願望転生〜無職転生の世界に転生したかったんです!!〜   作:大戦士

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10話 今代の水神

アスラ王国の裏道で水神流の剣士と思われる女性、フィアナを助けた俺は彼女とともに大きな通りに出て水神流の本拠地へと向かっていた。

 

この出会いを促した目的はきっとヒトガミが俺に水神流を習得してほしいからだろう。

オルステッドはもう武の達人としかいいようがないほどの技量を持っているからな。

元々、学びに行くつもりではあったが、いやはや何とも気の利く神様なこって。

 

するとあまり会話がなかったからか、彼女は恥ずかしがりながら声をあげた。

 

「えーと、改めて。危ないところを助けてくれてありがとうございました」

 

フィアナが歩きながら俺に対して頭を下げる。

 

「いえ、感謝されることではないですよ。人として当然のことをしたまでですから」

 

俺は優しく言葉を返す。

いやぁ、アレックスには通用しなかったけど前世で鍛えたこのトークスキルは実に有用だ。

アレックスには通用しなかったけど。

 

「あの剣技ものすごかったです。見たところ北帝様は魔族ですか?」

 

「へ?魔族?」

 

やっば。思わず間抜けな声が出た。

てか魔族?俺そんなに人間からかけ離れてる?

 

「いや、純粋に人間だけど、、、、、、、」

 

俺が人間と答えるとフィアナは驚いた顔をして俺をまじまじと見る。

 

「はぁ?!え、でも、そしたら北帝様は何歳なんですか?!」

 

あ、良かったです。ミグルド族とかそっちのほうで間違えてくれたのね。

ギースには失礼だがもしヌカ族かと思いました、なんて言われたら泣いてたよ。

 

「年齢は12歳ですよ」

 

じゅうにぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?

 

もの凄く大きな声が辺りに響き通行人らがギョッとした目でこちらを見る。

すると恥ずかしかったのか途端に俯くが、すぐに顔をバッとあげ口を開いた。

 

「あなた、私と同い年!?」

 

驚きの情報が出てくる。

近い年齢かと思ったがまさかドンピシャだとは。

 

「おぉ、奇遇ですね。同い年でしたら敬語はいりませんよ、フィアナさん」

 

「それを言うなら、貴方の方も敬語はやめて。むず痒いったらありゃしないもの」

 

「分かったよ、フィアナ。これからよろしく」

 

俺はそう言うと彼女に握手を求め手を差し伸ばす。

 

すると少しモジモジしながらも彼女は俺の手を掴んできた。

そしてか細い声で告げた。

 

、、、、、、、よろしく

 

うん。可愛いなこの娘。

ちょっと男勝りな所とかいいよ。もう最高。

旅立つときついてきてくんないかな。

 

「おい、どうした?」

 

おっと、つい自分の世界に入っていた。いかんいかん。

折角、白馬の王子様ポジにいるんだ。このまま最後までゴールインよ。

 

いつの間にか人通りの多いところを抜け、少し平地なところに出ていた。

 

「ううん、ゴメンね。なんでもないよ。それより、本拠地ってどこなの?」

 

「あぁ、それなら―――ほら、目の前にある建物がそうだぞ」

 

彼女がそう言うと少し奥に指をさす。

差した方向を見ると明らかに大きい道場が建っていた。

 

「あれが、水神流の―――

 

本拠地、と俺が声を出そうとしたとき、俺の真上から殺気を感じる。

常人が出せるようなものでない殺気に思わずゾワリと体が震え、俺はすぐさまフィアナをお姫様抱っこで抱き上げ前方へと飛び出す。

 

「ちょっ!?いきなり―――

 

ドオォォン!!!!

 

彼女が言葉を言い終える前に轟音が響き渡る。

俺達が先程までいたところを見ればものすごい砂煙が舞っている。

 

これは明らかに―――

 

「―――嵌められたな」

 

俺は丁寧にフィアナを下ろし、剣を抜く。

 

この段階での奇襲。フィアナに対するものか?

いや、これは俺に対する攻撃だ。あの時の殺気は明らかに俺に向けられていた。

そしたらフィアナはグル?いや、それもまた違う。グルならこの場から逃走を図るはずだ。

 

砂煙が次第に晴れていき一つの人影が見えてくる。

 

「フィアナ、下がっていて」

 

俺はそう告げると全速力で人影に向かって走り出す。

そして迷わず剣を振り抜く。

 

が―――

 

次の瞬間、グワンと体が沈む感覚がした。

王竜剣の重力魔術ではない。これはそう、まるで川の水が流れに逆らえないような。

 

俺はハッと気付き体を180度回転させ、守りの構えを取る。

すると案の定俺の剣が刺客の振り下ろした剣とぶつかった。

体勢が悪かったのだろう刺客の剣に押し負けそうになるのを感じる。俺はすぐさま足で蹴り後方へ下がろうと試みる。

しかし俺の放った蹴りは当たることなく刺客を後ろに下がらせるだけに終わった。

 

剣が受け流された。俺の技を見切られた。反撃のすきを与えないほどの技量。

 

たった数発の打ち合いでよく分かる。

刺客の正体が。

 

「俺は『北帝』アルデウス・レイブランド。貴方の名前を聞こうか。それとも弟子の前で襲いかかった敵に名すら名乗れない臆病者と知らしめるつもりか?」

 

俺がそう煽ると笑い声が聞こえてくる。

 

「カッカッカッ!!今どきの若いものは血気盛んだなぁ」

 

煙が晴れたそこには、年季の入った道着に身を包み立派に生えている顎髭を右手でさすり、腰にある一本の剣に左手を置いていた五十代と思われる男だった。

 

「血気盛んだと?お前の方から襲撃したよな!?何だ?今の()()は全員戦闘狂か?」

 

アレックスと言いこの男といい人を突然襲うのが流行ってるのか?

それよりもこいつ、さっきまで剣抜いてたよな。一体いつ鞘に納めた?

 

「全員が戦闘狂というのもあながち間違ってないかもな。あぁ、そうだ。名前だったな」

 

男は堂々とした立ち振舞で俺に告げた。

 

「俺はレイダル。今代の『水神』だ。ようこそ『北帝』、歓迎するぜ」

 

水神。

北神と同じく水神流の最上位の地位。水神流に伝わる五つの奥義を最低三つ修めたもののみに与えられる称号。

ただ、北神と違うのは水神はその代に一人だけということ。いや、本来一人だけなのが普通だったな。

他の神級と違うところと言えば名前が世襲制といったところだ。初代水神にならい男ならレイダル、女ならレイダ・リィアを名乗る。

他にも水神の伴侶は家を捨てる必要があったりするが今は関係ないだろう。

 

そんな水神の攻撃を俺は対応した。

今思えば、俺すごくね。アレックスとのあの地獄は無駄じゃなかったてことか。

頑張ってよかった。うんうん。

 

「歓迎してくれたようには見えなかったが、俺の気のせいか?」

 

「十分歓迎したぜ?なにせ、俺の弟子を助けてくれたんだ。()()()()()()は見逃してやるよ」

 

多少のおいた、か。

なるほど。俺がすぐにフィアナを助けに行かなかったことを知ってるな。

てか、見てたんなら助けてやれよ。

 

「師匠!!!一体なぜ、アルデウスに奇襲を仕掛けたのだ!?」

 

すると、俺の後ろにいたフィアナがズカズカとレイダルのもとに駆け寄り問い詰め始めた。

 

「待て待てフィアナ。これには深いわけがな 「私の命の恩人だぞ!?」」

 

おっと、流石の水神も弟子相手には強く出れないようだ。

なら、ここで一つ恩を売っておくか。

 

「レイダル殿は俺の力を確かめたかったのですよね」

 

「そう!そのとおりだよ!アルデウス君!!!」

 

おい、食いつきが早いな。

 

「いや、明らかに奇襲 「そういうことだからさ、フィアナ。あまりレイダル殿を叱らないでやってくれ」 ……アルデウスがそういうなら―――」

 

フィアナがぷくーと不服そうに頬をふくらませる。

おいおい。少しむくれてるフィリアも可愛いじゃないか。

 

「コホン。さて、初々しい二人を見るのもいいが取り敢えず道場に入りなさい。フィアナ、風呂を沸かして来てくれ」

 

するとフィアナは何か言いたげな表情を浮かべたが俺を一瞥してから、渋々といった感じで道場へと向かっていった。

 

フィアナがそこそこ離れたのを見図ったのかレイダルが口を開いた。

 

「俺達も行くか。だがまぁ、まさかこんな子供に()()()とはな」

 

「負ける?それを言うなら一撃も有効打を入れられなかった俺でしょう」

 

「カッカッカッ、不治瑕北神流の奥義を打たずに俺と打ち合えたんだ。水神のメンツが丸つぶれさ」

 

「知っているのですか?『破断』を」

 

不治瑕北神流の奥義。

これを知っているってことは少なくとも北神と一戦交えているのか。

 

「お前さんが考えてる通りさ。俺はまだ『水帝』の頃にアレックスとやりあった事がある。結果は惨敗だったが、生きて帰ってこれた」

 

生きて帰った。昔のアレックスの性格からして弱かったら逃がすなんてことはしない。つまり、逃げ切る程度の実力を当時から持っていたのか。

 

「それは、うちの師匠がすいません」

 

「カッカッカッ!気にすんな。戦いってのはそういうもんだ。それよりお前さん、一体何の理由で水神流の本拠地へ?道場破りか?」

 

「いえ。水神流を学びに来ました」

 

俺がそう答えるとレイダルはギョッとした顔をして俺に問いかけてきた。

 

「はぁ?北神の直弟子が水神流を学びにぃ?北神に怒られるんじゃねぇのか?」

 

「怒られる?あぁ、私は別に北神の後継者じゃありませんから」

 

「それほどの実力を持ちながら後継者じゃないだぁ?嘘……じゃねぇみたいだな」

 

マジかよ、とレイダルが言葉をこぼす。

 

「だとしたら、お前さんの目的は何だ。そこまでの実力があるなら何も困ることはないだろう?」

 

何気なく言っただろう言葉がチクリと心を刺す。

 

俺の目的。俺自身が望みどおりに自由勝手に生きるために龍神とそれに与するもの達を殺すこと。

すでに覚悟を決めたとはいえ少しくるものがある。

 

「目的は聞かないでいただけると幸いです。他人に聞かせるほど高尚なものではないですから」

 

「そうかよ。まぁ、どんな理由だったとしても水神流は教えてやる。なんせ、俺もお前がどこまで行くか見てみたくなったからな」

 

期待してるぜ、と彼は俺に言う。

 

アレックスといい、このレイダルといい。何で彼らは俺が欲しい言葉を言ってくれるんだろうか。

 

 

――――――――――――

―――――――――

――――――

―――

 

 

 

水神流の道場に来て三日経った。

 

一言言おう。ここは天国か?

屋根のある寝床。キッチリ食べさせてくれる味のある食事。いつ着ても綺麗な道着。そして練習終わりに入れる風呂。

 

もう一度言おう。ここは天国か?

 

アレックスに師事した時とは比べようにもならない高待遇に俺は驚愕した。

正直、ここは異世界なのだからアレックスとの生活が普通なんだと考えていたがそんなことはないそうで。

このことをレイダルに伝えたとき、本気か?という顔をされたので理解しました。

あの時、フィアナにも正気か?という目で見られたので心が崩れかけたのは内緒だ。

 

そうそう。フィアナといえば俺も彼女と同様に水神の直弟子となったので彼女の弟弟子になりました。

敬語は使わなくていいと本にから言われたので実質対等のような関係だ。

それと、最初にフィアナを襲っていた連中は道場を破門。これから水神流の剣士を名乗らせないことをレイダルから直々に告げられていた。

 

かくいう俺は初日に『水聖』の称号をもらいました。いやぁ、異例の大出世で嬉しい限りです。

レイダルが言うには水神流の技はまだまだなところはあるが基礎はできているし、水神流で戦いになったら確実に『水王』ぐらいの実力者じゃないと止められないからとのこと。

それに、フィアナに危機感を持たせたいのだそうだ。

そんなわけで俺はフィリアと同じ、水神流の五つの奥義の習得を目指して訓練することになり今日がその始まりだ。

 

「おい、アルデウス。訓練場に行くぞ?」

 

道場で修業を始めた日から、なんと毎朝フィアナが迎えに来てくれるようになった。

本人は姉弟子だからと言ってはいるが、さてさて本当のところはどうなのかね。

 

「なに変な顔をしている?気持ち悪いぞ」

 

グハッッッ!!!!

フィアナさんや、言葉は刃物になり得るんだよ?

 

それにしても貴女この三日で随分砕けましたね。

え?もう、初恋の王子様ムーブ終了?

認めんぞ!!俺は認めんぞぉ!!

 

しかし、そんなことを顔にはっきりと出したら手に入るものもない。ここは平常心だ。平常心。

 

「うん。そしたら行こうか」

 

俺は直弟子となった際に与えられた一人部屋から外に出て、フィアナとともに訓練場に向かう。

 

道中はこれといった会話もなくすぐに目的地へと到着した。

俺的にはもっと関係を深めるようなイベントが欲しいが。

 

そんなこんなで訓練場についた俺達は扉を開ける。

 

「おう、やっと来たか」

 

そう声を発したのは俺達の師の『水神』レイダルだった。

 

「お待たせしました。師匠」

 

レイダルの言葉に真っ先に反応したのはフィアナだった。

俺も彼女に続き一礼をする。

 

「そしたらフィアナは引き続き『(ながれ)』の鍛錬をしろ。後で俺が確認する」

 

レイダルがそう告げると彼女は慣れたようにそそくさと移動し鍛錬を始めた。

 

彼女が鍛錬を始めたのを確認するとレイダルは俺の方を振り返る。

 

「さて、今日からお前にも五つの奥義の習得に入ってもらう。最初に言っておくが五つ全てを習得しなくていい。一つ習得できたら御の字だ」

 

そう言うとレイダルは語り始めた。

 

彼の話をまとめるとこうだ。

水神流には五つの奥義が存在するが、それら全てを習得できたのは初代水神以外いない。

水神になるにはこの五つの奥義の内三つを習得するのが最低条件である。

まぁ、ここまでの内容は原作知識で知っていたので特に新しい情報はなかった。

 

だが、次に語った五つの奥義の内容は何気に原作では明かされなかったものだった。

 

五つの奥義はそれぞれ、(ながれ)絶界(ぜっかい)波断(なみたち)剥奪剣(はくだつけん)飛瀑剣(ひばくけん)、というそうだ。

 

この内、原作で明確に奥義だと断言されたのは『剥奪剣』だけだった。

しかし、ここで一つの疑問が生じた。

 

奥義の『流』。正直、原作でも結構な人物が使っていた記憶がある。

かく言う俺も『流』を使える。

そのことについて聞いてみると―――

 

「奥義の一つである『流』はお前の指摘通り誰でも学べば使える水神流の基本の技だ。しかし、それらは所詮が基礎。本物の奥義には劣る技だ」

 

基礎の技を極めたもの、それが真の『流』というとのことだ。

 

そして、他の奥義の名前を聞いた限りの予測だが、多分原作の『水神』レイダ・リィアが編み出した幻の六つ目の奥義『剥奪剣界』は『絶界』との組み合わせ技だったと考えられる。

俺もいつか『剥奪剣界』使えるようになるかな?いつか試してみよう。

 

(あれ?そういえば原作のレイダっておばあちゃんだったよな。もしかしたらこの時代に若い頃ならいるかもな。まぁ、あの化物みたいな実力者なら会えばすぐに分かるか)

 

そんなことを考えているとレイダルが唐突に木剣を渡してきた。

 

「おっとと、……木剣?」

 

俺が疑問を口ずさむとレイダルは構えを取った。

 

「構えな、アルデウス。テメェにはこれからフィアナと同じ『流』の習得をしてもらう。お前の鍛え方は多分だがフィアナと違い実践型の方がいいだろう。だから―――」

 

瞬間、目の前にレイダルが現れ木剣を振りかぶった。

俺は咄嗟に同じように木剣を構えレイダルの一撃を受けた。

 

「―――これから、休まず俺と打ち合いだ。へばってくれるなよ?『水聖』!!!!」

 

今朝の発言に一言付け加えよう。

 

訓練は相変わらず地獄だ。




いかがだったでしょうか?
本話でやっと水神へと弟子入りを果たしました。
実のところ書きたいのはもっと先という、、、、、、そこまで書けるようにこれからも頑張っていきますのでこれからも願望転生をよろしくお願いします。

そして、皆様のお陰でUAが13000を突破しました!!!!!
本当にありがとうございます!!!!
勢いで作ったものですが好評なようで本当に驚きました。


また、本話から他の作家さんがやっていたように高評価をつけてくださった皆様に感謝を伝えるようにしたいと思います。

ジョーショー気流様、 蟻延 飾様、 たかたにもん様、 *疾風迅雷*様、 浅い思考の深読み様、 sach様、 正直侍様、 undertree様、 あさぎまだら様、 Syurei様、 にゃこる様、  ゆうせい111111様、 カヴァオ君様

以上の皆様好評価をつけてくださりありがとうございます!!!! 
その他の読者の皆様も願望転生を読んでくださり本当にありがとうございます!!!


感想、誤字脱字報告、評価、ぜひお気軽にしていただけましたら幸いです。
これからも願望転生をぜひ、よろしくお願いします!

※9月28日 フィアナの名前を間違えてフィリアにしていましたので修正いたしました。
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