魔法少女リリカルなのは バカの参戦Ⅱ   作:セイイチ

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第九話

 

 なのは達を救出した翌日。

 ヴィヴィオが学校から帰ってきた後、僕はヴィヴィオとレオを連れて、なのはとフェイトのお見舞いに来ていた。

 因みに、はやて達も同じ病院に入院しているので、後で顔を出す予定だったりする。

 

 「あ、見て、パパ! ここみたいだよ!」

 

 ヴィヴィオに言われて、僕がヴィヴィオの指さす方を見ると、そこには〝吉井なのは、フェイト・T・吉井〟と書かれた表札があった。

 

 「ほんとだ。それじゃあ、ノックして返事が返ってきたらドアを開けても良いよ」

 

 「もー。パパに言われなくてもノックしなきゃいけない事位分かってるよー」

 

 そう言いながら、ヴィヴィオが不満そうにほっぺたを膨らませながら僕の方を見てくる。

 その仕草が可愛いくて、思わずに抱きしめたくなったが、残念ながらここは病院なので我慢しておく。

 

 「あはは。ごめんごめん」

 

 「むー。ホントに分かってるのかな……」

 

 そう言いながら、まだ不満そうな表情を浮かべているヴィヴィオ。

 うん。前から分かってた事だけど、ヴィヴィオはこんな表情でも可愛いね!

 いつまでも見ていたい位だ。

 なんて事を僕が考えているとも知らず、ヴィヴィオは病室の扉をノックしていた。

 

 コンコン

 

 「はーい。どうぞー」

 

 ヴィヴィオのノックに反応して、中からフェイトの声が返ってくる。

 それを確認してから、ヴィヴィオが元気で明るい声を出しながら、病室の扉を開けた。

 

 「失礼しまーす!」

 

 「いらっしゃい、ヴィヴィオ」

 

 ヴィヴィオが学校に行ってる間に、あらかじめ連絡していた事もあり、フェイトは驚く事なく近寄ってきたヴィヴィオの事を優しく抱きしめていた。

 

 「ごめんね、ヴィヴィオ。明久から聞いたけど、ヴィヴィオも私達を助けにきてくれたんだよね?ありがとう。それと、心配かけてごめんね」

 

 「そんな全然だよ!フェイトママ達を実際に助けてくれたのはパパだし、ヴィヴィオは全然何も……」

 

 「何言ってのさ。ヴィヴィオがいてくれたから、僕も凄い助けられたって昨日から言ってるじゃない」

 

 僕はそう言いながらフェイトのベッドへと近づいていき、レオを近くにあったイスへと座らせた。

 

 「だってさ、ヴィヴィオ。パパがそう言ってるんだから間違いないよ。だからありがとうね」

 

 「うん……」

 

 フェイトに頭を撫でられながら、もう一度感謝の言葉を言われたヴィヴィオは恥ずかしそうに顔を少し赤らめながら、小さくうなづいた。

 

 「レオも一緒に助けてくれたんだよね? 助けにきてくれてありがとうね」

 

 「うん……」

 

 レオもヴィヴィオと同じような反応。

 まぁ、レオの場合は全く顔を赤らめてないから、そういった意味では同じ反応じゃないけど。

 

 「全く……。まだフェイトが相手でも喋れないの?」

 

 「うー……。だって、大人の人は怖いんだもん……」

 

 「いやいや。僕とはちゃんと喋れてるじゃない」

 

 マトモに喋ってくれるようになったのは昨日からだけど。

 

 「逆になんで明久とは喋れるの? 前まであんなに嫌がってたのに……」

 

 「なんでって言われても……。なんか良く分かんないけど、なぜか昨日から普通に喋ってくれるようになったとしか言い様がない。……かな?」

 

 いや、ほんと。なんでか僕にも分かんないんだから、分かんないとしか言い様がない。

 僕がダメ元でレオの方へ視線を向けると、予想外にもレオは口を開いてくれた。

 

 「だって、明久さんは僕の事助けてくれたから……。まだちょっと怖いけど、優しいから……」

 

 「フェイトもなのはも優しいよ?」

 

 「うー……。分かってるけど、怖いんだもん……」

 

 優しいのは分かってるけど、怖いってどういう事?

 僕はレオの言ってる意味が分からず、首を傾げた。

 

 「まぁ、前の明久みたいにら完全に無視されてるわけじゃないから、少しずつ心を開いていってもらうよ。……というか、明久が特別なんじゃない? どうやったら、たった1日でここまで心開いてもらえるの?」

 

 「僕にも分かんない」

 

 ……。

 いや、だってホントに分かんないだから、しょうがないでしょ!?

 僕が特別した事なんてないし、強いて言うなら昨日遺跡にいた女、名前は確か……ハンナだったかな?アイツからレオを助けた位だ。

 というか、シルメディアンだっけ? アイツらの目的はいったいなんだったんだろうか?

 あの後、僕達をあの場所まで連れてきたクロウも姿を表さなかったし、なんか僕としては巻き込まれただけで、わけの分からない事だらけだ。

 なんて柄にもなく僕が難しい事を考えていると、扉の方からなのはの声が聞こえてきた。

 

 「あれ? 明久君達、もーきてたんだ。思ってたより早かったね」

 

 「なのはママ!」

 

 さっきまでフェイトに抱き着いていたヴィヴィオが、なのはの姿を視界に捉えると、今までも笑顔だったのに、それ以上に、もーこれ以上ないって位の笑顔を浮かべた。

 

 「まぁね。思ってたよりヴィヴィオが早く学校から帰ってきたから、早めに来たんだ。……というか、なのは。紙なんて持ってどこ行ってたの?」

 

 僕はなのはの持っている書類みたいな紙を指しながら、なのはに声をかける。

 

 「ん? これ? これは病院の書類だよ。退院手続きの書類とかその他諸々の」

 

 「あー、なるほど。退院するための奴ね。……って、なんですと!?」

 

 一瞬納得しかけたけど、僕は言葉の意味を考え直して大声をあげた。

 当然だ。昨日入院した自分の妻が、今日には退院する話をし出したんだ。驚かない方がおかしいってもんだ。

 

 「え!? ママ達もー退院して大丈夫なの!? 入院したのって昨日だよ!?」

 

 「2人とも大げさ過ぎだよー。たしかに気は失っちゃったけど、元々傷は浅かったし、今朝やった精密検査でも問題なかったから、2.3日安静にしてれば退院しても良いって先生にも言われたから大丈夫だよ」

 

 そー言いながらニコニコしているなのは。

 ちらっと視線だけフェイトの方に向けると、フェイトも心穏やかそうに笑顔を浮かべている。

 たしかに2人とも顔色は悪くないし、無理をしている様子は全く見受けられないので大丈夫そうに見える。

 けど正直、なのはもフェイトも仕事熱心というか、仕事大好きというか、結婚してからも仕事を辞める気が全くなかった位だから、早く仕事に復帰するために無理してるんじゃないかと心配になってしまう。

 

 「んー……。心配だ……」

 

 「もー、明久君心配し過ぎ。私もフェイトちゃんも先生から退院許可貰ってるんだから大丈夫だって」

 

 「そうそう。それに、六課にはシャマルがいるから、もし何かあったとしてもシャマルに見てもらえるしね」

 

 「そのシャマルも今は入院中でしょ?」

 

 「んーん。シャマルなら今朝のうちに、はやてちゃん達八神一家の皆で退院していったよ?」

 

 「え!? 八神部隊長達、もー退院しちゃったの!? それはいくら何でも早すぎない!?」

 

 僕の代わりにイチ早くツッコミを入れてくれるヴィヴィオ。

 うん。僕達って異体同心だね!

 

 「まぁね。でも、はやてちゃん達は私達よりも先に精密検査受け終わってたみたいだから、心配ないと思うよ?」

 

 「あ、もちろんエリオ達は大事を取って、どんなに早くても明日退院するようにって言っといたから、エリオ達は明日の午前中までは病院にいる事になってるから、そこは安心して」

 

 色々といっぺんに聞きすぎて、もーどこから突っ込めば良いのか良く分からなくなってきた……。

 でもとりあえず、エリオ達には大事を取らせて明日まで入院させるのに、どーして自分達は大事を取らないのか良く分からない……事もないな。

 どーせ2人の事だから「まだ事件解決したわけじゃないし、こーしてる間にも被害は拡大していく。そんな中、現場に出る自分達がいつまでも入院してる訳にはいかない。これ以上被害を出さないためにも、自分達が頑張って早く事件解決しないと」とか思ってるんだろうな。多分、はやて達が早く退院した理由も似たようなもんなんだろう。

 そー考えると、僕はだんだんこの事を考えるのがバカらしくなってきた。

 

 「いや、そーいう問題じゃな――」

 

 「はぁ……。もー良いよヴィヴィオ。こーなったら、2人に何言っても無駄だよ。一度言い出したら聞かないんだから」

 

 「ちょ、それ明久君には言われたくないんですけど!?」

 

 「ホントだよ! 明久にだけは言われたくないよ!」

 

 2人が何を言ってるのか僕には分からない。

 僕は2人のツッコミは完全にスルーして、ヴィヴィオとの会話を続けた。

 

 「まぁ、そもそも六課にいようが病院にいようが関係ないよ。どこにいようと僕が無理無茶させなければ良いだけの話しだからね」

 

 「んー……。パパがママ達相手にそんな事できるか不安だけど、パパがそこまで言うなら分かったよ……」

 

 若干失敬な部分はあったが、最後には納得してくれたから良しとしよう。

 ……いや、ホントに僕だってやる時はやるからね?

 

 「むー……。なんか納得いかないな……」

 

 「ホントに……」

 

 若干2名まだ納得いってないみたいだけど、僕は何も間違った事は言ってないと思う。

 ともあれ、こーしてなのはとフェイトの退院が決まったので、僕らはなのはとフェイトが部屋を色々と片付けてる間に、スバル、ティアナ、エリオ、キャロの見舞いをして、六課の隊舎へと帰ったのだった。

 

 

          ☆

 

 

 「以上があの遺跡に書かれていた言葉よ」

 

 とあるシルメディアンのアジトで、ハンナは黒い影9人に向かってレイに読ませた石版に書いてあった事を報告していた。

 

 『〝氷の地にて7体の元龍の力が揃いし時、我は目覚める。

   我が目覚めし時、世界は滅ぶであろう。

   願わくば、我が目覚める事がない事を我は祈る……〟か結局ここもハズレか?』

 

 『いや。そうでもない。これで少なくとも氷の地に我らの求める物が眠ってるのは分かった』

 

 『そんなんもん前から分かってたじゃねぇか。今更何言ってやがる』

 

 『違う。前まではあくまで我々の予想に過ぎん。だが、今回の石版でそれが確定したのだ。大きな進歩だろう』

 

 『今回の石版で予想が正しかった事は分かったわ。でも、今回は新しい発見は何もないって事よね?』

 

 『ないでしょうね。結局どこに眠ってるか分からない。他の遺跡の手掛かりもない。正直、今回の件で黒竜100匹の犠牲は大きな損失だと思いますが?』

 

 『それは違うな。今回の事で言えば、ある程度雷炎龍の力を計る事ができた。そして、機動六課が黒竜に対応する手段がない事も分かったじゃないか』

 

 黒い影が各々で言いたい事を言い始めたので、ハンナは嫌気が指してきていた。

 

 自分の報告義務は既に終わった。

 今好き放題言い合ってる連中は、このアジトに今はいない。思念体を使っているので本人の姿はアジトにいるように見えるが、実際にはいないのだ。

 しかも、身バレを気にして全員顔を隠している。

 正体が分かっているのは、今ハンナの隣にいるクロウ位だ。

 実を言うと、ハンナはボスの顔すら知らなかった。

 

 (目的があるとは言え、こんな謎だらけの組織にいても良いのか不安になるわね……。もー10回以上は思ってるけど……)

 

 ハンナは心の中でため息をつく。

 すると、それを知ってか知らずか、隣にいるクロウが黒い影全員を黙らせて口を開いた。

 

 「うるさいぞ。お前ら。そんな話しは全員姿現してからしやがれ。それができないなら、ボスに言われた事だけしてろ」

 

 『な、なんだと、クロウ! 貴様、何様のつもりだ!』

 

 「だから、うるさいんだよ。俺の発言に問題があったらボスが止めるさ」

 

 そう言ってクロウは、ボスの影に視線を向けた。

 

 『……構わん。それよりもクロウ、お前の報告がまだだ。報告しろ』

 

 「ああ。……俺からの報告は2つだ。1つは例の奴が現れた」

 

 『……やはり現れたか。……奴はどうした?』

 

 「一戦交えたが、決着はつかなかった。こっちには時間もなかったしな。無理にでも捕らえた方が良かったか?」

 

 『……いや、それで良い。奴を甘く見るな。舐めてかかれば必ず返り討ちにあう。一筋縄ではいかんだろう』

 

 「なら俺からの報告は後1つだな。……今回の俺の任務だった仲間を増やす件。これに成功した。……入れ」

 

 「……俺に命令すんじゃねぇよ」

 

 クロウに言われて、男が1人悪態をつきながら姿を表した。

 

 「文句を言うな。誰のおかげで今ここにいられると思っている? 文句を言うなら殺すぞ」

 

 「お? いいね。やってみろよ。お前が暴れさせてくれるって言うなら、俺は大歓迎だぜ」

 

 「……お前には礼儀というものを教えてやる」

 

 まさに一触即発。

 後5秒もすれば男とクロウの殺し合いは始まっていただろう。

 だがそんな殺し合いは

 

 『やめろ』

 

 ボスの一声によって止められてしまった。

 

 『クロウ。目的を忘れるな』

 

 「……すみません」

 

 「なんだよ。やんねぇのかよ」

 

 『お前もそう焦るな。我々は仲間だ。仲間割れなんぞしなくても、言う事を聞けば暴れさせてやる。それが分かったら名を名乗れ』

 

 「……ちっ。扇 風月。風龍の元龍だ」

 

 クロウが連れてきた男は、自らを3年前JS事件で明久に敗れ、拘置所に入れらていた扇 風月と名乗り、自分の周囲に風を吹かせたのだった。

 

 

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