【完結】最終戦国武闘伝 〜バイオレット・ダークネス〜   作:無敵ざかり

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第三節 断罪の天雷 〜答えはひとつ〜

「いい天気ですなあ」

 

陽の光を反射して輝く鎧に身を包んだ騎士《天雷の導士アヴァラルド公》が隣の龍に話しかける。

 

「イエス。本日は晴天なり」

 

応えるは、天雷と協力関係にある黄金の龍《光神龍ザ・イエス》

 

二人は地上を眺めながら、上空を飛行していた。

 

断罪の天雷。ナイトの名門の一つである天雷が裁く罪とは何か?

 

それは戦いと争いである。

 

武闘会のための修行や鍛錬、稽古などは当然見逃される。

 

だが、戦国武闘会と関係なく行われる命の奪い合いは厳しく取り締まられていた。

 

そして現在、空に並ぶ光の騎士と光神龍は戦国武闘会の闘技場付近のパトロールを行っていた。

 

「天雷たるもの、本日もパトロールに努めて参ります」

 

天雷は精神性が重要視される派閥である。故に、アヴァラルドもまた、気高い精神を持つからこそパトロールを行う。そして、パトロールを行うからこそ、気高い精神を持っていることを証明できる。天雷の騎士達はそう思っている。

 

「うむ。天雷が天雷であること。それこそが真に天雷を天雷たらしめる気高き天雷性と言えるだろう。天雷たるもの天雷であれ。されど天雷であれば、真の天雷であると言えるだろうか? 果たしてそれこそが天雷の天雷なる姿なのか。真に天雷を理解しているものは、一体何人いるのだろうか」

 

「は、はあ……それは……ええ……」

 

頭の中で"天雷"がゲシュタルト崩壊を起こしているアヴァラルドは、中途半端に同意したような言葉を返した。

 

そして思う。

 

この光の龍は何を言っているのか? と。

 

まさか、分からないということはつまり、自分の精神性は天雷に見合わない……つまり、自分は天雷失格ということなのか……?

そんな不安がアヴァラルドの胸中を駆け巡る。

 

天雷を天雷たらしめる天雷?

 

気高き天雷性?

 

"天雷であれば、真の天雷であると言えるだろうか?"とは……?

 

天雷であるというのは、天雷らしい精神を持つということだろう。

 

天雷らしい精神というのは、世の秩序を守るべきだと理解し実行せんという意思を持ち、自分を気高い存在とすること。

 

一旦違う視点で考えてみよう。私が持った事のない視点で。

 

自分を気高い存在とし、他に気高くない存在がいるとすることは、本当に秩序を守る行動なのだろうか?

 

そうやって優れた者と劣った者がいるとするからこそ、争いが生まれるのではないか?

 

自らを気高き精神性と高潔な魂を持つものとし、天雷に所属すること……それは傲慢……? (おご)りなのか?

 

そう考えてみると、少し見えてくるものがある……

 

確かに、他の種族を見下したり、天雷への所属を希望する者が見下している種族だった場合、その者とろくな会話もせず、その者が気高い精神性を持つかどうかを見極めようともせずに門前払いしてしまう天雷所属のナイトもいると聞いたことがある。

 

思考を整理しよう。そう、自らを気高い存在だとすることは、他に気高くない存在がいるとするということだ。

 

天雷であるとは、自らを気高い存在であるとすることだ。

 

天雷であるとは、世の秩序を守ろうという意思を持つということだ。

 

しかし今、自らを気高いとすることは、むしろ争いを生むのではないかと、私は考えている。

 

……まさか、自らを気高い存在とすればするほど、つまり、天雷であればあるほど……秩序を守ろうとすることから、つまり、天雷の掲げる精神性から遠ざかる?

 

天雷であればあるほど、天雷ではなくなる……?

 

そもそも天雷とは?

 

血筋だけでなく、気高き精神性を持つものなら天雷のナイトになる事ができる。

 

誰でもなれるという意味では、あのよくわからん爆獣とかいう騎士団もどきとの違いはどこにある?

 

まさか同類?

 

いや、違う。そんなはずは無い。

 

……こういう、あいつらは気高くない、自分は気高いという考えが良くないのでは……?

 

いやしかし……

 

天雷とは……天雷とは一体……

 

頭脳をフル回転させているアヴァラルドの思考を、ザ・イエスの言葉が遮る。

 

「冗談だ」

 

「分かりにくい冗談はやめて頂きたい!」

 

アヴァラルドは様々な感情や情緒が入り交じった反応をした。

 

「ところで、魔光と天雷はその関係をより深いものにしようと考えている……という噂を耳にしたのだが」

 

話題を変えるザ・イエス。

 

「ええ……それを表すかのように、以前、私の元に魔光の魔弾"アルカディア・エッグ"が届けられましたよ」

 

アヴァラルドはなんとか切り替えて返答した。

 

「ああ、その件については魔光と協力関係にあるスペル・デル・フィン殿から聞いている。光の龍同士、繋がりがあるものでな」

 

「歌声で全ての呪文を封じると言われる、あの伝説の光神龍ですか……なぜナイトの天敵とも言える超獣が、ナイトと友好的な関係にあるのでしょう」

 

「答えはひとつだ。お互い、敵に回したくないのだろう。ナイトとしては、己らが得意とする呪文を封じる相手を軽く見る訳には行かない。しかし呪文が使えなくとも、ナイトには卓越した剣術の使い手や槍の達人が多くいる。故にスペル・デル・フィンの側も、もしナイトと敵対することになれば、いくら伝説の光神龍といえど相当な痛手を負うことになると考えているのだろう」

 

ザ・イエスは極神の時代をもその身で生き、知っている。つまり、平和では無い時代をその身をもって知っている超獣である。

 

「それに加えて魔光は"レインボー"の力を持たない超獣の力を封じる"キング・アルカディアス"とも協力関係にあるからな。かの光神龍はレインボーの力を持たない……仮にスペル・デル・フィンがナイトに奇襲をかけようとしたとしても、騎士たちの抵抗に合い、キング・アルカディアスに身動きを封じられるだろう。スペル・デル・フィンが一方的に倒されるとは思えんから、痛み分けになるだろうがな」

 

「なるほど。いやいけませんな。平和な時代に生きているとどうも……そういうことが思いつかなくなります」

 

アヴァラルドはすっかり感心した素振りだ。

 

「良い事だ。最高の勝利より、勝ち誇るべき平和もある」

 

ザ・イエスは、幼竜だった極神の時代に、自分達を守った電脳聖霊のことを思い出していた。

 

「いや……身を守る(すべ)()けていて悪いことはないでしょう。己の緊張感の無さを思い知りましたよ」

 

アヴァラルドは頭をかきながら答えた。

 

「緊張感か。そんなものを持たずに生きられる世の中こそが……理想の世界だとは思わないか?」

 

歴戦の光神龍は過去に思いを馳せるように、どこか遠くを見つめながらそう呟いた。

 

「……イエス殿。こうしてご一緒させていただいて、あなたがロレンツォ様に一目置かれている理由が分かりましたよ」

 

「ああ、ロレンツォ殿には良くしてもらっている。天雷に所属しないかと誘われて断った後も、良好な関係を保てているのは私にとっても喜ばしい。誘いを断られることを侮辱されたと捉えるナイトもいると噂に聞いたことがあった故に、あの時は私と天雷の交流もこれで終わりかと思ったが……全くの杞憂であった」

 

「ロレンツォ様は寛容なお方ですから。ただ、少し寛容すぎる所があるというか……天雷の長でありながら自然文明の超獣と交流を持ち、土産に貰ったという石碑を城に飾ったり……さらにはつい先日も、どこの誰とも知れない火文明の竜でもある聖霊を、天雷に迎え入れてしまったのです。そもそもナイトとは光、闇、そして水文明の誇り高き貴族であり……火や自然と関わるなど有り得ないとの声もあり……いえ、私は交流を持つこと自体は良いと思うのですが、まさか火文明が混ざった者まで天雷の一員として受け入れてしまうとは……」

 

"火のナイトか、珍しいな"

 

そう思ったザ・イエスが、そう口にしようとした時。

 

遥か彼方の遠方。

 

ザ・イエスは不穏なものを見た気がした。

 

「イエス殿? どうかされましたか?」

 

アヴァラルドが不思議そうにしている。

 

突風が吹いた。

 

遠方から雲が流されてやって来る。

 

暗雲。とでも呼ぶべき、嵐をもたらしそうな雲だった。

 

「波乱の……予感がするな……」

 

黄金の龍ザ・イエスは、根拠の無い直感だが、武闘会の裏で何かが動いているような違和感を覚えていた。

 

 

 

 

次回予告

 

「さあ若武者よ、拙者と手合わせ願おう」

 

紫電と若武者が、鍛錬の成果を確かめ合う!

 

「"剣誠"……《"ボルメテウス・剣誠・ドラゴン"》……それが私の新たな名です」

 

名を改める若武者!

 

「計画は絶対だ。誰が何を言おうと変わりはしない」

 

ネロ・グリフィスの野望が動き出す!?

 

「私はイナバ・ギーゼと申します。」

 

この紳士的な超獣は一体……?

 

次回、《魔帝剣征 〜武者を継ぐもの、乱心の魔光大帝〜》

 

「超銀河弾の出力を更に上げよ。資材・資金、共にいくらでも出そう」

 

第二章・開幕。物語が、ドラマティックに大きく動き出す――




二章からはバトル面もドラマ面も強化されていきます。
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