願望転生〜無職転生の世界に転生したかったんです!!〜 作:大戦士
私、フィアナ・シアンウィザルは天才だった。
私はアスラ王国の地方貴族の生まれだ。
特に用事がなければ王都には出向かない、ごく普通の地方貴族。
仮に両親の願い通りに生きれば不満なく人生を終えられただろう。
そんな家の長女として私はこの世に生を受けた。
正直、他の家に生まれたかったとは思わない。貴族社会は私には合わなかったが、それでも今の家族のもとに生まれてよかったと思う。
少し話がそれたが、私が天才と呼ばれるのは剣を持ったときに限られる。
それはまだ私が四歳の頃、五つ上の兄とふざけて剣を使い遊んだときに剣術を学んでいた兄に勝ったのだ。
その日だ。私が自分を剣の天才だと気付いたのは。
嬉しかった。
いろんなことを試してもダメダメで双子の優秀な妹と比べられてきた私が唯一、自身を持ってこれが得意と言えるものができたから。
そこからは早かった。
父に水神流を学びたいとせがみ、師をつけてもらった。
その師を半年で負かすまで実力を伸ばした。
そして、王都にある本拠地にいきたいと伝えた。
反対されたさ、もちろんね。
色々言われた。淑女として生きろだの野蛮だの妹を見習えだの。
今思えば、両親も私に幸せを掴んでほしくて必死だったのだろう。
でも、私は嫌だった。
だから十歳のときに一人で家を飛び出し、王都へ向かった。
物書きや計算は、家にいるとき必要最低限は教えてもらったから苦労はしなかった。
そして私は道場にたどり着き、水神様に見込まれ直弟子となった。
それから二年。
ひたすら剣の腕を磨き、僅か十二歳で『水聖』の地位にまで上り詰めた。
今思うとこのとき私は自分でも酷いと思うぐらいに調子に乗っていた。
自分より劣っていると思ったやつには誰であっても横暴な態度を取った。
自分と戦って負けたヤツに罵ったりもした。
本当に今思い出すだけでも恥ずかしい。
まぁ、そんな行いが原因で私は報復を受けることになった。
いつしか負かした貴族のせがれが報復として『水王』を二人連れて襲ってきた。
帯剣してなかった私はあのままだと凌辱されていたのは間違いない。男の目を生まれてはじめて恐ろしいと感じた瞬間だった。
でも―――私は出会った。私の王子様に。
襲われそうになった瞬間、目にも止まらぬ早さで現れ瞬きの隙に私を襲った男たちを斬り伏せた。
その姿はまさしく御伽噺に出てくるお姫様を助ける王子様で、私は―――恋に落ちた。
私を救ってくれた彼はアルデウスと名乗った。
話を聞けば彼は私と同じ十二歳で『北帝』なのだそう。
それを聞いたとき私は恋慕が強まったのと同時に、嫉妬も覚えた。
同じ歳でも彼のほうが私より才能もあり、決してそれに傲らない気高さを持っていたから。
複雑な思いで彼を案内していたら突然師匠が彼に襲いかかった。
あまりのも突然なことに私は反応できなかったが彼は違った。
あの『水神』の攻撃を捌き切りあまつさえ当たりはしなかったが反撃すら繰り出したのだ。
たった数撃の切り合いだったがそこで思い知った。彼は神級に限りなく近い帝級だと。
その後、彼は何があったのか私と同じ『水神』の直弟子となった。
そして彼は初日に『水聖』の称号をもらった。
結果は同じだ。でも過程が違う。
私は未来を期待され、彼は今の実力を評価された。
悔しかった。悔しくて悔しくてたまらなかった。
例え初恋の人でもその思いが私から取り除かれることはなかった。
そのせいで少し、刺々しい言動をしてしまったが彼は変わらず私に接してきてくれた。
正直に言おう。もっと惚れたよ。
『水聖』になった彼の鍛錬の内容は私と違ってひたすら師匠との打ち合いだった。
師匠が言うには、彼は奥義を体に受けて覚えさせていくほうが効率がいいとのことだったが、あの光景は少し見るに耐えなかった。
訂正しよう。少しどころじゃない。
彼は北神流を使わずに本気に近い『水神』と打ち合っていた。
それだけなら、いや、これだけでも十分酷いが。他の水神流の剣士から嫉妬の目線もあっただろう。
だが、結果としてそれはなかった。それどころか彼には同情の視線が送られていた。
それもそうだろう。誰が毎日稽古するたびに吐く修行をやりたいと思うか。
この事もあってか水神流の剣士と彼が仲良くなるのは早かった。
まぁ、私のほうが仲が良いがな。
…………ともかくだ。
彼はすぐに馴染み、休日には同門の者と出かけることもあった。
だがここで一つ言わせてほしい。
彼は女好きだった。それも超がつくほどの。
最初の一週間はよかった。真面目に鍛錬に打ち込むまさに好青年という感じでいい面しかないとさえ思った。
だが、その次の週からよく休みの日に他の女と出かけるようになった。二人きりでだ。
それも特定の一人だけじゃない。毎週毎週、違う女とだ。
ある週は同じ年の子と、ある週は年上の人と、そしてある週は年下と。
半年がすぎれば最早、この道場で彼と出かけたことのない女などいないようだった―――私を除いて。
私が最も苛立ったのはそこだ。何で他の女と出かけるくせに私には声すらかけない?意味がわからん。
そもそも、私が一番最初に出会ったのだ。なら、一番最初に声をかけるべきは私だろう?違うか?
そのせいで思わず廊下ですれ違ったときこの半年の間に習得した奥義を使って首を跳ねようかと考えてしまった。
結局しびれを切らした私は自分から彼に声をかけた。
その時気付いた。あ、こいつわざと誘わなかったなって。
私が声をかけたときのあいつの表情は物語の悪役のような顔をしていた。
まぁ、それだけで冷めることはないほど私は彼を好きになってしまっていたのが少し悔しかったが。
結局私も彼と、デ、デートというものをした。
街を二人で見て回るだけだったが、どうも景色がいつも見ているのとは少し違うような感じがして楽しかった。
そして距離が縮まったお陰で私は彼を、「アル」と愛称で呼ぶようになった。
最初に呼んだときアルが驚いたよな表情をして固まったので心配だったがアルに聞けば何でもないとのことで安心した。
そんな日々を過ごし、気づけばアルと出会ってから二年の歳月が経っていた。
私は彼よりも早くに奥義を習得し『水王』になったが程なくして彼も同じく『水王』に上がった。
このことは彼が水神流で私に追いついたことにほかならない。
焦りを感じた私は彼を超えるのを目的とし彼が来たまえよりも鍛錬に積極的に励んだ。
励んで励んで励んで励んで励んで励んで励んで励んで励んで励んで励んで励んで励んで励んで励んで励んで励んで励んで励んで励んで励んで励んで励んで励んで励んで励んで励んで励んで励んで励んで励んだ。
血反吐を吐くような努力をして、必死で鍛錬を詰んだ。
アルがいなければ前代未聞といえる速さで奥義を習得した。
全部、彼に追いつき超えるために。
でも結局―――私は届かなかった。
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―――――――――
――――――
―――
「双方、準備はいいな?」
鍛錬場の中央で一人の男が声を出す。
俺はその男の顔をよく知っている。
彼は『水神』レイダル、ここの道場の主と言える。
そして、この二年の間俺に水神流を教えてくれた師だ。
「はい、こちらは問題ありません」
次にそう声を出したのは一人の女性。
彼女の方もよく知っている。
二年の間で驚くほどきれいに成長し十四歳とは思えないほどの美貌とスタイルを兼ね備えている。
彼女の名はフィアナ。俺が心の底から欲しいと思う女性。
そんな彼女と俺は互いに真剣を持って対面している。
「こちらも同様です」
俺がそう告げればレイダルはコクリと頷き数歩下がる。
「手加減はなしよ、アル」
フィリアが俺に言う。
「もちろん。俺も全力を出す」
俺は言葉を返す。
その対話だけで辺りに緊張感が伝播する。
この対局を見ている観客も思わず固唾をのんで見守ってしまう。
そして―――合図が出た。
「はじめ!!!!」
瞬間、二人の姿が消えた。
ガキィィン!!!
その次の瞬間、道場に凄まじい剣戟の音が轟いた。
一瞬遅れて剣圧による風が吹きぬける。
「水神流奥義―――
最初に鍔迫り合いをやめたのは、フィアナだった。
―――『剥奪剣』!!!」
彼女は俺の持つ剣を奪い取ろうと自分の剣を巧みに操る。
『剥奪剣』。
水神流の奥義の一つ。
敵の持つあらゆるものを奪い取ることの出来る剣技。
衣服、武器、装飾品、そして命さえも。
俺は彼女の剣に対応すべく技を繰り出そうと構え直す。
「水神流奥義『流』」
巧みに操られている剣を流水の如く受け流す。
だが、流石フィアナだ。彼女自身も奥義として『流』を習得しているのもあるだろうが受け流された剣をそのままにせず反撃を繰り出してくる。
俺はその剣も同時に受け流す。
イタチごっこが数十撃繰り返される。
今回は俺がそれを終わらせた。
「水神流奥義『飛瀑剣』!!!」
『飛瀑剣』。
この奥義の最大の特徴は守備的な流派である水神流の中でも珍しく攻撃型の剣技であること。
上段の剣を闘気をまとわせることで威力と範囲を増大させ叩き斬るもの。
一見、単純に見えるこの技だが奥義として認められたその技は文字通り大滝ほどの範囲まで及ぶ。
そして闘気をまとわせ放つ剣神流の奥義『光の太刀』とは違い闘気をまとわせたままであるため剣の重みは常時のそれと大きく違う。
「グッッ!!」
俺の剣が構え直した彼女の剣に直撃する。
俺の剣の重みに彼女が苦悶の声を出す。
押し切ろうと俺は剣を強く握る。
「―――水神流奥義!!!『流』!!!!」
無理やり剣が受け流された。
彼女の『流』の精度は俺のそれを大きく上回る。
相性の差もあるにはあるだろうが原因は単に彼女のほうが努力していたにほかならない。
そして一息つくまもなく彼女は次の技を繰り出そうとしていた。
「水神流奥義『絶界』!!!」
瞬間、一気に鳥肌が立った。
『絶界』。
この奥義は纏っている闘気を波紋のように空間に伸ばすことで敵の攻撃を見切りカウンターを出す技。
原作で『剥奪剣界』というレイダ考案のオリジナル奥義があったがこれはその元になったものの一つだろう。
俺はすぐさま距離をとる。
(やはりフィアナは―――)
「ねぇ、もう終わり?」
少し考え事をしていた俺に彼女は問いかける。
「いやいや、感心してたんだよ。まだ『水王』なのに水神になる条件の奥義三つをすでに習得していたからね」
「ぬかしなさい。アルも
彼女はそう言うと『絶界』を解除することなく近づいてくる。
器用なものだ。『絶界』を移動しながら使えるものは過去の水神にもあまりいなかったというのに。
「君がそんなに成長するなら応えよう!――――――水神流奥義『波断』!!!」
俺は迫りくる彼女に対して剣を振り下ろす。
『波断』。
『飛瀑剣』と同様に水神流の少ない攻撃型の技。
一見、『飛瀑剣』と変わらないように見えるがその実態は大きく異なる。『飛瀑剣』が範囲攻撃なら『波断』は一点集中の重撃。
そして名前の通り水神流のあらゆる反撃も意味をなさない。まさにあらゆる波を断ち切る一刀。
そのことを知っているためかフィアナは、当たる寸前体をよじり俺の一撃を躱した。
俺の一撃が床に叩きつけられそうになった瞬間彼女は、間髪入れずに俺の首へと剣を振る。
観戦していた誰もが思った。フィアナの勝ちだと。
だが―――
「―――水神流奥義『
次の瞬間吹き飛んだのは俺ではなくフィアナだった。
「ガハッ!!」
道場の端でフィアナの声が聞こえる。
周りにいる者のざわめきもよく聞こえる。
「え?今の奥義?
ガヤガヤと盛り上がっている奴らを尻目に俺はレイダルを見据える。
彼はフィアナの方を向き見つめる。そして顔を下げ判定を口にする。
「今回の勝者は―――アr「待て!!!!私は、まだ、戦える!!!」」
そう声を張り上げた先を見ればフィアナが立っていた。
口からは血が滲んでおり、ハァハァと息を切らしている。最早、戦える状態ではない。
その姿を見てレイダルが声を出す。
「フィアナ。勝敗は決した。お前は 「いえ、彼女は負けていません。そして俺もまだ勝っていない」」
俺は思わず口を挟んでいた。
何故だろう。俺の目的のためを考えるならここで試合を終わらせるべきなのだろう。
そして下劣だが、俺は彼女を好きになっている。彼女の全てを手に入れ貪りたいと思う。綺麗なまま手に入れるならここで無理に攻撃すべきではない。
だが、俺は口を挟んだ。
それはきっと―――ここで逃げれば何かがなくなってしまうと思ったからだろう。
「なっ?!本気かアルデウス!?このまま続ければフィアナは 「私からも、お願いします、師匠。私は、最後までアルと、戦いたいのです」」
彼女は切実にレイダルに願った。
するとレイダルはフィアナを見て目を瞑った。そして深く考えた後、口を開いた。
「勝負、、、続行」
「「「「「ウォォォォォォォ!!!!!!」」」」」
観客が歓声を上げる。
だが俺達はそんなのを気にせず向き合う。
「ありがとう、アル。勝負を続けてくれて」
フィアナが口を開く。
「気にするな。俺は君のためになら何でもしよう」
俺はキザらしく言う。
「それは―――嬉しいな。だが、勝負は私が勝つからな」
彼女はそう言うと剣を構えた。
そして息を吐き、目を瞑る。
◆ ◆ ◆
体が悲鳴をあげている。
アルの『絶界』をモロに食らったせいだ。
まさか、三つどころか四つも習得していたとは。きっと彼が一番、初代水神に近い。
あぁ、やっぱりアルはかっこいい。流石私の王子様だ。
けど、私は救われるお姫様にはなりたくない。もちろん憧れはする。でも私はそれ以上に彼の、アルの隣に立ちたい。
アルの隣を胸を張って歩けるように。この戦いは勝たなくちゃならない。
目を瞑った状態で考える。
痛みのお陰で少し頭がスッキリしている。
多分だが次にアルが繰り出すのは『
根拠は無い。純粋な私の直感だ。だが、確信がある。アルの次の技は『剥奪剣』だと。
ならば私はどうすればいい。どうすれば手負いの状態で対抗できる。
三つだけしか奥義を習得していない私はどうすればいい。
『流』で『剥奪剣』をいなすか?
いや、万全の状態ならまだしも手負いの状態じゃ先に剣を奪われ終わりだ。
『絶界』でカウンターを入れるか?
いや、闘気を空間に伸ばした瞬間気づかれて違う技に切り替えられて終わりだ。
なら同じ『剥奪剣』で迎え撃つか?
いや、手負いの状態じゃ愚策としか言えない。
いくら考えても対処法が思いつかない。どうやっても、今の私ではアルには勝てない。
敗北の二文字が頭の中に浮かぶ。
それでも私は考えるのをやめない。
どんな水神流の技を繰り出してもアルには勝てない。
奥義を掛け合わせる。生み出すんだ。初代水神のように。
『流』、『絶界』、『剥奪剣』。
この三つの中から掛け合わせるなら『絶界』と『剥奪剣』だ。
考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考え続けろ。
勝つために。隣に立つために。恋人になるために。妻になるために。
編み出した六つ目の奥義を!!!!!!!
◆ ◆ ◆
フィアナが目を開ける。
その瞳はただ静かに勝利を見据えていた。
同時に互いに構える。
そして同時に技を口に出す。
「「水神流奥義――――――」」
周りのあらゆる音が消えたと錯覚するほど剣に二人は集中する。
最初に技を出したのは俺だった。
「―――『剥奪剣』!!!!」
俺の剣が真っ直ぐフィアナに向かう。
彼女は構えを解かず、一切の心のゆらぎもなくただ技を繰り出した。
この世に無い、幻の六つ目の奥義を。
「―――『剥奪剣界』!!!!!」
勝負は一瞬で終わった。
いかがだったでしょうか?
遂にフィアナの正体が明かされました。正直勘の良い方はもう気付いていたと思いますが。
本話も楽しんでいただけたのならば幸いです。
そしてなんと!!!UAが16000を突破しお気に入り件数が350を超えました!!!!
皆様本当にありがとうございます!!!!
これからも願望転生をよろしくお願いします!
また、高評価をつけてくださった
水奏楽様、殤不患様、とど大好き様、あい1203様、I-to様、ソニッキー様、OMIZU10469様、龍神*様、きょーた様
以上の皆様高評価をつけていただき本当にありがとうございます!!!
その他の読者の皆様も願望転生を読んでくださり本当にありがとうございます!!!
感想、誤字脱字報告、評価、この三点をお気軽にしていただけましたら幸いです。
これからも願望転生をよろしくお願いします!!!
※早速ですが語尾を少し手入れしました(2025/10/12 19:05)
※また早速ですが一部誤字を訂正しました(2025/10/12 19:17)