願望転生〜無職転生の世界に転生したかったんです!!〜   作:大戦士

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大変長らくお待たせいたしました。
後書きにてこれからのことについて書いておりますのでぜひご確認ください。


15話 最強を降す力

龍神(世界最強)を倒す方法。

 

俺がヒトガミの真の使徒となってから常に考え続けてきた最大の問題。

 

原作知識が俺に備わっているからこそ尚更に不可能だとしか思えないもの。

何百、何千回もの思考を経て辿り着いた結論は、真っ向からの勝利。これに他ならない。

仮にどんな策を弄したところでオルステッドの異次元の強さの前では狼の息に吹かれ吹き飛ぶ藁の家に等しい、故に単純な力でオルステッドを超えなければならなかった。

 

そのために各剣術の流派を習得しようと動いた。

だが、それは徒労に過ぎなかった。きっと俺の実力はすでに頭一つ抜けているだろう。七大列強に迫ると言ってもいい。

 

不治瑕北神流を学び、水神流の五つの奥義全てを会得した。そして、剣神流の『光の太刀』を超えた『極光の太刀』というものさえ創り出した。

加えて魔術も全系統で聖級、治癒魔術は上級だがその全てを無詠唱で発動できる。そして極めつけは《転移魔術》という魔術を独自に生み出したことだ。

 

ここまでのことを僅か十六年の間に成し遂げた。

 

しかし、それでも届かなかった。

習得したすべての剣術で立ち向かうも悉く防がれる。《転移魔術》を使い意表を突こうともしたが初手から対応された。

 

十四年。言葉通り血を吐く程の努力を重ねても届かない。

そして今回、俺は『技神』ラプラスの弟子となった。

 

弟子となってすでに四年の歳月をここで過ごした。

まぁ、現実の方では二年しか経っていないが。そして、良かったことに肉体の成長は現実の方に影響されるようで俺はこの間十六歳となった。

 

ともかく、俺はこの四年間、当初ラプラスが言っていた『時間魔術』、転移魔術を突き詰めた『空間魔術』、『付与魔術』そして武具を作る技術、『各系統の神級魔術』を習得し、それに加え『剣神流』を会得した。

四年間の濃密な修行の甲斐があってか、そのどれもが極めたと言っていいほどの練度になっていた。

 

まぁ、それでもラプラスには届かないが。どうなってんだあいつ。

 

―――そして、、、そしてこの四年間は俺が情を持つほどに長い時間だった。

 

裏切らなければいけない相手。そんなのは分かっている。

ラプラスの在り方と俺の目的はどうあっても相容れることはない。

それどころかラプラスの存在そのものが、俺に不都合なのだ。

 

共に話をして、共に食事をとった。その度に俺の、アルデウス・レイブランドの心は悲鳴をあげる。

 

だから俺は、その度に俺の目的を思い出す。

 

 

ハーレムを作りたい。それは俺の目的の延長上にあるだけ。

 

圧倒的な力が欲しい。それは俺の目的を果たすために必要不可欠なもの。

 

永遠の命が欲しい。それは俺の目的を果たした後に必要なもの。

 

 

龍神と敵対しているのも、俺がヒトガミの使徒だがらではない。俺の目的にオルステッドの存在が邪魔だからだ。

仮に使徒にならなくとも、最終的に俺はオルステッドと敵対しただろう。

 

あぁ、そうだ。

 

倒さなくては、殺さなくてはいけない。

 

俺の目的のためには、俺が『幸せ』になるには。

 

だからもういい。

 

もう、躊躇はしない。

 

俺の望む未来のためならば―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――俺は、堕ちてもいい。

 

 

―――――――――――

――――――――

―――――

―――

 

 

 

「武器が欲しい?」

 

ラプラスが俺に問う。

 

「はい。ヒトガミを殺せるほどの武器が欲しいのです」

 

俺が毅然とした態度で答えると、ラプラスはうーんと、唸りだす。

 

「流石の私の技術でも、ヒトガミを殺せる武器は無理ですね」

 

そもそもどう殺せばいいのか分かりませんし、とラプラスは言葉をこぼす。

 

だが、そんなことは予想通りだ。

 

「では、()()()()()()()()()()()()ならどうですか?」

 

俺がそう答えるとラプラスは目を見開き顎に手を当てて考え始めた。

その表情からは不安と僅かな期待が滲み出ている。

 

少ししてラプラスは恐る恐る口を開く。

 

「……可能です。ですが、それは余りにも危険であると、貴方も分かっているでしょう。もし仮にその武器が敵に渡れば、我々は希望を失います」

 

それを分かったうえで言っているのですか、とラプラスは凄まじい覇気を纏いながら威圧して聞いてくる。

 

俺はそれを前にして―――

 

「承知しています」

 

淡々と言葉を返した。動じることもなく、ただ淡々と。

 

それを見たラプラスは目を閉じ、溜め息を吐くと目を開き俺に告げた。

 

「―――であれば、私からは何も言いません。では手伝いましょう。どういう武器が欲しいのですか?」

 

「……剣がいいです。自分は、今まで剣術を極めてきたので」

 

俺は聞かれると、元々考えてあったことを話した。

まず、武器種は剣であること。次に武器に付与を施すことで搦め手を使えるようにすることなど。

 

「それと、できればその剣のベースにこの剣を使えませんか?」

 

そうして俺が取り出したのは、俺が父から貰った剣だ。この八年、現実では六年だがを共に過ごした剣。これを使いたい。

 

「分かりました。ベースはそれでも構いませんが貴方の注文通りに造るには少しばかり素材が必要ですね」

 

そう言うとラプラスは近くにあった紙に、スラスラと何かを書き込み俺に手渡してくる。

 

そのメモには三つの素材が書かれていた。

 

魔石多頭竜(マナタイトヒュドラ)の鱗ベヒモスの心臓、そして―――王竜王 カジャクトの牙

 

……。

 

……マジ?

 

あまりの衝撃ゆえに放心してしまった。

情報を整理すると言っても、これらすべての魔物はすでに絶滅している。まぁ、魔石多頭竜(マナタイトヒュドラ)は転移の迷宮で生き残っていたが他の二体、特にカジャクトに関してはあいつ一体だけだったため最早、牙どころか血の一滴すら手に入らないだろう。

 

「失礼ですが、この三体とも絶滅していませんか?『時間魔術』って過去に干渉できませんよね?」

 

そう、この『時間魔術』は過去に干渉できないのだ。

具体的には、自分という存在がいない時間軸には視ることすらできず、仮に自分が存在している時間だとしても視る事ができるだけで、そこに干渉することはできない。

つまり、どうやっても過去は変えることができないのだ。

 

「その通りです。ですから、今現存するものからとってきてほしいのです」

 

そう言うとラプラスは話し始めた。

曰く、三匹とも絶滅したとされているが王竜王以外は生き残っている個体もおり、各地の迷宮等にて昔の者たちが封印して生き永らえさせたそうだ。

 

成る程。原作で転移の迷宮に魔石多頭竜(マナタイトヒュドラ)が生き残っていた理由はそういうことか。

にしても、ベヒモスねぇ。原作にはいなかったし多分伝説級の魔物だよなぁ。

 

魔石多頭竜(マナタイトヒュドラ)とベヒモスは分かりました。では、王竜王の素材はどうするんですか?」

 

「えぇ、流石にあっちに現存はしていませんね。ですので……」

 

ラプラスはガサゴソと近くの物置を漁り始める。

 

「こちらに、王竜王の牙はあります」

 

「へぇ、あるんで……あるの?!

 

え?じゃあ何で取りに行かせるような雰囲気を?

 

「じゃあ何で取りに行かせるような雰囲気を?とでもいいたげな表情ですね。それは貴方がきちんと私が教えたものを覚えているのかの確認と、、、」

 

「確認と?」

 

「気分です」

 

こいつめ。

 

「話を戻しまして、ベヒモスと魔石多頭竜(マナタイトヒュドラ)の生息場所はですね、

 ベヒモスが天大陸にある迷宮『地獄』の隠し部屋

 魔石多頭竜(マナタイトヒュドラ)龍鳴山の麓にある『龍神孔』の隠し部屋にいます。

 奇しくもどちらも世界で最も危険とされる世界三大迷宮ですね」

 

頑張ってください、とラプラスは他人事のように言う。実際やるのは俺なのでラプラスにとっては他人事なので間違いではないが。

 

だが、魔石多頭竜(マナタイトヒュドラ)は転移の迷宮にもいるはずだ。では何故わざわざ三大迷宮の方を教えた?

 

「まぁ、他の場所にも生息はしているんですけどね、素材として最高級のものを使いたいのでここを取り上げましたが、、、正直今の貴方なら勝てると判断しました」

 

「そうですか、分かりました。では取りに行けばいいんですね」

 

「はい、っと出発の前にこちらを。余りの『楔』です。一応、どちらの迷宮も近くに『楔』を転移させて設置してあるのですぐに向かえます」

 

『楔』。

それは『転移魔術』を突き詰めて進化させた『空間魔術』で使用する外部部品のようなもの。

これを使えば、遠方の転移をする際に必要だった鮮明なイメージを省くことができるため『楔』さえ残っていれば例え大きく地形が変動していても同じ座標に跳ぶことができる。

加えてこの『楔』、何度でも使用することができるうえにそこそこの耐久性をもつ。

ただし、量産は難しく加え造ることができるのはラプラスだけというもの。

 

「確認します。……七つですか。結構ありますね」

 

「えぇ、ただ素材の限界もありましてそれが限界です。『楔』は抜けば再利用もできますし上手く使ってください」

 

俺は受け取ったものを『空間魔術』を使い俺だけの亜空間、前世風に言えばアイテムボックス的な場所に入れる。

こういう時、『空間魔術』は便利だ。

 

「では、早速ですが出発します。最初は『地獄』の方に行こうと思います」

 

「こちらでも準備は進めておきます。お気をつけて、アルデウス」

 

「行ってきます…………ラプラス」

 

俺はそう言うと、天大陸の『地獄』の近くにある『楔』に転移した。

 

 

 

―――――――――――

――――――――

―――――

―――

 

 

 

「確かに、何の問題もなかったな」

 

俺は今、龍鳴山の麓にある『龍神孔』の近くにいた。

 

結論から言えば、ベヒモスは楽勝だった。

俺の()()()を使うまでもなく純粋な魔術の火力と剣技による怒涛のラッシュでベヒモスに勝利した。

だが、あれはやはり一人で討伐するようなものではなかった。

ベヒモスは自分自身のいる部屋に魔力を満たし、部屋自体を操って攻撃してきたのだ。

まさしく化物と言っていい。

 

「さてと、準備も終わったし行くか」

 

俺は亜空間から最低限の物資を取り出し、『龍神孔』へと向かって歩き出した。

 

『楔』が置いてあった場所は北方大地側で、吹雪が吹いていないとはい、えそこそこの雪が道に積もっており些か歩きづらい。

そういえば、元々行こうとしていた剣の聖地も北方大地にあったことを歩きながら思い出す。

 

(剣の聖地といえば、原作でエリス、ニナ、イゾルデの三人がそこで出会っていたな。)

 

心のなかで言葉をこぼすと、また一つ思い出す。

 

―――フィアナ。

 

別れてからすでに四年が、いやこっちじゃまだ二年か。だがそれでも結構な時間が経っている。

彼女は今一体どうしているのだろうか。もしかしたら、"水帝"になっているのかもしれないな。彼女のことだ、あり得る。

それに、もっと綺麗になっているはずだ。確か前世の無職転生のゲームで若い頃のレイダの姿があったはず、会った時も面影はあったがまだ子供らしさが残っていた。きっと今は大人の魅力というものをもっているのだろうな。

 

そんなこんなで、俺はいつの間にか『龍神孔』の入口に辿り着いていた。

 

周りに危険がないことを確認した俺は、『時間魔術』を使い三時間程先の未来を視始める。

 

『時間魔術』による未来視は、原作でのルーデウスの魔眼ほど便利なものではない。

これは、至る可能性のある()()()()()しか視ることができないのだ。自分の目を媒介とする場合見れて四時間後で細かな調整がしづらいうえに、馬鹿みたいに魔力を消費するから連発もできない。

加えてこの至る可能性というのも現在の自分を起点とするから仮に一時間後少し強くなっていたとしても、現状視れる一時間先の未来は今の状態での可能性なのだ。

 

だが、こういったときは使いやすい。

 

俺は未来視を終わらせ躊躇うことなく道を進んでいく。

 

そう。こういう迷宮とかなら未来視を使えば迷うことなく正しい道を進めるのだ。

 

二、三時間程歩き続け俺は、隠し扉を見つけその前に立っていた。

道中は特に強い魔物にも遭遇せず実に快適な道だった。

 

「さて、この先に魔石多頭竜(マナタイトヒュドラ)がいるのか」

 

さっきの未来視は魔力の関係上ここまでの道のりしか見ていない。完全な初見の戦闘になる。

 

戦闘中でも魔力を根こそぎ奪われるからあまり未来視は多用したくはない。

ベヒモスとの戦闘の時に未来視で魔力を結構使っているせいで今回は剣術メインになるだろう。

まぁ、元々魔石多頭竜(マナタイトヒュドラ)自体が魔術を跳ね返すからそんな使うつもりはなかったが。

 

俺はラプラスから借りた剣を抜き放ち、勢いよく扉を開け中へと突入した。

 

 

―――――――――――

――――――――

―――――

―――

 

 

 

しくじった。

 

全身が痛い。

 

俺は今、原作で魔石多頭竜(マナタイトヒュドラ)のいた部屋のような空間にある柱の陰に隠れ自分自身に治癒魔術をかけている。

 

柱の陰からそっと、ヤツを見据える。

ずんぐりとした胴体、九本の首。ここまでなら単純な魔石多頭竜(マナタイトヒュドラ)として話は終わり。

 

だが、他が()()だった。

 

その大きさは原作で描写されていたような赤竜の約二倍の大きさ等ではない。赤竜を例えに出すなら、その十倍以上はあるように見える。

鱗はエメラルドグリーンのような綺麗な色ではなく、見るものすべてを飲み込むような完全な漆黒に染まっている。

 

そして最大の問題は、九本の首すべてが全く違う色の瞳をもっていること。

そう、九本の首すべてが全く違う魔眼を持っているのだ。

 

ヤツの持っている魔眼を推測するために俺は自分が突入したときのことを思い出す。

 

俺が突入したのと同時に、俺の体は宙を舞った。理由は単純な話でヤツのあの馬鹿でかい巨体の尻尾で薙ぎ払われたからだ。

その後壁に叩きつけられ、俺はすぐに体制を立て直そうとするも体も視線も動かすことができずにヤツの九つの頭から放たれる炎のブレスを受けた。

ただ、受ける直前に体の自由が戻ったため近くにあったこの柱の陰へと転移した。

 

このことから推測するに、ヤツの九つの魔眼のうち二つは、未来視と麻痺のようなもので確定だろう。

そうでなきゃ、ヤツが俺が突入したときに扉の前にいた理由にならない。

 

残りは七つ。ハハハ、無理ゲーにもほどがある。

 

次の瞬間、ヤツの首の一つがこちらを向いたかと思うと残り八つの首もすぐにこちらに向けて炎のブレスを吐き出そうとしている。

 

「なっ!?マジか!」

 

俺はすぐさま横に飛び出す。すると、俺が先程までいた柱はドロドロにとかされていた。

 

そのことを確認した俺は剣を握り締め、ヤツに向かって駆け出す。

やはり、巨体の影響か素早さはあまりなくヤツは俺の接近を許した。俺はその巨体に乗り、ブレスの準備をしようとしていた首めがけて《閃光炎(フラッシュオーバー)》を放つ。

だが、放ったはずの《閃光炎(フラッシュオーバー)》は一瞬で消え去りヤツはブレスを吐き出した。

 

俺は焦らず、ヤツがブレスを吐き出した首の上へと転移する。

 

「剣神流奥義『極光の太刀』!!!」

 

技を放つと一瞬、ヤツの首の手前で止まったかのような感覚を覚えるが、そのまま首は断ち切られる。

 

「「「「「「「「ウヲォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!」」」」」」」」

 

ヤツの残った八本の首から放たれる叫び声が部屋を揺らす。

 

俺はそれを気にすることなく空中で態勢を変え、別のもう一本の首へと狙いを定める。

 

「フゥゥゥゥゥ……―――『極光の太刀』!!!」

 

そうして放たれた一撃は真っ直ぐに狙った首へと向かい、そして切断した。

 

斬ったことを確認し、俺は地面へと着地をする。そしてヤツへと剣を向けようとした瞬間、視界が真っ黒になる。

 

(視界を消された!?)

 

あまりの衝撃に俺は一瞬固まってしまうがすぐに他の感覚を研ぎ澄ませ、技を繰り出す。

 

「水神流奥義『絶界』!!」

 

すると、視界が元に戻り俺は後ろへと大きく跳ぶ。

 

ヤツを見れば斬ったはずの首のうち一つが戻っており、他の残っている首の一つの両目に剣を受けた傷があった。

しかし、残された斬られている首は一向に再生する気配がない。

 

(成る程……推測するに、他の魔眼のうち五つは透視、吸魔、空絶、感覚奪取そして()()といったところか。)

 

治癒が魔眼の力と断定した理由は、単純にヤツの残された首が再生していないからだ。俺はルーデウスのように傷口を火で焼いていないからヤツならすぐに再生できるはずだ。

だがそれをしない。ということはヤツは自力での再生ができないということ。

 

では何故、魔眼を使い治癒しないのか。

俺が予想するにこいつは複数同時使用はできず、使用した魔眼にはかなりの時間のインターバルが必要になるのだろう。

じゃなきゃ、初手で俺を麻痺させて感覚奪取をしているはずだ。

 

「なら勝つには、短期決戦が必要!!!」

 

俺はヤツへと走り出す。するとヤツは残っている八つの首でブレスを吐き出そうとする。

 

「もう見飽きてるわ!!!」

 

俺はヤツの炎に対抗するべく帝級魔術《絶対零度(アブソリュート・ゼロ)》を放とうとする。

だが、とてつもない違和感が俺を襲う。

 

俺は本能のままに()()()を準備する。

 

そして次の瞬間、ヤツの八つの首から紫色の"毒"と思われるものが放たれる。

その発射速度は炎のブレスの三倍は速く躱すことは無理かのように見える。

 

そうしてヤツの毒のブレスは俺に直撃する―――ことは無かった。

 

俺がいたはずの場所にはすでに俺の姿は無かった。

ヤツは転移を警戒してか八本の首を周囲へと向ける。

 

だが、ヤツの周囲に俺が現れることはなかった。

 

「どこ見てんだよ」

 

八つの首はその声が聞こえると聞こえた場所へと目を向ける。

しかし怪訝なことにそこは、俺が消えた場所と同じ場所だった。

まるで、ずっとそこにいたかのような自然さを纏っている俺にヤツは警戒をあらわにしている。

 

「テメェやっぱりそこそこの知性はあるみたいだな」

 

一体何故、そこに俺がいるのか。

 

その理由は俺の奥の手、時間跳躍(タイムスリップ)という魔術だ。

これは、俺とラプラスの合作により生み出した魔術で、名前の通りタイムスリップを行う魔術である。

『空間魔術』と『時間魔術』を組み合わせて生み出したこれは流し込んだ魔術の量によって未来へと自分を跳ばす事ができ、『楔』を使用すれば時間跳躍とともに転移することだってできる。

加え、改良の末この魔術の使用にかかる魔力量の削減にも成功しており一日程度なら、俺の魔力の一割すら使用せずに跳ぶことさえ可能にした。

 

つまり俺は、ヤツのブレスが来る時に発動したこれで十五秒程先の未来に跳ぶことでブレスを回避したのだ。

転移には転移先のイメージを必要とする反面、この魔法ならイメージが必要なくなる。だが、一度使用すれば三日ほどのインターバルが必要になるデメリットもある。

まぁ、適材適所ってやつだな。

 

俺は先程の毒のブレスに目を向ける。そこはただ、紫色の液体が散乱しているように見えるが、注意して見てみればその毒は即効性の致死毒であり、それに対しては神級の解毒魔術であっても効かないだろうということが分かる。

 

「しかし毒か……使えそうだな。だがとにかく、まずはここを突破しようか」

 

するとヤツの首の一つの目が光ったかと思った瞬間、辺り一面が氷に閉ざされた。

 

「成る程!八つ目の魔眼は氷結の能力か!」

 

違和感を感じ下を見てみると今の一撃によって、俺の両足が凍っており動けなくなっている。

すぐに火系統魔術で溶かそうと魔術を行使しようとするも魔術を放とうとする事ができない。

 

バッ、と顔をあげヤツをみればほくそ笑むかのような目で俺を見据えていた。

そしてその顔を見たと同時にまたもや視界が真っ黒に染まってしまう。

 

「インターバルが経過したか!クソ、治癒の魔眼で感覚奪取の魔眼の方を治しやがった」

 

それに加え最後の九つ目の魔眼の能力は多分、封魔。魔術の発生そのものを封じるものだろう。

クソッタレが。吸魔といい封魔といいどんだけ魔術師にこの魔物を倒してほしくないんだよ。

 

それにこの感覚、ヤツは最大出力のブレスで一気に俺を消し飛ばす気か。この場における大正解だ、やっぱり頭いいなこの魔物。

 

(だが、封魔の方もインターバルに入った筈だ。なら……)

 

俺は剣を両手でしっかりと握りしめる。そして、剣を高く突き上げ口を開く。

 

「右手に剣を」

 

「左手に剣を」

 

「両の腕で齎さん、有りと有る命を失わせ、一意の死を齎さん」

 

そして、ヤツのブレスより先に俺のほうが早かった。

 

「―――不治瑕北神流奥義『破断』!!!!!

 

瞬間、その場を光が包みこんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

土煙が晴れ、氷に閉ざされた広い空間には漆黒の鱗をもつ巨大な魔石多頭竜(マナタイトヒュドラ)の死骸とそれを見て直立している俺がいた。

 

俺は死骸に近づき、魔石多頭竜(マナタイトヒュドラ)の逆鱗と見られる大きな逆さまの鱗を剣で剥ぎ取り、その死骸へ言葉を紡ぐ。

 

「強かったよ、手加減してたオルステッドよりもよっぽど」

 

「そうだな…ずっとお前呼びってのも嫌だな。折角だ、名前を付けよう」

 

俺はもう何も言わない、互いに死力を尽くした好敵手へと言葉を送る。

 

シグリート。それがお前の名だ。今度は俺の目的のためにお前の力を貸してくれ」

 

すると、その名を受け入れるかのようにシグリートの死骸は光の粒となって消え去った。




いかがだったでしょうか。
波乱万丈、怒涛の展開が続きアルデウス君の新たな力も出てきました。
これからの彼の物語は一体どうなっていくのか乞うご期待です。

UAが3500件を超えお気に入り件数が550件を超えました。皆様本当に有難うございました!

※お知らせ
どうも読者の皆様、作者の大戦士です。
これからの願望転生や、私の作品についてなのですが約一年ほど活動を休止いたします。
理由に関しましては、私自身の私生活にて執筆の時間が今後取れなくなっていくことになってしまったからです。もしかしたら暇があれば投稿をする時もあるかもしれませんが基本は休止していく形となります。
ただ、私自身もこの作品を完結まで書き上げたいという思いもありますので、一年後には再開する見通しではあります。
誠に身勝手ではありますが、読者の皆様にはこれからも願望転生を待ってくだされば嬉しいです。
処女作でありながら、ここまで伸びたのは皆様のお蔭であるとしみじみ感じています。本当に皆様有難うございました。
では一年後、またお会いしましょう。



感想、誤字・脱字報告、評価、いつでもお待ちしております。
これからも願望転生をよろしくお願いいたします。
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