CINDERELLA GIRLS,ASSEMBLE!!   作:グレイソン

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 昔から葬儀で思っている事。


もしも別れる日が来たら

「私が死んだら、悲しんでくれますか?」

 ありすの問いに、文香はギョッとして本を落とした。バサッと言う音だけが、二人しかいない談話室にひどく響く

「な、何を言ってるのありすちゃん……!?」

「この間、親戚の葬儀に行ってきたんです」ありすは淡々と言う。「その時、参列者がそんなにいなくて。もちろん、家族葬と言う事もあったのかも知れませんが……私は、もっと大勢の人が故人を偲びに来るのが当然だと思ってたんです。だから、すごくさみしく思えて」

 ありすはふと笑みを向けて来た。

「私が死んだ時、両親の他にどれだけ悲しんでくれる人がいるのか、気になったんです」

「ありすちゃん……」文香は書を拾うのも忘れ、いたたまれない気持ちでこの妹分を抱き締めたくなったが、同じくらいに彼女を叱り飛ばしたい気持ちにもなっていた。何を言っているのだ、この娘は。文香は怒りを押し隠しながら答えた。「私が悲しまないはずがないでしょう……? あなたを友と思い、また妹のようにも想っていると言うのに……何をそんな事を」

「だったら、嬉しいです」ありすは微笑んで本を拾い上げ、手渡してくる。「一人はいると分かって、少し安心しました」

「ありすちゃん、そう思うのは私だけではないはず」文香は本を受け取るのではなく、彼女の手を包み込んで答える。「あなたの友達に聞いてみてください。この事務所で共に並び立つ仲間達にも。それに……プロデューサーさんにも。皆同じくあなたを大切に思っています、だから……」

「だと、いいんですけど」

「信じられないのですか……?」

「いえ、そう言うわけじゃ……」ありすがやるせない笑みを浮かべる。

「私の言葉でも……?」

「……少し、自信がないかもって」ありすはその笑みのまま、小さく首を振って返した。

 文香は愕然としてしまった。多感な年頃が故に、その葬儀の光景は余程衝撃的だったのだろう。確かに、文香にもそう言った不安を感じた時期はあった。だが、両親が、親類が、友達が、自分を愛してくれて、想ってくれていると感じられていたから、信じられていた。触れ合う人々はきっと、別れも惜しんでくれると。

 ふと、ありすへと目を向けると、彼女は両親と触れ合うタイミングも少なく、周囲にも壁を作りがちで、心を許していると言える相手はごく僅かに思える。自分以外でと言えば、同い年で親友の桃華か、プロデューサーくらいかも知れない。

 だったら、と文香は彼女の手を取って扉へと向かった。

「行きますよ、ありすちゃん」

「え、どこにです?」

「私よりもあなたを導いてくれる人のもとへ」

 文香はありすと共に、事務室のほうへ歩き出した。

 

「なんて悲しい事を言うんだ、ありす」プロデューサーはそう言って目線を合わせてくれた。文香は、彼がありすにそうしてくれるのが嬉しかった。見下すでも嘲るでも聞き流すでもなく、ちゃんと受け止めて接してくれるのが。

「君が死んでも僕は悲しまないと、本気で思ったのか? そんな事はあり得ないぞ」

「プロデューサーさん、ちょっと怖いです」ありすが少し圧倒されたように彼を見る。

「怖くて結構、今はそう思われても構わないよ」プロデューサーは更に熱意を視線に込めるように見詰め返している。彼は微笑みを絶やさずに続けた。「僕が……僕らが君をどれだけ大切に想っているか、分かってないだろう? 単なる上司と部下、仕事仲間なんかじゃあないんだぞ。友としてだけでなく、家族のように愛しているんだよ」

「家族?」

「そうさ、家族さ」プロデューサーは頷いた。「確かに、実の両親には敵わないだろうさ。だが、君が何かに触れて学び、成長する度に、僕は年の離れた妹か、結婚もしてないのに我が子を見ているかのように嬉しくなる。僕だけじゃあないさ、それは文香さんだってそうだ」

「えぇ」と文香も頷いた。「我が子とまでは行きませんが、概ね同じですよ」

「だから、悲しまないはずが無いんだ。信じていい」

「……文香さんまで同意しちゃったら、ちょっと重いとか、気持ち悪いとか、言えなくなったじゃないですか」ありすは笑いながら言ったが、それは皮肉るようでいてどこか嬉しそうな色を秘めていると文香には見えた。「分かりました……信じますよ、お二人の事」

「あぁ、そうしてくれると嬉しいよ。そして二度と疑わなくていいからね。たとえ喧嘩別れしたとしてもね」

「善処します」苦笑いして、ありすは頷いた。

「それでいいさ」プロデューサーが立ち上がり、深く座席に腰下ろすと、安堵したように溜息をつくのが分かった。不安になったのは何もありすだけではない。文香も、そしてプロデューサーもなのだから。こんな気も早すぎる内から死後を憂うのは、傍から見ていてあまり心地のいいものではない。もうごめんだ。

 それから、文香は思った。どこか生き急ぐようなきらいのあるこの娘が、本当に先立ってしまわないようにしておかないと。

「ありすちゃん……その上で、一つお願いしてもいいですか……?」文香はありすと視線を合わせた。

「はい、なんですか? 文香さん?」見詰め返すありすは表情から何かを感じたのか、次第に怪訝な色を滲ませてくる。「……文香さん?」

「私達よりも長く生きて。一分でも一秒でも長く……生き永らえて」すがるように、文香は手を握った。

「あぁ、そうだな。僕らより先に、なんてのは……冗談にもならない。ごめんだよ」プロデューサーも頷いたのが分かった。

「お願い……聞いてくれますか?」

「分かりました……善処します」今度は苦笑いもなく、真剣な眼差しでありすは頷いた。

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