鋼鉄の牙、乙女の幻想   作:竹河参号

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11.しあわせが壊れる音

 そうして、月日は流れた。

 王宮が薄皮一枚の危うい安全の中にありながらも、リオンたちは学園生活を楽しんだ。

 

 

 学園祭では、マリエのプロデュースによる紳士喫茶が話題を呼んだ。ユリウスら五人組が人気を博したのは当然のこと、フィンもそれに劣らない人気を見せ、また他方では駆り出されたリオンが卒業生クラリスなどに詰め寄られている場面があった。

 体育祭では、エアバイクを駆るジルクをはじめとして五人組が八面六臂の大活躍。その優勝賞金にマリエが歓喜する一方、リオンは賭博でさらに荒稼ぎをしていた。これでも公爵閣下である。

 修学旅行では、南部のリゾート地に行楽。水着姿の麗しい女子の姿に男子たちが鼻を伸ばす一方、リオンとフィンがそれぞれミアやエリカを誘ってしょうもない喧嘩を起こし、躍起になって追い回し合う光景があったとか、なかったとか。

 エリカとエリヤの婚約式には、関係者一同に加え、ミアとフィンも参列した。本人たちの幸せそうな笑顔より、ハンカチを噛み締めて血涙を流す国王ローランドにドン引きした人たちの方が圧倒的に多かったそうな。

 

 

 さまざまな学校行事が催される裏側では、ジェイクとアーロンが毎週単位で決闘騒ぎ。始まりこそ敵意のぶつけ合いだったそれは、次第に互いを高め合う競技のようになり、その熱に当てられた幾人もの男子たちが参加。腕に覚えのある学生たちが集い、『学園最強』の名を勝ち取るべく、一大行事として話題になった。その裏側でリオンが決闘賭博を煽って大儲けをしたり、開き直ったハーヴェイが各選手やその実家に向けてACの営業を掛けたり、アギラル教授まで参入して新型機のお披露目会になったりと、学園内外を問わず大きな波紋を呼んだ。

 

 

 忙しないながらも、彼らは確かに幸せだった。誰の不幸をも踏みつけにしなかったというのが、彼らの幸福感を高めたのもあるだろう。

 (一部の賭博狂いの自業自得には目を瞑っていただきたい)

 

 

 ――その幸せが、音を立てて崩壊するとも知らずに。

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

『――ほんとう、ですか。アギラル教授』

 

 

 衝撃的な事実に、ハーヴェイは機械音声を震わせた。

 対面するのは、膨大な資料を抱えたアギラル教授。

 

 

「間違いない。王都ダンジョンの地下にあるのは、神話兵器“アルカディア”の遺構の一部だ」

 

 

 王国史を漁り、考古学資料を漁り――そうして出たのが、この結論だった。

 

 

「遺失文明の末期では、アルカディアの奪い合いが生じ――その機構の一部が、バラバラになって失われたらしい。詳しい所在が記載されているわけではないが――各地のダンジョンが、その遺構の在処である可能性が高い」

 

 

 各地に残るダンジョンは、その戦闘の痕跡。出土する金属や魔石も、その名残。

 ダンジョンを攻略すると消滅してしまうのは――ダンジョンを形成する魔素が解放され、遺構が本来の場所へと回帰するため?

 

 

「君たちの推測によると、その“遺失文明”は二つ存在し、互いの生存領域を懸けて相争っていたということだね? つまり理想郷(アルカディア)の奪い合いなどではなく、二つの文明における戦争――その果ての喪失離散ということになるね」

 

 

 つまり、王都ダンジョンを完全に攻略してしまうと――アルカディアの機構が本体へ回帰し、復活が可能となってしまう。

 そこで、ハーヴェイは拙いことを思い出した。王都ダンジョンは、今リオンらが攻略を進めている。

 

 

『……拙い――クレアーレ! Mr.バルトファルトらをすぐに呼び戻してくれ!』

 

 

 

 

 ――結果として、この制止は失敗した。

 ミアの覚醒と引き換えに、王都ダンジョンは消失。

 それと同時に、ヴォルデノワ帝国周辺で大規模な地震が発生。大陸のような巨大な影が観測されたという。

 

 

 神話兵器“アルカディア”が復活した。

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 二週間ほど経った頃。突如帝国から使節団が来訪し、ミアとフィンは留学から引き揚げることになった。

 そして同時に、新しい事実が判明した。

 

 

『エリカ様の体調が崩れた?』

 

 

 クレアーレからの報告に、ハーヴェイは目を剥いた。

 

 

【魔素の濃度が急上昇しているわ。復活したのは間違いない。まだ完全な状態ではないみたいだけど】

『――そうか』

 

 

 原因は明白だ。アルカディアの復活と、それに伴う魔素の急増。旧人類の形質を色濃く見せるエリカは、高濃度の魔素に適応できない。

 そして、それを止める方法も明確だ。

 

 

()()で、間違いないのだな?』

【間違いないわ。目覚めたアルカディアのマスターは――ミアちゃんよ】

 

 

 おろおろするケイトを横目に、ハーヴェイはなるべく平静になろうと努めながら問うた。

 覚悟しなければならない。最悪の可能性を、この手で決めなければならない。

 

 

『手を取り合える可能性は?』

【ないわ。これは生存競争よ。今までが、辛うじてバランスを取れていたの。そしてそれを崩したのが――私たち】

『一緒に生きていく方法は?』

【ないわ。どちらかが、窮屈な暮らしを強いられることになる。どちらもそれを認められないはずよ。それに、これはエリカだけの問題じゃないわ】

『というと?』

【王国民を改めて調査した結果、旧人類の形質が濃くなっているみたいなの。今調べられたのは王都の市民だけだけど、全国民が同じ状況と考えていいわ】

 

 

 クレアーレの報告は、ハーヴェイに確信を抱かせた。もはや一刻の猶予もない。決断しなければならない。

 

 

『……このこと、Mr.バルトファルトには?』

【ルクシオンの方から伝えているわ。でも――】

 

 

 言葉を躊躇ったクレアーレに対し、ハーヴェイはだんと立ち上がった。

 

 

「ぼ――坊ちゃん?」

『――ケイト。今日この場を以て、きみとの雇用契約を破棄する』

「!?」

『それと、最後の業務命令だ。――アデルに婚約破棄を伝えてきてくれ』

 

 

 突然の暴言に動揺するケイトを置き去りに、ハーヴェイは自室から出ていった。クレアーレだけが、了解済みのように付いていく。

 

 

『Mr.は動かない――動けないだろう。こんな決断は、彼にはできない』

【でも、やらなきゃいけない。――皮肉な話ね。新人類との戦争を終わらせるために、新人類の血を頼ることになるなんて】

 

 

 クレアーレの苦み走った言葉に、ハーヴェイは何も返さなかった。泥を被るのは、“殺戮人形”の必定だ。

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 そうしてハーヴェイたちが向かった先は、女子寮――ミアに宛がわれた私室だった。

 だんと乱暴に開かれた扉に、ミアがびくっと震える。

 

 

「は、ハーヴェイさん? ここは女子寮ですよ?」

『そうだろうな。些事だ』

 

 

 狼狽えるミアの反応を無視し、同室の女子生徒の動揺を無視し、ハーヴェイは懐から一丁の拳銃を取り出し、ミアの額に突き付けた。

 

 

「は――ハーヴェイ、さん? な、何かの……冗談、ですか?」

『そうだろうな。些事だ』

 

 

 いよいよ怯えるミアを無視し、ハーヴェイは拳銃の安全装置(セーフティ)をかちりと外した。

 ミアは震え上がった。その表情を真正面から見つめ返しながら、ハーヴェイは真剣な瞳で機械音声を鳴らした。

 事ここに及んで、彼女は何も知らないらしい。――それでいい。罪を被るのは、罰を受けるのは、僕一人でいい。

 

 

『恨んでくれていい。それこそが、僕の生かされてきた意味なのだから』

 

 

 そうしてハーヴェイは、トリガーにぐっと指を掛け――

 

 

【動くな】

『――!』

「ブー君!」

 

 

 漆黒の影を纏う一つ目の球体――ブレイブの触手に、全身を絡め取られた。

 指先まで、銃口まで拘束され、文字通り指一本動かせない。ぐっと身じろぎしようとするハーヴェイと、咄嗟に武装を展開しようとするクレアーレに対し、ブレイブはただ冷たい視線を向けた。

 

 

【クレアーレの戦闘能力は把握している。調査と解析が専門のお前じゃ、こいつを守ることはできないはずだ。もちろん、ミアに手を出すこともな。

 ――指一本動かすな。さもなくば、この学園ごとお前らをブチ殺す】

 

 

 間に合わなかった。今からルクシオンを呼んだとて、リオンが決断できない以上、決定的な一手が打てない。よしんば彼が決断できたとして――

 

 

【この国にいる限り、相棒とミアには手出しをさせない。たとえ、この王都が灰になろうとな】

 

 

 生身でブレイブには勝てない。ルクシオン本体を召喚したとしても、王都が巻き添えになるだけだ。

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 王都の港。

 ミアとフィンを連れていった帝国の使節団を見送ったリオンの許へ、ハーヴェイは独り歩み寄った。

 

 

『――良かったのかい、Mr.』

 

 

 案の定、リオンはミアを殺さなかった。殺せなかった。武装の不完全な使節団に対しても、一切の兵力を差し向けなかった。

 

 

「ミアちゃんを殺すことはできません。復活した兵器(アルカディア)の方を倒します」

『……その結果、戦場でMr.ヘリングと殺し合うことになってもかい』

 

 

 友達を殺さないために、別の友達と殺し合う――なんとも業の深い話だ。

 一方、ルクシオンと合流したクレアーレが、情報交換を行っていた。

 

 

【――仲間たちが目覚めています。アルカディアを目指して攻撃を開始しています】

【呼びかけたの?】

【こちらの呼びかけを無視しています。アルカディアの破壊は最優先命令です】

【あんた、本気で説得したの? ――私の方でも呼びかけてみるわ】

 

 

 旧人類の遺失兵器――アルカディアの反応に伴い再起動したのだろう。だが要塞兵器を相手に、散発的な襲撃を行っても意味がない。

 それはそれで対応してもらおう。問題は、人間の参戦だ。

 

 

『向こうは、おそらく国ぐるみで動く。僕たちだけでは、到底手が足りないよ』

「承知の上です」

 

 

 ハーヴェイの念押しに、リオンは振り返ることなく答えた。

 ここから先は、絶滅戦争だ。互いが互いを滅ぼすまで終わらない、終末戦争のやり直しだ。

 

 

『本当に、僕たちだけで戦うつもりかい』

「みんなにどうやって説明するんです? 旧人類だの、新人類だの――まして、生存競争だと言って? 俺なら信じませんね」

 

 

 より正確に言うのなら――アンジェリカとオリヴィア、そしてノエルは信じてくれるだろう。

 だがそれだけだ。信頼するリオンが語るからこそ信じてくれる、それだけの話に違いない。そこから一歩離れた者たちには、到底理解できない話だろう。きっとマリエでさえ信じない。

 そして、それでは意味がない。国家を丸ごと動かすことができなければ、その行動に意味はない。確信させるだけの根拠と、納得させるだけの知識の土台がない。何より、それらの障害を超えてリオンに協力してくれるだけの信頼が――「貴族たちが協力してくれる」という信頼そのものが、リオンには抱けなかった。

 

 

「それとも、“戦争屋侯爵”なら信じてくれますか。こんな無茶苦茶な話のために、好き好んで戦争に付いてきてくれますか」

『――それは……』

 

 

 リオンの突き付けるような物言いに、ハーヴェイは機械音声を返すことができなかった。

 国家存亡の危機とあれば、どんな戦場でも駆け付けるのが“戦争屋侯爵”の使命だ。ホルファート王国、いや旧人類の血を引く現生人類の全てが危機に晒されており、そのために戦う必要がある――だが、そう納得させるだけの根拠が、ハーヴェイには提供できない。信頼性の不確かな旧人類の遺産の唆しに従って、真偽不確かな戦いに身を投じているという現実を明かしたところで、『荒唐無稽な妄想』と一蹴されるのが関の山だ。

 

 

「ケイトさんもアデルさんも連れずに、ハーヴェイさんが一人でここにいる。それが、全部なんじゃないですか」

『……痛いところを突く言い方が巧くなった』

「誰かさんのお陰で慣れましたから」

 

 

 少しだけ厭味を込めた言葉とともに、リオンは振り返った。ハーヴェイでさえ反射的に背筋が凍るほど、その顔は無表情だった。

 

 

「じゃあ、行きましょう」

『ああ』

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

 その日、スピアリング家本邸では一つの騒ぎが起こった。

 

 

「アンタレスが持ち出された!?」

 

 

 何者かの襲撃により、第九隊“(スコーピオ)”隊長ハーヴェイの機体アンタレスが強奪されたのだ。

 正確には、その正体は知れている。悪名高き“殺戮人形”の機体、扱いの難しい逆関節機――わざわざ奪取する意図をもつ者など、自然と限られる。ハーヴェイ本人と連絡が取れなくなったのも、それに拍車をかけている。

 

 

「管理部門は何をしていた!」

「そ、それが……怪しい一つ目にやられて、抵抗できなかったと……」

「……バルトファルトめが……!」

 

 

 “(ケートス)”隊員の報告に、ダグラスはだんと机を叩いた。よりによって、バルトファルトが手引きをしたというのか。

 同じように報告を聞いていたクリフトンが、硬い表情のまま口を開いた。

 

 

「どうします。反逆罪でひっ捕らえますか」

「何をする気なのか分からん。それに、今はヴォルデノワの動きだ」

「あそこには間諜(スパイ)を送り込むことができませんでしたからね。何が起きているか把握できません」

 

 

 王都ダンジョンで観測された異常な魔素反応と、帝国の急な大使館引き揚げ、そしてリオンたちの逐電。関連付けるなと考える方が無理だろう。

 

 

「近隣諸国では、何やら巨大な地震と、要塞兵器らしきものが確認されたそうです」

「……それの撃破が狙いか? しかしこの距離で、いったい何を警戒する必要がある……?」

 

 

 “外道騎士”のロストアイテム――対抗するための唯一の戦力と言っても過言ではないが、何も王国狙いで侵攻すると決まったわけではないのだ。あの小僧共は、何を知っている。

 

 

「――少し長い話になるが、構わないかね?」

 

 

 そんな執務室の扉を開き、ひとりの人物が入ってきた。片眼鏡(モノクル)を掛けたアギラル教授だ。珍しく深刻な表情を見せる教授に対し、珍しくクリフトンが激昂しながら立ち上がった。

 

 

「アギラル教授! 今まで何をしていたのです!」

「クリフ」

「しかし! 教授がハーヴェイの企みに噛んでいるのは一目瞭然です! この人を放置さえしていなければ、我々がここまで混乱させられることはなかった!」

「まァ一理ある」

 

 

 クリフトンの糾弾を、アギラル教授は否定しなかった。まさかこんな大事になるとは思わなかった――そんなものは言い訳だ。子供たちの悪巧みに乗っかって秘密行動をした挙句、大事ないとし子が危険に晒されている。

 

 

「――教授の処分はあとで。まずは、話を聞かせてもらいましょう」

「父上!」

「ハーヴェイの暴挙、バルトファルトの逐電……それらを認めるに足る重大な真実があると、期待してもよいのでしょうな?」

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

 一方、学園に残されたアデルとケイト。

 

 

「ど……どうします、アデル様」

「諦めないわよ」

 

 

 おろおろと戸惑うばかりのケイトに対し、アデルは毅然と言い放った。

 

 

「諦めて堪るもんですか。生涯愛すると誓った人を、みすみす奪わせるわけにはいかないわ」

「……それが、坊ちゃん自身だったとしても……?」

「当然よ。あの頑固なお莫迦さんには、一度お灸を据えてあげないといけないみたいね」

 

 

 アデルの毅然とした言葉に、しかしケイトは素直に応じることができなかった。

 “殺戮人形”ハーヴェイの戦いは、彼女が誰よりも知っている。どんな時も、どんな戦場も臆さずに挑んでいったかの主人の――そんな彼が自分たちを切り捨てた意味が、彼女には分かる。

 

 

「とんでもない戦いになると思います。だからアデル様のことも、あたしのことも遠ざけたんだと思います。それでも行くんですか」

「だったら尚のことよ。そんな大戦に一人置き去りだなんて、女が廃るってものよ」

 

 

 男が女に尽くすように、女も男に尽くす――それがこのホルファート王国の、新たな摂理だ。その第一人者として、此処で怯んでいてどうする。

 

 

「付いてきなさい、ケイト。今度こそ、ハーヴェイのために戦うの」

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

『壮観だね』

 

 

 ルクシオンの船上。集まってきた旧人類の兵器たちを見、ハーヴェイは思わず感嘆の声を零した。

 錆び付き、苔むし、それでも健在に、ルクシオンを取り囲むように浮遊している。中にはルクシオン本体よりも大きな船体がある。

 

 

【移民船が無事であるとは予想外だった】

「はじめまして。リオン・フォウ・バルトファルトだ。転生者でね。旧人類の遺伝子が濃いらしいよ」

 

 

 それぞれが送り込んできた球体の子機に対し、リオンが代表して挨拶した。この場は旧人類の代表として、リオンに任せなければならない。

 あくまで軽薄なノリを見せるリオンに対し、子機たちが一斉にスキャンを始めた。その言葉の真偽を確かめるつもりらしい。

 

 

【事前にデータは渡したはずです】

【我々はアルカディア破壊のためにまとまる必要がある。そのためには、その象徴となるリオンにはマスターになってもらう必要があるのだ。旧人類の遺伝子を持っているのか、調べる必要がある】

 

 

 不満を見せたルクシオンに対し、子機のひとつが反論した。その不躾な言葉に、ルクシオンが反射的に本体の武器を動かそうとして――

 

 

「止めろ」

【マスター?】

 

 

 その子機に手を乗せたリオンに止められた。その様子を、ハーヴェイは黙って見つめていた。

 

 

「さて、諸君。結果はどうかな?」

【――認める】

【肯定】

【賛成する】

 

 

 やがて結果が出たらしく、次々に結論を出していく兵器たち。どうやらリオンをマスターとして承認するらしい。

 ところが、一機だけ異なる返答を寄越した。

 

 

【――拒否する】

「へえ?」

【エリカ・ラファ・ホルファートがいる。旧人類に最も近い彼女こそが、我々のマスターに相応しい】

【エリカは戦闘に不慣れです。マスターにしたところで――】

「俺が話す」

 

 

 説得しようとしたルクシオンを遮り、リオンが再び口を開いた。

 

 

「悪いが、その子は眠らせている。自分さえいなければ、争いが起きないと勘違いをしていてね。邪魔になるから、起きる前に全て終わらせることにした」

【――終わらせるとは?】

「アルカディアを破壊する。そうしないと、王国で今後生まれてくる子供たちが困るからな」

【破壊できる可能性は低いが?】

「それでもやる。姪っ子が起きる前に全て終わらせてやるのが理想だな。あの子は優しいから、新人類を追い込むなんてためらうはずだ」

『それに、現状の魔素濃度ですでに活動が困難だ。きみたちの指揮など、まずできない』

 

 

 リオンの断言、そしてハーヴェイの補足に、子機たちがちかちかと一つ目を光らせた。

 

 

【現状、もっともマスターに相応しいのはリオン】

【エリカに戦闘は不可】

【マスターはリオン。エリカは最重要保護対象】

【承知した。これより、我々はマスター・リオンの指揮下に入る。アルカディア破壊のために協力する】

「頼もしいな。さて、まずは整備だ。ルクシオン、出来るか?」

【――はい】

 

 

 ルクシオンはどこか硬い返答をすると、機体を旋回させて移動を始めた。向かう先は、かつてリオンとルクシオンが出会った浮島――移民船ルクシオンの基地。

 人ならぬ巨大兵器たちがリオンに従う姿を見て、ハーヴェイは改めて感嘆の声を零した。

 

 

『AIを従えて戦争か。Mr.も、いよいよ規格外になってきたな』

【不服か?】

『いいや。頼もしい味方だと思っているよ』

 

 

 何しろ“過去”に幾度となく支えてもらっており、その的確さは信頼している。あとはそれを正しく発揮すべく、恩人の真似事をしなければならない。

 

 

 

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