確かに俺はいっぱい食べる女が好きだと言ったがそれそのものになりたいとは言って無えんだが〜暴食龍娘のダクファン世界放浪記   作:誤字報告マジでありがとうございます

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間違えて消したため上げ直しました。ほんとうに申し訳ありません


第10話

12人の仮面をかぶった護衛達に守られて、ズタ袋で顔を隠された奴隷のような服装の連中を縄で引きずりながら、門より法国に入ってきたのは金髪碧眼の絶世の美青年だった。

 

 御伽噺の勇者に白を基調とした神官服を着せたらこうなると言った具合のその姿。

 

 慈愛に満ちた眼に、人好きのする笑みが浮かべられている。間違いない。ヴィジターだ! 

 

 そして奴に向かって愚民共がダボハゼの様に群がる。

 軽い津波の様な人の濁流が巻き起こり、ヴィジターに殺到した。

 

 そして各自土下座なり祈りのポーズなりを始め、口々に喚き始めた。

 

「ヴィジター様! 今日も善行を積みました! 不味いスープを作りやがった妻に手を上げることなく対話で向き合いました!」

「ヴィジター王! オテルの連中から離れて下さいませ! 御身が腐りますれば!」

「ああ! 神よ! なんと神々しい!」

 

 群がる愚民共の中をヴィジターは手を上げ綺麗な笑みを浮かべて進み、大神殿の階段を進み振り向く。そして唇に人差指をあてた。

 

 それを合図にどよめきが徐々に収まり、全ての目が自身に集中した所で奴は囁くように声を発した。

 

「善なる皆様方。今日も良く生きられているようで何よりです。さて。今回は冒険者の方や祝福を受ける前の年齢の方等、私を知らない方がいるので改めて自己紹介を。

 

 私は神です。

 

 と言っても階梯は神の末席であり私のできる事と言えばそう、神託を告げる事。そして」

 

 次の声と共に奴の掌から光を凝縮した様な眩い光剣が顕現した。

 

「神より承った勇者としての力を行使する事それのみです」

 

 聞いてるだけで蕩けそうになる声で奴は言った。

 

「偉大なる勇者ヴィジター様!」

「万歳! ヴィジター様!」

 

 まわりから津波の様な喝采とどよめきが上がる。

 

 いかんいかん。俺まで取り込まれそうだ。

 

 落ち着け。奴は神を、勇者を名乗る人間のペテン師だ。どうせこの喝采だって相当数のサクラを仕込んでるだろう。

 

 俺は頬を両側からパンパンと叩き奴を見た。よし。奴に取り込まれないようツッコミを入れていくぞ。

 

「さて。今回のオテル狩り……悪神の眷属狩り。そこにて神託を得ました。それは」

 

 軽い笑みを浮かべて奴は続きを言った。

 

「普通に生きる事はそれだけで価値がある、尊いものと言うことです」

 

 そして前列の小男……あー多分サクラだなこりゃ……を指さす。

 

「まず、そこのあなた。エリオット・フリーガンさん」

 

「え! ああっ! ヴィジター様が俺なんかの名前を覚えてくださるなんて!」

 

「私は信徒の名は全員覚えています。尊いあなた方に対する敬意として、当然の事です」

 

 嘘つけ、てめえ以前の周回で500人くらいしか覚えてないとか言ってただろ。

 

「あなたはお仕事を週にどのくらいしていますか」

 

「ああ……ヴィジター様……ヴィジター様……お答えします。私は冒険者ギルドで経理をしているのですが、週に平均13時間程、週6日程働いています……」

 

 思ったより冒険者ギルドはブラックだな

 

「そうなのです。1時間でも辛い労働。それを1日最低八時間、週最低五回行う。これを皆様方は当然の如く行っています。これは普通ではありますが。普通ではありません。

 

 それだけではありません。掃除、調理、洗濯を毎日行うこと。それらも当たり前ではありますが、当たり前では無いです。

 

 更にそこから、毎日風呂に入る、他人を愛する、他人に愛される、壊れない様にストレスを解消する、面倒な人間関係と向かい合う、壊れた家を修理する、数え切れない程の面倒な事を乗り越え生きているのが普通の人間。そう。あなた方です。

 

 あなた方が普通と思っていることは非凡です。

 

 あなた方が何ともないと思っている、その日常は、それ自体が弛まぬ研鑽と努力の成果です。

 

 あなた方が普通だと感じその人生は、勤勉さで困難に向かい合った事の結晶です」

 

 ヴィジターの十八番。とにかく扇動相手を褒め殺しにする演説だ。しかも今回は割と本心で言ってるのが質が悪い。

 

「普通に生きる事は難しい! そしてそれ以上に善たる事は難しい! 普通に生きるという地獄のような重労働に、他者に手間を割くという工程まで加わるのだから。他者を害すという、楽な道に流れるのを許されなくなるのだから。そして一切の罪を犯さず善良に生きても、悲惨な人生を送る事もある。文字通りも全てを賭けた努力が報われないこともある、だからこそ」

 

 身振りで自身に注目を集めさせ言った

 

「善人は素晴らしい。そう、あなた方の事だ。あなた方は素晴らしい。それ故に私も神もあなた方を愛している」

 

 ここまでは普通なんだよな。あっ。来るぞ。

 

「そうだ! 善性だ! 金の有無、学の有無、地位の有無! 腕力の有無! それらよりも! そんな事よりも! それ如きよりも! 善たる事こそが人間の価値、その飛び抜けた善性の前では! 金も!学も!地位も!力も!クソほどの価値も無い!」

 

 奴は言っていた。扇動の本質。それは一般的な価値観に対する逆張りだと。

 

 一般的な価値観で弱者に分類される人間、そういう奴に対し、そいつが強者側になれるような別の価値観を与えるのが扇動の基本手段だと。

 

 なので奴は、金の有無、高度な教育、高い地位、戦闘力と言った、強者のステータスを無価値なものだと繰り返し教義に盛り込んで否定した。

 

 その上で、信仰と善性と言う、弱者でも問題無く持てそうなものを徹底的に賞賛する。

 

「そしてそれを理解できなかった愚か者! そうだ! それが闇の徒だ! オテルの尖兵だ!」

 

 さらに奴は繰り返し言っていた。宗教とは、叩かれた時膨れ上がるものだと。地球の宗教を見れば分かるが、信仰宗教は外部の宗教団体に叩かれた時に、それを正しいからこそ叩かれるのだ! 正しい人間よ!負けるな!と声高に叫ぶことで集団の結びつきを強くする。

 

大きめの宗教ではどこでもやっている様に、敵を作って団結するのが宗教拡大の最適解。

 

しかしヴィジターは性格上その敵認定で誰かを傷つけるのを良しとしない。

 

 

拡大か、倫理か。

 

 その板挟みになって奴は一つの結論を出した。

 

 これお得意のペテンとこの世界に来て得たスキルで何とかなるんじゃねえかと。

 

「オテルの尖兵共は! どうしようもない、救いようのない、善人の敵だ。見ろ!中身の醜さが顔にまで広がっている!」

 

 そして引きずられた連中を強引に立たせズタ袋を乱暴に取り出す。そこには醜悪としか言えない顔があった。

 

 言うまでもないがこれがヴィジターが、奴のクラスの【ペテン師】のクラススキル【幻影兵団】で作り出した【幻影体】

 

 存在せず、物理的干渉力を持たない、ただ五感に訴えるだけの幻影。

 

 しかしTRPG要素の強いインポでは無限の使い道を持つ強スキル

 

 ヴィジターも幻影であるコイツラを仮想に敵にし集団を煽ることでどんどん勢力を伸ばしていった。

 

「さらにこいつらは傷つけられ次第、傷つけた者と傷つけた者の大切な者に厄災を振りまく! それ故手が出せないのは皆様方の知っての通りだ!」

 

 ヴィジターは前言っていた。

 

 こういう仮想敵を作る手は、大体魔女狩りに繋がるんだよねと。だから対策は過剰な程に、しないと。

 

 と

 

 この、攻撃すると実害があるというのも、ヴィジターの嘘だ。奴は大嘘つきのクソ野郎だが弱者が傷つくのを何よりも嫌う。自分の嘘で魔女狩りが起こらないよう相当手を回してる。

 

「ただしこの剣は、勇者の聖剣はあらゆる異能を無効化する! 【聖剣作成】!」

 

 

 

 眩い光の剣がヴィジターの手に顕現。さらに奴を祝福するように天から光が降り注ぎ、ペテン師の背中と頭には光輪が顕現。そして奴は剣を一凪ぎし、幻影体の首を刎ねた。

 

 奴のクラス、ペテン師は、幻覚を見せる事に特化している。

 

 幻影で出した敵を虚仮威しの実体のない武器で斬るなんてお手の物だ。

 

 

 ペテンと幻影で奴はこの国の王までのし上がったのだから

 

 

 こうして幻覚相手の公開処刑ショーは終了した。

 

「おおおおおお! ヴィジター様! ヴィジター様!」

「ヴィジター様! ヴィジター様!」

 

 大歓声が起こる。

 

 やっぱみんな処刑って好きなんすね

 

 まあええわ。

 

「善人の皆様方! オテルの徒は去った!」

 

 そしてヴィジターがガタガタ説法を始め、最後に洗礼タイムが始まった。

 

 洗礼とは言うが女しか参加出来ない儀式だ。というか儀式ですらない。やる事をめちゃくちゃ簡単に言うと、ヴィジターのおでこにキスをする。すると神に祝福されると言うものだ。

 

 好色なヴィジターが、百パーセント自分のために作ったクソ行事だ

 

 

 確か

 

「これくらい役得として許して♡」

 

 とかほざいてたな。

 

 そう思いながら洗礼の列に並ぶ。すぐに俺の番が来た。

 

 俺はスタスタとヴィジターのもとに歩み寄る。

 

 と言ってもキスはしない。今こんなんでも野郎に口づけとか嫌すぎる。体に引っ張られてるのは口調だけだっての 

 

 キスするフリをして俺は言った。

 

「人間のペテン師のヴィジター様、バラされたくなかったらレストラン【アリスフィーズ】にて1食奢ること。1時間待つ」

 

そして俺はスタスタと歩いていった。

 

……あれ?もしかしてコンタクトのため氷結熊倒したの意味無い系か?これ?

 *

 

「やあやあ。ヴィジターさんだよ。神を語る嘘つきで単なる人間のね」

 

 宝石を大量に飾った成金丸出しの服を着て奴は現れた。ご丁寧に幻影で顔まで変えてやがる。

 

「しかし驚いたな。結構デカ目の爆弾情報だと思ったけど、1食奢るだけで良いのかい? 結構ここ高級なお店だと思うけど、それ込みでも無欲だな。」

 

 しかしこうしてみるとこいつの服キラキラしていて美味しそう……よ、涎が……

 

 いきなり涎をダラダラ垂らし始めた俺を不審に思ったのか怪訝な顔をするがすぐに元のニヤケ面に戻った。

 

「しっかしこんなに美人な脅迫者さんだとは驚いたな。俺が口利きすればどこでも雇ってもらえると思うぜ♡なんせ君は……」

 

「は……早く食わせて……」栄養不足でふらふらしながら俺は言った。

 

「色々話したいけど、今は、その余裕ない…もう5時間も何も食べてないの……」

 

 

 

「?あ、うん。分かった。とりあえず1番高いコースでいいかい?」

 

「フルコース? いや、自分で注文するわ…」

 

 

フルコースとか冗談じゃねえ。あんなちまちま食べていたら待ってる間に餓死するっての。

 

 モノを食べる時はとにかく量が必要なんだ。こじゃれたお店でちんまい皿にスズメの涙程の料理を出されたからってどんなに味が良くても空腹が加速するだけなんだ。

 

 一人で静かに、メガ盛、ギガ盛、エフィちゃんにっこり。

 

 

 とりあえず俺は店員を読んで注文した。

 

 *

 

 バクバク! バクバクッ! ガツガツ! ガツガツガツガツガツガツガツガツッ! 120品はあるメニューを片っ端から注文しては胃袋に送り込んで行く。

 

 ビーフステーキ、ハンバーグ、ビーフシチュー、ローストビーフ、ミートローフ、ポークカツレツ、トンカツ、チキンカツ、チキンソテー、ローストチキン、グリルポーク、ポークジンジャー、シュニッツェル、ミラノ風カツレツ、エビフライ、白身魚のムニエル、サーモングリル、フィッシュアンドチップス、エビグラタン、ホタテのポワレ、ブイヤベース、サーディンのオーブン焼き、スパゲティナポリタン、カルボナーラ、ボロネーゼ、ペペロンチーノ、ペンネアラビアータ、ラザニア、マカロニグラタン、シーフードパスタ、クリームパスタ、オムライス、ハヤシライス、ドリア、リゾット、オムレツ、スクランブルエッグ、エッグベネディクト、コロッケ、メンチカツ、ロールキャベツ、ピザ(マルゲリータ、クアトロフォルマッジ、ペパロニ)マッシュポテト、フライドポテト、ポテトサラダ、グリル野菜、ラタトゥイユ、マカロニサラダ、グリーンピースのバターソテー、キャロットグラッセ、オニオンリング、アスパラガスのバター焼き、ブロッコリーのガーリック炒め、キノコのソテー、コンソメスープ、ポタージュ、オニオンスープ、ミネストローネ、クラムチャウダー、冷製ポテトスープ、ボルシチ、冷製トマトスープ、シーザーサラダ、グリーンサラダ、ニース風サラダ、カプレーゼ、ポテトサラダ、コールスロー、ウォルドルフサラダ、パスタサラダ、プリン、クレームブリュレ、パンナコッタ、ベイクドチーズケーキ、ガトーショコラ、アップルパイ、タルトタタン、ティラミス、チョコレートムース、コーヒーゼリー、フルーツゼリー、バニラアイスクリーム、チョコアイスクリーム、抹茶アイスクリーム、バゲット、クロワッサン、パンオショコラ、フォカッチャ、ガーリックブレッド、ディナーロール、ライ麦パン、ブリオッシュ。

 

 以上の食事が注文する端から俺の胃袋に消えていった。

 

「し……幸せ……」

 

 そしてどれも涙が出るほどに美味い! これならどれだけあっても喰える! 

 

 もぐもぐ、もぐもぐ、もぐもぐ。

 

ステーキを三枚まとめて口に運び、七面鳥の丸焼きを貪り尽くし、唐揚げの山を平らげ、カレーを飲むように流し込み、焼いた飯をガツガツと喰らう。我ながら自分のほっそい腹の中にどういう原理でこの大量の飯が詰め込まれているのか良く分からん。

 

「え……ええと、エフィちゃん、だっけ。よ……良く食べられるんだね……」

 

「ええ、食べても食べても足りないのよ。むぐ」

 

「あ……あのお客様……お皿お下げします」

 

「ありがとう。あ、店員さん。この魚の煮付け美味しかったから追加で10皿ちょうだい、この焼いたご飯とお肉と麺も5つづつ。白いお米はもう釜ごとで良いから持ってきて」

 

「…………………………あ、あの、お客様……ご健康のためにもそれくらいで……」

 

「あ?」

 

 エビフライを口に放り込みながら、フライドチキンを頬張り、それらをハンバーグで流し込みながら威圧の意思を込めて言った。

 

 

「いえ……失礼しました……」

 

 言っとくがこれでも相当セーブしているんだ。

 

 欲を言えば獣の様に料理にかぶりつきたいし、「ごはん! ごはん! ごはんごはんごはん!」とドラムの様にテーブルを叩いて催促したい。正直食材のままでもいいからガンガン持ってきて欲しい。

 

 持ってくるテンポも一皿辺りの量も俺の食事の勢いには全く追いついてないんだから。

 

「生殺しでしょこんなの! 早く! 早く持ってきて! んっんっ! むぐ! ごくん!」 

 

 

 引きつった笑みを浮かべた給仕さんが豚の丸焼きを三つ持ってきた。相当なボリュームのあるはずの肉塊達も10分持たず骨に変わった。

 

 ヴィジターも笑みを浮かべているが完全に放心している。

 

「ふう……とりあえずメニュー三周は回ったわね……」

 

 ヴィジターがホッとした顔をした。

 

「あ……あの……もっと食べてもいいかしら……あなたが許してくれるのなら……だけれど……」

「……ああ……うん……うん、どんどん頼み給えよ! 俺は金持ちだからね!」

「いいの!? やったー!!」

 

 その言葉とともに3杯目にはそっと出しの概念はどこかに行った。

 

 そこからはどれだけ喰ったか覚えていない。

 

 最初の頃はまだ俺の食事ペースに追いついていた皿の片付けも、給仕さんが死にそうな表情を浮かべ疲労困憊と言った様子になってからは全く追いつかず、テーブルの上は皿で埋まった。

 

 なので食った皿は床へ置いていったが、床に置いた皿の山が俺の座高よりも高くなっても全くもって食欲は収まらなかった。

 

 最後の方は料理は大鍋やら調理器具にそのまま盛られた状態で持ってこられていたし、俺も生の魚や肉にかぶりついていた。

【アリスフィーズの在庫まるまる完食! 経験値700習得! LVUP✕2! 【転移無効】腕力↑↑体力↑↑↑速度↑技術↑】

 

「あ……あのもうこれで当店の食材はおしまいです……利用していただけるのは当店としてもありがたいのですがもう料理を提供することは……」

 

 そういう店長は完全に恐怖で足が震えていた。給仕さん以下店員も同じだ。

 

 こいつら俺がメニュー一周するまではやんややんや言ってたけどそこから美味しかったものを俺が注文し直した辺りでドン引きし始めてたなそういや。

 

「ふぅ、ありがとう。店長さん。ごちそうさまでした。とってもおいしかったわ」

 

 やっと人心地ついた。死ぬかと思った。どれだけ少なめに見積もっても600キロは喰った。正直まだ気を抜くと腹が鳴りそうだから満腹には程遠いが、腹の足しにはなり……なり……なったかこれ。

 

「あとヴィジター。あなたもありがとう。どうにか正気を……んっぐ……ごくり……保てたわ。」

 

 デザート代わりに最後に残った七面鳥の丸焼き肉にかぶりついて格闘しつつ俺はそういった。

 

「あ、ああ、うん……ええっと……満足したかい?」

 

「まあ前菜程度には……本当はもうちょっーとだけ食べたいんだけど……あーむっ、ごくんっ」

 

「は?」

 

 完全にキチガイを見る目になっている。いつもヘラヘラすかしてるこいつの驚き顔は面白いな。そして腹具合的な意味を抜いてもまだまだ食料は欲しい。俺の能力上、食料はいくらあっても足りないのだ。

 

 そして何より、食事がこんなにも素晴らしいものだとは思ってもいなかった。

 

「くんくんあっちのカレー屋も美味しそうね……」

 

「……もしかしてあっちも行く気かい……」

 

「……流石に、これ以上は、ね……いくらなんでもこれ以上奢ってもらうのは罪悪感が……ところで、ものは相談なんだけど、そのお肉、食べる? 食べないなら欲しいんだけど」

 

 申し訳無さそうに人差し指同士を合わせながらおれは言った。

 

 *

 

 やっと片付いたテーブルの前でヴィジターが言った。

 

 

「で、なんだい話ってのは。食事をおごられるのが目的ってわけじゃ……目的の全てじゃないんだろ」

 

「あたりー。なかなか鋭いわね」

 

「んじゃあ教えてくれよ。俺アホ騙す事しか出来ないけど結構有能だぜ」

 

「魔王って知っているかしら」

 

 そう言うとヴィジターの目が途端に据わり始めた。

 

「ここから言う事は、魔王の事。お話聞いてくれるかしら。ねえ転生者さん」

主人公の心の声は

  • 男のままがいい
  • ゆったり女に変えていった方が良い
  • さっさと女に変えていった方が良い
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