CINDERELLA GIRLS,ASSEMBLE!! 作:グレイソン
「あのさ」
「ん?」
「キャップだけズルい」
「……ん?」渋谷凛の言葉に、スティーヴ・ロジャースは少し間の抜けた声と共に首を傾げた。
二人はスターク・インダストリーズ日本支社広報課に割り当てられたフロアで、アイドル事業部の事務室にいた。そこは普通に事務仕事を行うだけでなく、アベンジャーやクライムファイター達で構成されるヒーロー職員達の本部のようにもなっている部屋だった。なので、今はアイドル達の次の予定に合わせて、どのヒーロー職員が護衛と送迎に就くかを、総合プロデューサーと言う名の統括役となっているスティーヴが調整している所だった。
凛がいるのは、単にこの後予定されているニュージェネレーションでのダンス連携レッスンまでの時間を潰していたからだった。彼女は専属カメラマンとして参加しているピーター・パーカーの傍らに座って、彼がアベンジャーズの広報用に撮影した出動風景の映像を眺めていた。
「決め台詞、アンタだけじゃん」
「ふむ?」
「アベンジャーズアッセンブルかい?」ピーターが尋ねる。
「そう」凛が頷いた。「キャップばっかり決めてる」
「そうでもないんだがな」スティーヴは苦笑いした。「アイアンマン――トニーも言ってるぞ? 他にもバッキーやサムだって言ってるし、ヤング・アベンジャーズの面々も使ってる。別に私だけでは……」
「でも映ってないけど」
「まぁ、最近は私が言ってる事のほうが多いか」
「毎回カッコよく決めてるじゃん。なんか羨ましい」
「羨ましいのか」
「うん」
「分かる」ピーターも頷いた。
「君もかね」
「私もそう言うの憧れるんだけど」凛が真面目な顔をして言う。スティーヴは苦笑いを崩せなくなった。「なんか欲しい。ライブの前とかに士気を高められるようなのしたい」
「765プロみたいにさ、シンデレラガールズ、ファイトー、オー! みたいなのでいいんじゃないの?」ピーターが言う。
「それは765さんとこの大先輩達のじゃん。私達のが欲しいんだよ」
「そうは言うがね」スティーヴは唸った。「そう言うものは自然と出て定着するものではないかね」
「そうなの?」
「私はそうだと思うんだけどな」
「その場になったらなんかいい奴思い浮かぶのかな」
「凛、案外君ならスルッと思い付きそうだけどね」ピーターが笑う。
「人をなんだと……」
「蒼い娘」
「何それ」
「ロマンチックと言うかポエムチックと言うか、中二っぽい……いやなんでもない」睨み付けられて、ピーターは目を逸らす。
「何かいい案があったりしないのか?」スティーヴは尋ねた。「こう言う掛け声をやりたいとか」
「無いよ。だから聞いてるんじゃない」
「じゃあ、我々のを使ってみればいいさ」
「いいの?」
「構わないよ。さっきも言ったが、割とみんな使ってるからね。日本語にすれば、集結せよや団結せよと言った感じの意味合いだ。ライブの前に言うにはちょうどいいだろう」
「シンデレラガールズ、アッセンブル……か」凛は少し考えるように黙ってから、小さく頷いた。「まぁ、悪くないかな」
「君達も我々のように、集結し、団結出来ると、私は信じているからね。相応しいと思うよ」
「内戦して解散(ディスアッセルブル)する所は真似しないでね。誰かさんがまた死ぬかも知れないから」
「ピーター」
「悪かったってキャップ」ピーターが笑いながら言った。
※
ライブの本番が迫るスターライトステージ、その裏側で、凛とシンデレラガールズは横並びになり、壇上へ繋がる階段を見やっていた。ここを駆け上がって飛び出せば、開演の幕が上がる。
「以前も言ったが、このライブはミュータントや孤児、障害や病気を抱える人々を勇気付ける為のものだ」階段の傍らに立つトニー・スタークが言う。「諸君らの輝きが力になる。だから、最高の姿を魅せてくれ、シンデレラガールズ」
「凛……今こそ、その時ではないかな」彼の横に並んだスティーヴが笑顔で言った。「我々もこう言う時に使うんだ」
「そうだね、分かってる」凛はうんと頷く。それから、仲間達を見渡した。「みんな、輪になって手を重ねて」
「分かりました!」島村卯月がいの一番に従う。「円陣ですね!」
「おっ? 何々しぶりん?」本田未央が明るい声で尋ねる。「なんか熱い事する気だね?」
他にもアナスタシア、三村かな子、緒方智絵里、神崎蘭子、諸星きらり、赤城みりあと、続々と集まり、従う。
「私達はシンデレラガールズと言うチームとしてここに集結している。だから、あの言葉で、みんなの意思を一つに団結したい」
「集結とか団結とかって事は、もしかしてあの言葉って、アレかにゃ?」前川みくが尋ねる。「キャップのよく言ってる……」
「あ! アベンジャーズの奴!?」城ヶ崎莉嘉が目を輝かせる。「アタシもアレ言ってみたかったんだよねー!」
「鬨の声って奴ね」新田美波が頷く。「いいかも」
「こう言うの最高にロックだね! やろう!」多田李衣菜が笑顔を浮かべる。
「うん、じゃあみんなで行こう」凛は頷き返し、重なり合った手を
見た。「シンデレラガールズ……!」
「アッセンブル!」全員の声が一つになると共に、彼女達は高らかに手を掲げた。
凛はスティーヴを見た。彼も凛を見やっており、そして静かに頷いていた。キャップのお墨付きだ。それがより自信に繋がった。
トニーがスタッフ達に向けて親指を立てた。開演の合図だ。そして間もなく千川ちひろのアナウンスが流れ、曲の前奏が始まると、彼女達は一斉に階段を駆け上がり、眩い光の下へと飛び出していった。このライブも間違い無く上手くいく。高鳴る胸の中で凛はそう確信した。