願望転生〜無職転生の世界に転生したかったんです!!〜 作:大戦士
なんと、なんと、お気に入り件数が100件を突破しました!!!
読者の皆様ありがとうございまーす!!!!!
私、感無量でございます。お礼と言っては何ですが、今回のお話は9000文字という普段の約2倍の量を書きましたので楽しんでいただけましたら幸いです。
注:ただ、本話から少々残酷な描写が入ってきます。もし、苦手だという方がいらっしゃれば後書きにもの凄く簡潔に今回の話をまとめたものがありますのでそれを読んでいたただければと思います。
さて、長くなりましたが 第5話 ターニングポイント① ぜひお楽しみください!
俺がヒトガミを認識してから
俺は今日で十歳になり、怪訝なことにあの日以降ヒトガミが接触してくるような出来事はなかった。
何度か、この状況こそが罠なのではと思い城の者に『ヒトガミ』という単語に聞き覚えはないかと定期的に聞くようにしていた。
この質問オルステッドかよ、と自問自答したのは内緒だ。
だが、結果から言うとこの八年間城にいる全員がヒトガミとの接触はなかった。
嘘をついている可能性を考えたが全員とも嘘をついているようには見えなかった。
ヒトガミに認識されなかったのか?目があったと思ったのは気の所為だったのか?
不安が押し寄せてくるが何も起きていない現状、どうしようもないとして俺は割り切った。
いや、割り切ったことにした。
しかし、八年間ヒトガミが接触してこなかったおかげでいろんなことを習得できた。
まず、魔術教本に載っていた魔術は
そう、すべてをだ。しかもただ単に習得したのではない。
載っていた魔術すべてを無詠唱で発動できるようになった。
いやぁ魔術の才能があってよかった、よかった。
だがここで終わらないのが俺、アルデウス・レイブランドだ。
俺はなんと、なんと、転移魔術の無詠唱にも成功したのだ!ヤッフ〜!
習得した日からなんとなくできそうな気はしていたが未知なものだったから手を出さないでいた。
しかし、自らを転移させたときに自力で失敗を解決できたことに自信ができてやってみたらどうだ。
できちゃったんだよね。
ただ、無詠唱だと自らの視界に収まっている範囲のみでしか発動できないという点がある。
魔術名を唱えた場合はきちんと転移先が想像できるところならどこでも転移できるようになった。
しかし、本当に正確に想像できないと発動しないので正直使い勝手は悪い。
加えて少しでも正確じゃないと変なところに跳ばされることもあるからだ。
これなら転移魔法陣を使ったほうがいい。
次に、獣神語、魔神語、闘神語の習得に成功しました!
若い体っていいね、としみじみ思いました。
実を言うとこの三つの言語に関しては七歳ぐらいで習得し終えてはいたのだ。
じゃあ残った三年は何をしていたのかって?
クククッ。ククククククッ。
何を隠そう、例の北神流教本を解読し実践していたのだよ!!
でも、これがものすごい大変だった。
北神流の技や使い方、そして弱点。それが詳しく書かれていた。
知識として理解はできたが実践となると大きく違う。
父様に頼み込んで国の騎士と手合わせをしてみたが最初は勝つどころか一撃すら入れることができなかった。
あの時、剣を扱うことの難しさを痛感した。
だから考えた。
どうやったら上手く剣を振れるのか。
どうやったら上手く技をだせるのか。
どうやったら上手く―――人を殺せるのか。
教本に書いてあった。
たとえどんなに高潔な理由で剣を学ぼうとも剣術は人を殺すためのものであると。
納得した。納得してしまった。
前世の知識が、経験があるから人を殺すことに忌避感が拭えなかった。
頭の中で納得していたつもりだったが、この内容を知ってからはそのことが色づいたかのように理解できる。
理解してからは簡単だった。
剣を扱う技術は日を追うごとに上達していった。
そして誕生日の今日、俺は訓練場で今まで俺と手合わせをしてくれている騎士と向かい合っていた。
「バーナさん、今日もよろしくお願いします」
「えぇ、アルデウス様。こちらこそよろしくお願いします」
バーナ。それが彼の名前だ。
聞くところによると彼はこの国の騎士団長で"剣聖"らしい。他にも北神流や水神流も上級なんだとか。
加えて彼は父様の旧友で俺のことも父様から
そんな人と手合わせをさせてくれた父様には感謝しかない。
「では、参ります」
俺はそう言葉を言い放ち、駆け出した。
バーナさんは動かずただ剣を構えている。
(油断?いや、誘っている)
俺は剣を振り上げバーナさんに向かって振り下ろす。
「甘いですよ!アルデウス様!水神流『流』!」
水神流の基礎にして五つの奥義のうちの一つ『流』。
しかし奥義として認められるには凄まじい性能が求められる。
俺の剣が、カウンターを仕掛けようとしているバーナさんの剣に触れ合う瞬間。
「いいえ!甘いのはそちらです!北神流『斬昇』!」
俺は剣を裏返し、相手の剣の下に持っていき振り上げる。
「のおっ?!」
そして俺は剣をバーナさんの喉元に迫らせる。
しかしすんでのところで弾いたはずの剣で防がれた。
「くっ!!」
バーナさんは俺を蹴り飛ばし居合の構えをとった。
「ふぅーーー、剣神流奥義『光の太刀』!」
すると目にも止まらぬ速さで剣が抜き放たれる。
実力差があれば回避することはできるが俺の実力では回避することは不可能。
つまり当たってしまう。ならば、、、
俺は空中で
「なっ?!まさか?!」
そして俺は剣を全力で抜き放つ。
「剣神流『無音の太刀』!」
『光の太刀』の下位互換にあたる技。
バーナさんが見せてくれた『光の太刀』を見様見真似でやってみて会得できた。
本来なら威力も十分あるはずだが剣聖の『光の太刀』のまえだといささか見劣りする。
だが、この威力があれば―――
―――『光の太刀』の軌道は変えられる。
そうして俺の『無音の太刀』とバーナさんの『光の太刀』がぶつかる。
そして―――俺の『無音の太刀』が打ち消され、『光の太刀』は軌道を変え俺の真横を過ぎていった。
俺は着地しすかさず剣を構える。
「今のはまさに『無音の太刀』、剣神流上級技だ。アルデウス様、いったいどこでこれを?」
俺は構えを解かずに答える。
「あなたの『光の太刀』を真似ていたら出来るようになりました。『無音の太刀』自体は本で読んで知っていました」
まぁ、ここでいう本は原作のことだけど。北神流教本は本当に北神流しか載ってなかったからな。
「まさか、魔術の才能だけではなく剣の才能までお持ちとは。闘気も纏えるまであと一歩といったところですし『光の太刀』を習得するのも近いかもしれませんね」
驚いた。闘気を纏えかけているのか。あまり実感がわかないな。
おっと、気を抜いたらいけない。戦場では気を抜いたら負けだ、しっかりしないと。
「おや、流石ですね。少しは気を抜いてくれるかと思ったんですが。ではもう少し激しく行きましょうか」
そうして互いにもう一度剣で切り合おうとすると、パチパチと拍手を鳴らしながら一人の乱入者が現れた。
「いやぁ実に素晴らしい!流石、私の甥だな。剣の才能があるとは恐れ入った」
そうして訓練場に入ってきたのは俺の叔父にあたる―――
「こんにちは。グレム叔父様」
―――グレム・レイブランドであった。
「剣の才能があるとおっしゃいましたが私は全然ですよ?」
「ハハハ何をいうか!十歳にして剣聖と互角に渡り合う。これを剣の才能以外でなんというのだ?」
めんどくさいのに絡まれた。
グリム叔父様は父様とは違い戦争を肯定している。
このせいでよく政治の席では父様と口論をしていた。
父様からもグリム叔父様の前で力を使うなと言われていた。
軍事利用されるのを防ぎたいのだろう。
「この力があれば戦場で百人は鏖殺できそうだな!ハハハハハハ!」
「グレム様、それはいけません。戦争法にも未成年の子供を戦地へと赴かさてはならないと明記されております」
バーナさんが俺の前に庇うように立ち口を開けた。
「フッ、バーナか。そんな法などあってないようなものだ。どの国も守っちゃおらん」
「だとしても!他の国が守っていないから我々も守らなくていいということにはなりません!」
「なんだと?!貴様、誰に向かって口を―――いや、いい。聞かなかったことにする」
それよりも、とグリム叔父様は俺の前まで来て手を差し出した。
「アルデウス・レイブランド。お前の父、リグナード・レイブランドをどう思う?」
グリム叔父様は俺の目を見据えて問いかけてきた。
俺はその問いかけに考えるまでもなく―――
「好きです。父様も母様も、もちろん叔父様も、この国にいる皆が好きです!」
その答えを聞くとグリム叔父様はニコッと笑い俺達に背を向けて歩き出した。
「驚きました、グリム様があんな笑顔を浮かべるなんて。甥の前では絆されるんでしょうね」
「そう、ですね」
俺はあの笑顔を前世で見たことがある。
そう、悪質な顧客と対応したとき相手が見せてきた偽りの笑顔。あれとよく似ている。
すぐにでも対処したいが証拠がない。
今は注意しておくのが限界か。
「折角ですから、今日はもう終わりにしましょうか」
「そうですね。本日もありがとうございました、バーナさん」
「お疲れ様でした。では、私はこれで」
そうしてバーナさんは訓練場を出ていった。
「もう少しだけ鍛錬しとくか」
俺は結局そこから二時間ほど訓練を続け、部屋に戻ったのは夕食前ギリギリだった。
―――あぁ今思えば、このとき殺していたらまた違う人生だったのかもな―――
✱ ✱ ✱ ✱ ✱
走った。
炎を避けるように、ただ確かに玉座の間へと向かうように走った。
数時間前までは美しかったはずの城下町が、城が、炎に包まれ、あちこちから血の匂いが立ち込めていた。
玉座の間までの道中にはこの十年間笑いあった者たちの死体があった。
十や百なんてものじゃない。数万の人達の死体があった。
そのすべてが残虐に斬られ、射たれ、犯され殺されていた。
俺が走るのを止めようとしてきた者達、いや害虫がいた。
容赦なく殺した。
殺された者たちの仇を取るためにより苦しめて殺した。
魔術を剣術を、俺の持つ全ての力を使って殺した。
そして、どのくらい走ったのか分からないぐらいのときに玉座の間にたどり着いた。
ふと、辺りを見渡せばこちらまで炎は来ていなかった。
だが俺が通ってきた道は血で塗られていた。
俺の服も返り血で赤く染まっている。
だがそんなこと関係無しに俺は、玉座の間の扉を開けた。
――――――――――――
―――――――――
――――――
―――
―――数時間前
俺は隣国のソレイド王国にいた。
父様からの頼みでソレイド王国の国王生誕祭に代わりに出席していたのだ。
「いやぁ実につまらん」
ソレイド王国の王宮のベランダでパーティーから抜け出していた俺はそう呟いた。
「そうおっしゃらないでください。これも外交です」
そう答えたのは今回、俺についてきてくれたバーナさんだった。
「バーナさんはこういうの慣れてるの?」
「そうですね。リグナード様と何度も経験しましたから」
そう言うと彼はどこか遠い目をして口を開いた。
「あぁでもリグナード様、最初の頃はお世辞どころか建前も使えずよく問題を起こされていましたね。あのときは大変だった。ハハハ」
目が死んでて怖いです、バーナさん。
「うちの父様がすいません」
「いえいえ、お気になさらず。ハハハ」
そんな冗談を言い合っていると、ベランダの扉が開き小太りで豪華な衣装を身にまとった―――ソレイド王国の王、オルベル・ソレイドが入ってきた。
俺はすぐさま立ち上がり右手を左肩に載せ礼をした。
「これは、オルベル王。この度はおめでとうございます。私は―――
「よい、知っている。アルデウス・レイブランドだろう。表をあげよ。そちらの護衛もだ」
そうして俺は顔を上げる。
すると、オルベル王は二つの盃を渡してきた。
「めでたい日だからな。儂と乾杯しようではないか?そちらの護衛も一杯どうだ?」
「失礼ながら、アルデウス様はまだ未成年ですから乾杯は私、バーナがさせていただきます」
そう言うとバーナさんはオルベル王から盃を受け取った。
「そうか、では我が国ソレイド王国とレイブランド王国のこれからを祝して、乾杯」
そうしてバーナさんとオルベル王は盃を呷った。
するとオルベル王が、そうだそうだ、といいながら口を開いた。
「お主の叔父に伝えておいてくれ」
「叔父にですか?」
「そうじゃ。これで貸し借りはなしじゃと」
「え?それは一体どういう―――
バタッと俺の後ろで倒れる音がした。
振り返ってみれば、バーナさんが口から血を出しながら倒れていた。
「バーナさん!!!」
俺はすぐさま駆け寄り治癒魔術を施す。
だが、癒えない。
「毒じゃ。それも赤竜ですら数分で死亡する強力なもの、解毒薬はない」
そういったのはほかでもない、オルベルだった。
毒?それなら解毒魔術を―――
使えない。俺は、解毒魔術は習得してない。
俺は何もできない。
「ゴフッ、、、お逃げ、、、ください。ハァハァ、、、アルデウス、、、さま、、、」
その言葉を最後にバーナさんは息を引き取った。
「バーナさん?起きてくださいバーナさん。起きてください、ダメだ、起きろよ、、、起きろよ!!!バーナ!!!」
俺の悲痛な叫びが響き渡る。
「我が衛兵よ!アルデウス・レイブランドを捕縛せよ!!」
オルベルの号令とともにベランダから衛兵がぞろぞろと出てきた。
明らかに待機していたスピードできたことからこの事態がオルベルの仕業であるのだと理解した。
「どうして、こんなことを」
俺が問いかけるとオルベルは俺を見据えながら答えた。
「政治じゃ。子供には分かるまい」
そうか、、、そうだった。
ここは異世界なんだ。
前世の常識なんてものは通用しない。あの平和な国だったからこそ特別に通用しただけだ。
政敵ならば容赦なく暗殺する。
自分に不都合なら殺す。
そんな弱肉強食の世界なんだ、ここは。
「気をつけよ、コヤツは子供じゃがアヤツの話じゃと剣聖にひけをとらない実力を持っているようじゃ。心してかかれ」
俺はゆっくりと立ち上がり、右手を突き出した。
「そうかよ、、、じゃあ、死ねよ」
俺は火系統上級魔術『
―――元気で優しい子に育て。ただ一つ優しい心を持つのだぞ―――
父様の言葉が頭をよぎる。
「ぐっ!!」
俺は魔術を中断し、右手をおろした。
代わりに俺は『
しかし、こいつらの目の前で転移魔術を使うのは不安だ。しかしバーナの遺体を持って帰るにはそうするしかない。
俺は―――
「何をしている衛兵!即刻捕ら―――
「すまない、バーナ。今までありがとう」
俺はそう言うと、ベランダから飛び降りた。
「な?!この高さから?!死ぬ気か?!」
そんな声が聞こえた気がするがもうどうでもいい。
俺は目をつぶり転移魔術を唱えた。
「『
そうして俺の視界は真っ白に染まった。
そして次に俺の目に写ったのは地獄だった。
――――――――――――
―――――――――
――――――
―――
―――そして現在
俺は玉座の間の前にいた。
ここまで沢山の人の遺体があった。
大人も子供も関係なく酷い死に方で死んだことが分かる遺体だった。
嫌な予感が頭をよぎる。
もう父様も、母様も死んでしまったのじゃないかと。
動悸が激しくなる。
心臓の音がバクバクと響いてうるさい。
俺は、ゴクリと唾を飲み込み扉を開ける。
扉の先には父様がいた。
たくさんの槍に刺され生き地獄を味わっていた父様がいた。
「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙!!!!父様ぁ!!!」
俺は駆け出した。
無我夢中で走って駆け寄った。
「今、今、治しますから!絶対に治しますから!」
俺は上級治癒魔術『シャインヒーリング』を施す。
頭では分かっていた。上級治癒魔術じゃ欠損部位の再生は、父様の治癒はできない。
「治れ!!治れよ!!治れよぉぉ!!!」
すると俺の腕がガシッと父様に掴まれる。
「父様!!大丈夫です!今、俺が治しますから。だから安心し―――
「よせ、、、ハァハァ、、、自分の体だ、、、治らないのは分かってる」
掴んできた父様の腕はとても弱々しい。
「俺が、、、俺が転生したせいで、、、」
転生、と父様が言葉をこぼし気づく、口を滑らせたと。
「あ、い、今のは―――
「よい、、、隠さなくとも、、、」
「―――え?」
「つまりお前は、、、生まれ変わった、、、そういう、、、ことだろう?」
喉が詰まる。
秘密を知られた。
一番知られたくない人に。一番知られてほしくないときに。
「、、、ッッ゙!!、、、、、、はい。、、、、、俺は―――前の人生の記憶があります」
言ってしまった。
――――――顔を見るのが怖い。
――――――軽蔑されるのが怖い。
――――――罵られるのが怖い。
そして何より―――愛されなくなるのが怖い。
「顔を見せよ、、、アルデウス、、、」
恐る恐る顔を上げると―――そこには優しい顔をした父様がいた。
「そうか、、、私達は、、、素晴らしい子を、、、授かったのだな、、、」
その顔は、本当に幸せそうで、とても満足しているようだった。
「恐ろしくは、、、気味が悪くないのですか?、、、」
「恐ろしい?気味が悪い?、、、ハハハ、自分の子供をそのように思う親がどこにいる?」
すると父様は俺の頭に手をのせた。
すでに体を動かす力もないだろうに、それでも父様は必要なことのようにやっている。
「確かに、お前には前の人生の記憶があるのかもしれない。だが、私達の子供であることに変わりはない。それは例えお前が次の人生を歩もうともだ」
優しく、諭すように俺に語りかける。
「私は、、、何も父親らしいことは、、、できなかった、、、だから、これは私がお前に送る最後の言葉だ」
父様は満足した笑顔を見せ口を開け、告げた。
「
今までの生き方を見ていた父様からは考えられない言葉がでてきた。
「復讐に、憎悪に囚われるな。私達の死は、お前のせいじゃない。優しくあれと願ったが、それよりも私はお前が幸せであることの方が、嬉しいのだ」
父様の言葉が俺の心に刺さる。とても、とても深く。
「アルデウス、我が自慢の息子よ。十歳の誕生日おめでとう。私達の元に生まれてきてくれてありがとう」
その言葉を言い終わると父様の手が俺の頭から落ちる。
「とう、、さま?、、、」
父様の体から止まらないほどに流れ出る血。
痛々しく刺さっている無数の槍。
そして、、、満足した表情をした顔。
理解した。理解してしまった。
俺を、転生者の俺を、転生者と知りながらも愛してくれた父様は、、、もうこの世にはいない。
「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙!!!!」
慟哭が炎に包まれた城内に虚しく響き渡った。
――――――――――――
―――――――――
――――――
―――
一体どのくらい経ったのか、気づけば玉座の間に炎が迫っていた。
俺はただ、父様の亡骸を抱きかかえていた。
――――――あぁ、母様を探しに行かないと。
ふと、母様のことを思い出す。まだ、見つかってない母のことを。
俺は父様の亡骸を土魔術で包み込み炎が来ていなかった中庭へと転移させ、その場を離れた。
俺は母様の自室へと向かっていた。
とっくの前に疲労なんてものは忘れた。ただ俺は走った。
一分も経たないうちに俺は母様の自室にたどり着いた。
どこか嫌な予感がした俺は迷うことなく扉を蹴り飛ばした。
扉は勢いよく吹き飛び、部屋の中があらわになる。
―――何と表現すればいいのだろうか。
あまりにも無惨な光景を見て俺は言葉を失った。
「な、な、なぁぜ貴様がここにいる!!!」
血で赤く染まったベッドには母様がいた。
そして、母様に馬乗りになるようにグリムがいた。
よく見てみるとグリムの右手にはナイフが握られており、血が付着している。
対して母様を見てみれば、母様の顔は何度も殴られたのだろう、痛々しい程の傷がついていた。
「答えろぉ!!何故貴様がここに―――あれ?」
俺はグリムが言葉を言い終える前に中級風魔術『
「ギャァァァァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙!!!!」
耳障りな叫びとともにグリムはベッドから転げ落ちる。
実に気持ち悪い声だ。
俺はグリムを尻目に母様に近づき状態を確認する。
「・・・・・・・・」
なんんとなく分かってはいた。
傍から見ても血を流しすぎていた。
すでに母様は冷たくなっており、つい数時間前まで優しく微笑みかけてくれた人の面影はなくなってしまっていた。
俺は黙って父様と同じように土魔術で母様の亡骸を包み込む。
そして、ゆっくりとグリムに近づく。
グリムは嗚咽混じりに切られた右手をつなげるための詠唱を唱えている。
「させるかよ」
俺は土魔術で剣をつくり、グリムの肺に突き刺した。
「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「うるせぇんだよゴミが!!!!」
俺はグリムの口に足をねじ込む。
グリムは痛みと苦しさのあまりか嗚咽と涙が止まっていない。
「なんでこんなことした?」
グリムが俺の足をどけようともがいている。
「あぁ、そうだな。足あったら喋れないよな」
俺はグリムの口から足を抜く。
するとグリムはゲホッゲホッと咳き込み、俺を睨んだ。
「私を誰と心得る?私はレイブランド王国の王だぞ!!」
俺は何も喋らずただグリムを睨みつける。
「あぁ、理解していないのか。クーデターさ!!私が王になるためのな!!」
「ならば何故、民を、母を殺した?」
レイブランドはヒィッと声を上げたかと思うと早口になり喋りはじめた。
「戦争に消極的な兄上に絆された国民など戦場での肉壁ぐらいにしかならん!!!いや、肉壁の役割を果たせるかすら怪しかった!!!故に殺した!!!」
ハァハァと息切れを起こすグリムを俺は侮蔑の目で見る。
「貴様の母、ミサリアは経産婦にしてはいい女だったからなぁ。私の愛人にしてやると言ったら怒り狂って襲いかかってきた、馬鹿な女だよまった―――ングッ?!」
俺はグリムが言い終わる前にもう一度ヤツの口に足をねじ込んだ。
「最後の言葉は済んだな。じゃあな、クズ。てめぇはすぐに忘れてやる」
グリムが何かいいたそうな顔をするが俺は足を抜き初級水魔術『
プシッ、と音とともにグリムの首が床へと転がる。
断面から溢れた鮮血が部屋に飛び散る。返り血が俺の服につく。
俺は気にすることなくそのまま母様の遺体とともに父様の遺体がある中庭に転移した。
――――――――――――
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――――――
―――
中庭に跳んだ俺は二人を埋める。
埋めている途中何度も思い出す、二人との思い出、二人が俺にやってくれたこと。
二歳の頃に決めた俺の生き方を果たせなかった。
二人を、守りきれなかった。
慢心していた。前世の記憶が、経験が、原作知識があると高をくくっていた。
そのせいで俺は、大切な人たちを失った。
もう何も、何もかもどうでもいい。
気づけば炎がすぐ後ろまで迫っていた。
だが俺は動かない。
そうして俺は炎に包みこまれた。
意識を手放す前、どこからか「見つけた」という声が聞こえた気がした。
いかがだったでしょうか?
本話から願望転生の真の物語が始まっていきます。
一体これからアルデウスには何が待っているのか、これからも読者の皆様といっしょに見ていければと思います。
感想、誤字・脱字報告、評価、いつでもお待ちしております。気軽にやっていただけたら嬉しいです。
これからも願望転生をよろしくお願いいたします!
(アルデウスの十歳の誕生日パーティーはこの翌日に行われる予定でした。)
以下は残酷な描写が苦手な方のための本話のまとめになっています。
時は経ち、十歳になったアルデウスはあれからヒトガミの接触もなく、魔術の研鑽を続け、語学を習得し、剣術を学んでいた。結果、魔術は教本にあったものすべてを無詠唱で出来るようにし転移魔術の方も大きく進歩した。また、国の騎士団長(剣聖)と魔術抜きで互角に戦えるほどに彼の剣術も上達していた。
十歳の誕生日の翌日、彼は騎士団長(バーナ)とともに隣国の王の誕生会に王の代理として出席していた。だがここで悲劇が起きた。バーナが毒を盛られ死んでしまったのだ。犯人は件の隣国の王であった。王の言い草からこの事件の黒幕は自分の叔父(グリム)であることが分かる。アルデウスはすぐに転移し国へと帰還したがすでに国は一面炎の海で民衆も殺されてしまっていた。王城へと急ぎ帰還するも城も炎に包まれておりリグナードは瀕死の状態だった。
リグナードは治せないほどの傷を負いながらも最後にアルデウスに言葉を送った。「好きに生きよ」と。その後、ミサリアを探しに行くもミサリアはすでにグリムによって殺されていた。グリムが言うにはこれは王位を簒奪するためのクーデターのようだった。そしてアルデウスはその手で仇たるグリムを殺した。
その後遺体となった二人を中庭に埋め、迫ってきた炎に包みこまれてしまった。
だが、意識が無くなる直前どこからか「見つけた」という声が聞こえたようだ。
以上です。