鎮守府アナウンス   作:蒙古の尖兵

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第3話

どうしてこうなった!?

 

俺はただ鎮守府に侵入して噂の真相を確かめようと思っただけなのに(重罪)。

 

暗闇の中を無我夢中に。どこをどう走ったかなんてもう分からない。ただとにかく追手からの追跡を撒くために必死だった。

 

草むらの中に身を潜めて乱れた息を整える。よし、一旦状況の整理だ。

島風ちゃんたちの様子が急変した。鼻の下を伸ばしていた俺は腕を掴まれそうになるがすんでのところで回避。プレハブ小屋のドアをぶち破ると外にいた艦娘が向かってきたがそれも緊急回避。縦横無尽に全速力で走って今に至る…。

 

「おにーさーん!どこ行ったの~?出ておいでー」

 

息を潜めて身を縮める。遠音に追跡者の声が聞こえてくる…。しかも複数。当たり前か。一体何人の艦娘に追われているんだ…?

 

「怖がらせちゃったのなら謝るよ~!みんなで楽しく遊ぼ~」

 

…彼女が最後に言い放った言葉を思い返す。食べる、とはどういうことなのか。食人?まさか!?しかし行方不明の件も知っている風な感じだったし、冗談ではなさそうだ。だとしたらとんでもないところに来ちまったぞ。

 

草むらからおそるおそる顔を出す。少し遠くのところで幾つものライトが行ったり来たりしていた…。あれ全部が俺を探しているのか!?

 

再び身を屈める。もうだいぶ息も整った。ここがどこかは依然分からないが、暗闇に目が慣れてきたことと月が出ていることが幸いして走ってる合間に崖から転落みたいなことは避けれそうだ。

 

さて、まずはもう一度あの雑木林の方へ行けたらいいのだが。そうすれば壁を見つけられるだろう。そしてそのまま壁づたいにして穴を見つけて…

 

「見ーつけた!!」

 

は?

 

「探したっぽい!」

 

不意にライトで顔を照らされる。眩しいと思ったが手で顔を覆いながらなんとか光源の方を見ると赤い二つの目が爛々としているのが分かった。

 

「さあ、追いかけっこはもうおしまいに…」

 

「うわあ!!!」

 

悲鳴。咄嗟に身を翻して逃げようとする。しかし首根っこを掴まれたのだろうか、俺はすごい力で後ろに引き倒されてしまう。

 

「もう!逃げないでほしいっぽい!夕立だって乱暴はしたくはないんだから!」プンスコ

 

どの口が言っているんだ…。だが上から俺を見下ろす赤い瞳に睨まれて体はすっかり固まってしまった。

 

「痛かったぽい?ごめんね、力加減はあんまり分かんなくて…んーと、じゃあ夕立さんがおぶってあげるっぽい!」

 

冗談じゃない。

 

尻餅をついた俺を心配してゆっくり手を伸ばす艦娘、夕立に向かって俺は咄嗟に手に掴んだ土を投げつける。

 

「痛!!目に入ったっぽい!!!!」

 

チャンスだ。強張った体に渇を入れ、なんとか立ち上がる。夕立をチラリと見ると目元をグシグシ。今だ、今しかない!

 

「おにーさん、そこにいるっぽい!?どっかに行っちゃ嫌っぽーーーい!!!」

 

ギャーギャー騒いでいる声が後ろから聞こえてきたが俺は振り返らずに全力で駆け抜けた。

 

ーーー

 

やみくもに走り続けてどのくらいたったか。居場所を特定されないようにと逃走中はスマホを確認しなかったが。

 

「マジか…」

 

ポケットの中を探すがスマホはない…。おそらくどこかに落としたのだろう…。

 

「また変なところに出ちゃったぞ」

 

草木の生い茂る悪走路を走っているのは間違いないのだ。よく見れば腕のところに複数の切り傷。枝か葉っぱに引っ掻けたのだろう。今日は大きな満月が出ているからスマホのライト無しでも穴のところまでたどり着けるとは思うが…。

 

「…行ってみるか」

 

こうしていても埒があかない。と言うのも俺の前方数十メートルのところにポツンと一つ、小屋と思わしきものが建っている。室外灯こそ青白い光を放っているが、肝心の室内は消灯しているぽかった。ポケットをもう一度探る。現在の持ち物は財布のみ。現在地は不明。よくよく考えたら腹も減ったし喉も乾いた。あの小屋で何か得られないか。

 

明るくなるのを待った方が安全に動ける気もするが背に腹はかえられない。それに明るくなれば艦娘たちに発見されるリスクも高くなる。闇に乗じて鎮守府から逃れるのがベスト。

 

「誰もいないでくれよ、頼むよ…」

 

祈る思いで小屋へと近付く。幸い、人の気配はない。

 

「クソッ!」

 

残念ながら小屋には鍵がかかっていた。しかし諦めず小屋の周りをうろうろしていると鉄パイプが無造作に打ち捨てられていた。

 

先程のことを思い出す。さっきは運がよかった。ぶん投げた土が相手の目に入って目眩ましになったから逃げれた。しかし相手が複数なら?しかも俺は男とは言えただの一般人、対して相手は女とは言え軍に属している。戦いにすらならないかもしれないが。

 

いざとなれば艦娘と戦闘することになるかもしれない。俺はおもむろに鉄パイプを拾い上げる。

 

「…!」

 

咄嗟に小屋の裏手側にまわる。暗闇の中で小さく揺らめいていた光が少しずつこちらに向かってくるのが見えたからだ。

 

(来るな来るな来るな…!)

 

心の中で何度も唱える。しかし無情にも耳に誰かの足音が響く。それは次第に大きくなり、俺のすぐ近くで鳴りやんだ。

 

誰かがこの小屋に来たのは間違いない。

 

裏手から顔を覗かせる。一筋の光がゆらゆらとしている。手に持ったライトで辺りを照らしているようだ。

 

(どうする…?)

 

考えている暇はなかった。ジャリ、ジャリと土を踏み込む音が聞こえ始めたから。

 

(こっちに来ようとしてる…!)

 

小屋の裏側、つまり俺の隠れる場所へと向かってきている。鉄パイプを握る手に力が入った。

 

(覚悟を決めろ…!やらなきゃやられる…!)

 

ジャリ、ジャリ、ジャリ…。心臓の鼓動と何者かの土を踏みしめる音がリンクする。そしてライトの光を目にした瞬間、俺は怒鳴りながら鉄パイプで殴りかかった。

 

「おっとぉ!!」ガシッ

 

「…!」

 

馬鹿な…!?不意討ちしたのに…!

 

虚しく俺の渾身の一撃は目の前の少女に片手で受け止められていた。

 

「へぇー!結構威勢いいじゃんか!」

 

ギチギチ。鉄パイプにさらに力を込めるがびくともしない。どうにか引っこ抜こうと悪戦苦闘するがヒョイっと簡単に奪われてしまった。その反動で尻餅。

 

「お前がみんなの探してるお尋ねもんだろ?まさかこんな外れのところまで来てるとはなぁ?」

 

勝ち誇ったような顔でその艦娘は話し掛けてくる。

 

「お前、名前は?私に殴りかかってくるなんて大したもんだぜ、気に入った!まぁ、もう少し鍛えた方がいいとは思うけど笑」

 

「…」

 

「なんだよだんまりかぁ!?仕方ない、私から名乗ってやる!私のことは長波、長波様と呼んでくれていいぜ!」ニカッ

 

「くそ、これでもくらえ!!!」

 

長波と名乗る艦娘がエッヘンと胸を張った瞬間、俺は手に握りしめた土を彼女の顔目掛けて投げつける。

 

「あっぶね!!」

 

すんでのところで避けられた。やはり先程のは運がよかったのか。

 

「おいおいおいおい!!!人が自己紹介したんだぜ?お前も名を名乗れよ、土なんか投げてないで!」

 

「ぐああ!」

 

長波は俺に向かってきた。もう一度土を投げつけようと試みるがそれをする前に制圧。彼女は俺に馬乗りになった。

 

「よっわ~、ナヨナヨしすぎだろ。もっとたくさん食べて筋肉つけろよなぁ」クスクス

 

グイグイと地面に押さえつけられる。そしてすぐに思い出した。このままでは食われる!!!

 

「ま、待て!俺を食うのか!?」

 

じたばたと身をよじる…が上に乗っかる長波は石のようだ。

 

「えー、どうしよっかなぁ~」

 

「そうだなぁ、長波さまの奴隷にしてやろうか笑」

 

「嬉しいだろ?ドーテー君笑」

 

ど、童貞…?バカヤロー、お、俺はどどどうていちゃうぞ!

 

「なーんかみんなのところ連れてくつもりだったけど…その前に味見したくなっちゃった」

 

「私が優しく手解きしてやんよ!」

 

長波はそう言うや否や上着を脱いで投げ捨てる。そして上半身が下着だけの状態になると興奮した面持ちで。

 

「どーよこれ、すごいだろ」

 

彼女は両手で胸部を寄せてみせた。

 

「す、すごい…」

 

「…へへ、だろ?」テレテレ

 

驚嘆。思わず見惚れてしまった。だって大きなパイ乙が、こ、こんな中学生みたいな娘に…!

 

しかしここで俺は一つの可能性に気が付く。それは俺に胸を見せつける長波の態度にあった。

 

なんというか反応が初々しいような…?

 

「ど、どーよ!すげーだろ?」アセアセ

 

先程までとは打ってかわって焦りが見え隠れする。というか彼女は切り札を見せつけてから次の攻撃へとなかなか移らない。もしかして移らないんじゃなくて分からないのでは…?しかしさっきから襲われまくっているからな、こんな年端のいかぬ少女たちに…。

 

「…え、えーと///」

 

焦らしているのか?いや、それだとさっきまでのヤル気満々な姿はなんなのだ?ブラフ?

 

というか…

 

この娘、全然ブラ脱がないやん!!(迫真)

 

「………」カオマッカ

 

なるほどこれは勝てるかもしれない。

 

俺はここでこの窮地を切り抜ける一つの可能性にかけてみることにした。

 

「長波さまってさ、もしかして経験ない感じ?」

 

「は、はぁ~ーーー?そんなわけ」

 

「男の裸なんて見たことないんだろ!!!」

 

「んなぁっ!!」カオマッカッカ

 

あぁ、この娘処女だわ…(確信)

 

「い、いや経験あるし!ふつーにやりまくってるから?ふつーに男食いまくってるから!!お前こそドーテーだろ?やーい、童貞童貞!生まれてから彼女なし!」

 

俺に股がってワーワー捲し立てる長波さま。なんか中学生みたい(笑)

 

「な、なに笑ってんだよぉ///」

 

しかしこれはなんというか…。ここで俺に思いもよらぬ考えが浮かんだ。いや、至極当然なのかもしれない。

 

というのも俺は大人としてこの中学生にちゃんと向かいあう必要があるのではないか?艦娘とはいえちゃんと大人が導いてあげなければいけないのではないか。

 

俺はこの時、原住民に神の素晴らしさを説く宣教師のように。この娘に性とは何か、愛するとは何かを伝えなければいけない、そんな使命感を感じてしまったのだ。ひとえにそれも彼女の初々しさがもたらした産物なのかもしれないが。

 

「お、おーい///」

 

「長波さま、よーく聞いてくれ!!!」

 

「は、はい!///」トゥンク

 

「いいかい、そもそもセックス、愛するというのはだね、まず第一にお互いに愛し合っている二人の者が…」

 

こうして俺は満月の夜に。端から見ればブラ姿の長波さまを腰に乗せたままという卑猥な状態で。性とはなにか、愛とはなにか、果てには性病のリスクや快楽に溺れ滅んだソドムの町、人として慎ましく生きるとは何なのかについて熱弁を振るうのだった。

 

ちなみにセックスと言う度に長波さまが頬を赤らめたのは彼女の名誉のため伏せることとする。

 




バロキンの現在の持ち物
財布(身分証と小銭が入っている)。
鉄パイプ
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