魔法少女リリカルなのは バカの参戦Ⅱ   作:セイイチ

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前回に引き続いて、今回も遅くなってしまい、待っていて下さった方(いるか分からない)本当にすみませんでしたm(__)m

そして、今回は久しぶりに書いた事、視点が変わったりする関係で、いつも以上に駄文になってしまっているかもしれません あせ
これがスランプと言う奴なのか……(そんな良いもんじゃない←)


そんなわけで、いつも以上に読みにくいかもしれませんが、それでも付き合ってやるよ!って方は、いつもありがとうございます!笑

それでは本編をどうぞ!


第十二話

 「調査?」

 

 なのは達が対黒龍用の訓練を初めてから一週間後。

 僕らフォワード陣は再びはやてに呼ばれて、司令室に集まっていた。

 

 「うん。皆も知ってのとおり、今私らには圧倒的に情報が足りてへん。せやからヴィヴィオに協力して無限書庫で元龍について調べてもらってたんやけど、そこでちょっと気になる事があってな」

 

 「気になる事……ですか?」

 

 「うん。なんでも、ヴィヴィオが見つけてくれた文献によると、この世界を作ったとされる元龍を統べる元龍の神として神龍ディアテオスっちゅうのがおったらしいねん」

 

 「神龍……ですか? それはその、なんと言うか……」

 

 「胡散臭い?」

 

 ティアナが思わずポロっと零した言葉に、はやてが笑いながら聞き返した。

 

 「あ、いや、私は別にそう言う意味で言ったんじゃ……」

 

 「かまへんよ~。私もティアナと一緒で、初めヴィヴィオから聞いた時は同じ反応したしな~。けど、これを見たらティアナも少しは考えが変わるんとちゃうか?」

 

 はやてはそう言ってディスプレイを僕等に見せてきた。

 

 そこには、なにやら文字の書いてある石版の写真と、

 

 『氷の地にて7体の元龍の力が揃いし時、我は目覚める。

  我が目覚めし時、世界は滅ぶであろう。

  願わくば、我が目覚める事がない事を我は祈る……』

 

 そう書いてある紙を撮った写真が写っていた。

 

 「はやて、これはいったい……」

 

 これがなんなのか分からず、僕が首を傾げていると、どうやらフェイトも同じような事を思っているようで、はやてに直接聞いていた。

 

 「これか? これはこの前の遺跡で発見された石版と、その石版の文字を解読したもんや」

 

 「解読って……。これ、私も見せてもらったけど、その時はベルカ時代よりも古い文字って事しか分からなかったよね? どうやって解読したの?」

 

 「ああ、実はこれを解読したんレオなんよ。なんでレオが読めたんかは不明やけど、遺跡の内部でハンナに脅されたレオが石版の文字を読んだって話をヴィヴィオから聞いて、この石版の文字をもう一度レオに見せて、読んでもらったんよ」

 

 なるほど。

 つまり、フェイトが調べた後、レオに読んでもらったからフェイトの知らない内に解読できてたってわけか。……って、あれ? なんでベルカ時代よりも古い文字をレオが読めるんだろうか?

 と言うか、確かレオって平仮名も読めなかったはずなのに、本当に読めたんだろうか?

 

 「まぁ、確認のしようがないから、この解読が正しいかは分からへんけど、これが正しかった場合、さっき言うてた神龍の話も、絶対にありえへん話しではないと思わへんか?」

 

 「なるほど。それなら確かにありえそうな話だね。”氷の地にて7体の元龍の力が揃いし時、我は目覚める”この我って言うのが、神龍の事だとしたら……。そして、これが神龍である可能性は充分にあると思う」

 

 「フェイトちゃんも私と同じ考えって事は、神龍も存在すると思ってた方が良いかもしれへんね。仮におらんくても、私等の取り越し苦労で終わるわけやし」

 

 なるほど。確かに、いないものだと思ってたのに、いざとなった時に実は存在しましたじゃ対処に遅れてしまうかもしれない。それなら、存在すると思ってた方が素早く動けるってもんだ。

 

 「まぁ、そもそも明久君に会うまで、元龍の話もおとぎ話だと思ってたのに元龍は実在したわけだし、神龍だって実在してもおかしくはないね」

 

 なのはがそう言った瞬間、いっせいに皆が僕の方を見て、なんか納得したように顔をした。

 いや、皆のその反応は僕的には全然納得できないんだけど?

 

 「それじゃ、私達がする調査って神龍についなんですか?」

 

 「いや。神龍については引き続きヴィヴィオに協力してもらって、私が無限書庫で調べてくる。皆にはアキ君、扇、クロウの他に元龍がおらへんか調査してほしいんよ」

 

 「え? アキたち以外の元龍を……ですか?」

 

 スバルが聞き返した言葉に、はやては小さく頷いた。

 

 「せや。レオが解読してくれた石版には”7体の元龍の力が揃いし時”ってある。つまり、神龍が目覚めるために7体分の元龍の力が必要になる。でも、今確認されてる元龍は、炎と雷の力を持ってるアキ君、風の力を持っとる扇、そして闇と光を持ってるクロウの合計5属性や。せやから、もし神龍が目覚めるなら水と土の元龍がおるはずや」

 

 「つまり、シルメディアンより先に水と土の元龍を見つけるのが今回の調査の目的って事ですか?」

 

 「さすがやな、ティアナ。その通りや。シルメディアンの一員であるハンナが、レオにわざわざ石版を読ませたっちゅ事は、シルメディアンはおそらく神龍を狙っとるんやと思う。神龍がどんな力を持ってるかは分からへんけど、強力な力を持っとるのは確かや。絶対にシルメディアンには渡したらあかん」

 

 「だね。そもそも石版の通りなら、神龍が目覚めたら世界が滅んじゃうんでしょ? だったら、シルメディアン云々の前に目覚めさせちゃダメだよ。神龍だって、目覚める事を望んでないみたいだし」

 

 頭の良い組は、何やら難しい事を理解してるみたいだけど、僕には何の話をしてるのかさっぱり分からない。

 そもそも、どうしてシルメディアンが神龍を狙ってるって分かるんだろうか?

 

 「ねぇ、スバル。今の話理解できた?」

 

 「んー……。大まかには分かった気がするけど、細かくは分かんない!」

 

 自信満々にそう言ってのけたスバル。

 自分以外にも理解できていない同士を見つけると何故か安心する。

 

 「全く……。吉井もスバルも相変わらずね……。いい? シルメディアンの一員であるハンナが、レオに石版を読ませたのは、石版に書かれている情報が欲しかったから。つまり、石版に書いてある神龍の情報が欲しかったから、レオに石版を無理にでも読ませたかったと隊長達は予想してるのよ」

 

 「なるほど。シルメディアンが何をたくらんでるのかは知らないけど、おそらくシルメディアンは神龍を狙ってるから、絶対に奴等には神龍を渡したらダメって事ね」

 

 「そ。神龍がどんな力を持ってるかは分からないけど、目覚めたら世界が滅ぶなんて物騒な事が書いてある以上、相当危険なはずよ。そんな危険なものを目覚めさせる、ましてや何を考えてるか分からない連中に渡すわけにはいかないでしょ?」

 

 「当然だね! ……で、その話からなんで水と土の元龍の話になったの?」

 

 僕がそう言った瞬間、皆は一斉に膝から崩れかけ、転びそうになっていた。

 今回はさっきまでこっち側だったはずのスバルまで転びそうになっているのが、僕としてはなんだか納得がいかない。

 

 「あ、あんたねぇ……。さっきまでの話、ちゃんと聞いてたの!? 神龍が目覚めるためには、七元龍の力が必要なのよ! で、神龍を欲しがってるシルメディアンが本格的に動いてるって事は、まだ発見されていない水と土の元龍も既に目覚めてる可能性が高い。だから、敵より先に水と土の元龍を私達が発見して、保護しようって事! 分かった!?」

 

 「つまり、早い話が水と土の元龍もどこかにいると思われるから、シルメディアンより先に見つけて保護しようってわけだね?」

 

 「だからさっきからそう言ってるでしょうが……」

 

 何やらティアナが疲れたとでも言いたげに頭を押さえている。

 これは決して僕のせいではないと思いたい。

 

 「ごめんね、ティアナ……。明久がバカで」

 

 「ほんと、ごめんね……?」

 

 フェイトとなのはが同時にティアナに謝りだした。

 この光景、僕としては凄く不本意なんだけど……。

 しかも、フェイトに関しては僕がバカでとまで言ったよね?

 

 「いえ、いいんです……。お二人のせいじゃありませんし、吉井がバカなのは今に始まった事じゃありませんから……」

 

 「「ほんと、苦労かけてごめんなさい……」」

 

 またもや二人同時に謝るなのはとフェイト。

 ほんと、不本意だ。

 

 「ま、まぁ、アキ君の話はここらでいったん置いといて、そんなわけやから皆には水と土の元龍を探しに行ってもらいたいんやけど、ええかな?」

 

 「あ、うん。それは構わないんだけど……」

 

 「何の手掛かりもないんじゃ、どこをどう探せば良いのかも分からないよ?」

 

 「その辺りは大丈夫。ちゃんと無限書庫で調べてある。いくつか候補地はあるんやけど、まずは有力な候補地が2カ所あるから、水の元龍がおりそうな星にはライトニング。土の元龍がおりそうな星にはスターズにそれぞれ行ってもらおうと思ってる」

 

 「そっか。なら、問題ないね。スターズはオッケーだよ」

 

 「うん。ライトニングも大丈夫。問題なし」

 

 切り替えが早いと言うか、何というか、なのはもフェイトもさっきまでの出来事が何もなかったかのように両チームの隊長として、ビシッとしていた。

 何度見ても、こう言う所は流石だと思う。

 

 「うん。では、これよりスターズ、ライトニング両チームは、それぞれ隊長の指示に従って現場入りして下さい。目的地については、それぞれの隊長に送ります。それでは、解散!」

 

 「「「はい!」」」

 

 こうして、なのは率いるスターズ隊は土龍グランマークの子孫を、フェイト率いる僕達ライトニング隊は水龍アクエリアスの子孫を探す任務に出発したのだった。

 

 

          ☆

 

 

 「で? その土龍のジンって奴はどこにいるんだ? ここに来てから三日も経ってるのに全然見つからねぇじゃねぇか。本当にこの星に元龍の子孫がいるのか?」

 

 明久達よりも早く、水龍を探しにきていたクロウ達一向。

 水龍がいるとされていた惑星名称アイネにて、まだ水龍も土龍も見つけられない事に風月が苛立ちの声を上げた。

 

 「黙れ、風月。イラついてるのはお前だけじゃない。それに、俺達が探しているのはジンじゃなくて水龍の方だ。出来る事なら、ジンとは遭遇しない方が良い」

 

 「なんだよ、ビビってんのか? 水龍と一緒にジンとかいう奴も一緒に連れて帰れば良いじゃねぇか。なんなら、ジンとか言うのは俺一人で捕まえてやるよ」

 

 「ジンを甘く見るな。言っておくが、ジンはお前が負けた吉井明久より強いぞ」

 

 「黙れ。俺はまだ生きてる。つまり、まだ決着はついてねんだよ。俺は別に負けたわけじゃねぇ」

 

 「牢屋にブチ込まれた段階で負けだろう。運よく生き残っただけで大口叩くなよ」

 

 クロウがそう言った瞬間、風月は自分のデバイスである大鎌をクロウの首に向かって振るったのだが

 

 「舐めてるのか? そんな不意打ちが成功するわけないだろう?」

 

 クロウは光でできた盾を首回りに作りだし、風月の攻撃を完璧に防いでいた。

 

 「はは。いいね。やっぱり、お前も強そうだ。土龍と水龍のどっちかが見つかるまでの間、お前で退屈しのぎするのも悪くねぇな」

 

 「止めとけ。お前に取っては退屈しのぎでも、俺に取っては殺さないように手加減しなきゃならん分ストレスでしかない」

 

 「どっちが手加減する側だって? 前から思ってたが、お前の自分の方が強いと思ってる態度が気に入らねぇ。ここらで、どっちの方が強いか、白黒させようじゃねぇか」

 

 風月の言葉を聞き、クロウは一瞬悩んだ末深いため息を一つ零した後、両手に自分で作り出した光と闇の剣を持ち、風月に向き合った。

 

 「お前がそこまで言うならいいだろう。ただし、俺が勝ったら二度と舐めた口を利くな。そして俺の命令に従え。その条件でなら相手してやる」

 

 「いいぜ。けど、お前が負けたら今の条件は全部お前にも当てはめてもらうぜ」

 

 「いいだろう。万が一、俺がお前に負けるような事があれば、お前の命令に絶対遵守してやる」

 

 「へっ。契約成立だな。……おい、シギル! 立会い人やれ!」

 

 風月はカエラの側から離れず、二人の言い合いに我関せずでいたシギルに声をかけた。

 

 「は? 嫌だよ。なんでオレがアンタらの言う事聞かないとダメなんだよ? オレはカエラの護衛なんだから、そんなのアンタらで勝手にやってろよ」

 

 「……おい、こら、ガキのくせに調子のんなよ? クロウをボコる前に、まずはお前からボコボコにしてやろうか?」

 

 「は? やれるもんならやってみろよ。返り討ちにしてやる」

 

 2人のやろ取りを見て、クロウは深いため息を零しながら頭を抱えた。

 どうして、今の今まで自分と揉めていた奴が、同時に子どもとも揉めるのか。本当に面倒臭いと。

 

 「……もういい。シギルはカエラの側にいろ。別に立ち合い人がいなくても勝負はできるし、どうせ俺は不正なんぞしないし、仮にお前に不正されようが勝つのは俺だから関係ない。そんな面倒な事してないで、さっさと始めるぞ」

 

 「どいつもこいつも……。いいだろう。あえて、その挑発に乗ってやる」

 

 「御託は良い。さっさとかかってこい」

 

 クロウが挑発し、それに乗っかる形で風月が武器を構える。

 そして、お互いに武器を交えようとした、その瞬間だった。

 

 「見つけた」

 

 今まで完全に我関せずだったカエラがぽつりとそう呟いた。

 

 「見つけたって……。水龍をか? 土龍をか?」

 

 「両方。でも、雷炎龍も一緒に見つけた」

 

 「なんだと!? 雷炎龍もここに来てるのか!?」

 

 「いる。でも、ついさっき着いたばっかりみたいだから、今はほっといても大丈夫。それより、ジンが水龍と既に接触してる」

 

 カエラがそう言った瞬間、クロウとシギルの纏う空気が変わった。

 

 「なら吉井明久は放置する。カエラジンのいる所まで案内しろ。シギルはカエラを守れ。風月、この勝負は帰ってからだ。文句は認めん」

 

 「分かった」

 

 「元々オレの仕事はカエラの護衛だ。言われるまでもねぇ」

 

 「……ちっ。しゃーねぇな。さすがに雷炎龍が近くにいる時にお前の相手をするのはキツイ……。今回だけは言う事を聞いてやる。そんかわし、土龍とは俺に戦わせろ」

 

 全員とりあえず言う事を聞く事に納得した事にクロウは少し安堵した。

 

 「よし。なら行くぞ。クロウの要望に関しても、可能な限り聞いてやる」

 

 こうして、クロウ達一行は明久達がアイネに着くのとほど同時に土龍と水龍の所へ向かったのだった。

 

 

          ☆

 

 

  「ようやく見つけた……」

 

 土龍の子孫であるジンは、アイネに来てから数日。

 ようやく水龍の子孫と思わしき少女を見つける事に成功していた。

 

 「……オジサン誰?」

 

 少女はジンを見て、不思議そうに首をかしげる。

 

 「ああ、すまない。俺……いや、ボクはジン。ジン・アラヘカトだ。ずっと君を探していたんだ」

 

 「私を探してた? オジサン、私が怖くないの?」

 

 ジンの言葉を聞き、少女はますます不思議そうな顔をジンに向けた。

 

 「怖い? どうしてそうなるんだい?」

 

 「だって、私は元龍アクエリアスの子孫なんだよ? 元龍は危険だからって、皆私の事怖がってるから……」

 

 基本的に元龍の話はおとぎ話だとされており、どこの世界でも自分が元龍の子孫だと言っても信じてもらえないのが普通だ。

 しかし、この少女は普通とは違い、元龍の子孫として恐れられてきた。

 それを思うと、ジンは少女に同情すると同時に、純粋に少女を助けたいと言う気持ちにさせられた。

 

 「ボクは怖いとは思わないよ。だって、僕も元龍の子孫だからね」

 

 「え? オジサンも元龍の子孫なの?」

 

 「ああ。言ってしまえば君の仲間だ。だから、怖いとは思わない。それに、さっきも言ったけど、ボクは君を探していたんだ。君を助けたい。この星とはお別れしないといけないけど、ボクと一緒に来てくれないか?」

 

 「……なにが目的?」

 

 ジンの言葉を鵜呑みにはせず、少し警戒するように少女はジンの目をじっと見つめた。

 その目を見て、ジンは「この子に嘘を吐いてはいけない。包み隠さず全てを話すべきだ」そう感じとり、少女と目線を合わせるように屈み、少女に向かって真剣に口を開いた。

 

 「君を助けたいというのは本当だ。それは、この星の人達からじゃなく、君の力を利用しようとしている者達が君を探している。ソイツ等から、ボクは君を守りたいんだ」

 

 少女はジンの言葉を聞いた後じっとジンの目を見つめ、ジンもその間少女の目から一切目をそらさず、二人は無言で見つめ合っていた。

 

 そして、その数十秒後。

 

 「分かった。オジサンについて行く」

 

 少女はあっさりとジンについて行く事を決断した。

 

 「え? 良いの? 本当に?」

 

 あまりにも早い決断に、誘ったジンの方が驚き、思わず少女に聞き返していた。

 

 「うん。私ね、生まれた時から人が嘘ついてるかどうか分かるの。だから、オジサンが嘘ついてないのは分かったし、私を助けたいって言ってくれたから、私はオジサンを信じてどこにでもついて行くって決めたの。むしろ、オジサンがダメって言ってもついて行くよ?」

 

 「嘘が分かる?」

 

 「うん。なんかね、嘘を吐いてる人って変な感じがするの。なんか、モヤモヤってした感じのものが見えるんだ」

 

 ジンは見えると言う言葉を聞いてすぐ、少女の言ってる事が嘘ではないように感じた。

 

 水龍アクエリアスは水の元龍。当然、水を扱うのは得意だ。

 そして、人間は体の大半が水分でできている。

 もしかしたら、その影響でアクエリアスの力を持つ少女には元龍の能力の一つとして、他人の嘘が見破れるのかもしれない。

 そう感じ取っていた。

 

 「そっか。まぁ、なんにしても、これからよろしく頼むよ。えっと……」

 

 「私はクララ・ロックベルだよ。クララって呼んで」

 

 「そうか。じゃあ、ボクの事もジンと呼んでくれ。オジサン呼ばわりは少し傷つく」

 

 「うん! じゃあ、ジンさんで!」

 

 クララと名乗った少女は、ジンと出会ってから初めて笑顔を見せた。

 笑うと可愛いな。なんて事を考えて、ジンもクララに吊られて笑みがこぼれ出る。

 

 実はこれが、ジンに取って数週間ぶりの笑みだったのだが、クララがその事を知る由もなかった。

 

 「それじゃ、旅立つ前におばあさんに話をしたいんだけど……」

 

 このままだとジンはクララを無断で連れて行った誘拐犯になってしまう。

 実際問題、ジンにとっては別に誘拐犯扱いされても困る事は何もないが、クララが突然いなくなれば身内は必ず心配するはずだ。

 ゆえにジンはクララのおばあちゃんに挨拶と、クララを連れて行く事を説得しようとしたのだが

 

 「おばあちゃんいないよ? 去年亡くなっちゃたから……」

 

 「え……。なんか、その、ごめん……」

 

 良く考えればクララに身内がいたら、クララが即答で自分に付いてくると言うはずがない。

 もう少し深く考えれば分かりそうな事だっただけに、ジンはクララに対して申し訳ない思いになった。

 

 「別にいいよ。その時はいっぱい泣いたけど、おばあちゃんはずっとクララの事見ててくれるって、死んじゃう前に言ってから寂しくないし、これからはジンさんが一緒にいてくれるんでしょ?」

 

 屈託のない笑顔。

 ジンは、この笑顔を見た瞬間、絶対にクララを守ろうと固く決意した。

 

 「ああ。約束する。これからは僕がクララを悪い奴らから守る。だから、一緒にいよう」

 

 「うん!」

 

 なんだかプロポーズみたいだな……。何てことを思い、ジンは少し気恥ずかしくなる。

 

 「さ、さて! それじゃ行こうか!」

 

 まだ幼い少女であるクララに向かってプロポーズみたいな事をした事も、それで変に気恥ずかしくなってしまった事も打ち消すかのように、ジン普段よりも少しテンションを高くしてそう言った。

 

 まさにその時だった。

 

 「させるか!」

 

 「なっ!? しまっ……」

 

 クロウ、風月、そしていつでもカエラを守れるようにシギルとカエラは二人組になって、ジンとクララを取り囲むように空から現れたのだった。

 

 


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