魔法少女リリカルなのは バカの参戦Ⅱ   作:セイイチ

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第十一話

 僕が訓練を始めてから数日。

 僕らフォーワード陣は、なのはとシャーリーから招集を受け、デバイスルームに来ていた。

 

 「さて、それじゃあ皆揃ってるみたいだから、さっそく始めちゃうね」

 

 なのはがそう言うと、シャーリーがキーボードをたたいて、僕らの目の前にディスプレイを表示した。

 シャーリーが表示してきたものは動画だ。

 けど、その動画に映っていたのは、何もないまっさらな平地だけだった。

 

 「えっと……。なにこれ?」

 

 僕はシャーリーの表示してきた動画を見ても二人が何をしたいのかイマイチよく分からず、首を傾げていた。

 

 「よくぞ聞いてくれました! これはですね、機動六課の新しい訓練所として作られた第二訓練所です!」

 

 「え? これ新しい訓練所なの?」

 

 「はい! とは言っても、第一訓練所のように海に浮かべるための装置を作る時間もなかったので、六課の敷地内に無理やり防音設備の整ったドームを作っただけなんだけどね?」

 

 いや、それでも充分凄いと思う。

 ほんと、忘れてたけど六課の技術力って無駄に凄いよね……。

 

 「あのー……。質問良いですか?」

 

 「どうぞ、ティアナ。なんでも聞いて?」

 

 ティアナが手を挙げると、それに笑顔で答えるシャーリー。

 どうやら、何かしらの質問が飛んでくるのは想定済みのようだ。

 

 「それじゃあ遠慮なく……。わざわざ第二訓練所なんて作る意味あったんですか?」

 

 ド直球。返答次第では、第二訓練所を作った労力全てが無駄な労力となりかねない質問をティアナはぶつけていた。

 いや、ぶっちゃけ僕もそれ思ってたけど、なんとなく触れちゃいけないんだと思ってスルーしたのに。

 僕はそんな事を思って、ティアナとシャーリー、二人の顔を交互にハラハラしながら見ていたんだけど、僕の心配は杞憂だったようで、相変わらずシャーリーは笑顔だった。

 

 「もちろん意味はあるよー。実はここ数日、この前明久さんが倒した黒龍を疑似的にでも複製できないか色々やってたんだけどね、それが遂に完成したんだよ! でね、皆にはここで黒龍と戦うための純粋な力を身につけてもらうために、こうして何も障害物のない訓練所を作ったってわけなんだよ!」

 

 「まぁ、要するに純粋に個々の力で黒龍を倒せるようになるために今後は訓練するわけなんだけど、その時に使う場所は第二訓練所を使うの。疑似的なものとは言え、かなり本物に近い出来になってるから、ここで黒龍を倒す事ができたら、本番でも何の問題もなく黒龍と戦えるってわけなんだよ。明久君分かった?」

 

 「良く分かんないけど、とりあえず第二訓練所では、疑似黒龍を使って、黒龍を倒すための訓練をするって事は分かった!」

 

 自分で言うのもなんだけど、今の説明で僕にそれ以上を理解しろっていう方が無理ってもんだ。

 これだけ理解できただけでも自分を褒めてやりたい。

 

 「うーん。まぁ、ゆくゆくは黒龍関係なく、純粋に個人の戦闘能力をあげるための訓練所としても使いたいと思ってるけど、今はそんな感じで大丈夫だよ」

 

 なのはがそう言った途端、スバルたちフォワード4人が皆驚いたような顔をした。

 はて? 皆はどうしてこんな驚いているんだろうか?

 

 「なに? 皆どうかしたの?」

 

 「い、いやちょっと驚いちゃって……」

 

 「そ、そうね……。まさか、吉井が一回の説明で難しい話を理解できるなんて思わなくて……」

 

 「「あ、あははは……」」

 

 「そんな事だろうと思ったよ! こんちくしょう!」

 

 正直、完全に予想通りだよ!

 どうやら皆の中では、3年経っても僕のイメージに変わりはないらしい。

 やだな。泣いてなんかいないよ? ただちょっと、目から雨が降りそうに……。

 

 「はいはい。皆して明久君を苛めないの。明久君も泣かないの。話が進まないでしょ?」

 

 嫁からもフォローしてもらえなかった僕。

 どうして何年経っても僕=バカの方程式が崩れないんだろか?

 そろそろ誰かに崩してもらわないと僕のガラスのハートが大変な事になってしまう。

 

 「えっと、どこまで話したっけ……?」

 

 「第二訓練所の説明までですかね?」

 

 「あー。そうだった。えっと、それじゃあ、こっから先は言葉で説明するより、実際に見てもらった方が分かりやすいかな?」

 

 「はーい。それじゃあ、現場のフェイトさん達に繋げますね!」

 

 そう言ってシャーリーは、通信をフェイト、シグナム、ヴィータの三人に繋げた。

 

 「こちらスターズ1。皆、準備はできてる?」

 

 『ライトニング1、大丈夫だよ』

 

 『同じく』

 

 『アタシもだ』

 

 「了解。それじゃあ、今から訓練用疑似ドラゴンを出すけど、皆まずは通常モードでお願いね」

 

 『『『了解』』』

 

 なのはフェイト達にそう声をかけた後、僕らの方へ視線を向けた。

 

 「今から隊長達に訓練用の模擬ドラゴンと戦ってもらうんだけど、皆は隊長達から目を離さないで良く見ててね。それじゃあ、シャーリーお願い」

 

 「了解です、なのはさん! 訓練用模擬ドラゴン、第二訓練場にて召喚!」

 

 シャーリーがそう言ってキーボードをたたき終わった瞬間。

 

 『ごぁぎゃぁぁ――――!』

 

 「っ!」

 

 どこかで聞いた事のある悲鳴のような声、僕が遺跡で戦った黒龍とそっくりのドラゴンがモニターの向こう側に表れていた。

 その瞬間。

 

 『でりゃぁぁ!』

 

 ヴィータが黒龍に向かって、思いっきりグラーファイゼンをぶっ叩いた。

 けど

 

 『ちっ! やっぱりかなり硬ぇな。思いっきり殴ったのに、傷一つ付きやしねぇ』

 

 黒龍は何事もなかったようにピンピンしており、ヴィータの言うように傷一つ付いていなかった。

 

 「さっきも言ったように、この黒龍は本物にかなり近い制度で作られてるから、ドラゴンの力が使われていない攻撃は効かない。だから、今のヴィータちゃんの攻撃でもダメージを与えられてないって事は皆も分かるよね?」

 

 なのはの問いに対して、首を縦に振るフォワード4人。

 それを見てなのはも満足そうに笑みを浮かべた。

 

 「OK。それじゃあ、この黒龍が本物に近いって分かってもらえた所で次にいこう。――こちらスターズ1。予定通り、次はアサルトモードでの攻撃でお願いします」

 

 『『『了解!』』』

 

 アサルトモード? なにそれ?

 僕は意味が分からずに皆を見渡すと、フォワード陣は全員なんの事か分かっていない様子だ。

 そして、なのはとシャーリー見てれは、見てれば分かるとばかりにモニターを指さすだけだった。

 仕方がないので、僕はもう一度モニターへと視線を戻す。

 すると、ちょうど動きがあったようで、ヴィータが一歩前へ出て黒龍に近づいた。

 

 『こいつはアタシがやる。――いくぜ。グラーファィゼン! モードアサルト!』

 

 ヴィータがそう叫んだ瞬間、ヴィータの足元に魔法陣が描かれた。

 

 『いくぜ、グラーファイゼン! でりゃぁぁぁ!』

 

 先ほどと同じように黒龍に向かってグラーファイゼンを思いっきりぶっ叩くヴィータ。

 ここまではさっきと何かもが同じだ。

 けど

 

 『ごぁぎゃぁぁ――――!』

 

 「え!?」

 

 「うそ!?」

 

 けど、その後の結果はさっきとはまるで別のものだった。

 ヴィータに思いっきりぶっ叩かれた黒龍は断末魔のような悲鳴をあげた、その場に倒れこみ息絶えていた。

 ……いや、実際には第二訓練所でしか召喚できないデータのようなものらしいので、そもそも命というものがあるわけじゃないみたいなんだけど、まぁ、うん。とにかくヴィータの一撃で黒龍は見事に倒されていた。

 

 「とまぁ、今皆に見てもらったように、アサルトモードを使えば、黒龍とも戦えるようになるんだ」

 

 「ちなみに、元はなのはさんのブラスターモードを参考にして作ったんだけど、アサルトモードはブラスターモードみたいなドーピングと違って、少し龍属性の魔力を混ぜ込むだけだから、体への影響は得にないの。だから安心してね」

 

 「とは言え、完全に使いこなすに訓練が必要だし、なにより魔力の消費量はバカにできないから連発はできない。戦況をちゃんと把握して、適切なタイミングで使ってね」

 

 なのはとシャーリーが何やら言っているが、僕には全く理解できない。

 ずっとヴィータを見てたけど、特に変わった姿は見受けられない。

 強いて言えば、黒龍を攻撃する前に足元に魔法陣が描かれた位だろうか?

 いや、それが重要だったんだろうけど、それだけであんな簡単に黒龍を倒せるようになるとは想像もできなかったんだ。

 

 「あ、あの、なのはさん」

 

 「なに、ティアナ?」

 

 「このアサルトモード、私達でも使えるんですか?」

 

 「もちろん。昨日、皆にちょっとデバイスを借りたでしょ? その時にもうバージョンアップもしといたから、後はちゃんと訓練さえすれば4人ともすぐに使えるようになるよ」

 

 凄いな。

 今のを皆が使えるようになったら、もう黒龍にやられる事もないだろう。

 って、あれ?

 

 「あのさ、なのは」

 

 「なに? どうしたの、明久君?」

 

 「えっと、僕は昨日デバイスを預けた記憶ないんだけど、どうしたら……」

 

 本当に、本当に僕は真面目になのは達に聞いていたんだけど、なのは達は皆きょとんとした表情をしていた。

 その顔はまるで、「この人なに言ってるの?」と言われているようだ。

 

 「え? 明久さん何言ってるんですか?」

 

 言われてるようじゃなくて、本当に言われた。

 え? 僕、何か変なこと聞いた?

 

 「あのね、明久君。このモードは別にパワーアップとかが目的じゃなくて、黒龍と戦うための対抗策なんだよ? 既に黒龍と戦う術を持ってる明久君に必要ある?」

 

 なのはに言われて気が付いた。

 あ、これ僕に関係ない奴だ。

 僕はその事を今更ながらに理解していた。

 

 「必要……ないね」

 

 「でしょ?」

 

 でもちょっと待ってほしい。

 皆がこれから僕には必要ないアサルトモードを使いこなすための訓練をするなら、その間僕はどうしたら良いんだろうか?

 僕の表情を見て、そんな僕の考えている事が分かったんだろう。

 なのは僕を含めたフォワード全員に向かって声を発した。

 

 「はい、注目! それじゃあ、皆にもアサルトモードを実際に見てもらった事だし、これからアサルトモードを使いこなす訓練を始めたいと思います」

 

 「「「はい!」」」

 

 4人も前回煮え湯を飲まされた黒龍対策の訓練って事で、今まで以上に気合いの入った返事だった。

 

 「うん。皆やる気満々だね。それじゃ、スバル、ティアナ、エリオ、キャロの4人はこれから私と一緒に第二訓練所に行って、隊長達とアサルトモードの訓練をしよう。まだまだ隊長達も使いこなせてるとは言い難いからね。誰が一番最初に使いこなせるようになるか競争だね」

 

 「「「はい!」」」

 

 「で、明久君は第一訓練所でフィジカルトレーニングね。フォワードの中で一番明久君が体力ないみたいだから、皆がアサルトモードの訓練をしている間に、せめて全盛期、高校生の頃と同じ位の体力には戻しといてね? 因みにだけど、ザフィーラに監督役として第一訓練所に行ってくれるようにお願いしたから、逃げたりしたらすぐに分かるからねる?」

 

 そー言って僕に微笑みかけるなのは。

 僕に取って、このなのはの笑顔が何よりも怖かったりする。

 と言うか、僕ももう20歳だよ?

 高校時代、しかも全盛期っていうと六課で体を鍛えてた頃だから高2の時位でしょ?

 いくら何でも、その頃と同じ位の体力っていうのは無理があると思う。

 まぁ、やる前から無理とか、絶対に言えないけど……。

 

 「シャーリーにも第二訓練所の方に来てほしいんだけど頼めるかな? 私もアサルトモードを使いこなせるように訓練したいから、シャーリーに黒龍の管理をお願いしたいんだけど……」

 

 「大丈夫ですよー。むしろ、最初からそのつもりでした!」

 

 「うん。ありがとう、シャーリー。――それじゃ、各自目的地まで移動開始!」

 

 「「「はい!」」」

 

 こうして僕は一人寂しくザフィーラの待つ第一訓練所へ向かったのだった。

 

 

          ☆

 

 

 「はぁ……。今日も疲れたな……」

 

 今日一日の訓練を終え、夕食も食べ終わった僕は、残りの体力を全て使い果たして自分のベッドにダイブした。

 

 「お疲れ様〜。今日も大変だったの、パパ?」

 

 僕がベッドでくつろいでる隣で、何やらカバンの中に色々と詰め込んでるヴィヴィオが声をかけてきた。

 ちらっとヴィヴィオの方へ視線を向けると、ヴィヴィオの隣で爆睡してるレオの姿が目に映ったので、どうやらレオは既に寝ているようだ。

 

 「うーん……。大変だったと言うか、今日は体力作りメインの訓練内容だったから、いつもより体力的にハードではあったかなー」

 

 ザフィーラの監督と言う名の監視の下、なのはの考えたハードな体力作りの訓練をしたんだから、当たり前と言えば当たり前なんだけど、今日のメニューは僕が六課に合流してから一番厳しかった。

 そりゃ、疲れて当然ってもんだ。

 

 「と言うか僕の事より、ヴィヴィオは何やってるの? 明日は祝日だから学校も休みでしょ?」

 

 「ん? あぁ、これ? これは明日無限書庫に行くから、そのための準備だよ」

 

 「無限書庫?」

 

 無限書庫ってあれだよね?

 ユーノさんが司書長やってて、簡単に言えば大図書館みたいな所の事だよね?

 なんでヴィヴィオがそんな所に行くんだろうか?

 

 「うん。明日は八神司令に頼まれて、ちょっと元龍について調べるために無限書庫に行かなきゃなんだよ〜」

 

 「はやてに頼まれて?」

 

 はやてが直々にヴィヴィオに頼んだって事は、そんなに大事な事なんだろうか?

 僕には良く分からないんだけど、なんかヴィヴィオは無限書庫司書の資格を持ってるから、普通の人より無限書庫で資料を探すのは得意ならしいし。

 

 「うん。なんかね、ユーノさん達が今忙しいから元龍について調べる余裕がないらしくて、ヴィヴィオも八神司令と一緒に無限書庫で調べてくる事になったの」

 

 「そうなんだ。でも、明日はせっかくの休みだったのに、はやての手伝いなんかしてて良いの?」

 

 「それは全然大丈夫だよ〜。わりと本好きだし、ヴィヴィオだって事件解決の手助けしたいしね」

 

 最近よく思うけど、我が娘ながらヴィヴィオは本当に良い子だよね。

 こんな娘の未来を守るためなら、多少訓練がキツくても頑張ろうと思えてくる。

 これが所謂親バカって奴なのかと思うと、ちょっと苦笑いが出てしまう。

 

 ヴィヴィオみたいな子が、これからも笑って過ごせるように、僕も弱音なんか吐かずに頑張ろう。

 

 僕はそんな事を思いながら、ゆっくりと夢の世界へと旅立って行ったのだった。

 

 

          ☆

 

 

 とあるシルメディアンのアジト

 

 「奴が動き出した」

 

 いつものように思念体だらけの会議が始まって早々、クロウはボスの口からそんな報告を受けていた。

 

 「このタイミングでか? アイツはアンタの計画を知ってるんだろう? それなのに、このタイミングで動き始めるのは早いんじゃないのか?」

 

 「それでも奴は動き出した。これは紛れもない事実だ。そうだね、カエラ?」

 

 ボスにカエラと呼ばれた少女が、クロウの背後から、つまり顔を隠した思念体ではなく、正真正銘の本人が姿を現していた。

 

 「驚いたな……。まさか俺が背後を取られるなんてな……。しかも、こんな子ども2人にとは」

 

 「子ども扱いするな。オレもカエラも、もー13だ。それに、オレはお前より強いぞ。クロウ」

 

 カエラと呼ばれた少女の後ろから、強気な発言をしてくる少年。

 ボスから名前を呼ばれていなかったが、クロウに気づかれずに、クロウの背後から現れた事から、この少年も随分な実力者である事をクロウは直感で感じていた。

 

 「そいつは悪かったな。だが、あんまり大人を舐めるもんじゃないぞ。世間は広い。今までがどうであれ、俺もお前より弱いとは限らんだろう?」

 

 「だったら、試してみるか?」

 

 「いいや。俺はガキ相手に本気になるほど、子どもじゃないからな。それにアイツが動き出したんなら、仲間同士で争ってる場合じゃないしな」

 

 クロウはそう言って、少年との話を強制的に終わらせて、ボスの思念体へと視線を向けた。

 

 「それで? アイツが動き出したってのが本当なら、目的はなんなんだ?」

 

 「奴はクロウが風月を脱獄させる時に邪魔をしてきた。つまり、奴の目的は我々に元龍を渡さない事なんだろう」

 

 「だったら、アイツの行く先に元龍……残りは水龍だけだから、水龍がいるって事か?」

 

 「そうなるな」

 

 ボスがそこまで言った瞬間、クロウは次に自分がするべき事がなんなのか瞬時に理解していた。

 

 「なるほど。なら、俺はアイツが元龍を手に入れる前に、元龍を攫ってきたら良いわけだな」

 

 「攫うよりも仲間に引き込む方が好ましいが……。まぁ、概ねその通りだ」

 

 「了解した。なら、さっさと済ませよう。……で? アイツは今どこにいるんだ?」

 

 「それはカエラしか知らない。だから、今回はカエラと共に動いてもらうぞ、クロウ」

 

 そう言われて、クロウがカエラの方に視線を向けると、カエラもクロウに視線を向けてコクリと頷いた。

 

 「大丈夫。ジンの居場所なら、ワタシが知ってる」

 

 「なら、さっさと行くとするか。……で? こっちのガキの方は?」

 

 「だからオレをガキ扱いするな! オレにはシギルって名前があるんだ! それに、カエラはオレの妹だ! カエラを守るために、オレも付いて行くに決まってるだろ!」

 

 シギルと名乗った少年に一瞬目を向けてから、クロウは確認のために再びボスの方へと視線を向けた。

 

 「心配するな。シギルはカエラのナイトだ。そんじょそこらの魔道士では相手にもならんさ」

 

 クロウは内心でため息を吐いた。

 正直、シギルが強いかどうかは問題ではない。

 子ども二人を連れて行くなんて、子守りを押し付けられた気分になる。

 そもそも、これから行く先にはアイツ、土龍のジン・アラヘカトがいる場所なんだ。戦闘を避ける事はできないだろう。

 そんな所に子ども二人を連れて行くなんて、クロウにはため息しか出ない事だった。

 

 「全く……。なら、今回は俺とシギル、カエラの三人で向かえば良いのか?」

 

 「いや。風月も暴れたがっていたからな。アイツも連れて行ってやれ」

 

 クロウは今度こそ大きなため息を吐いていた。

 また、めんどくさいのが増えたと。

 

 「いいのか? アイツを連れて行って、もし管理局と遭遇したら、俺達が扇を脱獄させた事がバレちまうぞ?」

 

 「構わんよ。と言うより、ルディックのジ爺さんには既にバレてる。しかも、極秘で管理局内に裏切り者がいないかまで調べ始めてるよ」

 

 「へぇー。思ってたより管理局も優秀なんだな。と言うか、そんなの調べられて、アンタ達は大丈夫なのか?」

 

 クロウはボスと、ボスの右隣にいる思念体に向かって言った。

 ハンナと違って、クロウはボスを含めて、ここにいる思念体の何人かの正体を知っており、それゆえの発言だった。

 

 「お前が心配する事じゃない。それに、既に手は打ってある。他に何か言いたい事があるか?」

 

 「いや、何も。アンタがそれで良いと言うなら、アンタの言う通り俺が心配する事じゃないさ」

 

 「なら、さっさと二人と風月を連れて行け。アイツに元龍を取られると厄介だ」

 

 「分かったよ。……ほんじゃ、ボスのお望み通りさっさと行くとするかね」

 

 そう言って、クロウはシギルとカエラ、そして念話で呼び出した扇風月を連れて、アジトを出発したのだった。

 

 

 

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