鋼鉄の牙、乙女の幻想   作:竹河参号

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09.戦の終わり

【警告。アンタレス稼働限界、パイロットの緊急脱出シーケンスを開始します】

【コクピット管理システム作動、気密状態を解除。ハッチ開放します】

 

 

 高熱と衝撃でほとんど意識が飛んだ状態で、ハーヴェイはアンタレスのコクピットから強制排出された。浮遊感と下からの風圧でようやく意識を取り戻し、震える指先でライフジャケットを操作し、落下傘を展開することができたのは幸運と言っていい。

 ばさり、と落下傘が開き、内臓がひっくり返るような勢いで減速する。虚脱感に満たされたハーヴェイは、ぶらりと力なく落ちていった。“(スコーピオ)”隊員がこぞって降下してきたのも、どこまで認識できていたことか。

 

 

『隊長!』

『隊長! ご無事ですか!』

 

 

 ハーヴェイは、Z9-5エヴァンスが差し出した手の中にぽとんと墜落した。時間差で落ちてくる落下傘を払い除ける力も残っていない。ぼんやりとしたまま、彼はやっとこさ機械音声を鳴らした。

 

 

『……済まない、諸君。迷惑を、かけた』

『いいえ。隊長がご無事ならば何よりです』

 

 

 ようやく起き上がる力を取り戻したハーヴェイは、エヴァンスのマニピュレータの隙間から、湖へと墜落した愛機に視線を遣った。

 眼下の湖では、アンタレスが沈んだところから、ぼこぼこと湯気が蒸発している。……どんな放熱をしていたのだろうか。アギラル教授が開発予算を横領してまで作り上げた秘密兵器は、こうして使い物にならなくなった。

 

 

『それより、ケイトが待っていますよ。先ほどから通信越しに叫んでいます』

『あとアギラル教授もうるさいです』

『……そうか……迷惑を、かけたな』

 

 

 Z9-4オルグレンとZ9-6カーチスの言葉に、ハーヴェイは力なく返した。つくづく、自分はよき人々に囲まれている。分不相応なほどに。

 

 

『隊長の生存を第一隊“蛇遣い(オピュクス)”へ報告しました。これから迎えに来てくれるそうです。岸辺で待機しましょう』

 

 

 Z9-2ダルシムの言葉に、一同は隊列を組んで降下し始めた。公女が降伏を宣言し、黒騎士の“魔装”も始末された今、これ以上の脅威はないだろう。……そうでなくては困る。

 

 

『Z9-5、今の隊長は生身だ。航行速度に注意しろ』

『Z9-5了解』

 

 

 無防備なハーヴェイのために航行速度を落とし、ゆっくりと岸辺に着地する頃には、“蛇遣い(オピュクス)”の艦船も降りてきていた。

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

「坊ちゃん!!」

 

 

 Z9-3ラッセルの肩を借り、半ば引き摺られるように歩くハーヴェイに、ケイトが真っ先に駆け寄り、強く抱きしめた。

 

 

「……坊ちゃん……! よかった……! ほんとに、よかった……!」

『ごめんね、ケイト。心配をかけた』

「本当っす! あとで教授に文句言います!」

「今でも後でも構わないが、私は聞く気はないよ?」

「ふしゃーッ!!!」

 

 

 安堵と怒りとが入り混じった感涙を流すケイトの後ろから、アギラル教授がけろりとした顔で言った。その言葉に耳を逆立てて唸る様子は、なるほど猫の亜人らしい。

 そんなアギラル教授自身、その顔には安堵が浮かんでいた。

 

 

「とにかく、よく帰ってきてくれた。あんなもので君を喪ってしまったら嫌だからねぇ」

『教授……すみません。ブレードを沈めてきてしまいました。アンタレスも』

「なぁに、引き揚げたら修理するさ。命と違って、機械はいくらでも替えが利く」

 

 

 ハーヴェイの謝罪にも、まるで気にした様子もなく言い返す。アンタレスも特製ブレードも、役目は果たしたのだ。修理ができないのなら、また新しく作り直せばいい。肝心のハーヴェイさえ無事なら、あとは何とでもなる。

 再会の喜びに感動する一同の後ろから、首席隊長モーガンが歩み寄ってきた。

 

 

「Z9-1、“(スコーピオ)”隊長。よくやった」

『首席隊長……ありがとうございます。アギラル教授と、Ms.オリヴィアたちのお陰です』

「疲れているだろう。医務室で容態確認したら、そのまま休め」

『了解しました。……実はもう、立っているのも限界で……』

「そうだろうな。ケイト、連れていってやれ」

「はいっ!」

 

 

 元気よく応答すると、ケイトはすぐさまハーヴェイを抱き上げた。お姫様抱っこならぬご主人様だっこである。

 

 

『わっ。ケイト、重くない?』

「大丈夫です! これでも亜人なんで!」

 

 

 そう言うと、ケイトは主人を抱えたまま一目散に走り出した。つくづく元気のいい使用人である。微笑ましいその光景に、うんうんと頷いたアギラル教授は、流れのままその場を立ち去ろうとした。

 

 

「――それと、アギラル教授」

「ぎくっ」

 

 

 ……が、そうは問屋が卸さなかった。モーガンの低い声に、教授はぎょっと飛び上がりそうになった。

 

 

「予算横領の件は、当主にきっちり報告しておきます。相応の処分が下ることになると思いますので、そのつもりで」

「い――いいじゃァないか! プールした分は余すことなく、全部アレの開発に注ぎ込んだんだよ!? こうして成果を出した分、プラマイゼロというやつじゃないか!」

「そういう問題ではありません!」

「なんだい君たちは算数もできないのかね!?」

「王立研究所に報告してもよろしいのですよ!?」

「それは困る! 玩具を回してもらえなくなるじゃないか!」

「研究資料を玩具呼ばわりしない!」

 

 

 まるで子供を叱りつけるような言い合いに、周囲はやれやれと嘆息するしかなかった。

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

「兄上。ダグラス閣下。“黄道十四宮(ゾディアック)”全艦帰投いたしました」

 

 

 翌日。数を減らした王国艦隊とともに王都に戻り、本邸に帰港した“黄道十四宮(ゾディアック)”の首席隊長モーガンは、当主ダグラスとクリフトンの許へ報告に来た。

 

 

「ご苦労。損害は?」

「被撃墜者二十九名、全員回収済み、重軽傷合わせて五十二名といったところです。現在は“(ケートス)”で損害状況を精査中です」

「……深刻だな。ここまで被害が出たことはなかったな……」

「王国軍本隊よりはましかと」

「聞いている。また相当数が撃墜されたようだな」

「“王家の船”と、バルトファルト総司令のパルトナーも沈没したようです」

 

 

 ここまでは、期待通りといえば期待通り。“黄道十四宮(ゾディアック)”実働部隊の約半数が負傷したという事実は、ダグラスに小さな衝撃を与えたが、そもそもこれほど大きな軍事衝突がなかったというのもある。モーガンの言葉通り、二度にわたる超大型との交戦で、兵士も軍艦も大きく数を減らした王国本隊よりはましだろう。

 “王家の船”とパルトナーの喪失――これは少なくとも、レッドグレイブ家にとってはいいニュースだろう。片や使い手がおらず死蔵されていた船、片や子飼いも同然のリオンの兵力とはいえ、どちらも決して見逃せない脅威たりうる。戦争そのものの趨勢をひっくり返しかねない重大戦力が失われた事実は、()()()()()()()()()()、非常に都合がいい。王国の防人(さきもり)として戦いつつ、レッドグレイブとも手を組んでいるスピアリング家としては難しい立ち位置にあるが、今まで通り内政からは距離を置いておいた方がいいだろう。万一双方が敵対したとしても、その間に周辺諸国からの侵攻を警戒する必要があるのは、どちらの立場でも同じだ。それを名目に、政争から距離を取ることにしよう。

 すなわち、問題はあと一つ。

 

 

「――“ルクシオン”は?」

 

 

 本土上空の決戦に参加せず、しかし“海の守護神”から大陸の裏側を防衛していたルクシオンだ。

 

 

「健在のようです。公国軍の邪魔がなかったとはいえ、単艦で“海の守護神”を凌ぎ続けたとか」

「……まったくもって、恐ろしい代物だな……」

 

 

 フランプトン侯が脅威視したのも頷ける。単体で王国を破壊しうる脅威を、同じく単体で抑え続けたということは――同じ兵力を王国に向ければ、簡単に撃滅できるということだ。それがまさに今回、証明されてしまった。

 最大の問題は、そんな脅威がリオン個人に握られているという点だ。未熟な若造の心持ひとつで、その矛先がどこにでも向き得る以上、王国の安全は彼の良心に懸かっている。軍事力の管理としてはおよそ最悪の状況と言っていい。

 様々な不安要素を抱えた未来を憂いながら、クリフトンは重い口を開いた。

 

 

「……これから、どうなるでしょうね」

「まず、フランプトン派の粛清は避けられないだろう。頭数だけは立派な連中だ、大量粛清は避けられんだろうな」

 

 

 それに、ユリウスとアンジェリカの婚約破棄を巡って、レッドグレイブ派から離反していた家系も多い。同家としては徹底的に叩きたいところだろう。王宮としても、目障りなだけの風見鶏は処分しておきたい。ついでに、他国から侵攻され防衛戦に駆り出されていた領主貴族への報償を考えると、()()()は少ないに限る。

 

 

「公国はどうなりますかな」

「……どうだろうな。本来ならばこのまま侵攻し、領土制圧を考えたいところだが――」

「その余裕はないでしょうね。まだ周辺国との戦闘は続いています。公国侵攻に兵力を割く余裕はない」

「その公国自身が、最も深刻な被害を受けたのは、不幸中の幸いと言ったところか」

 

 

 国力を鑑みれば、公国自身が国家存亡の危機に陥っている。たとえ周辺諸国の侵攻が成功しようがするまいが、次の矛先として選ばれる可能性も高い。橋頭保として占領されるくらいなら、今のうちに講和あるいは接収を試み、手中に収めるのが上策だ。兵力をほとんど出し尽くし、頼みの“魔笛”さえ使えなくなった今、公国には逆らう選択肢もあるまい。

 

 

「ところで、“魔笛”はどうした」

「すでに総司令部で確保済みだそうです」

「では、当面の脅威はないな。宮廷貴族共が動く前に、手早く破壊しなくては」

 

 

 アギラル教授が抗議するかもしれない、というのは三人ともの脳裏によぎったが、無視することにした。宮廷貴族共の余計な好奇心と傲慢な野心が、このような深刻な打撃をもたらしたのだ。

 

 

「ところで……ハーヴェイの様子はどうですか?」

「無事だ。背中に火傷を負っているが、現在治療中。医師の診察によると、少し痕が残る程度で、後遺症は出ないそうだ」

「それはよかった……」

「しかし、背中に火傷とは……?」

「七割ほどアギラル教授のせいです」

「何故!?」

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

 “(ケートス)”管理病棟の一角。背中に火傷を負ったハーヴェイは、大部屋にて療養を続けていた。状態も比較的軽微で、痕が残るものの後遺症は危惧されないらしい。

 ハーヴェイの周りには、同じように怪我を負った隊員たちがいた。本家筋とはいえ、“黄道十四宮(ゾディアック)”全体を見ても最も軽傷と言っても過言ではない彼に、個室を宛がっている余裕はない。被撃墜者まで生じ、その治療に集中させられている医師看護師に対して、その程度の事で文句を言う気にもなれなかった。

 それにしても、深刻な被害が出た。幸いにして死者は出ていないものの、ここ数年では最も大きな被害だ。立て直すには時間がかかるだろう。尤も、大量に戦死者を出した王国本隊に比べれば、軽微ではあるのだが――

 

 

「ハァイ、ハーヴェイ。調子はどう?」

 

 

 そんなハーヴェイの見舞いに、アデルが花束を持ってやってきた。ケイトの案内を受けたらしく、彼女を伴っている。

 

 

『お陰さまで。今回も、何とか生還できたよ』

「貴方それ毎回言ってない?」

 

 

 大きな花束を受け取りながら、ハーヴェイはにこやかに返した。痛みはまだ少し残っているが、今までの被弾負傷に比べれば大したことはない。さらりと流す彼に、アデルは肩透かしを食らった気分になった。

 

 

『それにしても、本当に助かったよ。きみの情報がなければ、もっと被害が拡大していたかもしれない』

「まぁ、私は前線に出れないしね。このくらいは貢献してあげて当然よ」

 

 

 面会用の椅子に座りながら、アデルはさらりと髪を流しながら答えた。一度目の出撃では間に合わなかったものの、二度目の作戦立案と被害軽減に貢献したのは事実だろう。「万一に備えて」とアギラル教授が対超大型兵装を用意していなければ、公国軍とともに全滅していた可能性が高い。

 そんな風に気取るアデルに対し、ケイトは何故かにやにやと笑っていた。

 

 

「……ふっふっふー、アデル様も素直じゃないですねぇ」

「ちょ、何よいきなり」

『どうしたんだい?』

 

 

 意味深なケイトの笑みに、ハーヴェイは首を捻った。アデルがぎょっとするのも珍しい。

 

 

「アデル様、坊ちゃんが怪我したって聞いて、ものすごく慌ててたんですよ~」

「ちょ――ケイト!? 何言ってるの!?」

「え~? さっきまですっごい心配してたじゃないですか~」

「う、嘘よ、嘘! この子猫ちゃんたら、変なことばかり覚えるようになって!」

「素直じゃないんだ~」

 

 

 からかうケイトに、アデルが珍しく動揺している。彼女との付き合いは長いが、ここまで狼狽えているのも、ケイトにいいように言われているのも初めてかもしれない。

 ともかくも、彼女に心配をかけてしまっていたようだ。

 

 

『心配をかけたようだね。ありがとう、アデル』

「~~~~~っ! もう、この子は!!」

 

 

 にこりと笑うハーヴェイに、顔を真っ赤にしたアデルは、照れ隠しに殴る――わけにもいかず、ぽんと己の膝へと叩き降ろすしかなかった。膝が痛くなっただけだった。

 そんな騒がしい三人を、周囲が微笑ましく見ていたのは、語らない方がいいかも知れない。

 

 

「ケイトちゃ~ん、悪いけど、この書類を経理部まで届けてもらえる?」

「はーい」

 

 

 看護師の一人が、書類を手にケイトを呼びつけた。久々にアデルをからかうことができて満足なケイトは、書類を受け取り足音軽く病室を出ていった。

 あとには、気恥ずかしさに俯くアデルと、彼女を見つめるハーヴェイが残された。

 

 

「――……嘘よ」

 

 

 アデルが俯いたまま、ぽつりと呟いた。

 

 

「心配しなかったなんて、嘘。墜落しかけたと聞いた時、息が止まるかと思った。怪我を負ったと聞いた時、倒れるかと思った。貴方が無事だと聞いて、心からほっとした。

 もしも――もしも貴方が死んでいたとしたら、私はきっと、二度と笑えなくなるわ」

『そんなことはないよ。きみは強い女性だ、必ずまた立ち上がれる』

「買い被り過ぎよ。()()()()()()を喪って笑っていられるほど、私は気丈じゃない。今回で、それを嫌というほど教えられたわ」

 

 

 ハーヴェイのとりなしにも、アデルは構わず続けた。そこでようやくハーヴェイは、『自分が死んだあと』について、何も考えていないことに気付いた。

 『戦うこと』も『殺すこと』も『死ぬこと』も、すべて承知の上で戦っている。今更恐れることも、その資格もない。

 ――しかし『誰かを遺すこと』については、何の覚悟も持っていないことに気付いた。そんな過去は、一度も求められなかったから。

 

 

「――……二番でもいいの」

『アデル?』

 

 

 俯いたまま、アデルはぎゅっとハーヴェイの手を握った。

 

 

「貴方にとって、一番大切なのはケイト。付き合いは長いんだもの、そんなことは分かってるわ。

 ……だから、二番目の席だけでも欲しいの。貴方と離れることが――貴方を喪うことが、耐えられないの」

『……アデル、きみは……』

 

 

 アデルの言葉に、ハーヴェイは返答に詰まった。ここまではっきりと言われて尚、彼女の気持ちを否定する勇気は持てなかった。

 

 

「嫌いなら、嫌いと言ってちょうだい。嫌味な女だって自覚はあるもの、一言言われたらすっぱり諦めるわ。

 でも――余計な気は持たせないでちょうだい。“殺戮人形”なんて仮面を被らないで、本当の気持ちを聞かせて」

 

 

 そう言って、アデルはようやく顔を上げた。覚悟を決めたその瞳は、宝石のようにきらきらと輝いていた。

 ――逃げてはいけない。誤魔化してはいけない。ここで逃げたら、彼女の覚悟を永遠に傷付けることになる。

 

 

『きみのことも大事だよ、アデル』

 

 

 アデルの手に己の手を重ねながら、ハーヴェイは言った。

 

 

『順番の問題じゃないんだ。ケイトのことも、アデルのことも、それぞれに大事なんだ。二人のために、僕は戦えるんだ』

 

 

 これまでと何が変わるわけではない。彼女はハーヴェイが戦う大切な理由の一つであり、それはこれからもずっと変わらない。

 だがその関係に、明白な言葉が必要だとするなら――『婚約』という形が必要なら、それに応えよう。

 

 

『――こんな、情けないだけの僕でもいいなら。結婚してくれないか、アデル』

「……もう。こんな大事な時まで、余計な謙遜をするのは止めてちょうだいな」

 

 

 彼らしいといえば、彼らしい。ハーヴェイの不器用なプロポーズに、アデルは嘆息するしかなかった。

 

 

「終わりましたー?」

「ひゃわっ!?」

 

 

 見計らったかのようにひょっこりと現れたケイトに、アデルは文字通り飛び上がった。

 

 

「あ、貴女、いつからいたの!?」

「アデル様が“本当の気持ちを聞かせて”って言ったあたりから」

「書類は!? お仕事をサボるなんて使用人のやることじゃなくてよ!?」

「すぐそこなんで普通に戻って来れますよ」

 

 

 どうやら先ほどのやり取りを、ばっちり聞かれていたらしい。あるいは、アデルに気を遣って待っていたのか。

 

 

「いや~坊ちゃんも男になったかぁ。良かったですねぇ、アデル様。

 にゃにゃ、今度からは“奥様”って呼ばないといけないんですかにゃ?」

「本当に尻尾踏んづけるわよ子猫ちゃん!!」

 

 

 けらけらと笑うケイトと、顔を真っ赤にして怒るアデルを見ながら、ハーヴェイは顔を綻ばせた。

 

 

 

 

 ――今度こそ。

 

 

 今度こそ、失ってはいけない。

 命を懸けて、護り抜かなくてはいけない。

 

 

 

 

 ――ああ、だけど。

 そう願う僕を、君は憎むだろうか?

 

 

 ――エア。

 

 

 

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