魔導具ハタフリ・ハフリーズでアレクセイを貫こうとした。

 

それをかわすアレクセイ。

 

攻撃方法の知識が一時的に失われたことで、フルスロットの攻撃は当たりにくいものとなっていた。

 

「あぁ、当たらなかったか!」

 

「よく避けた! そのサムライに引導を渡してやるのだ!」

 

観客席のナイトが沸き立つ。

 

フルスロットの薙刀のような魔導具ハタフリ・ハフリーズとアレクセイの槍としても使える魔銃が何度もぶつかり合い、金属音を奏でる。

 

「この私を相手によく戦った。だが……ここまでのようだな。魔弾デュアル・ザンジバル!」

 

アレクセイは僅かな隙を見つけ、また別の魔弾を撃ち出した。

 

青い茨がアレクセイの魔銃から飛び出し、フルスロットの力を衰弱させていく。そしてフルスロットは地に伏した。

 

「ぐふっ……使い手を、撃つとは……!」

 

「決まったァァー! この試合の勝者は、邪眼銃士アレクセイ候選手に決定だァー!」

 

「フハハハハッ! ナイトがサムライに勝ったぞっ!」

 

観客席のナイトが、喜びの声を上げた。

 

 

 

 

試合を終えて控え室で魔銃を磨いているアレクセイのそば、柱の後ろに影が一つ。

 

「さっきからこそこそと、何の用だ。フルスロット・サージェント」

 

「あ、バレていましたか……いや、私、感動したのでございます! ここまで鮮やかに……魔導具の使い手を撃つ者がいたとは……!」

 

「何……?」

 

「魔導具は正しく使ってこそであります! 貴方のような方がいらっしゃれば、とても心強い!」

 

「心強いだと……サムライがナイトにかける言葉とは思えないな」

 

「私、サムライではありませんから」

 

「サムライでは、ない……?」

 

魔導具の使い手と言えば、サムライの他にはまず居ないはずだった。

 

「はい。私は、不死鳥がこの世界に現れるより……(はる)かに前の時代の生まれであります。その頃は魔導具がよく使われていた時代で、しかしサムライはまだ存在していなかったのですよ」

 

「ほう……そんな時代があったとは。聞いたこともないな」

 

書物をよく読むアレクセイも知らないことだった。

 

「かつて、戦国の時代よりも、極神の時代よりも、不死鳥の時代よりも前の転生の時代、魔導具が暴走して、世界を滅ぼしかけたのでありますよ。そして危険すぎると考えられた魔導具は、語ることすら禁じられ、歴史の闇に葬られたのであります」

 

「……世界が滅びかけたのは、インビンシブル兵器同士の衝突が原因と聞いているが……」

 

「表向きにはそうですね。実際にインビンシブル兵器は衝突しましたし、世界に影響を及ぼしました。ですが、本当に世界を滅ぼしかけたのは、暴走した魔導具なのであります。生き残りの私が保証しますぞ」

 

「ふー……む……嘘をついているようには、見えんな。貴様、バカ真面目そうだし」

 

「なっ! バカ真面目ですと!」

 

「ああ、(そんな)匂いがぷんぷんする」

 

「なあぁー! 私臭いますか! 海水の匂いですかな!」

 

魚人のような姿のフルスロットは慌てて体を(ぬぐ)う。

 

「そういう意味ではない。実際の匂いではないから安心しろ。ともかく、貴様のその話で、私のような者がこの世界に必要だと言うことが分かったぞ」

 

「はい! 魔導具を無力化したり、魔導具の使い手を鮮やかに撃ったり……あなたのような超獣は、まことに世界に必要な存在でございます!」

 

「……完全に肯定されると、なんだかむず痒いな……」

 

「おや? どこが痒いのですか? 掻いてさあげましょうか?」

 

「結構だ……! 実際に痒いわけではない……!」

 

アレクセイは勝手に体を掻き始めたフルスロットの手を払いのけながら言った。

 

「ご遠慮なさらずに」

 

「遠慮ではない……!」

 

「ふむ……理解しました。なかなか、アレクセイ殿は、詩的な表現をされるお方なのですね」

 

フルスロットは何やら納得したような素振(そぶ)りだった。

 

「詩的……か……?」

 

「はい」

 

「ふむ……お前はサムライではないから、お前に言っても仕方ないことなのだが……」

 

「なんでございますかな?」

 

「表立っては言いにくい事だが……私は、武士道など、我が騎士道の前にはあまりにも無力だと思っていた。取るに足らないものだと……だが、何度もサムライと戦ってきて分かった。奴らにも誇りがあるのだと」

 

「ほほう。アレクセイ殿が言いにくいのであれば、代わりに私が言ってきてあげましょう! アレクセイ殿がこう言っていたと!」

 

「よせ! 言いにくい事だと言っただろう!」

 

「ご遠慮なさらずに」

 

「遠慮ではない!」

 

 

 

 

そして時は現在へと戻る。

 

古代の軍勢が地上へと攻め込んできてから一日。

 

侵攻は、着々と進んでいた。

 

地上の超獣達と、彼らに協力するシノビ達は奮闘していたが、古代の軍勢に押されていた。

 

中でも凄まじい勢いで侵攻している者がいた。名を蒼狼(せいろう)スペルギア・ファントムと言った。

 

今この場では、多くの地上の超獣達が、スペルギアと他数体のオリジンを相手に戦っていた。

 

「戦いの中に真理あり。もっとだ、もっとかかってこい」

 

スペルギアは魔導具を振りかざしながら魔弾を連射していた。

 

「奴はナイトでもあり……サムライでもあるのか……!?」

 

その場に駆けつけたアレクセイは、驚愕しながら思った。私は考えたことがある……この世界で最強とは何かと……その答えは分からなかった。だが、あれが……あれが答えなのか……? と。

 

「新手が駆けつけたか。私の一撃を受けてみろ」

 

スペルギアが魔導具をアレクセイ目掛けて振り下ろした。

 

ガキン。と金属音がした。

 

「私におまかせあれ!」

 

「フルスロット!」

 

アレクセイの前で、素早く駆けつけたフルスロット・サージェントが、盾型魔道具を構えて攻撃を防いでいた。

 

「こちらからも行きますぞ!」

 

フルスロットの一撃を、スペルギアは魔導具で受け止めた。

 

「このスペルギアは、この程度の攻撃では倒せんぞ」

 

「今だ! 隙ありだぜ!」

 

「みんなでかかれー!」

 

他の超獣達が、一斉にスペルギアに跳びかかる。

 

「待てっ! 奴は魔銃も持っているんだぞっ!」

 

アレクセイが皆を止めたが、遅かった。

 

「どいていろ。私は命までは取らん。《魔弾ストリーム・サークル》」

 

「おわあああぁぁぁっ!!」

 

魔銃から発生した激流に次々と押し流されていく超獣達。

 

「戦え。戦い続けろ」

 

一度距離を取り、そして魔導具をフルスロットに向けて振り下ろすスペルギア。

 

また金属音がした。

 

「無事か? フルスロット」

 

「アレクセイ殿!」

 

今度はアレクセイが魔銃で攻撃を受け止め、フルスロットへの攻撃を防いでいた。

 

アレクセイはスペルギアの魔導具を睨みつけた。しかし、スペルギアは何事もないかのように魔導具を振るい続ける。

 

続けてアレクセイは距離を取り、魔弾をスペルギアに何発も打ち込んだ。

 

「そうか。こんなものか」

 

爆発の煙が消えて、無傷の姿を表したスペルギアも。彼もアレクセイとほぼ同時に魔弾を撃ち、攻撃を相殺していた。

 

アレクセイは感じた。私の攻撃は奴に通用しないのか……私の力では奴に対抗出来ないのか……と。

 

「ウオーン!」

 

「貴様は!」

 

その時、駆けつけたサムライの魔獣、森獣(しんじゅう)ガロウネイチャーが、スペルギアの前に立ちふさがった。

 

アレクセイはその超獣のことを知っていたため反応した。

 

どころか、アレクセイとガロウネイチャーは、武闘会で戦ったこともある相手だった。1勝1敗。それが二人の試合の結果。つまり、実質引き分け状態とも言えた。

 

アレクセイが魔導具キラーとして有名ならば、ガロウネイチャーは魔弾キラーとして有名だった。

 

「私の力だけでは奴に対抗できない……ならば……ならば……」

 

相手がサムライでもナイトでもあるのなら、対サムライの私と、対ナイトのこやつで……そうだ、私は……我らはきっと、この時のために、対サムライであり、対ナイトであったのだ! きっとこれが、私にとっての答えだ!

 

「はっ!」

 

アレクセイがガロウネイチャーの背に騎乗する。

 

「ほう……この蒼狼(せいろう)スペルギア・ファントムを相手に、狼に騎乗して戦うとは」

 

「アレクセイ殿! この魔導具をお使いくださいませ!」

 

フルスロットは薙刀(なぎなた)のような魔導具《ハタフリ・ハフリーズ》をアレクセイに投げ渡した。

 

「馴染む……私はナイトだと言うのに、実に馴染むな。見事なものだフルスロット。これがお前の力か」

 

「使い手に合わせて魔導具を調整することにおいて、私の右に出るものはまずいないと言っていいでしょう!」

 

ガロウネイチャーが風を操り高速で跳びまわり、アレクセイが様々な角度で何度もなぎ払う。強烈な攻撃が何回もスペルギアに炸裂した。

 

「くっ……何だと……この私にここまでダメージを……」

 

「スペルギア様! 一旦お退き下さい!」

 

「ここは我らに任せて、安全な場所で今負った傷を早く癒して、そして帰ってきて下さい!」

 

「……分かった……死ぬなよ。お前達は、私の大事な部下なんだからな」

 

「「「はい!」」」

 

部下達に(うなが)され、スペルギアは撤退を開始した。

 

「返すぞ。魔導具もなかなか、悪くないな」

 

アレクセイはハタフリ・ハフリーズをフルスロットへ投げ返した。

 

それを受け取って、フルスロットは言う。

 

「アレクセイ殿! ここは我々にお任せを! 他の事には脇目も振らず、全速前進で、全力でスペルギアを追ってくださいませ!」

 

「……ああ! 飛ばしてくれ、森獣!」

 

「ウオーン!」

 

 

 

 

逃げるスペルギア。

 

追うアレクセイとガロウネイチャー。

 

「追いついたぞ!」

 

ガロウネイチャーの足はスペルギアより早く、アレクセイはスペルギアに追いついた。

 

「くっ……駄目だ……私は……部下のためにも、負けられんのだ……!」

 

スペルギアは魔弾を乱射した。

 

アレクセイも魔弾を乱射した。魔弾キラーのガロウネイチャーの力も加わった、アレクセイが一人で放つよりも強力な魔弾。それはスペルギアの魔弾を弾き、そしてスペルギアに向かって飛んでいく。

 

「ぐわああぁぁぁっ!」

 

猛烈な魔弾によって、スペルギアは倒れた。

 

「一人、強敵を打ち破った、と。さて」

 

アレクセイは次なる戦いの相手(オリジン)をやや遠方に見つけ、迎撃するべくそちらへ向かおうとする。

 

「なぜ……なぜトドメを刺さない……!! 敗者に次はない……!!」

 

スペルギアが這いずり周りながら言う。

 

「そう言っておきながら、お前も超獣達にトドメを刺さなかっただろう」

 

「それは……」

 

「敗者に次があるのが戦国の世だ。お前に似た技を使う選手を、戦国武闘会で見たことがある。大方、超獣世界のことを探るために変装でもして、武闘会に参加していたんだろう? お前、戦国の世に魅入られているんじゃないのか?」

 

「……後悔することになるぞ」

 

アレクセイとガロウネイチャーは何も言わず、スペルギアに背を向けて、他のオリジンを探して駆け出した。

 

 

 

 

その後アレクセイはガロウネイチャーと共に、複数のオリジンを相手に戦っていた。

 

「なんだこいつ……やたら強いぞ!」

 

「もしかしてこいつがロマノフって奴なんじゃないのか!」

 

「フン……私程度とロマノフ様を一緒にするな!」

 

「ぐえっ……!」

 

アレクセイはようやく、一人無力化した。

 

「アレクセイ殿ォーッ!」

 

「オラオラァーッ!」

 

「次の相手はお前達か! オリジンがいくらかかってこようが、俺達は負けないぜぇぇーっ!」

 

そこへ、フルスロット達が駆けつけた。

 

「アレクセイ殿、スペルギアは倒されたのですか!?」

 

「ああ、倒した! お前達と戦っていた奴らはどうなった!」

 

「なんとか全員倒しました! アレクセイ殿! すぐに退却して下され!」

 

「なんだと!?」

 

「ここは私達が変わりまするから!」

 

「馬鹿を言うな。なら共に戦え!」

 

「それは無理なのです! あなたを、お呼びしている邪眼の騎士がいるのですよ! 先程私の持っている通信機がジャックされ、その者からの通信が入ったのです!」

 

「何? 邪眼の騎士が、呼んでいる?」

 

「なんと、邪眼皇ロマノフⅠ世様が殺されてしまったそうで!」

 

「……それは知っている。お前は知らなかったのだろうが……ソウル・キャッチャーはもう無いし、新しく作っても間に合わん。Ⅰ世を復活させることは……出来ん」

 

「それが出来るそうなのですよ!」

 

「何……?」

 

「その者……ディミトリ様という方が(おっしゃ)るには、かねてより研究が進められていたという呪文……新たな蘇生呪文が完成間近だそうで! あなたのお力添えがあれば、完成する見込みなのだそうです! 早く向かって下され! 邪眼皇ロマノフⅠ世がもし復活すれば、侵攻に対抗する、強力な戦力になりまする!」

 

「……それは……」

 

ロマノフ様を、復活させることが出来る?

 

本当に? と思い、アレクセイはフリーズして……

 

「ウオーン!」

 

ガロウネイチャーが、"任せろ"と言ったような気がした。

 

「よし……頼むぞ!」

 

アレクセイは、フルスロット達に対しては、"この場は頼む"という意味で。ガロウネイチャーに対しては、"私の目指す方向へ、全速力で走ってくれ"という意味で、"頼む"と発言した。

 

そしてガロウネイチャーは、走り出した。

 

「あいつら逃げる気だぞ!」

 

「逃がすがっ!」

 

「させません!」

 

アレクセイ達を追おうとしたオリジン達を、フルスロット達が食い止めた。

 

「あなた達は、どのような信念を持って戦っているのですか!」

 

「あぁ……!? なんだって敵に、俺達にそんなこと聞くんだよ! お前、バカなのか!?」

 

「ええ……そうらしいですよ……私、バカ真面目らしいですから!」

 

 

 

 

アレクセイを乗せたガロウネイチャーは、高速で荒野を走る。闇文明の領域の、目指す場所までは、まだ時間がかかる。

 

「ロマノフ様……もう少しだけお待ち下さい!」

 

 

 

 

闇文明の領域にある、とある祭壇にて……

 

「ウァハハハハハ……アレクセイ候、ようやく到着なされたか……お待ちしておりましたぞ。お忙しいところ、失礼しましたな……しかし、サムライの魔獣、しかも魔弾キラーと呼ばれる超獣に乗ってやってくるとは、なんとも予想外な」

 

《邪眼銃士ディミトリ卿》達が、アレクセイを出迎えた。

 

「失礼も何もあるか。ロマノフ様を復活させられるかもしれないのだ。躊躇(ちゅうちょ)なく呼べ」

 

「ふふ、そうでございますか……さあ、アレクセイ殿、こちらへ」

 

アレクセイはディミトリ卿と共に階段を上る。

 

ロマノフの亡骸(なきがら)は、祭壇に寝かされていた。

 

「諦めていない顔をされているな」

 

「ええ、やはりそう思われますか……」

 

「ああ。しかし、よく亡骸(なきがら)が回収出来たな」

 

「それが、適当に捨てられていたそうで」

 

「何……? そうか。敵は、我らのソウル・キャッチャーが尽きたと知って、油断したか。新たにこのような蘇生呪文が完成しようとしているとも知らずに」

 

「さあアレクセイ候、力をお貸し下さい」

 

アレクセイは魔銃を両手で持ち、紋章の描かれた祭壇の床に突き立てた。

 

紋章に魔力が注がれ、既に魔力が注がれ輝きを放っている他の紋章へと力が繋がっていく。

 

「おお、この力……足りなかった1ピースがはまったかのような! アレクセイ候のこの力があれば、ついにこの呪文が完成しますぞ! さあ皆様! 一斉にこの呪文の名を叫びましょうぞ……ウァハハハハハハハ! 3……2……1……!」

 

「「「インフェルノ・サイン!」」」

 

そして魔力が集まり、一体の竜の形となる。

 

竜はロマノフの亡骸目掛けて、生命の力を凝縮した炎の玉を吐き出した。

 

炎の玉がロマノフの亡骸に命中し、その場は猛烈な光に包まれる。

 

光が収まった時――

 

 

 

 

「地獄より舞い戻ったぞ……!」

 

 

 

 

邪眼皇ロマノフⅠ世が、復活した。

 

再び立ち上がる。今際(いまわ)の際に放ったその言葉は、現実となった。

 

 

 

 

小さな反撃ののろしが、上がった。

 

 

 

 

次回予告

 

「これより、光文明の制圧を開始する!」

 

バイオレンスとヘヴンの師匠、聖霊王ジンライが裏切る!?

 

「私は五元の力を手に入れたのだ! ふははははははははーッ!!」

 

高笑いするロレンツォ!

 

「刮目して見よ!」

 

チェンジ・ザ・ワールドの奇跡の大波が迎え撃つ!

 

「おいでませ、我らがエンペラー…………キリコ様」

 

強大なオリジン、エンペラー・キリコが現れる!

 

次回、《現れる、もう一人》

 

「『支配の時間だ!』」

 

最終章・開幕。もう一人とは誰か。大決戦を制するのは誰か。戦いの行方は、どこへ向かうのか。

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