深い眠りから覚める。
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手足拘束。猿ぐつわ。え、何これは?
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ウキウキ香取さんに自慢の野菜を褒められる。
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なんですか、その叩かれたら痛そうな棒は…。
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ちょっ、こっち来ないでください!!!(イマココ)。
「ああ、キムラさん…素敵ですその表情…本当にかわいい。やっと、やっと手に入れました。本当に長かった」コンコン
「ん?誰かしら?この場所を知ってるのは私と…ああ、なるほど。どうぞ、入ってらっしゃい」ハイ,シツレイシマス
ガチャリ
ドアが開かれる。そこには見覚えのある顔。彼女は確か。
「香取ねえ様、遂にやったのですね」
鹿島さん…。彼女とは数回ほど面識がある。というのも私が配達をするといつも香取さんが対応してくれたのだが。彼女が香取さんの後ろにピッタリとくっついていたことが何度かあったのだ。
香取さんとは姉妹なのだという。なるほど、道理で。香取さんに負けず劣らずの美貌。こちらが話し掛けるのを躊躇するくらいに美しい人。
最初こそお互いに会釈をするくらいだったが。香取さんが間にいてくれたこともあって、軽く世間話をするくらいには打ち解けていた。
「ええ、やりました!ついに夢が叶いましたよ!」(*´-`)
「おめでとうございます!香取ねえ様!」
姉妹で手を取り合って喜んでいる。
鹿島さんに目配せ。最初から分かりきっていることだが、やはり鹿島さんは私と目が合ってもニコリと微笑むだけ。人が拘束されているという異常事態にも当然の如く救いの手は差しのべられない。
香取さんと鹿島さんは共犯。悲しいことにそれは確定した。
「ところで鹿島、ここへ来たということは」
「ああ、そうでした!実は…」
鹿島さんが香取さんに耳打ち。しばし沈黙。
「はぁ」( ´Д`)
香取さんが大きくため息をついた。そして悲しそうな表情で私を見る。
仕方ありませんね、少し行ってきます。香取さんはポンと鹿島さんの肩を叩いた。ここには誰も来ないと思いますが…見張りをお願いします。今度こそ彼女は部屋の外へと出ていった。
「…はぁーあ」
香取さんが部屋を出てから少しして。今度は鹿島さんが深いため息をついた。
「んー!んんんー!!」フガフガ
私をこのような状態にしたであろう張本人の退場。私は思わず声をあげた。猿ぐつわをされているので言葉にはならない。
「…うるさいですね」ギロリ
ドキリ。心拍数が跳ねた気がした。射抜くような瞳で私を睨みつける鹿島さん。以前聞いた柔らかな声色は消え、代わりに耳に届いたのは脅すように低い。
「どうして香取ねえ様はこんな野暮ったいのを好きになったんでしょうか」ガシッ
間合いを詰められた。かと思えば鹿島さんの両手が伸びてきてそれに顔面を掴まれる。
「フフ、あまり整った顔つきとは言えませんね」クスクス
嘲笑。鹿島さんの笑みには間違いなく悪意があった。香取さんに詰められた時は別の意味で息が荒くなる。
「まるでそこに転がっている不揃いなお野菜そのもの…。土臭くて歪、本当にお似合いですね、キムラさん」( *´艸`)
香取さんとのやり取りの最中、私は驚きや困惑、恐怖があった。しかしどうだろう。目の前の鹿島さんとのやり取り。侮蔑的な発言に怒りが込み上げる。
「あらあら、顔を真っ赤にしちゃって…トマトみたい」( ^∀^)
「むー!むーー!!!」
「何言ってるか分かりませんよ?あ、そっか~お野菜の言葉を理解するのは無理な話ですよね~笑」
(#・∀・)ピキピキ←キムラ
「ほ~ら、頑張って人語を話してみろ笑♥️」クスクス
全身の血管が沸騰して爆発しそうになる。何故もこんなに違うのか。相対するのは私より圧倒的な存在、艦娘。香取さんの時には奮い立つ勇気も怒りもなかったのに。
「あ、このオナスとキュウリ、キムラさんと違って良い形してますね~笑。あ、そうだ!」
段ボール箱から取り出したナスとキュウリ、それをわざとらしく私の顔と見比べる。そして閃いた、と言わんばかりに手を叩く鹿島さん。
「これ、キムラさんの穴に突っ込んであげましょうか?笑」プークスクス
その時、私の中に鬼が生まれたってわけ。
「キムラさん、どうしたんですか?ブルブル震えちゃって生まれたての草食動物みたい笑」( ^∀^)
「ほ~ら、悔しかったらなんとか言ってみろ♥️それが出来ないならおとなしくこの野菜を咥えてろ♥️」ペチペチ
私の顔をペチペチと野菜で叩く鹿島さん、もとい鹿島。えらく上機嫌な彼女を目が飛び出してもいいからと強く睨んだ。
「なんですかその反抗的な目は♥️んー、そろそろ黙ってるだけじゃツマンナイですし…えいっ!」
「ほ~ら、猿ぐつわ取ってあげましたよ~?もしこの私に服従するなら手足の拘束も取っry…」
「鹿島ァ!!!」
「ピッ!?」(゜ロ゜ノ)ノドンガラガッシャーン
怒りの咆哮。目を見開いた鹿島は思わず後退り、足がもつれて尻餅をついた。
「い、痛い!な、なんで急にそんな大声で…」(>_<)イタタタ
椅子から動けないことには変わりない。依然として状況は最悪。しかしそうだとしてもこの怒りを地べた座り込む鹿島にぶつけなければ気が済まない。
どうして香取さんの時にこうならなかったのか。簡単だ。香取さんにはリスペクトがあった。私が心血注いでゼロから育て上げた野菜たち、それを敬ってくれた。生産する者としてこれ以上嬉しいことはない。冥利に尽きる。
「…野菜一つ作るのにどれだけ時間がかかると思う?どれだけの労力がかかると思う?」
「は、ハァ?なにそれ、何の話?お説教なら間に合ってますから、だ、だからそんな怖い顔でry…」ガクブル
鹿島にはそれがなかった。私をバカにしたいならそうすればいい。それで気が済むならすればいい。だけどなぁ、一生懸命作った野菜たちを…自分の子どもたちをバカにされて黙っていられるか!!
「太陽の光を浴びて、時には嵐の中を必死に耐えて、土からの栄養をたっぷりと吸収して、それでも大きくなれなかったものもたくさんあって…その想いを背負って大きくなった野菜たちを…!食卓へと運ばれていって誰かを笑顔にする野菜たちを…!!」(大地の怒り)
バカにするなぁ!!!ぶるああああああ(ア◯ゴ風)
「………」ポカーン
鹿島、もとい鹿島さんは私の怒りの咆哮を黙って聞き入れた。ポカーンとしていたので何を言っているのか分からなかったのかもしれない。
怒りが爆発し次第に下火になっていく。冷静になってくる。
手足は拘束されたまま。猿ぐつわはなくなった。しかし目の前には唖然とした鹿島さん。ここがどこなのかもはっきりしていない。
拘束を解こうとする。私の力では無理そうだ…。先程の怒りに身を任せてもこればかりはどうしようもなかったし。
あ、これ絶体絶命なのでは?チラリ、鹿島さんの様子を見る。
顔を伏せてブツブツ…。今度はあちらが怒り心頭なようで体を震わしている。
しかし後悔があるかといえばそういうわけでもない。気分は晴れやかだ。
この後にとんでもない拷問が待っていたとして、私はそれを甘んじて受け入れよう。
そして鹿島さんの第一声を覚悟して待っていると。
「…ふ、ふふ」
ん?
「ふ、ふふふ、ふ…ふえぇぇぇぇぇん!!」(TДT)
ファッ!?
「うぇぇぇぇぇぇん!!ごめんなさああああい!!」
「怒られたぁ!キムラさんに怒られちゃったよぉ!」
「(;o;)」
甲子園のサイレンかと思うくらいの泣き声。
か、鹿島さぁん!
そして大人げなく怒鳴ったことや慰めの言葉を掛け続けること数十分…。
「(´Д⊂」グスングスン
なんとか泣きじゃくるくらいまで鹿島さんを落ち着かせることに成功するのだった。
キムラの持ち物
財布(運転免許と数枚のお札、わずかな小銭)
ステータス:拘束