二日目も日が落ちた頃、【楓の木】のメンバーは全員が拠点にいた。
「【炎帝ノ国】はメイプルが罠の殆どを踏み壊したし立て直すのには少しは時間がかかると思うけど……やっぱりオーブを持って逃げられたのは痛いね」
「ごめんねサリー。結構探したんだけど見つからなくて」
「【炎帝ノ国】が周りを襲ってくれてるなら大丈夫なんだけど……どうだろう」
今回【炎帝ノ国】を襲った理由は【楓の木】より上位に入るギルドを【炎帝ノ国】に減らしてもらうという作戦だった。【楓の木】が上位に食い込むためには大型ギルドに暴れてもらう必要が出始めてきたらからな。小規模ギルドは予想よりも早くその多くが駆逐されちゃって、中規模ギルドと大規模ギルドの戦闘が多くなってきた。そのせいで中規模ギルドを利用してのフィールド荒らしの効果がなくなりつつある状況。
俺ら【楓の木】の目標は十位以内に入ることだけど、【楓の木】は現在六位。他は全て大規模ギルドで埋まっているから一位よりも遥かに目立っている。
「やっぱりあれだね。人数差があるから……」
「予想より高い順位だけどね。正直ここまでやれるとは思わなかった」
ただ、サリーが復帰したとしても現状一位まで駆け上がるのは無理だろうな。人手が足りんのよ、人手が。
「まだ二日目だから追いつけるチャンスがない訳じゃない。けど……これ以上離されたくはないかな」
【楓の木】内で話し合った結果、イズとカナデを残して全員で夜の戦場へと出て行くことに決まった。えっ、俺また一人なの?いやいいけどさ、使徒たち合わせたら六人だしね、手分けした方が効率良いのは知ってるよ?でもさ、
「じゃあ、行ってきます!」
「行ってらっしゃい。私とカナデはここで待っているわ」
「ちょっと寂しい……」
「仕方ないだろ。とにかくオーブを稼がないといけないんだから」
クロム、知ってるよ。だから人手増やせる俺はソロで行くんだろ?他のみんながいると使徒たちを邪魔したりするかもって理由で。でもさ、、
「いやーほんとすみませんセツナさん」
「サリー、、、謝ってる所悪いけどこの作戦考えたの君だってこと忘れてないよね?」
「……」
おい、目を逸らすな。こっち見ろよ。
「それじゃあ、みんな頑張ろう!!」
「「「「「「「おー!!」」」」」」」
「おい、なんか言えよ」
あれから数時間が経ちました。え?あの後どうなったか?聞くんじゃねぇ。まぁあったことといえばオーブが意外と集まらなかったってことくらいだな。取られてる所が多かったりして、初日より稼げてない。
「メイプルはオーブを集められた?」
「え?うーん……あんまり。オーブのないギルドが多くて……サリーは?」
「私達の方も荒れてたかな……結局二つしか奪えなかった」
とりあえず持ち帰ったオーブを設置してと、、
現在のランキングを開いてその項目をスクロールしていく。全滅したギルドにはギルド名の隣にマークがつくけど、小規模ギルドだけでなく中規模ギルドもちらほらと、、、
一日目から全開で飛ばしたギルドは幾つかあり、それらにオーブを奪われたギルドが全力攻撃に移行して展開は加速し続けた。死亡者なく防衛を成功させるギルドは稀であり、結果二日目終了間際ですでにかなりの量のギルドがリタイアすることとなっていた。残っているのは人数の多いギルドを中心に一部の例外が僅かだけである。よってオーブにありつける可能性も下がってきているのである。【楓の木】が襲われていたのも【楓の木】だと知らないような遠くのギルドがここまできているからである。
マイとユイとメイプルの足ではフィールドを歩き回ってオーブを奪うこのルールではスピードで負けるな。いくら三人が強くともオーブがなければ奪うことは出来ないしな。
「もう少しもつかと思ったけど……どのギルドもやる気あり過ぎで……序盤で稼ぐつもりが思ったより稼げなかったし」
サリーの予想よりもかなり速く大規模ギルドが跋扈する環境になりつつありるらしい。ここからさらにフィールドが荒れていくだろうことは分かるだろう。
「だから予定よりかなり早いけど次の段階に移行してもいいかなって」
全員が次の段階に移ることをよしとして自分の役割を確認する。そうして役割を思い起こしていたメイプルがサリーに声をかける。
「じゃあ後は……」
「うん」
サリーはメイプルが何を言おうとしているのか分かっており、続きを話す。
「【集う聖剣】待ち……かな」
二日目も残すところもう後少し。今日の深夜防衛の順番を決めようとした時、この日最後の来訪者がやってきた。俺たちは話を止めてそれぞれの武器を構える。現れたのは万が一にも油断出来る相手ではなかった。入ってきたのは十五人のプレイヤー。そして、ペイン、ドレッド、フレデリカ、ドラグのトッププレイヤーの顔があった。
彼らが【楓の木】を攻撃しなければならない理由は本来ない。強いて言うならばランキングを脅かす可能性があるギルドを倒しに来たということだが、それをしなくとも【集う聖剣】と【楓の木】のポイントの差は開いている。ペインを筆頭にして四人が全員ここに来た理由、それは【楓の木】と戦って勝利したいという単純な欲求、そして、彼らは同等、またそれ以上の可能性もあるギルドとの戦闘をどこかで望んでいた。そのため全員がいることを確認した上での襲撃である。
メイプルが天使の羽を生やし、化物を召喚する。セツナは使徒たちを戦闘体制にしたのをきっかけに戦闘が始まる。
「【多重加速】!」
フレデリカの魔法が【集う聖剣】の移動速度を上げる。ドレッドとペイン、続いてドラグが前に出る。
「【峻厳】」
「「【飛撃】!」」
「その攻撃は知ってるよ」
マイとユイの攻撃はドレッドには当たらなかった。ドレッドに正面から戦っていては相性が悪いことこの上ない。ドレッドたちは【楓の木】の動向を部下たちに探らさせていた為、マイとユイの異常性を知らされていた。
つまりマイとユイの最大の武器の初見殺しは効かない。そして最前線にいたマイとユイにドラグからの攻撃が入る。
「【土波】!」
「【神罰】、使徒たちよ!」
斧を叩きつけた地面が波打ちバキバキと裂けて弾ける。メイプルのお陰でダメージは無かったもののドラグの特性である【ノックバック付与】は別であった。メイプルが後退し最前線のマイとユイが【身捧ぐ慈愛】の範囲から抜ける。そこをドラグとドレッドが追撃をしようとするが、即座に使徒たちに回収させる。
「ちっ、いけると思ったんだがな」
「あ、危なかった」
「助かりました」
「「クォォォォン」」✌︎('ω' )
【集う聖剣】の偵察部隊が【炎帝ノ国】での交戦を静かに見ていたことにメイプルは気づかなかった。故に【集う聖剣】は知っているのだ。【身捧ぐ慈愛】の弱点を。メイプルの武装展開を。メイプルの大盾に回数制限が追加されていることを。
「【カバームーブ】!」
「やらせるか!」
「【魔力障壁】!」
「うっ、!?」
「メイプル!【大切断•首】」
「【多重障壁】」
カスミがドレッドをクロムがドラグを止め、カナデが魔法で守りを固める。メイプルが崩れてもクロムやカスミもトップレベルのプレイヤーだ。攻撃をいなすことには慣れている。
「地味に硬いなその障壁!?」
くそ、何枚も重ねられると流石に無理か。それに、メイプルの範囲防御は【汝ト共ニ】と相性があまり良くないな。こんな所で気づくとは、、
「メイプル!解除した方がいい!」
「わ、わかった!」
サリーの声を聞いてメイプルが【身捧ぐ慈愛】を解除する。対策を立てられていることが分かった以上、貫通攻撃が次々に飛んできてもおかしくない。実際、フレデリカの魔法には防御力貫通能力のある魔法がほとんどであった。メイプルにも直接向かうその魔法は大盾に受け止められるが動きにくくなるため厄介である。ドラグとドレッドに四人が引き付けられたその一瞬にペインがさらに先へと進む。真っ直ぐにメイプルを見据え、剣を持って駆ける。
「その首もらう」
「行かせない」
「やらせんぞ?」
セツナとサリーが立ち塞がり、次のどんな行動も見逃すまいと集中する。
「ドレッド!」
ペインが叫ぶ。それによって反応したのはドレッドとドラグとフレデリカ
「【神速】!」
「【バーサーク】!」
それぞれのスキルによってドレッドの姿が消え、ドラグのスキル後の硬直がなくなった。二人が強力な切り札を使ったところでフレデリカの声が響く。
「【多重全転移】!」
フレデリカの切り札の魔法がドレッドとドラグにかかっていた全ての効果をペインに移す。ペインの姿は消え、その速度は跳ね上がった。
「!?」
「はっや!?」
ペインはセツナとサリーの間を抜けて、メイプルに接近する。
「【断罪ノ聖剣】!」
姿を現したペインの光り輝く剣が一瞬の溜めの後に振り抜かれる。四人分の切り札を一点に集め、その首を取らんとする。
「うっ……ぁ……」
ペインの剣は迫る化物とメイプルの大盾を真っ二つに切り裂いて、鎧すら破壊してメイプルの体を深々と抉り、メイプルを壁まで弾き飛ばた。それにより、メイプルのHPを1にするまでに至った。