鋼鉄の牙、乙女の幻想   作:竹河参号

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02.冒険者アーロンくん

 一方、新入生の歓迎会が開かれている居酒屋。その一角に座る冒険者たちの一人、アーロンは舌なめずりをしていた。

 

 

「さて――誰から手を出すかな」

 

 

 その視線の先は、料理でも同級生でもなく――()()になりそうな女子生徒の見定めだった。

 

 

「もう品定めか。相変わらず手の早い奴だな」

「相手には貴族や富豪だっているんだぜ。揉め事になったらどうすんだよ」

「大量に処分された後だ。ビビって手出しなんか出来るかよ。それに、俺は冒険者として成功した枠で入ったんだ。腕っ節なら負けないぜ」

 

 

 それを、他の冒険者仲間が窘める。彼らとて美味しい思いをしたいのは事実で、上流階級のご令嬢など是非手籠めにしたい上玉だが、それでトラブルに発展しては元も子もない。しかし、アーロンはまるで恐れる様子がない。向こう見ずな勇敢さというべきか、身の程を弁えない思い上がりというべきか。

 

 

「やっぱり、あの女だな」

 

 

 アーロンの視線は、新入生たちの世話でせわしなく動く、金髪のボブカットの少女――オリヴィアに向いていた。胸も尻も彼好みの大きさで、学園案内の時からずっと目を付けていた女だ。純朴そうな美少女で、一度強引に抱いてしまえば、即座に折れてしまいそうな雰囲気だ。

 

 

「おい、アーロン、本気か?」

「婚約者がいるんだろ?」

「ば~か。だから楽しいんだろうが。婚約者の涙ぐむ顔が拝めたら余計に楽しいぜ」

 

 

 にやにやと笑うアーロンに、仲間たちは制止の声を上げるが、アーロンは一向に気に介さなかった。「確かに面白そうだな」と思ってしまう程度には、彼らの性根も腐っていた。

 なお、その婚約者が他ならぬ“外道騎士”ことリオンであると知り、震え上がることになるのは、まだ未来の話である。

 

 

「女を俺の物に出来ればいいんだよ。貴族なんて、女に弱いんだからさ。まぁ、楽しみにしてろ。お前らにも楽しませてやるからさ」

 

 

 アーロンたち冒険者一同がにやりと下卑な笑みを浮かべる中、からんからんと居酒屋のドアベルが鳴った。そこに入ってきたのは、ハーヴェイとケイト。

 

 

『やあ、諸君。楽しんでるかな』

「貴方は、スピアリング侯爵家の!」

『む? 貴方は確か――バルリング家の方だったかな』

「えぇ。その節はどうも」

 

 

 無骨な首環を付けたハーヴェイに新入生たちがぎょっとする中、新入生ピエール・バルリングが声を掛けた。いつぞや、護送任務を務めたことがある相手だ。

 二人が親しげに話す横で、アーロンの意識はケイトの方に向いた。

 

 

(――亜人か。あっちもいいな)

 

 

 オリヴィアほどではないが相応に肉付きがあり、抱き心地が良さそうだ。お目にかかる機会が少ない女亜人というのもそそる。オリヴィアとも異なる能天気(バカ)そうな顔も、力ずくで押し倒せば楽に抱けそうな雰囲気だ。

 

 

「おい、そこのメイド!」

「にゃ? なんですか?」

「後で俺の部屋に来い」

「え、嫌ですけど。何でですか?」

 

 

 アーロンの横柄な言葉に、ケイトは露骨に厭そうな表情を浮かべた。

 

 

「メイドのくせに逆らうのか?」

「これでも坊ちゃんの専属メイドなので~。あと、使用人を()()()()()()で呼びつけるのは校則違反ですよ」

「はっ、それがどうしたよ! 腰抜け貴族のルールなんて俺たちが知るかよ」

 

 

 ケイトの諫言にも構わず、アーロンは傲慢な言葉を並べた。何せ見目麗しいメイドだ、建前がどうあれ、貴族様たちも散々に楽しんできたに決まっている。自分もそれに混ざって、何が悪い。

 

 

『――僕の使用人に何か用かい』

 

 

 そこに、じじっと機械音声が割り込んだ。

 

 

「げっ……」

「おい、止めとけよ」

「はっ、ご主人様の登場か」

 

 

 底冷えするような冷たい機械音声に、冒険者たちが思わず怯む。一方、アーロンはいよいよ挑発的な笑みを深めた。

 

 

「ちょうどいい。このメイド、一晩貸せよ」

『……他人の使用人に色目を使うのは感心しないな』

「んなこと言いやがって、どうせ毎日しっぽり楽しんでるんだろ? 俺たちだけ仲間外れなんて卑怯じゃねぇか。

 猫の亜人はベッドでもにゃーにゃー鳴くのか? いいねぇ、俺にも聞かせてくれよ」

 

 

 下品な言葉の数々に、ハーヴェイがぴきりとその額に青筋を立てた。そもそも、愛する従者ケイトにそんな下品な視線を向けられるのは我慢がならない。

 

 

『――君は確か、アーロンという冒険者だったな』

「おう、そうだぜ。分かったら――」

『所詮は野蛮な略奪者か。分際も弁えない()を連れてくるなど、王立学園も趣味が悪い』

「……何だと?」

 

 

 ハーヴェイ渾身の侮蔑に、アーロンは目を剥いた。

 

 

『見世物のペットにしては品がない。ましてや野放しなど。今からでも抗議して、鎖で繋がせるか』

「ぼ、坊ちゃん」

「てめぇ、人が黙ってりゃ調子に乗りやがって!」

『偉そうな口を利く。貴様がいつ黙ったというんだ、猿』

 

 

 冷ややかに見降ろすハーヴェイに向かって、アーロンがついにいきり立った。変わらぬ調子で罵倒を重ねるハーヴェイに、アーロンの堪忍袋の緒が切れた。

 

 

「上等だ! 俺と決闘しろ!」

『……決闘?』

「お貴族サマの作法なんだろ? お前らの流儀に乗ってブチのめしてやるよ」

 

 

 ぴくりと片眉を上げるハーヴェイに向かって、アーロンが挑発した。お貴族様と言えば決闘――つまり、冒険者として腕を磨いてきた自分の土俵だ。

 

 

「お、おい、よせよアーロン」

「相手は貴族だぜ」

「腰抜け共は黙ってろ!」

 

 

 さすがに拙いと止めに掛かろうとした冒険者仲間を、アーロンは力ずくで振り切った。その様子に対し、ハーヴェイはただ冷ややかな視線を向けるだけだった。

 

 

『――いいだろう』

「はっ、そう来なくちゃな!」

『安全措置として、魔導鎧を使うのが通例だ。それでいいかい』

「あぁ、いいぜ!」

 

 

 売り言葉に買い言葉。ざわざわとどよめく周囲をよそに、当人たちはどんどん話を進めていく。

 ――蝶を捕えた蜘蛛の気分だったアーロンは、その実虎子を求めて虎穴に入った獲物であることに気付いていなかった。

 

 

「お、おい、よせって」

「魔導鎧なんて乗ったことないだろ?」

「やめとけって」

「うるせぇ! お前らは黙ってろ!」

 

 

 冒険者仲間の制止を振り切り、鼻息荒くいきり立つアーロン。そこに、先のピエール・バルリングが割り込んだ。

 

 

「――そこの君、止めた方がいい」

「あ?」

「この方は“戦争屋侯爵”スピアリング家の戦士だ」

 

 

 誰だそりゃ、と首をかしげるアーロンをよそに、冒険者仲間は震え上がった。

 

 

「せ、“戦争屋侯爵”……!?」

「ひょっとして、“スピアリングの殺戮人形”……!?」

「あ? 誰だよそれ」

「あっちこっちで戦ってる、腕利きの兵隊らしいぞ」

「たしか、こないだの戦争でも活躍したって。敵に容赦しない、恐ろしい戦士だって……」

「そ、その話、俺も聞いたことがあるぞ」

 

 

 ざわざわとどよめきが大きくなる群衆。「いい加減やめろって」という冒険者仲間の言葉も、息巻くアーロンは力ずくで振り切った。

 

 

「うるせぇな、キザ野郎! 軟弱野郎の忠告なんて役に立つかよ」

「……忠告はしたぞ」

 

 

 頑として譲らないアーロンに対し、ピエールは諦めたように嘆息した。

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 その翌日。決闘騒ぎのことを聞かされたアデルは、呆れたようにハーヴェイを見やった。

 

 

「……いいの? 相手、“三作目の攻略キャラ”なんでしょう?」

『だからこそだ。下らない鼻っ柱は叩き折っておくに限る』

「だからって、ACを持ち出すなんて。貴方の場合、ほとんど殺害予告じゃないの」

『今回は学園に卸した訓練用のACを使う。ハンデくらいにはなるさ』

「“こんなこともあろうかと”みたいな顔はやめてくれない?」

 

 

 ふんと鼻を鳴らすハーヴェイに、アデルは嘆息するしかなかった。

 AC騎乗体験用として、半ば強引に卸した中量二脚:CHRYSLER。従来の魔導鎧に近い性能で、積載量も安定性能も中庸的だ。いつも通りの戦術が使えない分、機動には注意する必要がある。姿勢制御システム(ACS)の宣伝にもちょうどいい。

 

 

「ケイト、貴女も止めなさいよ」

「うーん……坊ちゃんの評判が落ちるのもイヤですけど、あんなヤツの相手するのもイヤですし……」

「そんなに粗野な輩だったの?」

「いかにも、薄汚い冒険者ーって感じでした。あの舐め回すような視線、今でも毛が逆立ちます」

「まぁ、それは嫌ねぇ……」

 

 

 男子が女子に向けてくる性的な視線は、本人の認識以上に目立つものだ。ましてやケイトも指折りの美少女、本人の快活で気安い雰囲気も相まって、学園男子の間では密かな人気を博している。当然、彼女を連れ歩くハーヴェイへの羨望の視線も。そんな彼女に、まるで発情した獣のような視線を向けられるのは、もはや家族も同然のアデルとしても愉快ではない。

 

 

『とにかく、せいぜい頑張ってくるよ』

「悪いことにならないと良いけどねぇ……」

 

 

 毅然とした態度とは裏腹に謙虚な言葉を吐くハーヴェイに、アデルが掛けられる言葉はもうなかった。

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 その放課後。闘技場で、アーロンの魔導鎧とハーヴェイのACが対峙していた。

 

 

『逃げずに出てきたのは褒めてやる!』

『浅ましい猿が、約束を忘れなかったのは褒めてあげよう』

『てめぇ――!』

『りょ、両者落ち着きなさい』

 

 

 始める前からバチバチと火花を散らす両者を、審判のスターク教諭が慌てて仲裁した。

 一方、学期開始直後に始まった決闘騒ぎに、多くの観衆が集まっていた。

 

 

「どう思う?」

「まぁ、スピアリングの勝ちだろ」

「でも、相手も腕利きの冒険者だっていうぜ?」

「“殺戮人形”相手に、魔導鎧戦で勝負になるかよ」

 

 

 昨年と違い、今度はハーヴェイが優勢だった。さもありなん、去年は同学年――あるいは学園全体でも指折りの戦士たちを蹂躙してきた、あの“殺戮人形”スピアリングである。今度は、決闘賭博を起こす生徒も現れなかった。

 

 

「――今度はお莫迦さんが出なくて良かったわねぇ」

「ですねぇ」

 

 

 すっかり呆れてしまったアデルとケイトが見下ろす闘技場内では、スターク教諭が決闘前の宣誓を述べている。相変わらず、両者には届いていないようだった。

 アーロンは片手半剣(バスタードソード)を両手に構え、ハーヴェイはロングソードとハンドガンを構えている。どちらも現行鎧では基本のスタイルであり、目立った有利不利は見えない。

 

 

『――では、開始!』

 

 

 スターク教諭の開始宣言に、最初に飛び出したのはアーロンだった。

 

 

『オラァ――!!』

 

 

 初めての魔導鎧搭乗とは思えない、スムーズな踏み込み。ハーヴェイは飛びずさるようにバックブーストを噴かせると、空ぶったブレードの隙を狙うようにブレードを突き込んだ。

 

 

『見え見えなんだよ!』

 

 

 それを素早く切り返しながら撥ね上げるアーロン。ハーヴェイはそれに逆らわずブレードを受け流すと、その勢いに乗せて半身になり、突き出したハンドガンを至近距離で撃ち放った。

 

 

『うおっ!?』

 

 

 がががっ、と三連撃の重い衝撃。真正面から食らい、思わずのけぞったアーロンの肩口に向けて、ハーヴェイのブレードが素早く突き込まれる。ごり、と重い衝撃を伴い、右肩がスパークしながら魔力供給を断たれ、がくんと垂れ下がった。

 ハーヴェイの攻勢はそれだけに終わらなかった。ブレードを手放し、即座にブーストキックをかます。瞬間的な加速とともに蹴り飛ばされたアーロンは、吹き飛ばされながらがたりと姿勢を崩し、そのままどうと倒れた。

 

 

『がっ――!?』

 

 

 いくら類稀なる冒険者とはいえ、初めて乗った魔導鎧。一度姿勢を崩してしまえば、立ち上がるのは難しい。姿勢を変えようとした瞬間を狙い、大口径ハンドガンの強烈な射撃を受ければなおのことだ。

 

 

『――審判。スターク教諭。まだ続けるべきか?』

『え、あっ』

『くそっ、この――』

 

 

 じたばたと藻掻くアーロンを見下ろしながら、ハーヴェイはスターク教諭へと言い放った。アーロンが取り落としたブレードを拾い上げ、ごり、と腰部に突き立てる。これで機関部は損傷、もう立ち上がるための動力が破壊された。

 

 

『機関部を破壊した。これ以上は動かない。それとも、中の選手を殺害するべきか』

『――しょ、勝者、ハーヴェイ・フィア・スピアリング!』

 

 

 ブレないハーヴェイの物言いに、スターク教諭は慌てて判定を下した。

 歓声は――起こらなかった。順当な結果に、ぱらぱらとまばらな拍手が起こるだけだった。

 

 

『……ふぅ。何とか勝てて良かった』

 

 

 一方、機体内のハーヴェイは息を吐きながら安堵していた。

 いつもとは異なる戦闘スタイルだ、巧く嵌って良かった。次は通用しないかも知れない。

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 その後、控室にて。

 

 

「ふざけんなっ! あんな決着アリかよ!?」

 

 

 あっさりと完敗したアーロンは、大いに荒れていた。

 何しろ腕利きの冒険者だ、こと戦闘に関しては人一倍の自信とプライドがある。それが多少戦い方が変わった程度で、あそこまで一方的に蹂躙されるなど、彼の矜持が許せなかった。

 そんな中、パイロットスーツから着替えたばかりのハーヴェイが歩み寄ってきた。

 

 

『元気そうで何よりだ。うっかり殺してしまっては、あとあと面倒だからね』

「何だと!? この野郎、舐めやがって!」

『負けたのがそんなに不満かい?』

「当たり前だろ! あんなもん無効だ、無効!」

 

 

 涼しい顔で言い放つハーヴェイの物言いこそが、アーロンの怒りを煽った。

 

 

「再戦だ! 絶対にブッ倒してやる!」

『……そこまで言うなら、全力でお相手しよう』

 

 

 威勢よく言い放つアーロンに、ハーヴェイも仕方なく応えてやることにした。せっかくだから武装構成もいろいろ試してみるか、などと失礼なことを考えているのは内緒である。

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

「再戦だ!」

 

 

 ずどん。

 

 

「諦めねえぞ!」

 

 

 ずどん。

 

 

「まだまだ!」

 

 

 ずどん。

 

 

「も、もう一回!」

 

 

 ずどん。

 

 

「終わらねえ、終わらねえぞ!」

 

 

 ずどん。

 

 

「もう一回! もう一回だ!」

 

 

 ずどん。

 

 

「ふ、フヒーッ!」

 

 

 ずどん。

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

「……なぁ、アーロン」

「なんだ?」

 

 

 数日後、決闘場の控室内。興奮した様子でパイロットスーツに着替えるアーロンに向かって、冒険者仲間の一人がぽつりと声を掛けた。

 

 

「もういいだろ。お前、ちょっと休め」

「な、なんでだよ。今日はまだアイツの一撃を食らって――いや、まだアイツを倒してねぇんだよ」

「……それだよ」

 

 

 どこか陶然とした様子のアーロンに、仲間たちは困った様子で顔を見合わせた。

 

 

「お前、何のために決闘始めたか覚えてねぇだろ?」

「それがどうした。アイツと戦えるなら、理由なんて何だっていい」

「お前、ヤバイ薬でもキめたのか? 何か怖ぇよ」

 

 

 いやに目の据わったアーロンの言葉に、仲間たちはぞっと悪寒を抱いた。

 それでも、言うべきことは言わなければならない。こんな茶番のために、この王立学園に入学したわけではないはずだ。

 

 

「マジな話、鎧の用意が追い付いてねぇんだよ。毎日のように戦ってちゃ、修理が追い付かねぇ。修理費用だって安くねぇの、分かってんだろ?」

「それがどうした。アイツの技が見れるなら、金なんてどうだっていい」

 

 

 だがそれは、アーロンには一向に届かなかった。

 

 

「アイツの技を見てるだろ? 日ごとに変わる武装、的確な戦術。しかも日に日に腕が洗練されていく。最小限の被弾、最小限の動きで仕留めに掛かってくる。あれはもう――芸術だ」

「いや知らねぇよ。何なんだよお前」

 

 

 熱に浮かされたように語るアーロンの言葉に、仲間たちは引いた。かなり引いた。

 

 

「だから、お前に用意してやれる鎧がもうねぇんだって。せっかく冒険者で成功したのに、その金全部修理費用でパーになったんだろ」

「これ以上続けてると、奨学金だって打ち切られるぞ。授業サボってまでやることじゃねぇだろ」

「――つまり?」

「つまりって……お前、もう諦めろってことだよ。これ以上、あいつと戦うな」

 

 

 まるで理性が働いていない。いい加減恐ろしくなってきた仲間たちは、ついに決定的な言葉を口にした。というか、ここまではっきり言わなければ理解できない辺り、相当に頭がイカれてるとしか思えなかった。

 突き付けられた言葉に、アーロンはしばし沈黙した。ようやく理解したか、と仲間たちが安堵したのも束の間、アーロンは何か妙案を思いついたような顔を見せた。

 

 

「――決めた!」

「な、なんだ?」

「俺、学園辞める!」

「は?」

 

 

 突然の退学宣言に、仲間たちは唖然とした。え、何で? そもそも授業碌に受けてないのに、もうやめる気?

 

 

「アイツの実家に入隊すれば、アイツと戦い続けることができるってことだろ? 鎧の修理費だって気にしなくていい! そうだ、そうしよう!」

「いやいや、冗談よせよ。それだけのために将来を棒に振る気かよ。いいか、ひとまず決闘はやめて、ゆっくり休んで、落ち着いて考え直せよ」

「世話になったな、お前ら!」

「――おい、冗談だろ? アーロン! アーロン!!」

 

 

 パイロットスーツのまま駆け出すアーロンを、誰も引き留めることができなかった。

 

 

 

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