願望転生〜無職転生の世界に転生したかったんです!!〜   作:大戦士

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14話 希望か、絶望か

最初に認識したのは香りだった。

前世で嗅いだことがあるはずなのにまるで初めて嗅いだような気分のする薔薇の香り。

それが、鼻の奥に染み付くほど嗅いで次第に何も感じなくなった。

 

目を開ける。

目にたくさんの光が一度に入ってきたせいで思わず目を細めるがそれもすぐ慣れてきた。

 

知らない天井だ。

前世でお決まりと呼ばれる程度には使われてきた言葉。まさか自分が言う日が来るとは思わなかったが。

 

左手で体を支え起き上がる。

そして辺りを見渡そうとして気づく。自分の左腕が存在していること、体にあったあらゆる傷がなくなっていることに。

 

オルステッドによって体に開いた穴も、吹き飛ばされた左腕もある。それどころか切り傷の一つもない。

 

(王級以上の治癒魔術によるものか。いや、それよりも―――)

 

―――ここはどこなのか。

 

意識の飛ぶ直前のことを思い出す。

 

オルステッドに胸を穿たれ、諦めるのを諦めて、転移した。

 

何も想像しなかった。というよりできなかった。

転移魔術の限界を生死の境目で超えた?

 

転移できた理由を考えてもここが一体どこなのかは分からない。

 

改めて辺りを見渡す。

そこはまるで、どこかの裕福な国の王族の寝室のような場所だった。

決して無駄に豪華というわけではなく、壁、家具、絵画、調度品、この部屋にある全てのものが調和して豪華さを超えて神聖さすら感じさせるほどの気配を感じさせていた。

 

だが、そんな中で一番に目を引いたのは傍にあった一輪の薔薇。

それは至って普通の薔薇だ。何の変哲もない薔薇。にも関わらず心が惹かれる。

 

しかし、今重要なのはここが一体どこなのかということだ。

俺はベッドから降り、部屋にあった扉に向かい取っ手に手をかける。

そして取っ手をひねり、扉を開けた。

 

その先にあったのは、先程の部屋と移り変わって工房のような場所だった。

様々な機械のようなものがあり、きちんと資料が整頓されていた。

いや機械というのは語弊があるか、これは魔道具や魔力付与品(マジックアイテム)と呼ぶべきだろう。

だが、だとしてもこれほどのものは今の時代には到底ないものだ。

 

これらは本当に―――

 

 

 

 

 

 

 

―――反吐が出る。

 

それらのもののうちの一つに手を伸ばす。

 

その瞬間。

 

「目を覚まされましたか」

 

声が聞こえた。

その方に顔を向ければそこには一人の少年がいた。見た目は未だに十歳にも満たしていないように見える。

その身をブカブカの白衣のような服で包んでおり、眼鏡をかけている。髪色は白髪でその瞳は黄金色をしており、どこかオルステッドを想起させる。

 

だがそれだけではないと、直感で理解した。この少年はきっと、この世でオルステッドの次に強い。

 

「貴殿が俺を助けてくれたのですか?」

 

濃密な修行の四年間のせいでかつて持っていた営業スキルはどこか変容した気がするが、まぁ気にしたら負けだろう。

 

「えぇ、そうですね。私は貴方を助けました。体の方は、、、特に問題ないようですね」

 

「お陰様で。恩人に対する最初の言葉とは思えないが聞かせてください。貴殿は一体何者ですか?そしてここは一体どこですか?」

 

俺が問いかけた瞬間、少年の姿が消えた。

だが消えたと認識した次の瞬間、俺の傍にはたった今淹れたように湯気を立ち上らせている紅茶のカップがあった。

 

「取り敢えず立ち話もなんですから、座って紅茶でも飲みませんか?」

 

その声のする方を向けばそこは先程俺が出てきたはずの扉の向こうだった。

しかし、向こうの景色は寝室ではなく薔薇の花園と呼ぶにふさわしい場所でありその中央にはテーブルと椅子が置かれている。

それに加えて、先程までブカブカの白衣を着ていたはずの少年はタキシードを着ていた。

 

(何が起きた?)

 

一瞬で頭の中がその疑問で埋め尽くされる。

まさに一瞬。俺は瞬きすらしていないはずだ。にも関わらず俺の傍には紅茶が置かれ、あの少年は着替えている。

極めつけは扉の向こうの空間が全く違うものになっているときた。

 

「早く来てくださいよ。折角の紅茶が冷めてしまいます」

 

そう少年が告げた瞬間、俺は少年の眼の前にいた。

 

俺が後ろを振り向けば奥には扉があり、その向こうは先程まで俺が居た工房だった。

つまりここは先程の場所から見て扉の向こうだった場所だ。

 

「ははは、何でもありかよ」

 

思わず口から言葉が溢れてしまう。

俺は脱力したように目の前にあった椅子に腰掛ける。

 

その様子を見て少年も満足そうに向かい側の椅子に座り、机にあった紅茶を手に取り飲んだ。

 

「さて、ここが一体どこで、私が何者かでしたか。まず初めにここは所謂『次元の狭間』と呼ぶべき空間です」

 

「『次元の狭間』?」

 

聞いたことのない言葉だ。原作にはなかったはず。そもそもの話ここは六面世界なのか?

 

「ご安心ください。ここは間違いなく貴方がいた世界の延長線上にあります。決して、異世界とかではありません」

 

(心を読まれた?!)

 

「心を読まれたか、とでもいいたげな表情ですね。生憎ですが私にはそのような能力はありません。ただ単純に年の功というやつです」

 

そう言って少年はもう一度紅茶を口にする。

 

「……にしても、この空間に客人が来るのは初めてです。まぁ、大怪我というか致命傷を受けた状態で来たときはさすがの私も肝を冷やしましたが」

 

まぁ治ったみたいで良かったですと、少年は笑顔のまま答える。

 

「そうそう、『次元の狭間』についての説明でしたね。『次元の狭間』というのはですねその名の通り六面世界の各世界を隔てる次元の壁のゆらぎで生まれた空間をいいます」

 

そうして少年は『次元の狭間』に関する説明を続ける。

 

少年いわく、『次元の狭間』に位置するこの空間は外の空間と流れる時間が少しばかり違く、ここでの一年はあちらでの半年に相当するのだとか。

てっきりここでの一年はあちらでの一日でしか無いとでも言うかと思ったが、そこまでではないようだ。

そしてこの『次元の狭間』はあらゆる空間に繋がってはいるが自由に行き来することはできず本来ならば来ることすらできないとも言われた。

 

「君が来たあと、君のことを探るために君を()()んですけど君は視れないみたいで。偶に何人かいるんですよね、なんでか視れない人。まるで()()()()()()()()()()()みたいで」

 

「視た、とは一体どういうことですか?」

 

「私の魔道具ですよ。過去、現在、そして未来に至るまで視る事ができるんです」

 

成る程、、、視れなかったのはつまり俺がヒトガミの使徒だからか。そしてこいつの口ぶりからすると、こいつはあっちのことに関しちゃ何でも知っているみたいだな。

合点がいった。あの魔道具やらはやっぱり未来の知識が入っていたか。

 

だがそうなってくると、一番の問題は―――

 

「―――私が一体誰なのか、ですね。いいでしょう。お答えいたします」

 

そう言うと少年は手を叩く。そして次の瞬間、目の前にあったテーブルが消える。

 

少年は流れるような仕草で足を組み、優雅に座り直す。

 

そうして口を開く。

 

私の名前はラプラス七大列強序列一位『技神』ラプラスです。以後お見知り置きを」

 

 

 

――――――――――――

―――――――――

――――――

―――

 

 

 

『技神』。

それは、七大列強の頂点に位置するものの称号。実力は序列二位の『龍神』に劣っているとはいえ、そんな事はただ普通に生きている者たちにとっては預かり知らぬところだろう。

 

そして、原作に一切登場しなかった人物でもある。俺も記憶が曖昧であるだとか、魔力が無いだとか、あまり良く覚えていない。

ただ、オルステッドが味方にしたくなさそうだったというのは鮮明に覚えている。

懐かしいものだ。当初読んでいたときは出番を今か今かと待ち続けていたもので、出番がないことを悟ったときの絶望は凄まじいものだった。

 

けれど今はそんな事はどうでもいい。

 

今重要なのはそんな存在が目の前に居て、よく分からないということだ。

性格も、理念も、目的も、何もかもが分かっていない。

 

そんなやつのもとで俺は今―――

 

 

 

「おいおい、お弟子くん。もっと早く造れないかい?」

 

「今やってます!!!」

 

―――弟子となっていた。

 

事の経緯はラプラスの正体を知ったときにまで遡る。

俺はあのあと、()()()()ラプラスの弟子になりたいと申し出た。

 

理由はラプラスが持っている技術を知りたいからだ。この間の話から察するにこいつの技術力は原作よりももっと未来まで進んでいるとうことになる。加えて、現存していない技術や技もこいつなら知り得ている。

それはつまり、オルステッドを殺すための切り札になり得るということになる。故に俺はこの男の弟子となった。

 

そんな俺は今、魔道具の作成に取り掛かっていた。

 

「というか、これは一体何を造っているんですか?」

 

そもそもの話、魔道具が一体どのように作られるのかをよく知らないがこれが異質であるのは俺でも分かる。

 

「君はまだ初心者だからね、今造っているのは初歩的なものだよ」

 

「へぇ、これが初歩的か。魔道具って難し 「所謂『時間魔術』を知るための教本だね」 、、、、、、、、、、は?」

 

はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??

『時間魔術』?え?え?

 

「今、『時間魔術』っておっしゃいました?まだ弟子になって一日ですよ?いいんですか?」

 

戸惑いを隠せない。いや、確かにゆくゆくはそういったことも学びたいとは思っていたけど、てかあるんだ『時間魔術』って。

 

「ハハハ、何を驚いているんんだい。君は私の弟子になったんだ、『時間魔術』だけじゃなく君に私のしるあらゆる〝技〟を君に教えよう」

 

思わず呆けていると、ラプラスは、「例えば…」と教えようとすることを教えてきた。

 

「君の不安定な『転移魔術』を筆頭に、『各系統の神級魔術』や武器や物に能力を付与する『付与魔術』。そして、そういう『武器とかを造る技術』も教える。あとは私が知っている技術で君が望むものとかね」

 

圧巻の一言に尽きる。今言った技術を身に着けただけでもオルステッドを殺せる可能性が上がる。それにきっと剣術もここでならより鍛えられる。

 

だが、話がうますぎる。俺のメリットは凄まじいがラプラスの目的は何だ?

 

「……どうして、そこまでしてくれるんですか?」

 

俺がそう問いかけるとラプラスは俺の肩に手を置いて、乞い願うように口を開いた。

 

「きたる未来で、、、『龍神』オルステッドを助けてほしいんだ」

 

 

 

 

 

は?

 

助ける?俺がオルステッドを?

 

ヒトガミの、よりにもよって『真の使徒』の俺が?

いや、その事はラプラスは知らないのか。だから、こんな提案ができる。

 

でも何故だ?オルステッドは『技神』を仲間にしたがらなかっただろう。じゃあ何故ラプラスは……

 

「……これはいわば私の罪滅ぼしだ。私は過去に許されざる大罪を犯した。『時間魔術』を付与されていた魔道具で過去を見て私はそれを知った。()()()()()は堕ちていることと私自身がこの『次元の狭間』から出られないため、私は彼に償うことができない」

 

そこで君です、と俺は指をさされる。

 

「私の技術を全て継承した貴方が、私の代わりに彼の助けになってほしい。魔道具で視た未来の戦いで『龍神』に手を貸し、『ヒトガミ』という邪悪な存在を打ち倒してほしいのです」

 

心臓の鼓動が速くなっているのが分かる。

仮に使徒であることがバレたら?最悪な予想が俺の頭を横切る。

 

「ですが残念なことにこの魔道具も万能ではなく、『ヒトガミ』の能力などは分からないのです。加えて、『龍神』も観察できず、この魔道具は精々私が外の状況を知るためのものになっているのです」

 

私自身が『時間魔術』を行使できたらまた違うんでしょうが、とラプラスは唸る。

 

成る程。ヒトガミの能力が分からないゆえに使徒の存在を知らないのか。

加えて、これは俺の予測だがこの『次元の狭間』はヒトガミの手が届かないのだろう。実際何度か接触を図ろうとしたができなかった。

 

「それで、どうでしょうか。やってくれますか?」

 

ラプラスが俺に聞いてくる。

ここの返答はどう足掻いても、yes一択しかないだろうと俺は心のなかで叫ぶ。

 

「……分かりました。貴方の提案を呑みます」

 

俺がそう答えると、ラプラスはパァと笑顔になり俺の両手を取りブンブンと振る。

 

「ありがとう、アルデウス!!!君が来てくれてよかった!!!期待してますね!!!」

 

期待してます、、、か。

 

この場で最も言ってほしくなかった言葉だ。

俺は、、、()()()()()()裏切ってしまうのに。

 

「では、ビシバシ教えていきますよ!!!覚悟してくださいね、お弟子くん!!!」

 

「、、、、はい」

 

上手く笑えていただろうか。

こればかりは願うしかない。

 

この殺意を上手く消せていることを。




いかがだったでしょうか!
なんだかアルデウスくんが不穏なことを言い始めてきました。少しずつアルデウスくんの目的の片鱗が見えてきましたね。加えて遂に『技神』の登場です。いやぁやっとここまでこれました。あと少しで二人目のヒロインが登場させられそうです。


そして、

ナッツナツ様

高評価をつけていただきありがとうございます!!!
他の読者の皆様もいつも読んでくださりありがとうございます!!


また、感想、誤字・脱字報告、評価の三点を是非お気軽にしていただけましたら幸いです。
これからも願望転生をよろしくお願いいたします!!!
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