【完結】最終戦国武闘伝 〜バイオレット・ダークネス〜   作:無敵ざかり

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第五章 SX(スタークロス)
第一節 現れる、もう一人


超銀河弾(ギャラクシーショット)によって出来た空に空いた穴……時空の裂け目。そこから現れた、地上の超獣達にとって見たこともない超獣達……古代の軍勢『オリジン』は次々と侵攻していた。

 

「こいつら……倒しても倒してもキリがない!」

 

「もう魔弾が尽きそうだ! 他に誰か戦える者はいないか!」

 

最前線で戦っているサムライとナイト達はもう限界のようだった。

 

「私達に任せろ!」

 

そこへ天雷のナイト達を初めとする、戦国武闘会を守護する特殊部隊が駆けつけ、オリジンへの攻撃を開始した。

 

「あれを使ってみるか」

 

「はっ」

 

その中の《黙示聖者ファル・レーゼ》に、オリジン達は何かを埋め込んだ。

 

すると黙示聖者ファル・レーゼは黙示(せい)者ファル・レーゼとなり、一転して地上の超獣達へ攻撃を開始した。

 

「なぜだ、なぜ我らに攻撃を!」

 

「一体どうなっている!?」

 

古の軍勢はアークを埋め込む事によって、現代の兵器を自らの先兵とした。

 

 

 

 

バイオレンス・迅雷・ドラゴンと迅雷の精霊ホワイト・ヘヴンは空を見上げていた。

 

「大変なことになっちまったな……」

 

「グレイテスト・シーザーの放った弾が作った時空の裂け目から、見たことも無い者達が次々と現れ……師匠、どうしますか?」

 

「……」

 

聖霊王ジンライは沈黙を貫いたままだった。

 

「師匠……?」

 

「光文明の超獣達が我らの侵攻を(はば)んでいます。ジンライ様……出番ですよ」

 

そこに現れたのはオリジンの一人、無頼妖精ワイルド・リリィ。

 

「時が来たか!」

 

聖霊王ジンライは紅の鎧をパージした。鎧が地面にめり込み音を立てる。

 

その胸の透明だった宝玉が青く光り、雷光がほとばしった。

 

紅とは逆の印象を与える青。いや、蒼。

 

ジンライは翼を広げ、力強くかつ優雅に螺旋を描いて舞い上がる。

 

「我はイカズチ! オリジンの聖霊王イカズチなり! これより、光文明の制圧を開始する!」

 

「イカズチ……!? 何を言ってるんだ師匠!」

 

「オリジンの聖霊王とはどういう事ですか!」

 

「……さらばだ、バイオレンス、ヘヴン!」

 

イカズチはワイルド・リリィを肩に乗せると、空高くへと飛び去って行った。

 

 

 

 

「駄目だ! もうもたない!」

 

「ぐっ……ここまでか!」

 

「いや、まだだ!」

 

「ロレンツォ様の所へは行かせんぞ!」

 

聖霊王イカズチ率いる古代の光の軍は瞬く間に地上の光文明を制圧しかけていた。

 

そこへ、さらに増援が……

 

「イカズチ様! 水文明のオリジン軍が到着いたしました!」

 

「よし! 水文明のオリジン軍はアークの力でサイバーロードを乗っ取り、ホムー・アムリタを強襲! グレイトメカオーとグラン・ドデビルを制圧し、オリジンの拠点に塗り替えよ!」

 

「イカズチ様、申し上げにくいのですが……」

 

「なんだ、申してみよ」

 

「ホムー・アムリタではなくムー・アメリタ。グレイトメカオーではなくグレートメカオー。グラン・ドデビルではなくグランド・デビル……でございます……」

 

「……そうか!」

 

 

 

 

「ロレンツォ様! 古代の軍勢によって光文明が制圧されそうです!」

 

「うむ……」

 

「ここは我らが迎え撃つ時ではないでしょうか! それと、一応、《爆獣》が協力を申し出ていますが……」

 

「ほう。よし、迎え入れよう」

 

「し……しかし! あのような小さな集団は大した戦力になりませぬ。 何より奴らは火と自然の者めらにございます! そのような卑しき者共を迎え入れるなど……!」

 

「ふむ……確かにな」

 

「で! では……!」

 

「だが、仮に卑しい者たちだったとして、なんの問題があるのだ?」

 

ロレンツォは(したた)かな権力者だった。この言葉が、部下を黙らせるための方便だったのか、ロレンツォの本音だったのか、それは分からない。どちらにせよ、爆獣の力を利用しようという(したた)かさがあったことに変わりはない。

 

「な…………!」

 

「せっかく協力すると言ってくれているのだ。断る理由はなかろう」

 

「し、しかし……あのような身分のものを…………いえ、かしこまりました……」

 

「ああ、あまり時間はないが、客人を丁重にもてなしてくれ」

 

 

 

 

「我らと共に戦うことを決定してくださり、ありがとうございます!」

 

きらびやかな部屋でもてなしを受ける中、爆獣代表として、爆獣装甲ヴァルアーサーが感謝の言葉を述べた。

 

「何ぶん猫の手も借りたい状況でな。せっかく手を貸してくれると言うのだから断る理由はない」

 

氷牙(わたしたち)も手を貸そう。準備は万端だ」

 

そこへ、氷牙ネオングライド公が水の騎士を率いて現れた。

 

「おお! 頼もしいな!」

 

ロレンツォは更なる援軍の到着に顔をほころばせる。

 

「俺もいるよー!」

 

アクア・スナイパー公がひょっこりと姿を現す。

 

「うむ! 頼もしい! ではそろそろ……行くとしようか。どこまでやれるか見ものだな」

 

「君とならどこまでも」

 

ロレンツォの言葉に、ネオングライド公は穏やかかつ途切れることのない清流のように答えた。

 

「爆獣騎士団も、頼んだぞ」

 

「はい! 我ら数は少ないですが、その分迅速な動きができます!」

 

「うむ。そうだな。大人数の軍を動かすにはどうしても時間を要するからな。では遊撃部隊になってもらおう。何も大将首を取ってこいとまでは言わん。君達は持ち場を決めず、その時々で最善の場所で、最善の行動をするよう務めよ」

 

「はいっ!」

 

爆獣騎士団と天雷騎士団と氷牙の騎士達は、共に古代の軍勢オリジンを討つべく城から外へと()を進めた。

 

先頭の超獣が高らかに声を上げる。

 

「出撃ー! 出撃だー!」

 

 

 

 

オリジンと騎士団が激突する。

 

「共に戦いましょう、今日を生きるために! そして、よりよい明日を作るために!」

 

ヴァルアーサーが天高く放った魔弾ベター・トゥモローが上空で花火のように爆裂し、その火と自然のエネルギーが騎士団に降り注ぐ。

 

ロレンツォにも、そのエネルギーが降り注いだ。

 

「レインボーの魔弾か……! おお……すばらしい。我が身に龍仙のごとき力が満ち溢れている! ……それだけではない。私の手には"キング・サプライズ"の件で近づいた氷牙から手に入れたこの水の魔弾と、魔光と手を組んだことで手に入れたこの闇の魔弾がある……! 今ここに、私は五元の力を手に入れたのだ! ふははははははははーッ!!」

 

心優しき超獣でありながら、同時に五文明の力を手にするという大望を抱いていた天雷の龍聖ロレンツォⅣ世。

 

自然、火のエネルギーを(まと)った光の魔弾、水の魔弾、闇の魔弾が次々とオリジンの軍勢に向けて発射される。

 

その龍聖は、光の無慈悲さで敵を葬りながら、己が振るう力に珍しく酔いしれていた。

 

 

 

 

戦国武闘会の闘技場内の一室――

 

ん……? なんだこれは……?

 

と、一人用のモニターを見ていたサイバーロードは思った。

 

その広さから、今は負傷者を保護・治療するための臨時の病院兼、オリジン迎撃用の要塞として使われている闘技場。そこに無数に張り巡らされた機器のうちの一つ。それがわずかに不調を起こしている。

 

彼の仕事は、闘技場のシステムに異常がないか見張り、もし異常が起きたら原因を突き止めること。

 

故障か? 自己修復機能はどうした? それも壊れたか? 気づいているのは自分だけか?

 

と彼が思った瞬間、他の機器も不調になり始める。

 

いや、不調どころではない。機能を停止した。おそらく壊れた。いや――

 

破壊された。

 

ERROR(エラー)の文字がモニターにいくつも表示される。

 

これは――攻撃だ!

 

とある機器が、これがEMP攻撃であるとの分析結果を出した直後に機能を停止した。

 

そのサイバーロードは叫ぶ。

 

「ERROR! ERROR! これは……超巨大なエネルギー反応を確認! 何かが来ます!」

 

まだ生きていた機器が、エネルギー反応を確認していた。

 

「何かとは何だ……!?」

 

「もう少し情報を掴めないのか……!?」

 

サイバーロードを中心に構成されるその部屋のメンバー達は騒然としていた。

 

情報分析の精鋭たるサイバーロード達が技術の(すい)を尽くしても何も掴めない。しかも、超巨大なエネルギー反応と来ている。

 

情報戦における敗北。それはサイバーロードにとって、物理的な戦いで負けるのとは比べ物にならないほどに悔しいと思わせるものだった。

 

機器は次々に破壊されていく。

 

EMP対策は万全のはずだ。なのにこんなにも機器が破壊されるとは。相手の技術力は一体どうなっている……!?

 

「分かりません! 正体が掴めません! ただ、オリジンと名乗る者達が現れた時空の裂け目から現れようとしていることを考えると、おそらく強大なオリジンが現れようとしているものかと思われ……まもなく来ます!!」

 

 

 

 

数日前からのこと……

 

ロマノフを助けるため、魔光のナイト達と戦うために、彼らと遭遇した闘技場のそばまで、廃城から戻ろうとしていた紫電達。

 

彼らは、途中でオリジンの軍勢とぶつかり、超獣世界が侵攻を受けていることを知り、世界を守るために戦っていた。

 

敵が多すぎるため、ギャラクシーやカエサル(シーザー)と手分けして、三手に別れていた。

 

「紫電・双竜斬! はぁ、はぁ、数が多すぎる……!」

 

「もらったぜ!」

 

「しまっ……!」

 

一人のオリジンが、紫電のわずかな隙を突いて急所を狙う。

 

最早ここまでか――

 

そう思われた矢先、窮地(きゅうち)(おちい)った紫電のすぐ側を、赤いサムライが高速で駆け抜けた。形容するならば、"マッハ"と言うべき速度で。

 

紫電の急所を狙ったオリジンは、そのサムライに打ち倒されていた。

 

否、サムライではない。

 

意思を持つ鎧の魔導具《ザンゲキ・マッハアーマー》に身を包んだ騎士ロマノフ一人と、さらに三人のロマノフが、紫電のもとに駆けつけたのだった。

 

「ロ……ロマノフ!? 無事だったか! 良かった! これは……そうか! 分身か!」

 

「ああ……ロレンツォの試合にヒントを得てな!」

 

神秘と創造の石碑の力によりロレンツォが二人となった試合。その時の戦法をロマノフは土壇場で模倣していた。

 

インフェルノ・サインの蘇生術を応用して自分の肉体を複製し、己の意思で操るという方法で。四つの体を一つの頭で同時に動かすのは、息をつく暇もない程に過酷だった。

 

騎士らしくもない、我武者羅(がむしゃら)なぶっつけ本番の行為。

 

だが、ロマノフはためらわなかった。

 

それこそが唯一、紫電を守れる可能性がある行為だったのだから。

 

だからこそサムライの愛刀……いや、奇妙な言葉だが、サムライの"愛鎧(あいがい)"と呼べるマッハアーマーも、ロマノフに応えたのだ。

 

ロマノフはオリジンの軍勢に向けて声高(こわだか)に叫ぶ。

 

「貴様らッ! 我が友、紫電の命を(おびや)かそうとした罪は重い……! 生きて帰れると思うな!! 覚悟せよ!!」

 

 

 

 

そして、バイオレンス・迅雷・ドラゴンとホワイト・ヘヴンは、聖霊王ジンライ……イカズチを追いかけている途中、遠方でオリジンと地上の超獣達が戦っているのを見つけて立ち止まった。

 

「またオリジンかよっ……好き勝手させてたまるか……! ヘヴン、加勢すっぞ!」

 

「大丈夫かバイオレンス……膝が笑っているが」

 

「勘違いすんなよ……? 古代の軍勢が、オリジンが怖くてブルっちまってる訳じゃねえ……!」

 

「……武者震いか?」

 

「これはな……笑ってんのよ……! 準決勝でグレイテスト・シーザーにブルっちまった俺の事を……俺の体が笑ってんのよ……!」

 

「まだ、奴につけられた傷が、完全には癒えていないものな……」

 

「でもな……俺達は奴を恨んだりしてない、そうだろ、相棒?」

 

「ああ、その通りだ」

 

「俺達は誰も恨んじゃいねえ……! オリジンのこともな! 俺達は何かを恨んでるから戦えるんじゃねえ……! 何かを愛しているから、戦えるんだ……!」

 

「ああ、そうだ……相棒!」

 

「行くぜ……! ここでビビってたら、俺は俺に笑われちまう!」

 

バイオレンスとヘヴンは、地上の超獣達に加勢するために走り出した。

 

 

 

 

「紫電、なぜ俺達と戦う。俺達と戦う理由があるのか」

 

オリジンの一人が紫電に声をかける。

 

「当然だ! 拙者はこの世界を守りたい……お前達の侵攻を良しとはせん!」

 

「ふん……地上で生まれたスパイで……俺達の仲間でありながら……」

 

オリジンの一兵が発した言葉に、紫電が凍りつく。

 

「な…………に…………?」

 

「だってお前に流れてる水の血は、蒼狼(せいろう)の始祖アがっ!!」

 

言い終える前に、その超獣はロマノフが放った魔弾に撃ち抜かれた。

 

「敵の戯言(ざれごと)に耳を貸すな! 紫電! お前を動揺させようとしているだけだ!」

 

「あ……ああ…………そうだな……!」

 

紫電は自分の頬をぴしゃりと叩き、再び剣を構えた。

 

「お前を倒すのは奴らでも、暗黒王でもシーザーでもない。この我だ! こんな程度の争いでくたばるなよ、紫電!」

 

「くたばるな? お前こそな!」

 

 

 

 

その時、オリジンが一つの武器を取りだした。

 

「あの剣は……何者かに奪われていたはずのあれは……まさか……!」

 

紫電はその武器のことを知っていた。あまりに強大な力を持つがゆえに、表舞台から姿を消した無双竜機ボルバルザークが持っていた一振りの剣……《エターナル・ボルバルエッジ》……伝説の無双竜機の力の一端が残留するそれが、大地に突き立てられようとしていた。

 

「まずい……! 時が止まるぞ!!」

 

ボルバルザークの血を引く紫電の前に、ボルバルザークの力が立ちはだかる。

 

燃え盛る激情の炎、吹き(すさ)ぶ大地の息吹。

 

時すら超える力が、古代の軍勢の勝利を呼び込まんとす。

 

終わるにはまだ早い

 

さぁ、始めよう

 

EXTRA TURN(エクストラターン)

 

いま蘇る 無双のドラゴンの力

 

剣が大地に突き立てられ、閃光が世界をレインボーに染め上げていく――

 

そして時は、止まった。

 

 

 

 

川の流れのように、時の流れる方向は決まっている。しかし、時の流れに逆転(ターン)した流れを追加(エクストラ)してぶつけることが出来れば、流れは一時的に相殺され、時は止まる。その現象は、"止追時流転現象(エクストラターン)"と呼ばれる。

 

もしサイバーロードがこの光景を見ることが出来たなら、一時停止された動画のように感じるだろう。

 

重力など存在しないかのように、土埃が舞い上がったまま静止し、雨粒が星のように空中にとどまっている。

 

古代の軍勢以外の時がボルバルエッジの力で止められた今、動くことが出来るのは古の超獣とボルバルザークの血を引く紫電だけ。

 

否、もう一人。

 

「刮目して見よ!」

 

古代の軍勢を、奇跡の大波が迎え撃った。

 

生から死ではなく、死から生へと……逆転した時の流れを生きた元ブライゼナーガのチェンジ・ザ・ワールドだけは、止まった時の中で動くことができた。紫電と、歪んだ時の流れを持つその龍だけが。《蒼神龍チェンジ・ザ・ワールド》だけが。

 

チェンジ・ザ・ワールドは思念する。

 

何がサムライだ。何がナイトだ。

 

戦国武闘会……それはかつて、世界中の並み居る超獣たちが己の力を競い合い、王者を決める戦いだった。

 

武士も騎士も、ただの一人一人の参加者だった。

 

かつての戦国武闘会は、サムライとナイトという二大勢力が我が物顔で跋扈(ばっこ)するものではなかった。

 

変わり果てたこの戦況を、私が変えてやる。サムライでもナイトでも、レインボーでもないこの私が。

 

チェンジ・ザ・ワールドは刀を構えている紫電に向かって叫ぶ。

 

「下がっていろ、紫電!」

 

「な……!? し……しかし!」

 

「今この場所は、私の戦場だ!」

 

「いや、チェンジ・ザ・ワールドよ! ここは拙者の戦場でもあ」

 

一歩踏み出した紫電を、チェンジ・ザ・ワールドが叱咤(しった)する。

 

「下がれ! 今お前が倒れてはならないという事が分からないのか!」

 

「何……!?」

 

「今はこらえろ、紫電! この時が止まった世界は、もはやオリジンの世界と言ってもいい! そんな世界を私が変え、お前が世界を救うのだ!」

 

「……だが……その為に、貴殿は犠牲となるというのか!」

 

「お前が私に加勢しても、二人とも死ぬだけだ! 犠牲は少なく! 私一人の犠牲で済むなら、その方がいい!」

 

「ぐ……ぐ……!」

 

紫電は反論できない。いくら紫電でも、見慣れぬ技を使うオリジンの大軍に多勢に無勢で飛び込んでいくのは危険すぎる。

 

「お前は皆を導ける! 私よりずっと人望もある! お前はここで倒れてはならないのだ!」

 

「だが……チェンジ・ザ・ワールドよ……」

 

紫電にとって、チェンジ・ザ・ワールドは戦国武闘会で何度も戦ったことのある好敵手の一人だった。

 

「何もせず、目の前で好敵手を失うのは……拙者には……受け入れ(がた)い……!」

 

「勘違いするなよ紫電! お前は今、何もせずにいるんじゃない!」

 

チェンジ・ザ・ワールドは水流でオリジン軍を押し流しながら言う。

 

「お前は今、未来を背負った! 未来とはとても重いものだ! だから今、お前は動けないだけだ! だが私が死ぬ頃にはお前もその重さに慣れるだろう! そうすればお前は動き出せる! 世界を守れる! 私の死を無駄にするな! 紫電よ! 未来を背負う者よ!」

 

「未来を……背負う……」

 

オリジン軍が、ついにチェンジ・ザ・ワールドの水流の大波を打ち破った。雪崩のように押し寄せるオリジン達。

 

チェンジ・ザ・ワールドには奥の手があった。

 

今、それを解き放つ――

 

全知識をこの一撃に。

 

知識。それは水文明にとって最も価値あるもの。

 

しかしチェンジ・ザ・ワールドはそれを全て捨て去り防壁を展開。

 

止まった時の中、世界を変えるべく時間を稼ぎ続けた。

 

「こいつ、まさか本当に一人で我らのエクストラターンを防ごうっていうのか!?」

 

「冗談じゃない! そんなことさせてたまるか!」

 

防壁の隙間から、紫電を攻撃しようとするオリジンがいた。

 

「させん!」

 

チェンジ・ザ・ワールドは自らの体で防壁の隙間を(ふさ)いだ。

 

「どけぇぇーっ!」

 

「お前一人に時間を稼がれるなど!」

 

オリジン達が次々と集まってきて、チェンジ・ザ・ワールドに攻撃を加える。

 

チェンジ・ザ・ワールドは思念する。

 

守らねば……!

 

……誰を……守るのだったか……?

 

確か……二刀流の剣士……

 

二刀流とは……何だったか……?

 

剣士とは……何だったか……?

 

全てを忘れ、一身に攻撃を受け続けたチェンジ・ザ・ワールドはついに力尽き崩れ落ちた。

 

そして――

 

「世界が……ま、た、動き出す……」

 

時が、再び動き出す。

 

「託したぞ……誰かは……思い出せぬが……」

 

薄れゆく意識の中、チェンジ・ザ・ワールドはそうつぶやいた。

 

「マジかよ……本当に一人でしのぎやがった……」

 

「地上の超獣……想定以上だ……!」

 

 

 

 

「チェンジ・ザ・ワールド……貴殿の犠牲……決して無駄にはせぬ」

 

時間が動き出したことで、紫電は孤立状態ではなくなった。

 

再び地上の超獣達とオリジン達が激突する。紫電を先頭にして……

 

「皆の者ーッッ!! 拙者達は決して負けん!! 絶対にオリジン達を撃退するぞおぉーッッ!!」

 

「「「おおーっっ!!」」」

 

紫電はボルバルザークの力を乗り越えることができた。では、紫電は、紫電を乗り越えることができるのだろうか。

 

 

 

 

「そろそろ……キリコ様の出番ね。儀式の始まりよ」

 

オリジンの一人、無頼妖精ワイルド・リリィがいたずらっぽく笑う。

 

「豊穣の時間だべ! オラに続くべ」

 

オリジンによって支配装置アークを埋め込まれた獣人の戦士、青銅の鎧(ブロンズ・アーム・トライブ)改め、蒼銅の鎧(ブロンズ・アーク・トライブ)が大地に触れると、マナの輝きが大地に広がっていく。そして植物が根を張る。

 

「開花の時間だ! ここに咲き誇れ!」

 

オリジンのオオカミ獣人、薔薇の使者(ローズ・ソーサラー)が力を込めると、薔薇(ばら)(つぼみが)現れ、そして花開き、立ち昇るマナが時空の裂け目に吸い込まれていく。

 

「なんだ!? 何かしようとしてるぞ!」

 

「なんでもいい! 止めるんだ! かかれかかれーっ!」

 

「「「うおおぉぉーっ!」」」

 

「サムライに同意するのは(しゃく)だが、お前達も行け!」

 

「「「はっ!」」」

 

「サムライとナイトにばっかいい格好させられるか! 俺達も行くぞ!」

 

「「「おおぉぉーーっ!」」」

 

地上の超獣達はオリジンの儀式を妨害しようと、ワイルド・リリィ達を狙う。

 

突如、鳴り響く音色。同時に押し寄せる光の波。

 

鳴響(めいきょう)の時間だァ! 俺のォ! 我らの威光に(ひざまず)け!」

 

「何だぁ!?」

 

「ま、まぶしい……!」

 

「動けねぇ……!」

 

オリジンの音楽隊、霊騎コルテオの放つ閃光が、地上の超獣たちの動きを止めた。

 

「俺は動けるぞぉぉ! オリジンの妖精ども! そこをどけぇぇ!」

 

「地上の超獣、相手にとって不足はないね、ゴウワン」

 

「だね、シュンケン!」

 

オリジンの妖精達はコルテオの閃光を逃れて攻め込んでくる超獣を迎え撃つ。

 

「瞬剣!」

 

「剛拳!」

 

「ぐわああぁぁーーっ!!」

 

シュンケンは剣で、ゴウワンは拳で敵を食い止め、そして……

 

時空の裂け目から、何かが現れようとしていた!

 

「神歌の時間……おいでませ、我らがエンペラー…………キリコ様」

 

ワイルド・リリィが神歌の星域を展開すると、時空の裂け目から完全にエンペラー・キリコが姿を現す。

 

 

 

 

「『支配の時間だ!』」

 

 

 

 

「キリコ様がいらっしゃったら勝利は確実……私たちは一旦退いて次に備えましょう」

 

そう言うと、ワイルド・リリィ達は退却していった。

 

「『碧眼の伝説龍よ、来たれ!』」

 

エンペラー・キリコがそう叫ぶと、巨大な門が現れ、その門が開くと、中から、他の超獣とはスケールが違うほど強大な龍が現れた。

 

頭部だけでなく両肩にも顔を持ち、両肩の碧い目を輝かせたその超獣の名は……

 

「我は緑神龍ディルガベジーダァァ!」

 

エンペラー・キリコはその力によって、異世界から碧眼の伝説龍を使役したのだった。

 

「何だ!?」

 

「奴は何だ!」

 

ディルガベジーダが大地を割る。小さき者たちはそれだけで地割れに飲み込まれていった。

 

「うわああぁぁーっ!」

 

超獣世界の住民達は迎撃を試みるが……

 

「効かぬ効かぬ! 誰も俺を止められまい!」

 

そのあまりのパワー故に、ディルガベジーダを止められるものは誰もいなかった。

 

「くそっ! なんてデカさだ!」

 

「そうよ! このクズどもが! スケールが違うわ!」

 

さらに、エンペラー・キリコが高らかに 歌い上げると、時空の裂け目から大量のアークが降り注ぎ、地上の超獣達に埋め込まれた。

 

アークを埋め込まれた者の中には、伝説的な竜、ボルメテウス・サファイア・ドラゴンもいた。

 

古の力を宿すアークは、他者を支配することに長けたグランド・デビルですら容易に支配する。

 

竜を支配することすら、可能だった。

 

エンペラー・キリコがもたらしたアークの力によって古の軍勢は強化され、超獣世界の住民は一気に劣勢となった。

 

「なんなんだあのディルガベジーダって奴は! デカすぎる!」

 

「サファイアがオリジンの操り人形になったのも大きすぎるぞ! オーガ・フィストを装備しているサファイアが!」

 

地上の超獣達は狼狽(ろうばい)する。

 

「燃え尽きよぉぉ!」

 

「「「うわあぁぁ!」」」

サファイア・ドラゴンが蒼い炎を吐き出すと、超獣達は炎になぎ払われた。

 

 

 

 

エンペラー・キリコの「神歌」により、世界各地に異世界に通じる門が現れ始めた。

 

そのうちの一つの門が開いた。

 

大地が波打ち、火の雨が降り、水が蒼く燃え上がる。

 

その超獣は紫電と同一にして異なる存在。

 

Volvalzark-Shidden-Doragon(ボルバルザーク シデン ドラゴン)が、異世界に通じる門を通って、別の超獣世界から現れた。

 

Shidden……それは紫電の、もう一つの可能性。

 

 

 

 

次回予告

 

「私に着いてこい」

 

ネロ・グリフィスが爆獣騎士団に命令を下す!?

 

「試さなければ、変わらない」

 

オリジンの指揮官が次の一手を打つ!?

 

「貴様はもう逃れられん!」

 

アークを埋め込まれたサファイア・ドラゴンが立ちふさがる!

 

「やっちまえ! Shidden!」

 

紫電対Shiddenの争いが勃発する!?

 

次回、《Secret-Hidden-Dragon》

 

「うおおおぉぉぉ! 見せてやろう! これが我の、進化だ!」

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