トランス・ライヒ2007   作:takanoko

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評価くれ


ハーフハーフ

「はぁ⁉大阪なんで、なんで?」

 

「とりま、ファミレスで飯食ってテンション上げてかない」

 

「おいこら、誘拐犯」

 

なぜ俺が大阪にいるのかを理解できず困惑をしていると

深山さんが外食を提案してきた。

逃げるリスクとか考えないの?

 

「え、なに星凪ちゃんKY(空気が読めない)?」

 

「貴方、誘拐犯、俺、逃げるよ?

逃がしたら深山さん、上司に怒られるでしょ」

 

誘拐犯である深山さん、は唐突にファミレスに行くことを提案する

誘拐犯にあるまじき、行動に驚きツコッミを入れてしまう。

 

「やだー、意外と星凪ちゃん優しい!おっぱい揉む?」

 

「ブフォー!」

 

「うわ、汚なぁー!」

 

またも突拍子の無い発言に口に含んだお茶を盛大に噴き出す。

 

こいつバカなのか外側は紛れも無い美少女だが、

こっちは中身はオッサン手前だぞ、

 

貞操感バグってんのかこの女、最高かよ!。

この体じゃなければだけど。

 

「ゲホ!ゴホ!、お前何も知らんの、てか聞いてないの!」

 

「星ちゃん、虚仮が剥がれてんじゃん、そっちが素?」

 

「素だけど!、それより俺の中身知らないの⁉」

 

「え!、星ちゃんまだ隠しごとあんの?

マジもんの秘密が多い女的な?、してその正体は⁉」

 

俺の中身がオッサンなのをしらないのか、

彼女はテンションが上がり俺が何者かと、問いかける。

 

「ぉ...で」

 

「声、小っちゃい」

 

「いやだから...その」

 

「オッパイ揉むぞ」

 

「オレ、男!で、オッサン!」

 

言った言ってしまった。

ここから先、俺は彼女からゴミを見る目が注がれることを

覚悟した後、無意識に強く閉じた目を開ける。

 

「え、知ってるけど?」

 

「マジ?」

 

「マジ、てかうちも元男だし」

 

「いや常識て....今なんて?」

 

「いやだから、あーし男だし」

 

その言葉を聞いて、俺の思考はブチりと音を立て途切れる

 

えまって、俺って今まで女に、

ドキドキしてたと見せかけて、俺はウホッ、いい男してた?

え、あの容姿で男?

 

名前もハーフで下もハーフ?なの?

 

「おーい、星ちゃん?」

 

つまりこいつは男?、しかし上はどっからどう見ても女

だけど下には、ブツが付いてる。

つまり豊胸?、おカマ?、ニューハーフ?

いやそんなことより、なんでナチス?っぽいのが俺を拉致った?。

いやそもそも、MP40を持ってるからナチスが 早計なのか?

 

「星ちゃーん、たこ焼き買ってくるから、留守番よろしくねー」

 

てかなぜにヨーロッパ行かないの?

陸続きじゃん、入国難易度的にそっちの方が簡単じゃない?

なんで日本?

 

「えい!」

 

「イデデ!、ちょッバカ!、

ガワは乙女の乳首になんちゅうことを!」

 

このイカレトランジェンダーギャルは俺の乳首を

つまみやがった、突然の刺激に驚き、摘まんでる手を叩く。

 

「ずっと固まってたから、たこ焼き買ってきたよ」

 

「なあ、お前はち●●残っているのか?」

 

「おい、ガワは乙女」

 

そうだ俺は体を取り戻すために来たんだ、

今まで手がかりゼロだったのが、

手がかりの方から、来てくれたのだから

むしろ渡り船と言えるじゃないか。

 

「あ、ごめん、今俺、ち●●探してて」

 

「男をち●●呼びは控えめに言ってもヤバいわよ」

 

「あ、いや他人ち●●じゃなくて、俺のち●●を探してる」

 

「乳首摘まんで、頭おかしくなっちゃった?」

 

「違うんだ、俺はち...体を探しているんだ」

 

冷めきった、たこ焼きを箸でつつき、再起動した頭で

なんとか話を進める。

 

「あーすまん、それがなんであーしのち●●の有無に

関係あるわけ?」

 

「え、おカマじゃ」

 

「いや普通に身体は女だから。」

 

いわく、ある日、バイト中に飲み物を飲んだら

女になっていたそうだ。

 

「変な女子高生いませんでしたか、

特徴としてはパイ乙デカいぐらいですけど」

 

「あー、特徴が少なすぎてわからん」

 

深山はさっぱりわからんと言った感じで

首を横に振る。

 

「つーか、星ちゃんはどうして、女にチェンジしたわけ」

 

「あー、それが...まって、

そもそもなんで俺が男だって知っているんですか?」

 

そこで俺は口を開いて固まる

思えば俺がカミングアウトした時点で知ってるって

普通、ただ拉致して、引き渡しをするだけの奴に、

そんな詳細を下っ端に教える必要はあるのか?。

 

途端に彼女がどこか得体の知れない、何かに思えた。

 

「あー、なんか偉い人が喋ってたから」

 

「喋ってた?」

 

「なんか、対象の男が女になったとか、

んで、アンタのカミングアウトで分かったって感じ」

 

なんとも無さげに答える深山さんにどこか

違和感を拭うことはできなかった。

 

「よし、気を取り直して今度こそ飯、食べに行こう」

 

深山の衝撃的カミングアウトから一日が過ぎた。

やることもなく、

部屋にあったゲームをつまみ食いするようにちょこちょこ進め、

気づけば夕方だ。

深山に誘われるまま外に出ると、

道はネオンで滲み、

粉ものの匂いが祭りみたいに鼻をくすぐる。

大阪の夜の空気が、

どこか非現実を包み込んでいるように感じられた。

 

深山は片手にたこ焼きの紙箱を提げて、軽やかに歩く。

傍らで、俺はまだ半分ぼんやりしていた。

拉致されて、連れてこられた場所が何故大阪なのか。

問いの輪郭はぼんやりしているが、

心の底には常に膨れ上がる不安がある。

 

目当ての店に着くと、入り口にはごつい男が五人、

うち一人がこちらをじっと見る

。いかにも護衛といった風体だ。

深山は「友達」だというのを軽く笑いにして、

俺を店の奥へと押し進めた。

 

店内はソースの焦げる香りと、

ガヤガヤした声。カウンター席に落ち着くと、

護衛たちは黙って周囲を睥睨する。

深山はソースの香りに囃されるように、

俺の前に座っておもむろにたこ焼きを放り込んだ。

 

「で、星ちゃんってさ、ゲームとかやるの?」

 

深山は無邪気に訊ねた。

護衛の目が一瞬鋭くなるのを俺は見逃さなかった。

深山は同じ問いを繰り返すたびに、どこか計算した軽さを見せる。

 

「うん、隠密アクションみたいなやつ。

パッケージの会話がちょっと予言めいててさ」

俺はつい夢中になって語ってしまう。

ゲームの無線の台詞を真似してみせると、深山は目を細めた。

 

「予言? 面白いじゃん、どんなの的中したの?」

深山はさりげなく、でも確実に食いついてくる。

 

「あの無線で、SNSで…、

配信で話題になった出来事にピタリとはまるんだ」

 

つい口を滑らせる。

俺は自分が未来から具体的には令和の時代から

来たことを直接は言えない。

 

深山の笑みが、ほんの一瞬だけ消える。

隣の男の一人が肘で他の男に合図を送る。

深山は箸を止めさっと店の外を窺った。

 

「へえ~、そういえば星ちゃんって配信やっているでしょ」

 

「うげ⁉、なんで知っているですか」

 

深山の声は柔らかいが、ギクなんて擬音が付くような

リアクションをしてしまう。

 

「そういう“珍しさ”、うちのアレは好きなんだよね〜

歌とか結構好きでさ、星ちゃん歌ってたじゃん」

 

ギクとかそういのを通り越して、俺の胃が冷たくなる。

これはあれだ、まさに配信をしていたら、

親とか学校でバレたとかそういった絶望感かあふれる

 

「でさあの歌、話題になってんのしてる?」

 

「話題?」

 

「そっなんでも、星ちゃんが歌った歌詞の内容が別の曲で

瓜二つで出ていて、パクリだって話題になってんだよ。」

 

やってしまった。

自分の体の手がかりを探すために資金集めのために

俺は覚えてる歌詞の曲をそのままアレンジなしで歌っていた

遅かれ早かれ騒ぎになるとは思っていたが

 

「てッ!、飯食べてるときに

 

「でさ、実際どうなの転生者さん」

 

深山はにこり、と人懐こく笑ってこちらを見つめる。

 

「そ、それを聞いてどうするんですか?」

 

「うん?、あー別にそこまで深い理由は無いよ

ただ気になっただけ、もしほんとに君が転生者なら

面白いかもなって」

 

意図の分からない質問に困惑していると

俺はあることを思い出す。

 

Transitasylator(トランジタジールアトル)

 

「‥‥‥へー知っているんだ」

 

どこか怪しげな雰囲気と目つきに変わった深山さんの気配に

ぞわっと身の毛がよだつ。

「ちょっとトイレ行ってくるね」と言い、深山は席を立つ

 

店の外に一歩出ると、足早に護衛と何か囁き合っている。

俺はその背中を見て、重苦しい雰囲気を感じた。

 

その瞬間、店の外が一斉に騒がしくなる。

窓越しに車のライトが跳ね、メンバーの一人が外を睨み付ける。

タタタと短く連続で続く破裂音

 

「MG持ってこい!」

 

深山の声が、店内に小さな波紋を立てる。

次の瞬間、店内の外壁が爆発する土煙の中から

 

銃声と金属の衝突音、そして叫び声。

ごくありふれた私服の上から

ボディーアーマーとヘルメットを身に着けた小隊。

 

その人ごみの中から、ひと際小柄でヘルメットと

女子高生の制服の上からボディーアーマーを着けた女

 

「美桜!?」

 

俺の口からそれが零れる。闇を裂いて飛び込んできたのは、

あの美桜と、少数の部隊だった。

彼女の眼は非情で、だが確かに俺を見据えている。

 

襲撃は短く、激しかった。動きは機敏で、

護衛の一人がテーブルに体を投げ出す。

フライパンが床に落ち、たこ焼きが宙を舞う。

 

「うわ、アメリカじゃん」

 

騒がしいはずの空間でMG42を片手に持つ

深山の気だるげな声は嫌に響く。

 

「「嘘でしょ⁉」」

 

美桜と俺の声が重なる。

折り畳まれた二脚を掴みこちらに銃口を向ける。

 

放たれる毎分1500発を誇る、連続で放たれる弾丸は

文字道理、電動ノコギリの異名は惜しみなく発揮し、

発射音が平和なはずの、日本の飲食店に響く

 

「フラッシュバン」

 

一人がそう言うと筒状物を深山に向け投擲をする。

すると轟音と激しい光が店内を包み、銃声が止む。

 

「星凪、行くぞ!」

 

美桜が叫び、俺の方へ伸ばした手が、

俺の中にあった不信感が一気に溢れ出す。

 

MKウルトラ、通信傍受、陰謀論なんて

笑っていたが当事者からすればたまったもんじゃない。

 

ここでこの人たちの手を取った所でろくでも無い、

ことになるのではないのか?

 

「離せ!」

 

俺は美桜の手を振り払った。

美桜の顔に一瞬、驚いた顔をする。

彼女は何を期待していたのだろうか。

助けに来た女は、俺の反応を見てほんの一瞬手を止める。

だが作戦は進行中だ。

美桜の代理の一人が俺の脇を固め、強引に腕を掴む。

 

「なんでだよ……!」

 

叫びながらも、俺は身体が固まるのを感じる。

足元がふらつき、誰かの手が耳元で言葉を囁いた。

 

「時間が無い」

 

護衛の一人が後ろから薬の入った注射器を突き立てるようにして、

俺の肩に冷たい痛みを走らせた。

視界が波打ち、輪郭が溶けていく。

 

俺は伸ばした手が空を擦るのを感じた。

 

ざわめき、拳銃の金属の音、そしてラジオの雑音。

護衛が俺を引きずるように外へ運んだ。

車の轟音が近づき、顔を向けると、

ほど近い場所でトラックが待っているのが見えた。

荷台には人影がぎっしりと詰められ、

外套に古い紋章のような刻印が光る。

 

どっこからどう見ても、教科書と

中二病をこじらせたやつが、好きな刻印

 

飛び乗せられると、視界は暗転に向かって走った。

意識がぼやけるなか、硝煙の臭いと誰かの怒鳴り声

 

思うように動かない体は右に左にと大きく揺さぶられ

視界は360どグルリと回転する

 

美桜が手を伸ばしたまま、燃えるような瞳で俺を見送る姿だ。

彼女の唇が動いている。

たぶん、約束か、懇願か、あるいは罵りか―判別はつかない。

 

次に目が覚めると誰かに引きずられているのが分かった。

口の中に広がる金属の味、遠くから聞こえるサイレン

 

荷物を放り込むように、乱雑に車内に俺を投げ込むと

車は走り出し、ネオンの光が引きちぎられるように流れていく。

背後で大阪の夜の匂いが薄れて、

冷たい金属の匂いが濃くなっていった。

飛行機が待つ場所へ向かう道は、

短く、そして確実に俺の未来を別の軌道へ押しやっていく。

 

眠りが深くなり、世界は遠ざかっていった。




もうすぐ完結予定
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