妖怪や人間、更には天使や悪魔などが通う学園、通称『異種族学園』では生徒達による様々な問題が発生している。
 そして今日もまた、人狼と人間の2つの種族に関する問題が発生しているのであった……。

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 日常ギャグを作りたいと思って実際に書いてみました。


~人狼と人間は同じクラスで良いのか問題~

「先生、やっぱり納得出来ません!」

 

 天使、悪魔、妖怪、人間……様々な種族の生物達が通う学園、通称『異種族学園』の職員室にて、頭から髪ではなく蛇を生やした学級委員長の少女が担任の机を叩きながら抗議をする。

 

 少女の種族はメデューサ。

 見た者を石化する能力があり、誤って誰かを石化させないようメデューサの石化能力を防ぐ特殊な眼鏡を付けているのが特徴的だ。

 

「どうして人間と人狼が同じクラスなんですか! どう考えても危ないでしょう!」

 

「そうは言われてもね。そういう種族だからって理由でクラスを替えるのは差別だろう?」

 

 そんなメデューサの抗議内容とは人間と人狼のクラスが一緒なのは危険。と言ったモノである。

 人間は我々の良く知る手足が2本ずつ生えている知性に秀でた種族である。

 一方で人狼は手足が2本ずつ生えている点は人間と同じであるが、人間と違い毛深くて爪も鋭く、顔が狼のそれと同じなのが特徴的な種族である。

 

 そして一番外せない特徴と言えば……そう。推理ゲームとして有名な『人狼』と同じように人間を食べるのだ。

 あくまで食べる食材として人間が選択肢にあるだけで、人間しか食べない。毎晩1人人間を襲う。それらは偏見であり、今のメデューサのように偏見で物事を見てそれを盾にして相手を攻撃すれば差別となってしまう。

 

 だからこそ担任はメデューサに注意をする。

 種族だけで相手を見て非難するのは差別になると。

 

「だ、大丈夫だよメデューサちゃん。人狼くんは優しいから、ね?」

 

「ガッハッハ! 俺と人間の仲を信じられないのか?」

 

「信じるも何も……」

 

 しかしメデューサは不満そうに人狼へ視線を向ける。

 人狼は豪快に笑い、人間を自身の側へと力強く引き寄せる。あまりにも強引な行動であったが人間は不快に感じている様子は無く、引き寄せられた事でバランスを崩しながらも、嬉しそうに人狼へと抱き付いた。

 

 端から見れば距離の近い友達、もしくは付き合っているカップルに見える微笑ましい光景だろう。

 しかし人狼を見るメデューサの眼は厳しいままだ。それどころか最初よりも一層睨みが強くなっている。何故メデューサはそんなにも人狼を目の敵にするのか。その理由は簡単である。

 

「ヨダレ垂らしてる時点で信頼も何も無いわよ!」

 

 凄い食べたそうに人間を見ているからだ。

 人間を見る人狼の眼は捕食者としてのそれと同じであり、口から垂れているヨダレが人間の頭に掛かり髪の毛が風呂上がりのように湿っている。若干生臭い。

 

「おっと悪い。美味しそうな匂いがしたもんで」

 

「今放課後なんだけれど? お昼の時間はとっくに過ぎたのだけれど?」

 

「あっ。もしかしてだけど人狼くん、私の隠し持ってるおやつに気付いちゃった? えへへ」

 

「食べて良いジュルリか?」

 

「はい。どうぞ!」

 

 人狼は渡されたお菓子を手元を見ず、人間の方だけを見て受け取り思わず再び垂れてきたヨダレを拭き取る。

 自分が食料として見られてるのに一切気づいていない人間は、隠していたお菓子の存在がバレてしまった事を照れて顔を赤くして頬を掻いていた。

 

「ほら見な、どう見ても仲の良い友達じゃないか。メデューサは種族で相手を見すぎなんだよ」

 

 担任は2人の仲睦まじい光景を見て、メデューサに種族で相手を見すぎだと再度注意をする。

 この異種族学園は自分と異なる種族の相手に対して偏見や差別───例えばメデューサの場合は「機嫌を損ねたら石にされそう」や「毎晩誰かを石にしている」と言ったようなモノ───を無くすのをモットーとして建てられた学園である。

 

 世界中から異種族の生徒が通っているこの学園では、各種族の常識や言動によって問題が起こるのは珍しくない。

 

 そしてそれは今メデューサが危惧している件も例外ではない。

 人狼だから人間を食べる。これは人狼と言う種族にとっては事実であるが、それを本人達を目の前にして「人狼は人間を食べるから離れろ」はこの学園のモットーに反する発言だ。

 

 …………人狼が人間を見てヨダレを垂らしてる時点で、メデューサの意見は正論かもしれないが。

 

「お前も学級委員長になんだから、種族で相手を危険だと勝手に決めつけるのはだな」

 

「先生。一つ良いですか」

 

「あ? なんだ」

 

 何にせよ人間(被食者)側から文句や相談が無い限り、いくらメデューサの意見が正論だろうとも勝手に互いを引き剥がすのは身勝手な正義による横暴と言えるだろう。

 

 そう警告した担任であったが、顔から感情を無くし「無」となったメデューサが小さく手を上げて担任へと意見する。

 相手が話している最中は最後まで聞くべしと注意しようか一瞬悩んだ担任だったが、話を遮ってまで伝えておきたい内容なのか確認してからそれを言おうと、説教を止めてメデューサの言葉を待つ。

 

「人狼が人間の頭を丸飲みにしてます」

 

「人狼ー!?」

 

 メデューサが小さく上げた手の人差し指を曲げて差した方向には、ヨダレで人間の制服を濡らしながら頭を丸飲みにしている人狼の姿があった。

 

「おい人狼、口を開け口を! 友達食ってるぞお前!」

 

「ハッ! つい無意識で!」

 

「無意識で!? 無意識で友達食おうとしてたのかお前!」

 

「わー。目の前が真っ赤だー!」

 

 担任は人狼の口へ手を掛けて急いで開かせようとする。

 その行動で人狼も無意識にしていた行動に気付き、口を開けて人間を口内から外へと解放する。

 

 一方の人間は頭から大量の血を流しながらも特に怯えた様子は一切無く、頬を赤くしながらマイペースを貫いていた。今さっきまで捕食され掛けていたとは思えない態度である。

 

「悪い人間。また無意識にお前を食べようとしてた」

 

「あれ、私今食べられかけてたの?」

 

「頭から血が出てる時点で違和感を覚えなさいよ」

 

 人狼の行動が衝撃的すぎてこの場に居る誰も、人間が複数回食べられ掛けていた事には突っ込まない。何故ならそれを言おうとした途端、別の衝撃で掻き消されたのだから。

 

「えへへ。てっきり人狼くんが私を痛いの好きだから気遣って噛んでくれてるのかと」

 

「「「…………え?」」」

 

 突然のドM発言にこの場に居る3人の空気が固まる。

 きっと気のせいだろう。聞き間違えだろう。そう思い人間の言葉をもう一度脳内で確認し、互いに顔を見合わせるが聞いた言葉は全員同じである。

 

「ねぇ、人狼くん。もう一度私を噛んでくれないかな?」

 

「でもまた噛んだら誤って食べそうで」

 

「大丈夫、私は頑丈だからね! だからさぁ、早く……早く私を噛んで受け入れて!」

 

 さっきまで人間を心配していた空気は何処へ行ったのやら。

 今度は人間が人狼を押し始めて来た。人は見かけによらない。否、種族は見かけによらないと言った諺がこの世界にはあるが、無邪気でのほほんとしてそうな少女がドMと言う事実はまさしくの言葉通りだろう。

 

「え、えっーと……あっ! 悪い人間、俺今日補習があるんだった! じゃあまた明日な!」

 

「あっ! 人狼くん待って~!」

 

 息を荒げて噛んでほしいと頼み込んでくる人間とは1度も出会った経験が無い人狼は、友達の急変したのも含めてどう対応したら良いか分からずその場から逃げ出し、人間もそれに付いていく形で職員室を後にするのだった。

 

 そして職員室に残ったのはメデューサと担任の2人。

 メデューサは担任に抱えていた怒り、担任はメデューサに向けていた説教の言葉などは全て消し飛んでおり、人狼と人間の後ろ姿をただ呆然と眺めていた。

 

「…………なぁメデューサ」

 

「なんですか先生」

 

「あの2人、別にクラス替える必要無いよな?」

 

「そうですね」

 

 そうして無事、人狼と人間はクラス替えの危機を乗り越えたのであった。

 なお、その後の2人の友情は考慮しないものとする。




【メデューサちゃん】
学級委員長の少女。
見た相手を石化させないよう特殊な眼鏡を掛けている。
異種族同士で問題が起こらないか常に眼を輝かせてる真面目だが、行動力がありすぎるのが玉に瑕。
石化フェチ。

【人狼くん】
メデューサちゃんと同じクラスの男子。
人間とは仲が良いが、無意識の内によく人間を噛んでいる。
本人も止めたいと思ってるが本能による行動なので難しい。
今回の一件からちょっと人間ちゃんから距離を開けた。

【人間ちゃん】
メデューサちゃんと同じクラスの女子。
のほほんとして無邪気そうな言動が特徴的。
実際はドMで人狼に噛まれるのを喜んでいる。
今回の一件から人狼くんともっと距離を詰めようとしている。


 小話になりますが、人間ちゃんドM設定は書いてる途中に思い付きました。
 オチは決まっていたが、人間ちゃんが噛まれたシーンを有耶無耶にしてはメデューサちゃんの正論が無視されるモヤモヤした展開になりますので。なのでドM設定を足して「うん。まぁ、本人(人間ちゃん)が幸せなら良いか」と言う形に座らせました。

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