願望転生〜無職転生の世界に転生したかったんです!!〜   作:大戦士

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9話 別れと出会い

二年。

長く、また短くも感じた期間だった。

北神から直々に北神流を学び、赤竜を薙ぎ倒し、山脈を横断した。

横断した後、ミルボッツ領を通ったが、ミルボッツ領にいたこの数日が少ない癒やしだった。

正直、思い出したくもない日々だ。

当たり前だろう。鍛錬という名目で何度もアレックスに斬られたのだから。

その後すぐに自分で治癒しろとかイカれてんだろう。何だよ、「生きてるじゃないですか」って。

えぇ、結果は生きてましたよ。結果はね。

 

かくして俺は今、アスラ王国首都の東門前にいる。

基本のルートではないからだろう。人の往来は比較的少ない。だがそれは正門と比べてだ。

前世の新宿の駅前ほどには人がいる。

 

「驚きました、首都ってこんなに人がいるんですね。シャンドル師匠」

 

「えぇ特にアスラ王国の首都は人が多いですから」

 

シャンドル・フォン・グランドール。

アレックスがミルボッツ領に入るときにつけた偽名。

まさか原作の偽名がここで出てくるとはとあの時は驚いた。

だが、直に聞くと深く思う。偽名の割に派手すぎない?、と。

 

「さてと、俺達も入りましょうか」

 

俺がそう言うと、アレックスはどこか悲しそうな顔をしながら頭を横に振った。

 

「いいえ、ここでお別れです。アルデウス」

 

「……はい?」

 

今何て言った?

お別れ?ここで?

 

――――――いや、妥当なのかもしれない。

 

混乱していたはずの思考が一気に鮮明になった。

この技術もこの二年で身についた。

 

そもそもの話、アレックスが俺を鍛えたのは不治瑕北神流を教えるためだ。決して俺の目的に協力してくれているわけじゃない。

いつの間にか俺はこれからもアレックスが一緒にいてくれるものだとばかり思っていた。

 

「そう、ですか。分かりました、師匠。今までお世話になりました」

 

おもわずこの二年間を思い出す。

思い出したくもない二年間を。

過酷な日々の合間にあった思い出。

アレックスが料理を振る舞ってくれた。アレックスと子供のように馬鹿騒ぎした。アレックスに自慢の弟子と言われた。

何気ない一幕にも関わらず目頭が熱くなる。

 

「どうしたんですか?今にも泣き出しそうな顔をして」

 

「泣き出しそうなんですよ!!………本当に今までありがとうございました」

 

感謝を伝える。感謝しかない。

 

「……………ハハハ、なんとも弟子との別れというのはくるものがありますね」

 

静寂がその場を包む。あたりの喧騒など最早関係ない。

その静寂を最初に破ったのはアレックスだった。

 

「アルデウス・レイブランド。私の一番弟子よ」

 

「……………はい」

 

「貴方に今日から『北帝』を名乗ることを許します。今までよく頑張りましたね」

 

『北帝』。

北神流の位で上から二番目に位置する。北神のひとつ下。つまり、北神に次ぐ強者の証。

 

「俺が、、、『北帝』?『北聖』にもなっていないのに?」

 

そう。基本的に『北帝』の称号を手に入れるにはそれより下の『北聖』、『北王』という順番で称号を上げていかないといけないのだ。

 

「えぇ。……実を言うと忘れてたんですよね。貴方に称号授けるの」

 

「それは、、、なんというか。貴方らしい、、、ですね」

 

「では、私はこれで。『北帝』アルデウス。貴方のこれからの人生が順調なものになるよう陰ながら祈っています」

 

そう言うと、アレックスは背を見せ歩き出した。

 

俺はその背中へと言葉をかける。

この世界で出会った恩人へ。二度と伝えられなくなる前に。

 

師匠!!!!!!今まで本当にありがとうございました!!!!また、どこかで!!!!

 

アレックスは片手を上げ、去っていった。

 

 

 

――――――――――――

―――――――――

――――――

―――

 

 

 

真っ白な空間。

体は生まれた直後のまま。

目の前には真っ白なモノがいる。

 

「二年ぶりだな、ヒトガミ」

 

「あぁ。二年ぶりだね、僕の使徒」

 

そうして俺達は二年ぶりの再会を果たした。

 

「君、この二年間僕に、一度も接触図らなかったよね。僕はとても悲しいよ」

 

ヒトガミは両手で顔を覆い泣くふりをする。

 

「図ってどうなる?修行にお前の関与があっても特に何も変化ないだろう?」

 

「いやぁ。変化はあるよ。てか、手伝ったし」

 

「は?いつだよ?お前が関与できた機会なんて何もなかったぞ」

 

そうだ。思い返してみても修行の間特に人と関わらなかったし。それこそ赤竜達と戯れ―――あ。

 

「まさか、あのデケェ赤竜お前の仕業?」

 

「大・正・解!!!」

 

今でもはっきり覚えてる。入山して一週間目に出会った巨竜。俺が不治瑕北神流を習得するキッカケになったやつだ。

 

「おいおい。俺死にかけたんだけど?俺達の契約はどうなってんだよ」

 

「死ぬことはなかったよ。近くにアレックスも待機していたしね」

 

確かにこいつの言ってることは間違いない。あの時アレックスは近くにいた。なるほどな、俺はまんまとこいつの策に乗ってたわけか。

 

「まぁ、そんなこんなで僕は人知れず君の役に立っていたのだよ」

 

「はぁ、納得しといてやるよ。それで、今回の呼び出しの目的は?」

 

「君から助言をもらいたい」

 

「は?俺がお前に?助言?」

 

「そうだよ」

 

まさかヒトガミから助言を乞われるとは。

何だ?何か異常が起きているのか?

万が一、原作に影響が出るものだったら芋づる式に原作が崩壊する可能性が高い。

 

「あぁ、別に何か不測の事態が起きたわけじゃないんだ。君が未来の知識があるならこれからの盤面を少しでも有利にできたらなと思ってね」

 

「なるほどな。ただ俺もこの時代についてはそんなに知らないからな、、、、、、」

 

(甲龍歴362年。原作開始まで45年。この間にやっとくべきことか、、、)

 

前世の記憶を頑張って思い出す。一体どうすればヒトガミ陣営を勝利に導けるのか。

 

そうして数分思考した俺は一つの助言を思いつく。

 

「なら、アスラ王国の王に助言を与え王族にお前のことを信頼するように仕向けてくれ」

 

俺が考えたのはアスラ王国が龍神の配下にならないようにする方法だ。

原作ではアリエル王女が王となりオルステッドに対してものすごい支援をやっていた。

それをなくせたならば未来でヒトガミの勝利の可能性を引き出せるだろう。

アリエル王女の頭がよく回るのは百も承知だ。だが、生まれた環境が原作と違っていたならばどうだ。

上手く行けばアスラ王国をこちらの陣営のものにすることが出来る。

 

それに、アリエル王女はいい。もしできるのなら俺のものにしたい。

俺は好き勝手に生きるのだ。ハーレムの制作も今から手を出しておこう。

 

「君、今もの凄く悪い顔をしているの分かってる?でもまぁ、助言を素直に聞くよ。君もこれからアスラに滞在するなら頻繁に連絡するかもだからよろしくね」

 

「分かった、いつでも連絡してくれ。さて、俺への助言はないのか?」

 

「もちろんあるとも」

 

そう言うとヒトガミはコホンと、咳払いをした。

そして右手の人差し指を立て口を開けた。

 

「では、僕の使徒。アルデウスよ。水神流の本拠地へと向かいなさい。道中は裏道を通るのです。迷っても構いません。さすれば、君の願いと僕の目的の両方が満たされるでしょう しょう しょう……」

 

そのお告げを最後に俺は意識を落とした。

 

 

――――――――――――

―――――――――

――――――

―――

 

 

 

俺は今、ヒトガミの言う通りに裏道を通りながら水神流の本拠地へ向かおうとしている。

案の定というべきか、俺は絶賛道に迷っていた。

来たこともない国で裏道を通れなど頭が悪いと言う他ない。まぁ、だがヒトガミは迷ってもいいと言っていたしあいつが無駄なことを俺にしてくることはない。

まとめるなら、俺はただ歩くしかない。

 

そんなことを考えながら歩いているとどこからか声が聞こえてきた。

言い争っているようでとても騒がしい。だが裏道でやっているからだろう、あたりに人の気配はない。ここで何が起こったとしても人には気づかれないだろう。

だが、俺は今これを聞いてしまった。⋯⋯……行くか。

 

俺はそう決断し、声のする方へ向かう。

 

少し歩くと、先程まで正確に聞き取れなかったものが聞き取れるようになり姿を目視できるまで近づいた。

そこには男六名に囲まれている女が一人いた。男は全員が帯剣しており、女の方は丸腰だ。そして全員が道着を着ており水神流の剣士だと分かる。

俺は目視した途端に陰に隠れ状況を見る。

 

「テメェ女のくせに調子乗ってんじゃねぇぞ!!!」

 

最年長と思われる男が女に向かって怒鳴る。それに呼応するように他の男もそうだそうだ、と声を荒げる。

 

「はっ!!お前たちの鍛錬が足りないだけじゃないか!!!」

 

女のほうが反論をする。

なんとなく状況が読めてきた。この男らは女よりも先に水神流をやっていたが遅く始めた女のほうが先に腕を上げたとかだろう。

 

「そういうことじゃねえよ。テメェの日頃の言動が調子乗ってるって言ってんだよ!!!」

 

「私よりも弱いものに敬意を持って接しろとでも言う気か?それを言うならせめて『水帝』になってからにしろ!!!」

 

『水帝』とな。つまり、あの男達の中に最低でも一人『水王』がいるのか。多分あの最年長のような男だろう。

 

すると、周りにいるまだ若い男連中が声を上げた。

 

「テメェも俺達と同じ『水聖』だろうが!!!」

 

「私はもうすぐ『水王』になれると水神様から直々に言われているが?」

 

ほう、これは結構すごい場面のようだ。この場にいる全員が聖級以上とは滅多に遭遇しないだろう。

というかあの女の子、俺と同い年に見えるがもうすぐ『水王』になれるとは。原作キャラの師匠ポジとかかな。

 

「テメェいい加減にしろよ!!!いいぜ、テメェがその態度ならこっちにも考えがある」

 

「ほう、丸腰の女に手を挙げるか。水神流剣士の風上にも置けないな―――

 

女が言い切る前に男全員が剣を抜いた。

 

「なっ!?お前ら本気か!?」

 

女の方も流石に不味いと思ったか少し焦りの表情が出る。

 

「あぁ、本気だ。テメェを痛めつけたら、犯してやるよ。そうすりゃもう道場にも来れねぇだろう!!!」

 

流石に見過ごせない。これは度を超えている。

 

そう判断した俺は陰から飛び出し、腰にある剣に手をかけ男たちに向けて走り出す。

 

「なんだ!?テメェ!?」

 

俺に気づいた男が声を上げ、その場にいる全員が俺を見る。

俺は構わずに剣を振り抜く。

 

「不治瑕北神流『二十重抜刀』!」

 

一息つく間に俺は剣を抜き放ち目の前にいた男六名に斬りかかる。

この技は不治瑕北神流での最速の抜刀術であるが、まだ未熟な俺はアレックスより少し速度が落ちる。

よって『水王』には受け止められるかと思ったが、そんなことは杞憂だった。

 

俺の抜刀を目で追うこともできず、その場にいた六人は斬り伏せられた。

『水王』と思われる男も同様だった。自分の研鑽もせず自分を超えそうなものを潰そうとする程度のものはこんなものかと結論づける。

 

ふぅ、と俺は息をつく。

ふと、女の方を見れば腰を抜かしたのかぺたりと地面に座りこちらを見上げている。

よく見れば彼女はとても整った顔立ちをしており、美人と呼ぶにふさわしいと感じた。

 

俺は彼女に手を出し、片膝をつき、優しく言葉をかける。

 

「お怪我はありませんか?」

 

決まった。

そう思ったね。完全に初恋泥棒じゃない俺?

 

すると、彼女の頬が次第に赤みを帯びていく。そして慌てたように立ち上がり口をパクパクさせた。

俺はその行動を見て堕ちたなと、内心ウキウキになりながらも立ち上がり言葉をかける。

 

「申し遅れました。私は『北帝』アルデウス・レイブランドと申します」

 

自己紹介をすると彼女は驚いた顔をして声を出した。

 

「ほ、北帝?!あ、私はフィアナ・シアンウィザルといいます。よ、よろしくお願いします」

 

先程、男達に見せていた勇猛さはどこに行ったのか今の彼女は完全に年相応の少女のものだった。

彼女は、フィアナはそう言うと地に伏している男たちを指さし、俺に問いかける。

 

「死んでしまったのですか?」

 

「いえ、全員生きています。致命傷は避けましたので今は全員意識を失っているだけです」

 

俺がそう答えると安心したように彼女は胸を撫で下ろす。

 

「良かったです。クズとはいえ水神流の門下生なので貴方が殺したとなると問題になってしまうので」

 

俺はわざわざ知っている情報をわざと知らない風を装ってフィアナに尋ねる。

 

「水神流の。これはすごい偶然だ。実は私も今水神流の道場へと向かっていた途中でして、いつの間にか裏道に迷い込んでしまったようでですね」

 

俺が喋るとフィアナはものすごい前のめりになり俺に返答する。

 

「そうなんですか?!あ、でしたら、お礼もしたいので一緒に行きませんか?」

 

「えぇ、こちらからもお願いします。フィアナさん」

 

「は、はい!頑張ります!」

 

彼女は大きな声で俺に返事を返した。




いかがだったでしょうか?
少し時間を飛ばし、二年後からスタートしました。
賛否両論あるかとは思いますがご容赦ください。ですが本話からアスラ王国へと場面が変わります。これからの展開が一体どうなっていくのか乞うご期待です。

また、皆様のお陰でUAが11000を超えお気に入り件数が250件を超えました。本当にありがとうございます。これからも頑張って書いていきますので皆様ぜひこれからも願望転生をよろしくお願いします!!!
いつでも感想、誤字脱字報告、評価をお待ちしていますのでぜひお気軽にしていただけれな幸いです!

本話も読んでいただきありがとうございます!!!
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