願望転生〜無職転生の世界に転生したかったんです!!〜   作:大戦士

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8話 いざ、横断

夢から覚めた。

その認識と同時に体全体に痛みが広がる。

 

さっきのアレックスの奥義によるものだろう。

だが生きているだけ儲けものだ。

 

そんな事を考え俺はまぶたを開ける。

突然たくさんの光が目に入ったからだろう、視界がぼやけている。

 

次第に目が慣れてきた。

そして俺の目に写ったのは―――

 

「やぁ。目が覚めたようですね」

 

キス間近まで迫っていたアレックスの顔だった。

 

「ウワァァァァァァ!!!!」

 

俺はすぐさま飛び退く。

そして目覚めたばかりの頭をフルに使い考える

 

――――――え?なんで俺、アレックスに膝枕されてたの?

 

「酷いじゃないですか。命の恩人にそんな態度は」

 

「命の恩人だって?!そもそも斬り掛かってきたのお前じゃねぇか!!」

 

あ、バレた、といった表情をアレックスは浮かべる。

 

「てかなんでお前が膝枕してんだよ?!」

 

「結構珍しいですよ?北神に膝枕される人は」

 

そりゃそうだろう。

 

体を見てみれば包帯が巻かれている。

俺が持ってきた物の中に包帯とかはなかったからアレックスのものだろう。

 

「なんで助けた?」

 

俺がそう問いかけるとアレックスは笑顔を浮かべ大きな声で宣言するように答えた。

 

「君に、私の弟子になってほしいからですよ!!!」

 

予想通りの返答が返ってくる。

ヒトガミから聞いていたとはいえ、改めてこうして言われると少しだけ北神に迫れた気がして感慨深い。

 

だが―――

 

「なぁ、仮にだが俺があんたのお眼鏡に叶わなかったらどうしてた?」

 

「ん?おかしいことを聞きますね。もちろん殺してたに決まってるじゃないですか」

 

当たり前だろ?といったようにアレックスは言う。

背中に冷や汗が流れる。

あと少し鍛錬を怠っていたら、機転を利かせられなかったら。そう思うと今更だが怖くなってきた。

 

だが俺は今生きている。

それが結果だ。

 

「分かりました。俺からもお願いします。俺をあなたの弟子にしてください。アレックス師匠」

 

そう言うと、アレックスの顔がパァっと明るくなった。

 

「よし分かりました!君は今日から私の弟子です!!君に私が知る北神流のすべてを教えてあげましょう」

 

こうして俺はアレックスの、二代目北神の弟子になった。

 

 

――――――――――――

―――――――――

――――――

―――

 

 

晴れて師弟関係となった俺達は赤竜山脈を目指していた。

 

「いやぁ、まさか初めての弟子が赤竜山脈を横断したいと言い出すなんて」

 

道すがらアレックスはそう言葉をこぼした。

 

「無駄口を叩く暇があれば歩いてください」

 

「君、師匠に対する態度じゃないですよね?!」]

 

アレックスが毒を吐く俺に文句を言う。

それはそうだろう。一応敬語は使うが正直、敬おうなんて気持ちは湧いてこない。

 

「それはそうと師匠。俺には北神流の何を教えてくれるんですか?」

 

「それはそうと、って。まぁいいです。私が君に教えるのは『不治瑕北神流』、その全てです」

 

予想はしていたが驚いた。

まさか、本当にそれを、その全てを教えてくれるとは。

俺には願ったり叶ったりだが―――

 

「いいんですか、教えても?」

 

「いいんですよ。別に門外不出ってわけじゃないですから」

 

それに、とアレックスは言葉を続ける。

 

「―――君なら、教えてもいいと思ったんです」

 

北神の言葉。

そう理解するだけで何も無いはずの肩に重りがのしかかってきたような錯覚を覚える。

 

期待されてる。

父様を亡くしてからすでに一週間は経っていた。

もう二度と誰かから期待されることはないのだろうなと思っていた矢先にこれだ。

どうにも込み上げてくるものがある。

 

だがきっと、俺が教えられたことを欲望の赴くままに使うと分かったら―――

よそう、それを今考えるのは。

 

「ん?少し騒がしくなってきましたね」

 

言われてみれば確かにどこからか咆哮のようなものが聞こえてくる。

 

「赤竜、でしょうか?」

 

俺がそう問いかけるとアレックスは頷く。

 

「でしょうね。もうこの辺りは赤竜山脈に面してる、つまり赤竜の縄張りです。いつ出会ってもおかしくない」

 

「では、ここからは常に警戒を―――

 

グオォォォォォォォ!!!

 

俺の言葉を遮るように大きな咆哮が響き渡る。

咆哮の先を見てみれば赤竜がこちらに近づいている。

 

いや、ただの赤竜ではない。

明らかにサイズが異常だ。デカすぎる。相当離れているここからでさえも異質だということを理解できる。

 

(おいおい、なんだあの赤竜!?原作にいたか!?)

 

心のなかでそう叫んでいると、隣りにいたアレックスが迫りくる異質の赤竜を見て言葉をこぼす。

 

「群れのボスでしょうか?周りに群れがいないことを考えると私達は赤竜から見ても強い存在だということみたいですね」

 

「言ってる場合ですか!?」

 

流石にあの巨体に対して有効打になる攻撃方法を俺は持っていない。

転移魔術で逃げようにもどのみち横断するのであれば避けられない障害。つまり、戦う選択肢しかない。

え?詰み?

 

するとアレックスは赤竜を見据えながら歩き出した。

歩きながら彼は背中にある王竜剣()()()()腰に差してあった金属の棒を抜いた。

 

「いいですか?私の一番弟子。今から見せるのがあなたに教えるものの奥義です」

 

そう言うとアレックスは俺より少し離れたところで立ち止まり、棒を構えた。

その構えを俺は身にしみて覚えている。いや、忘れるほうが難しいか。

 

アレックスは迫りくる赤竜を気にもとめず、深呼吸をした。

 

「右手に剣を」

 

「左手に剣を」

 

「両の腕で齎さん、有りと有る命を失わせ、一意の死を齎さん」

 

赤竜がアレックスの目の前まで迫った瞬間――――――

 

「不治瑕北神流奥義―――『破断』!!!!」

 

アレックスが棒を振り下ろすのと同時にアレックスの前方が凄まじい事になった。

おびただしい量の砂煙が舞い、後ろにいるはずのこちらにも凄まじい風圧が来ている。

 

少ししたあと目の前に広がったのは、巨大な赤竜の死体が何も無い大地に横たわっている景色だけだった。

 

 

◇   ◆   ◇   ◆   ◇

 

 

 

「やっぱり、ですか」

 

私は『破断』を発動した後を見る。

目の前には巨大な赤竜の死体、そして『破断』の影響により更地のようになった大地。

 

その光景を見て私は理解した。私は―――驕っていたのだと。

私自身、赤竜の死体ぐらいなら骨も残らないと思っていた。

だが結果は違っていた。赤竜を絶命させることはできてもその死体を消し飛ばすことなんてできなかった。

 

いや、王竜剣を使えばできたのだろう。

そうだ。使えばできた。使わなければできなかった。

私はいつの間にか王竜剣の力すら自分の力だと思っていた。

 

仮に、王竜剣を使わずに一番弟子、アルデウスと戦ったらどうなる。

あぁ、分かってる。きっと負ける可能性がある。

北神流を修め、最上位の神級の称号を手に入れたにも関わらず、まだ未熟のそれも十歳の子供に負けるのだ。

北神が聞いて呆れる。

 

ふと、後ろにいる一番弟子を見れば私の先程の一撃を分析していた。

その姿はどこか可愛らしく故郷にいる息子を思い出す。

 

そういえばアレクは元気だろうか。

幼いながら剣の才能を持っていると分かる。あぁ、ならば王竜剣を譲ってもいいかもしれない。

私も、まだまだ修行が足りなかったようだし。

アルデウスの目的地だというアスラ王国に着いたら一度故郷に帰ろう。

うん、そうしよう。

 

 

◇   ◆   ◇   ◆   ◇

 

 

 

アレックスの一撃を見た。

異質なまでに巨大な赤竜を屠るその一撃はおおよそ人間が出していいものではなかった。まぁ、不死魔族だけど。

それでもアレックスは言っていた。これを俺に教えると。つまり、俺にこの威力のものを放てと。

え?俺に人間をやめろと?

 

「どうですか?私の一撃を見て」

 

アレックスが赤竜の死骸を無視して爽やかな顔で聞いてきた。

 

「、、、言葉がで「そうですよね。やはり、君ならこれ以上の威力を出せますよね」、、、、、What?」

 

おいおいおい。What?

思わず英語が出てきたぞ?

何だよ、これ以上の威力って。俺に人間辞めて世界最強にでもなれって?いや、将来的にはなるけど。

それでもだろ。

 

「君には色々と気付かされました。君を弟子にして今更ながら良かったと思います」

 

いや、勝手に納得されても。

まぁここで聞き返したらそれこそ拗れそうだから合わせるか。

 

「そう言っていただけて良かったです」

 

俺はこの時はまだ、修行の量がこの言葉がきっかけで倍増するのを知らなかったのであった。

 

「では、行きましょうか。アスラ王国へ」

 

「はい、師匠」

 

そうして俺達は赤竜山脈の横断へと踏み入るのだった。

 

 

――――――――――――

―――――――――

――――――

―――

 

 

 

赤竜山脈に入山してから一週間が経った。

 

結論から言おう。

俺達は三日間、洞穴に隠れています。

 

当初は思っていましたよ。簡単なことだって。

なんだってこっちには北神がいるんだもの。

 

でも現実は非情でした。

 

俺は傍らにいる師匠たる北神に声を掛ける。

 

「アレックス師匠?本気で一切手を貸さないつもりですか?」

 

「えぇ。私は貴方に稽古をつけ、不治瑕北神流を教えますがこの横断に関しては一切手を貸しません」

 

入山してから早々に俺は同じことを言われた。

横断には一切手を貸さないと。俺は自力でこの横断を達成しないといけない。

 

入山して感じたことは今の俺の実力なら横断自体は容易いだろうということだ。

赤竜も倒すこと自体は出来るし、何だったら転移魔術を連続で使って強制的に横断するのだって可能だろう。

 

だが、今の俺は剣術しか使えない。剣術以外は使うなと言われている。

故に大量の赤竜たちから逃げ回り、体力を癒やすために一週間も先に進めていない。

 

加えてすでに知識としては不治瑕北神流を教えられている。

すでに使うための土台は仕上がっているというので俺はひたすらに赤竜相手に戦っている。

 

アレックスとの戦いで使えた『光の太刀』もあれ以来使えていない。

いや、それっぽいものは使える。

ただあの時のような破壊力はない。

 

いったい何故?

何度も考えても答えは出ない。

それよりも現状の方を考えてしまう。

 

「あぁ、面倒くさい。ちょっともう一度戦ってきます」

 

俺は立ち上がり、そう告げると洞穴を出る。

 

外に出れば険しい岩が成り立っている。

そして―――

 

「「「「「「グルルルルルルルルルルルルルルルルル」」」」」」

 

大量の赤竜。

 

俺は背中にある剣を抜く。

そして駆け出す。強さを求めるために。

 

 

 

 

 

 

「ハァ、ハァ、ハァ」

 

息があがる。一体何体の赤竜を葬ったか。

数える暇もない。

 

ふと、自分が歩いてきたあとを見る。

見渡す限り、赤竜の死体。

大きさもバラバラ。

この赤竜たちにとっては俺は俺が憎んだあのクズと同じに見えただろう。

普通に暮らしていたのに突如現れた俺によって命を奪われた。

別に同情しているわけじゃない。同情する気もない。俺はもう決めた。俺自身の幸せのために他者を踏みにじることを。

ただ――――――吐き気がしてくるだけだ。

 

「そろそろ戻るか―――

 

瞬間、言い表しようのない悪寒が体に広がる。

思わず前へと飛び出した次の瞬間、俺の居たところに何かが落ちてきた。

 

「おいおいマジか、、、」

 

言葉を失った。

 

俺の目の前にいたのは、一週間前に師匠が倒した赤竜と瓜二つの巨竜だった。

 

赤竜が口を開けブレスを放とうとする。

俺はすぐさま横へ飛び退く。

だが―――

 

グアァァァァァァァ!!!!!!!!!

 

痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い

 

足を焼かれた。それだけでこの痛み。

いや、思えばこの世界に転生してから明らかに大きい怪我というものを受けてこなかった。

 

クソが。すぐさま治癒魔術で治さないと。転移を―――

 

転移を。転移。逃げる?

いつから俺はそんな臆病者へと成り下がった?

ここで逃げたら世界最強に届くわけない。怪我がどうした。こんな蜥蜴ぐらい怪我したまま倒さなきゃダメだろう。

やってやるさ。このクソ蜥蜴を剣術だけで。

 

走り出す。

足の痛みを無視して、剣を振る。

 

剣があまりにも硬い鱗に弾かれる。

俺に向かってくるあらゆる攻撃を水神流で受け流す。

尻尾の薙ぎ払い。鋭利な爪による攻撃。大きな牙による噛みつき。

どの攻撃も重く巨体から出てきているとは思えないほど素早い。

一瞬の隙を見つければ『光の太刀』を放つ。

だが、鱗に傷が付く程度。

血は流せられない。

 

「ッ!?―――グハッ!?」

 

『光の太刀』を放った直後の一瞬の硬直を狙われ、尻尾による薙ぎ払いをモロに食らってしまい後ろへと吹っ飛ぶ。

 

血が口から垂れ落ちる。

背中を強打したせいだろう、力がうまく体に入らない。

 

グルルルルルル!!!

 

ジリジリと追い詰められる。

死の恐怖が俺を襲う。

 

剣を構え直す。

ここから立て直すにはどうしたらいいのか。思考する。

思考すればするほど、俺の剣術の力量じゃ無理だと分かる。

それでも、剣を構えるのはやめない。

死にたくない。死んでたまるものか。奇跡的にこの世界へと転生できた。

この軌跡をみすみす手放してなるものか。

前世見たアニメの言葉に『追い詰められれば追い詰められるほど強くなる』というものがあった。

ハハハ、実に今の俺にぴったりじゃないか。

いや、よくよく思えばここ最近こんなんばっかの気もするが。

 

俺は剣を両手でしっかりと握る。

成功したことは一回もない。けど何故か今なら成功する気がしてならない。

だから―――やるのだ。

 

深呼吸をする。そして言葉を紡ぐ。

 

「右手に剣を」

 

「左手に剣を」

 

「両の腕で齎さん、有りと有る命を失わせ、一意の死を齎さん」

 

体が熱くなっていく。

 

あぁ、これが―――

 

「不治瑕北神流奥義―――『破断』!!!!!」

 

そうして、赤竜の巨体はこの世から消え失せ、赤竜山脈の一角が消し飛んだ。

 

「、、、、、、、やった。、、、、やってやった!!!!!」

 

「お見事です」

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

 

「びっくりしました。驚かさないでください」

 

声がした方を見ればアレックスが立っていた。

 

「え?いつから?」

 

「貴方が赤竜に吹き飛ばされたときからです」

 

結構前じゃん。

 

「にしても、やはり。貴方はすごいですね」

 

「何がですか?」

 

「なっ、、、我が弟子ながら些か苛つきますね。自分で考えてください」

 

おい。

 

「ですが、おめでとう御座います。不治瑕北神流は習得できましたね」

 

「はい。これで、横断が「では次は習得したものを極めましょうか」、、、へ?」

 

今この人なんて?

 

「横断させてくれないんですか?」

 

「えぇ。させませんよ?」

 

俺に、赤竜山脈の横断の許可が出るのはこの日から二年後のことだった。




いかがだったでしょうか?
今まで前書きを書いていたのですが自分でもちょっと読みにくいと思ったので本話から後書きに全部書きます。
取れていた長期休暇がなくなったので投稿頻度は以前より落ちるかと思います。
願望転生を楽しみに待っていただいている皆様には大変ご迷惑をおかけします。

皆様のお陰でUAが9000件を超えました!!!!
本当にありがとうございま―――す!!!
これからもどうぞ願望転生をよろしくお願いします!
感想、誤字・脱字報告、評価いつでもお待ちしております!!
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