メイプルが激しい音を立てて壁に叩きつけられたことでそのメイプルが致命的ダメージを負っているのを見てしまった【楓の木】のメンバーのほとんどに隙が生まれる。特にマイとユイの表情からは動揺が見て取れた。クロムとカスミも心中穏やかではなかったが
「【パワーアックス】!」
「【通行規制】」
「!?」
クロムの隙をついてのドラグの攻撃がクロムの胴を薙ぎ払おうとするが、唯一動揺をしなかったセツナによって防がれる。フレデリカが後方から掛け続けている多様な補助魔法により高い攻撃力を底上げされたドラグの攻撃はまともに受けてしまっては耐えられるものではないのだが、それを凌駕するHPを消費して防ぐ。
「すまん、助かった」
「クロム、油断すんな。まだメイプルはやられてないし、敵もいるんだからな」
メイプルの方に向かいたいところなんだが、他のメンバーの復帰をするまではいけんなこれ。
そうしているうちにペインがメイプルに再度迫る。ペインとしてはメイプルが【不屈の守護者】を持っていない可能性もあると考えていたがそんなことはなかった。
「【不屈の守護者】。セツナか?……」
ペインはセツナがやったのか考えながら駆ける。ドラグから引き継いだ【バーサーク】が大技の後の硬直を消し飛ばし、すぐに次の動作に移る。
「【黒煙】!」
メイプルの元へはそう簡単に辿り着かせないとカナデが放った魔法がペインの視界を奪う。そこに投げつけられたイズの爆弾が轟音とともに炎を上げる。
「【退魔ノ聖剣】」
ペインが剣を一振りすると場を覆っていた黒煙は消え去り目の前にイズとカナデを捉える。ペインは二人を斬り捨てようとする。
「「クォォォォン!!」」
「邪魔はさせん!【破壊ノ聖剣】!」
二人を助ける為に使徒を二人に向かわせたセツナ。しかしペインのスキルによって使徒の首が刎ねられる。
「「グォォォォォ」」シュウゥゥゥ
「なるほど、蘇生か。」
セツナのスキルの一つ【魂の灯火】を【眷属支配】により貸与させることで使徒たちの蘇生を可能にした。そしてペインはメイプルの装備が再生していることに気づき、使徒を遠くに蹴り飛ばして貫通スキルを使って最後の一撃を決めにいく。集中状態にあったペインにとってそこからの光景は酷くゆっくりと見えた。壁にもたれかかるメイプルの未だ突き出されたままの左手、その手に持った大盾が手から離れて前方へと倒れていく。
そして、大盾に隠されていた左手が大きな砲口になっているのを確かに見た。カナデとイズが爆音と煙幕でメイプルの動作を隠し、使徒に視線を向けたことにより、メイプルに対する注意力が散漫となってしまった。
「ここでかっ……!」
ペインはスキル発動中なため回避動作が取れない。剣を振り抜くしかない。
「【カウンター】!」
それはメイプルが第三回イベントで手に入れたスキル。ダメージを受けた際、その攻撃の威力を次の自分の攻撃に乗せるスキル。ペインの攻撃よりも早く砲口から放たれた一条のレーザーがペインの体を焼き尽くす。自身の最大威力攻撃が跳ね返ってくる。
「ぐっ……まだだ……!」
ペインもまたスキルでHPを1だけ残してメイプルに再度肉薄せんとする。
「【破砕ノ聖剣】!」
「【暴虐】!」
黒い靄が形を成して現れたのは一瞬前までメイプルだったもの。逆転した手数とリーチにペインが目を見開いて迫る化物の数本の腕を見る。
「おいおい正気か……!?」
一本目と二本目の腕を斬り捨てたが、相手は人間ではなかった。さらにその後に伸びてきた醜悪な口がペインの上半身を食い千切った。しかもそれだけでは飽き足らず、残った手足を動かしてドレッドとドラグに迫っていく。
「マジかよ!?おい!?」
「あー?……まだ変形するのか……?」
困惑と絶望を貼り付ける二人に向かって口から炎が吐き出され、怯んだところでドレッドは腕で掴まれドラグはそのまま捕食された。
「いっそ安らかな気持ちだ……」
ドレッドは静かに目を閉じて諦観と共に捕食された。
それを目の当たりにした後衛は当然逃げようと考える。
「私も逃げますけどー!?【多重加速】!!」
「逃す訳ないだろ?No.044 高速起動」
フレデリカが加速させたところで元メイプルが跳躍し頭上を通り過ぎて壁に張り付く。そして、セツナが機械の槍を展開する。出て行くにはメイプルを倒さなければならない。さらには制限時間つき。そんなことを考えている内に既にもう勝敗は決っした。
「『
「っ!【多重障壁】!」
咄嗟に展開した魔法。しかしフレデリカはそれを後悔した。セツナがこのタイミングで放ったのは必中の攻撃。対象を射抜かない限り止まらないその技は当然のように全ての障壁を貫き、フレデリカは光となって消えていった。
【集う聖剣】のメンバーを全て倒した後、俺たちは次の段階に移行した。
「さぁ、メイプル。第二段階だよ」
「うん!だね!」
「なぁ、ほんとにやるん?」
「そうですよ。セツナさんもお願いしますね?」
「えーー、楽しそうだからいいけどさー………また一人なん?」
「セツナさん頑張りましょう!!」
メイプルがすごい張り切ってる。怪物の姿で。でもさ、この作戦ってさ、、
「なーんで俺はレイドボスになりゃなきゃいかんのだ、、」
「まっ、仕方ないだろ。結局お前も賛成してたじゃないか」
クロム、そうだけどさ。……もういいや、こうなりゃとことんやってやるよ。最後調子乗って【機械君主】見せちゃったからなー、景気良く行くか
時間は一時を少し過ぎたところ、丑三つ時に近づいていく時間帯。
この日、二人の怪物が誕生した。
とある深夜の森の中では、大規模ギルドが灯りを点けて防衛に励んでいた。
「かなりハイペースでギルドが潰れているな……」
「ああ、そろそろ大規模ギルド同士の戦闘が本格化するだろうな。いつ仕掛けてきてもおかしくない」
二人が話していると暗闇の中でがさりと音がした。
「……いくぞ」
「ああ、確認しよう」
二人は剣を抜きつつ音のした茂みに近づき、照らし出すと、そこには大きく口を開けた化物の頭が浮かび上がった。
「「……は?」」
彼らは驚いて硬直したその瞬間に捕食されることとなった。それだけでは終わらずに、化物は中心へ向かって突き進む。異常に気づいたプレイヤーを轢き殺して嚙み殺して燃やし尽くして荒らし回る。大規模ギルドの人数からすれば倒されたプレイヤーの数はまだ大したことはなかったが、それ以上に動揺による精神的ダメージの大きさが影響しまともに連携を取ることが出来ずにいた。誰も、化物が襲ってくることを想定することは出来ないだろう。
さらにその背中から静かに飛び降りた八人のプレイヤーが混乱し悲鳴すら飛び交う中でプレイヤーを倒していく。圧倒的存在感を放ち今も捕食と破壊を続ける化物のために、他の八人は目立たなくなっていた。
「オッケー!次!」
「はぁ、ここで俺は一回別れるのか……」
「セツナさん、それじゃあまた後で!!」
化物が八人の中の一人にそう言葉を発すると捕食をやめて、背に七人を乗せて通り道にいたプレイヤーを引き裂きつつギルドを後にする。
「はぁ、やるかー。【全典開】」
セツナは【原初回帰】と【王国】を使い、【機凱種】と【機械君主】の制限を解除する。
「HP回復が間に合わんな、、『過剰補給』」
『過剰補給』を使い、回復を間に合わせる。消費と回復を続け、機械を作り出す。
「No.000を除く全武装を連続展開。いくつかの武装は混ぜるか……」
その姿は異形。機械は目まぐるしくその姿を変え続ける。背からは大量のコードが繋がれて大翼が作られる。
空を飛び、目を凝らせば武器がびっしりと備えつけられている巨大な機体。終末の権化が今、その翼を羽ばたかせる。
「全武装展開完了。さぁーて、行くか」
どうも作者です。投稿が遅くなってすみません。次くらいに第四回イベントは終わらせたいですね。