結構な人数で攻めてきた奴らを蹴散らしてから三時間ほど、
俺は今もオーブの防衛をしている。サリーとカナデが外に出ているけどチャットを見た感じ順調そうである。
「ねえねえ、お姉ちゃん。私達、やっぱり普通の攻撃は避けられないね」
「そうだね……でも短剣ならまだ見慣れているからもしかすると一回くらいは避けられるかも?」
「それでね、私思ったの。私達の個性を目一杯使える戦法ってあるかなって」
「うん、なるほど」
「それでね、一つ思いついたんだけど……」
マイとユイが小声で何か話してる。怖いんだけど?
「すごい!いいと思う!」
「でしょ!ここぞっていう時に上手く出来たらいいなって」
「そうだね!」
なんか新しい戦法思いついたらしい。あの双子はメイプル色に染まりきってしまったようだな。
そのからしばらくして俺らはカナデが持ち帰ったオーブの防衛をしていた。
「【水晶壁】!」
シロップの背中に乗るために使われてきた【水晶壁】は今回のイベントで素晴らしい活躍を見せている。目の前にいきなり障害物が現れ立ち止まった所を撃破、このパターンで数を減らし、次にメイプルによって死ななくなった前衛をぐいぐいと押し付けていく。
メイプルのサポートがこの上なく強力で、マイとユイは何度も何度も攻撃を受けているし、クロムも囲まれているが、崩壊するはずの前線はいつまでも残り、回避を捨てた攻撃により命を失ってしまう。
メイプルがいることで回避という行動がほぼ意味をなさない。それに対し、攻撃側は相手の攻撃を避けなければならない。ここに殲滅力の差が生まれる。攻撃に使える時間が圧倒的に違うのだよ。
メイプルを倒せなかったため、俺たちは無傷で勝利。
「ふぅ……終わったね」
「そう……ですね……」
「疲れました……」
「使徒たちも出すか…人手不足だし」
「そろそろ一日目が終わるしな。交代で眠るか?」
クロムの提案に全員が賛成する。サリー、イズ、カスミは現在外出中なためローテーションに組み込めないので、人数を考えると二人ずつ短い時間休むのがベストということになった。
「マイちゃんとユイちゃんからにする?私は基本はいた方がいいかな?」
「んー……メイプルがいない間は使徒の数増やせば大丈夫だろ。あと、マイとユイからなのは賛成」
ユイとマイの疲労はピークである。そろそろ休まないときつそうだし。
「じゃあ、早速休んできて」
眠る時間を決めて、二人を送り出す。
「イズとカスミはそのうち帰ってくるだろうしな」
二人が帰ってくれば防衛がより楽になるためマイとユイを今休ませても特に問題はなかった。
「【失楽園】。使徒たちはオーブの近くにいろ」
俺は使徒をだして、オーブの防衛を指示した。
「とりあえず外に繋がる通路以外にも一人つけるか」
「相変わらず便利だよなこいつら」
クロムがそう言う。いや本当にいつもお世話になります。
それから更に時間が経ち、現在深夜一時。
今は俺とメイプル、マイ、ユイがオーブの防衛をしている。クロムとカナデが休憩をして、カスミとイズはまた襲撃に行った。一つ気がかりなのはサリーが帰って来てないことかな?誰も襲ってこないために暇を持て余していたところ、メイプル個人にメッセージが届いた。
「サリーから?何だろ?」
「うん?なんか連絡か?」
そこにはたった一行だけ。
多分死ぬ。ごめん。
とだけ、書かれていた。
「これって……」
「あっちは結構やばい状況なのか?」
おそらく寝込みを襲われたか、人数差に圧倒されているか、または両方。
「うぅ……」
「助けに行きたいなら行きな。防衛は俺らでするから」
「で、でも…」
「大丈夫だから。使徒たちもいるし、友達を見捨てたくないんだろ?」
「メイプルさん、行ってください」
「私たちなら大丈夫ですから!」
「三人とも……。分かった!セツナさん、お願いします!」
「よーしなら速く行きな!善は急げだ!」
「はい!!」
そうしてメイプルは洞窟の外に出て行った。
「よし、とりあえずはメイプルがサリーを連れ帰って来るまでは俺ら三人で守り抜くぞー!」
「「おー!!」」
数分後…
「おっ、マップ的にサリーと合流できたっぽいな。よかったよかった」
「メイプルさん大丈夫ですかね?」
「どうやってあんな速く行けたのかな?」
「まぁメイプルだしそれくらいやってみせるでしょ。すぐ戻ってくるだろうけど、二人は一応武器の準備をしてて」
「はい。でも……カナデさんとクロムさんを起こしに行った方がいいですかね……?メイプルさんがいなくなってしまったし」
それもそうか。二人には悪いけど、緊急事態みたいなもんだし。
三人は安全策を取って、休んでいる二人を起こしにいく。しかし、それは叶わなかった。
「っ!ユイ、敵!」
「えっ!?」
「!?第一使徒よ!!」
「クォォォン」カキン
ナイフを使徒に防がせた後、二人がそれぞれ大槌を構え、俺はいつもと違う大剣を構える。入り口からゆっくり歩いてくるのは一人のプレイヤー。ドレッドだった。
【楓の木】の場所は特定されており、【集う聖剣】が手を出さなかったのは常にいるメイプルが危険だと判断したためだ。そのメイプルがおらず、ドレッドが近くにいるのであれば襲うに決まっているだろう。
「はぁ……フレデリカも人使いが荒い。メイプルがいないって言ってたが、セツナがいるじゃねぇか。まぁ……いけるか」
ぶつぶつと呟くドレッド。サリーを倒そうとしたフレデリカから連絡を受け取り、単騎でオーブを奪いに来たのだが、
「お前は第一回イベント一位のドレッドか?マイとユイは下がってて。こいつと二人は相性悪いだろうし」
「で、でも」
「セツナさんでも一人じゃ」
「あんたがペインを倒した奴だろ。だが、それは流石に舐めすぎじゃねぇか?」
ドレッドが走って距離を詰める。それに対してセツナが大剣を振り下ろす。その大剣を躱し、セツナの横腹を切り裂くドレッド。
「【ダブルスラッシュ】!」
「「セツナさん!!」」
しかし、セツナには意味を成さなかった。
ギロン
「!?」ブシュ
セツナは受けたダメージを回復し、ドレッドはなぜかダメージを受けた。
「確かに避けたはずだが、、」
「ふむ、ちゃんと効果は発動すると、、マイ、ユイ。二人を起こしに行ってくれ。見ての通り時間稼ぎくらいできる」
「セツナさん、、分かりました」
「すぐに二人を呼びに行きます」
マイとユイが後ろの通路に入っていき、そこを使徒二人に塞がせた。
「行かせない、と言いたいんだが無理だな。撤退も視野にいれてたが出口も塞がられてるし」
「あぁ、あんたを倒せば少なからず、そっちのギルドの戦力を削げるし牽制もできる」
セツナは大剣を再び構える。今回セツナが使う大剣は呪いにでも掛かっているような見た目の文字化けしている大剣である。ドレッドがダメージを負ったのは大剣についているスキル『汝ト共ニ』の効果である。
「その禍々しい武器の効果か?ダメージを受けたんだが、反射かなにかか?」
「禍々しいって、、いやまぁそうなんだけどね?で、効果ね。実験も兼ねてるから教えるけど、まぁ概ね正解」
ドレッドは冷や汗をかく。【集う聖剣】では、セツナはHP型の耐久プレイヤーなのは周知の事実であり、ドレッドも知っている。ドレッドの戦闘スタイルは回避型の双剣使い。サリーと似た戦闘スタイルで、攻撃を避けて当てるを繰り返すというのが基本であるためHPは比較的に少ないのだ。
「(これは無理だな。俺だけだと絶対に勝てねー。フレデリカを連れてきて回復とバフをかけ続けて貰えねぇと)はぁ、こんな貧乏くじ引くとはねー」
「最後まで粘ろうとしてるみたいだけど、一撃で終わらすぞ?」
「(は?こいつ攻撃もできるのかよ!?あいつのモンスターは俺を逃さない為に攻撃はできないはず。メイプルや他の仲間を呼ぶまで耐える作戦じゃ)へぇ、ならやってみろよ」
ドレッドは【超加速】を使用し、攻撃に備えていたが、
「もう遅い、、」
既にセツナは構えを取り、そのスキルを放とうとしていた。
「
ノイズがかった声を聞いた瞬間ドレッドに空間ごと削る斬撃が襲い、HPを1にした。『汝ト共ニ』の二つ目の前方の全てに攻撃する発動型効果。この前方とは文字通り、セツナの前方。つまり、セツナの目の届く範囲が対象なのだ。ここは洞窟の中であり、セツナの死角は後ろのみ。ドレッドは警戒していたが、初動が速かったために回避は間に合わなかった。溜まっていた復讐カウントは2つのみだったが、それでもセツナの最大HPの60%分の威力。防御力に自信がある者にしか耐えられない一撃である。
「く、、そ、(これはペインも警戒するわ)」
「HP1、、なんかのスキルか?でも足は消し飛ばしたし、もう逃げれんぞ」
「あぁ今回は俺の完敗だ。だが、今度はペインたちと一緒にリベンジさせて貰うぜ?」
「いいぜ。それならこっちもギルド全員で迎え討とう」
そうしてセツナは大剣でドレッドに止めを刺す。
ドレッドは光となって消えた。おそらく、今は自分の陣地に戻っている頃だろう。
「…二人に倒したって伝えに行くか」
どうも作者です。今回誤字報告をいただき『過充電』と『過剰供給』の倍率が800%ではなく800倍になっていると言われましたが、あっています。誤字などではなく800倍であっています。私でも可笑しいと思っているんですが、800倍です。まさに過剰。
一応『過充電』と『過剰供給』の読み方を載せておきます。
『過充電』→オーバーチャージ
『過剰供給』→オーバーニュートリション