確かに俺はいっぱい食べる女が好きだと言ったがそれそのものになりたいとは言って無えんだが〜暴食龍娘のダクファン世界放浪記   作:誤字報告マジでありがとうございます

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第16話

「こっちです! 僧侶さん!」

 

 助けを求める声の方へ向かった俺は、ボンボンめいた貴族風の青年と遭遇した。

 

そして少し話をして、父親が危篤だという事を聞き、白魔法で助けるように頼まれた

 

 どうやら服装から俺を僧侶系統職だと勘違いしているようだ。

 

 白魔法なんてまだ一切使え無いのによ。

 

 まあ良いや、そう思ってくれてるなら。

 

 俺は、できる限り敬虔な僧侶に見えるような声色で言った

 

「はい! お任せください!」

 

 あと、勘の良い方は前回のヒキでなんとなく察したであろうが、こいつは人間じゃない。

 

 さっきから【反響定位】でサーチしているのだが、目の前のこいつからは全く心臓の音がしないのだ。

 

 じゃあ何かと言われれば、おそらく悪魔だ。

 

 悪魔。それは人類の宿敵。ありとあらゆる、人と名のつくものに大して異様な加虐性を発揮する、人類の敵対種。人を嬲り殺し、欺き騙し、喰らい侵す。全ては人類を苦しめる為に。

 

 そしてこいつらは善人を嫌う。おそらくこんな七面倒な事ー怪我人がいると言う嘘で冒険者をおびき寄せるーやっているのも、他者の死を見過ごせない善人が、下手に怪我人を助けようとした事を後悔しながら死ぬというシチュエーションを作るためだろう。

 

 たちの悪い事にこいつらは人間の宿敵とも言える生態をしている癖に、種族としての戦闘力の中央値は最高位に位置する。

 

 言わば、他者を害するのに十分な力を持ったゴブリンと言うところか。

 

 余談だが、亜人であるゴブリン先生もコイツラによってしょっちゅう虐待されているようだ。

 

 あーゴブリンの話したらゴブリン食べたくなってきた。あの大して美味くもない肉の粗悪な味が何故か恋しく

 

 ぐるるるるるるるるるるるる

 

 ご飯の事を考えていたら猛烈な勢いで鳴りだした腹の虫に怪訝な顔で冒険者……もとい悪魔が振り向く

 

「……失礼しました。昨日からずっと、小腹満たしにもならない量のご飯しか食べられていなかったもので……は、はしたない……」

 

 カマトトぶりながら俺は言った。

 

「は、はい! 父さんを治療していただけたらしっかりとお礼はしますのでなんとかそれまでは……とにかく父さんを助けてください!」

 

 悪魔の演技だと分かっていても、同情してしまいそうな声と必死さで奴は言った。演技派だな、こいつ

 

「ええ、食べさせてもらいます。文字通り、骨の髄までしゃぶり尽くすように」

 

 後ろをついていきながら、舌舐めずりをして俺は言った。

 

 あ──ーうまそー。

 

 気を抜いたら、おそらくガブリと行きかねない程にその後ろ姿は魅力的で、涎をバレないように拭うのが大変だった。

 

 というかこの身体になってから何喰っても美味いのだ

 

 空腹は最高のスパイスと言う名言通り、腹が減って腹が減って仕方の無いのもあるだろうが、それ込みにしても飯が旨すぎる、もっと食わせろ。

 

 閑話休題。目の前を進んでいるこいつは人間の幼児みたいな姿をした小悪魔インプだろう。

 

 気質は小物チンピラと言った具合であり戦闘能力は低いものの、強種族たる悪魔の末席だけあって【雷撃(ライトニング)】と言う魔法を使え、空を飛べる油断ならない相手。

 

真正面から戦わないように不意打ちで仕留めるべきだろう

 

そして俺達は、血塗れの戦士風の男が倒れ込んでいる所にたどり着いた

 

「父さん! 僧侶さんを連れてきた! 父さん! 父さん!! ……良かった、息がある……」

 

 この、怪我人役をしているのは【レッサーデーモン】だろう。性格は紳士の薄皮貼ったチンピラ。見た目は角生えて羽の生えた赤い肌の大男。強靭な外皮を持ち、【魔矢】【雷撃】の2種の魔法を使う優秀な魔法使いであり、再生能力まで持つ凶悪な種族だ。

 

 インポ本編でのこいつのレベルは37、要はCランクに位置する凶悪な魔物だ。

 

 余談だが、今の俺のレベルは19、Eランク相応だ。

 

 ん?【反響定位】が人間の可聴域に無い超小声の会話を拾った。ふむふむ

 

「連れて来ましたよ! 馬鹿な冒険者を! 見てくださいよあの間抜け面! 今から嬲り殺しにされるとは夢にも思ってないあの表情!」

 

「今度はこいつですか。なるほど、この世の中には何も辛いことなど無いと思ってそうな間抜け面ですね。この前と同じく、四肢をもいでどこまで逃げられるかゲームでもしましょうか」

 

「最高ッス。ああでも、腹減った腹減ったうるさかったし、物理的に腹の体積減らしてやるのも乙なものじゃないでしょうか!」

 

「ふむ、ならせっかくだし生きながら踊り食いにしてやりましょうか」

 

 ヒソヒソ話してるつもりだろーが全部聞こえてんだよボケ。

 

 そんなボケ共へ俺は言った。

 

「話は後です。偉大なる主に仕える徒として、命失われる見過ごす事はできません。早く治療を!」

 

 こいつらも役者だとは思ったが俺も割と役者だな

 

 インプは迫真の演技で泣きながら、必死で心臓マッサージの様な事をしている。

 

「父さん! 助かる! 助かるよ! 助けが来た!」

 

「では、治療を……」

 

 無防備に奴らの前で膝をつき、レッサーデーモンに手をかざし、()()()()()()()()()()()俺は言った。

 

「あ! ちょっと待って! まずここを見てください」

「どこでしょうか」

「ここです、ここ」

「ん」

 

 血まみれの腹に反射し映ったのは俺の可愛いお顔さん

 

「それ、今から嬲り殺される間抜けの顔ですよ。お嬢さん」

 

 瞬く間に、父親役はレッサーデーモンに、息子役はインプに変化する。

 

 そして

 

 黒魔法【雷撃】が俺の頭に向けて放たれ、レッサーデーモンの鋭利な爪による刺突が俺の腹へと叩き込まれ……そして弾かれた。

 

【暗殺無効】発動。

 

 自身の認識していない攻撃を無効化するそれにより不意打ちを弾く。ちなみに【反響定位】の発動を切った理由はこれを発動させるためだ

 

「「は?」」

 

 確実に戦闘不能に追い込めると思っていたその一撃を弾かれ、困惑の声を上げる悪魔どもに向けて俺はスキルを多重発動する。

 

【移動加速】✕【亀の守り】✕【熊の膂力】✕【肉塊の生命力】✕【血族の魔力】✕【器用な手先】の掛け合わせで作った融合スキル【身体能力強化Ⅱ】。と【身体能力強化】を同時起動し、【二刀の極意】にて【爆槍】と【水斧】を同時にそれぞれに振るった。

 

 インプに振るったのは爆槍。その刺突は末席とは言え、強種族たる悪魔の強靭な外皮をちり紙でも破くかの様に貫き、串刺しにした。直後直径1メートル程の爆発が起きる。それがインプの全身を焼き焦がし、容易く行動不能に追い込んだ。

 

 レッサーデーモンに振るったのは水斧。

 

 インプより更に強靭な外皮には斬撃が通らなかったものの、渾身の一撃によって発生した高さ二メートルにもなる水刃の水圧によって、レッサーデーモンは10メートル以上吹き飛ばされ、壁へと叩きつけられた。斬撃への強耐性を持つデーモンも、壁に叩きつけられた衝撃ではダメージを受けたようだ。

 

 いつでも、誰でも自分が狩る側に回っているだと思っている時が一番油断する。

 

 その油断に不意打ちをたたき込んだおかげでだいぶ有利な状況を作れた。

 

「え……は?」 

 

 ふっとばされて間抜け面を浮かべているレッサーデーモンに追撃を仕掛けようと思ったけどやめた。

 

 だって槍の先にこんなにも美味しそうな餌がいるんだから! 

 

「インプさんはどんな味がするのかしらあ! いただきます!」

 

 咀嚼! 嚥下! 咀嚼! 嚥下! 咀嚼! 嚥下! 

 

 バキン! バリッ! ゴクンッ! バクンッ! ボリッ! ゴクンッ! 

 

「い゛だい゛! い゛だい゛! な゛ん゛で゛!? 痛い! 痛い! 痛い! 食゛べな゛い゛で! ごめ゛ん゛な゛ざい゛! い゛や゛だ……い゛や゛………………………………………………………………」

 

【インプ完食! 経験値80習得! 魔力↑【雷撃】習得!】

 

「ごっくん。クヒヒヒヒ! ごちそうさまぁ。骨の髄までとってもおいしかったわあ。最下級の悪魔でもこんなにおいしいなら、もっと上位の悪魔ならもっともっと美味しいわよねええ」

 

 舌舐めずりをしながら、レッサーデーモンを上から下まで舐める様に見ると少し奴の顔が青褪めた様な気がした。

 

「なんだ! なんなんだよテメエはよお! グールか!?」

 

「どうせもうすぐお腹に収まる相手にそんな事いってもカロリーの無駄だわ。はぁああああ……お腹空いた……」

 

 そう言ってお腹を擦っていると少し慌てるように奴は黒くつや消しされた短剣を取り出した 

 

 ああ、アレはヤバいわね。

 

 そのマジックアイテムの名は【雀蜂の短剣】

 

 効果は即死

 

 これは2度切りつけた部位へ、とある特殊な猛毒を流し込む。筋弛緩剤にも似た性質を持つその毒は、体内に入り次第、瞬く間に心臓にたどり着き、その行動を停止させる。

 

 即死というジャイアントキリング特化の性能の為低レベル時のレベリングに便利だった。

 

 もちろん極端な格上、それこそレベル60、Sランクあたりから効かなくなってくるのだが、このレベル帯だと【即死耐性】を持っていてもほぼ確実に通る。

 

 更にレッサーデーモンのレベルは37。C級の魔物、要は、一般的な才の冒険者の限界到達点と同じランク、それも結構上の方に位置する。

 

 それに対してこちらはレベル19、Eランクだ。本来勝てる通りが無い。そのはずなんだが

 

「割と戦えちゃうのよね、これが」

 

 他クラスでは不可能な程の量の強化系スキルを重ねがけできること。あらゆるものをドーピングアイテムにできる特性を生かしたステータスの底上げができる事。

 

 この二つにより、【終焉龍】のステータスは、現在レベルではあり得ない値になる。

 

 公式チート種族は伊達では無いのだ。

 

 更に、他種族ではバランス調整のために一つしか取れないような強スキルもいくらでも使える。

 

 例えばこれだ。

 

【氷結氷舌】発動。

 

 発動した瞬間、辺りの温度が氷点下まで下がり、霜が降りる。これこそが今の俺の最強の攻撃手段。

 

 凍った血溜まりに、反射した自分の面が移る

 

 そこにはクール系の美女の面から人間離れした長さの舌が飛び出すと言う中々にショッキングな映像が流れていた。

 

 触れようものなら、さしもの悪魔もただではないそれを振るう、振るう、振るう。

 

「クソがっ! テメエも魔物かよ! 【雷撃】!」

 

空気を青白い雷光が駆け抜ける

 

「……痛っ!」

 

 

 迸る雷をまともに浴びた結果、切られるのとも焼かれるのとも殴られるのとも違う激痛が全身に走り、身体の操作が効かなくなる。

 

 ヤバい。身体が上手く動かない。俺は前のめりに倒れ込んだ。

 

「下等生物が! 悪魔様に一丁前には向かいやがってよお!死ねや!」

 

 奴は追撃の【雷撃】を放とうとする。

 

 

 しかしそれは放たれる事は無かった

 

 奴の足に地面から出てきた舌が絡まったからだ

 

「あ?」

 

 奴の足が凍結して粉砕されたのはその直後だった。

 

「〜~~~~~~~~~~ッ!」

 

 やった事と言えば簡単だ。

 

 うつ伏せになりながら【氷結氷舌】に【地潜り】の効果を乗せて、地中に舌を伸ばし、地面の中から奴を狙っただけだ。

 

でも結構効果はあるようで、奴は相当痛そうな悲鳴を上げた。

 

 足を失った餌に爆槍での追撃を仕掛けるが、あっさりと片足でのバックステップによって躱される。

 

 距離を取った奴の足がまるでビデオを逆再生するように再生する。

 

【再生】か

 

「チッ、まあ良いわ。御駄賃はもらえたもの」

 

 砕けて落ちた、悪魔の足を拾い上げ、笑みを浮かべて掻っ込む。

 

 ボリボリ! ボリボリッ! 

 

【レッサーデーモン1/8食! 経験値70習得!】

 

「ゴックンッ。これが本当の霜降り肉ってね。ヒヒヒッ! ……はぁ……味が落ちた……悲しい……」

 

 一片たりとも残さないけど。

 

 そしてもう、このスキルはよっぽど強力な餌以外には使わない事を決めた。

 

 ごはんが美味しくない事がここまで悲しいとは思わなかった。

 

「ク、クソが! テメエ何を食ったと思ってんだ! 殺す! ぶっ殺してやるぞ糞女!」

「お腹が空いたわ!」

 

 そして戦闘が始まった

 

 *

 

 大体決着はついた。

 

 10分にわたる戦いの中、麻痺毒を大量に撃ち込まれ奴は無力化されていた。

 

 勝敗を決めたのは手札の量 鍔迫り合いになった時には【尻尾】を生やし体勢を崩し、隙あらば蜘蛛糸で動きを鈍らせ、【氷結氷舌】を牽制代わりにうち、【雷撃】で【雷撃】を相殺する。強靭な外皮も骨すら噛み砕くする俺の噛みつきの前には歯応えのあるおつまみにしかならなかったのも大きかった 

 

 しかし敵もさるもの、俺もただでは済まなかった。

 

 チラリと腕肉に目をやった。

 

 俺の右腕はドス黒く染まっている。雀蜂で腕を2回切られたのだ。

 

 その結果、【雀蜂の短剣】から、絶死の猛毒が体内に入り、心臓向けて流れている。

 

【グルメ】【毒物耐性】で進行が遅れているが、このまま腕を抜け、心臓にたどり着くのは時間の問題だろう。心臓まで進行した雀蜂の毒は今のレベルでは絶対に防げない。

 

「ざまあ……見やがれ……」

 

 ボロボロの悪魔が、笑みを浮かべていた。

 

 




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