4月も下旬になり過ごしやすい陽気になった
風も強くないし今日は外で食べよう
イッセーはそう思い立つとカバンを担ぎ日当たりの良い弁当を食べやすいポジションに移動し始める
それを見送るクラスメートには少しだけ安堵の表情が浮かんでいた
イッセーが嫌いなわけじゃない
ただ、食欲への刺激が大きいのだ
明るい性格で優しく変態コンビの親友と言う現実を無視すれば女子達は水面下でバチバチに牽制し合う程にはモテる
付き合ったら肥満へ全力ダッシュになる事は間違いないがそれでも手の届きそうな優良物件なのである
イッセーを追いかけないもう一つの理由は他のクラスの人もイッセーの食事を見たいと言う要望がある
その声があまりにも多く(本人は全く知らない)生徒会長によりイッセーのクラスメートに対して外で食べる場合は諦めて教室で食べてくれとお達しがあったのだ
さて、ベストポジションを見つけたイッセーはいつもの2段弁当をカバンから取り出す
今日はおかずは無い
その代わり……
「綺麗だ……」
蓋を開けると現れたのは五目ちらし寿司
細切りの味の染みたしいたけ
錦糸卵
食感を失わぬようにた蓮根の薄切り
強めに塩を振った鮭のほぐし身
彩りの桜澱粉
入れたい物は他にもまだあったが今日はこれで終わりにした
鮭は味が濃いので酢飯は少し甘めに仕上げたのがポイントだ
周りからゴクリと唾を飲み込む音がする
ただ、まだ箸は付けない
何故なら外で食べる時は大体一緒に食べる健啖家な後輩が居る
「イッセー先輩、今日もご一緒してもいいですか?」
塔城小猫
この学校での飯(テロ)友である
この時ばかりは塔城小猫ファンクラブは何も言わない
何故ならばこの2人が揃わないと見れない小猫の表情があるからだ
他の人がお菓子などをあげても見れない
それを見るために大多数の人は集まる
「むむ、今日はちらし寿司ですか。私はちょっと良いところのパンを使ったサンドイッチなので少し合わなそうですね」
そこに居た人達は幻視した
仮に猫耳があったらへにゃりと垂れていそうなのを(猫耳を出していたら実際そうなった)
「いいんだよ相性なんか。美味しい物を美味しく食べるのが人として当然なんだから。いちいち気にしてたら美味しい物を見逃しちゃうよ」
フォローが上手い……
ここで他の男子と違うのは小猫が作った物ならなんでも美味しいよとか言わない事だろう
小猫自身容姿が良いのは多少理解している
言い寄られる事もそこそこあった
だから、下心の無いフォローが嬉しかったのだ
ちなみに異性に対する下心は無いが小猫の持つサンドイッチに対しては下心マシマシである
「では、いただきます」
「いただきます」
お互い何も言わずに相手の弁当から食べる
シャキシャキとしたレタス
滑らかなチーズ
塩っけがあり食べ応えのあるハム
それらをまとめる辛子マヨネーズ
シンプルだがそれがまた食欲をそそる
定期的に食べたくなるような安心する味それがこのサンドイッチの評価だ
ちなみに小猫とイッセー味の好みが似ていて新しいデカ盛りをやってる店に行くと大体お互いを見かける
何度かそう言う事があって連絡先を交換し日々新しい店をお互いに教え合う仲である
更に言えば松田と元浜を誘い4人で食事に出かけた事があり最初こそイッセーを神のように崇めたたえたがダイソンもびっくりの変わらない食欲に色気を感じるはずも無く並盛りのラーメンを啜りながら近くでフードファイトをしている2人を眺めていた
「むぅ……やはり先輩の料理に追いつくのはまだまだかかりそうです」
ハムハムとちらし寿司を食べながら呟く小猫
食べて最初に感じるのは酢飯の甘みと椎茸の出汁が効いた醤油味
次に卵の儚い甘さと桜澱粉の優しい味
最後に塩っけの強い鮭が次の一口をさっさと寄越せと言わんばかりに主張する
次の一口を取ろうとする直前にスッと出される紙コップ
そこには後から入れたであろう三つ葉が浮かんだすまし汁があった
イッセーは柔らかい笑みを浮かべながら
「こっちも自信作なんだ」
小猫も薄らと笑みを浮かべながら感謝を口にする
柔らかい出汁の味が口の中をリセットしてくれる
そうこうしているうちにお互いの弁当の半分が消え次は自分達が作った方の弁当を食べ始める
お互いにあまり喋らず味に集中しそんなに時間がかからず弁当は全て食べ終えた
「そう言えば駅前の潰れたラーメン屋あったじゃん?」
「あー、あの100歳までやるって言っていた店主の?」
「そう、ギックリ腰で辞めざるを得なかった店主の息子が味と店を継いでやり始めたらしいよ」
その情報に小猫は違和感を覚えた
イッセーは確かにそのラーメン屋に通っていたが店主の人柄がよく特別メニューでデカ盛りをやってくれていたから足繁く通っていたのだ
ただ、息子が継いだだけなら自分に話すはずが無い
何故なら特別メニューは閉店後誰もいない事が条件でやってくれていたのだから
「息子さんから挑戦状が届いてなぁ……曰く親父の味を一番知ってる俺達に食べてもらいたいんだと」
詳しく聞くと店主は修行で他所の中華料理店に行ってた息子によく私達の話をしていたらしい
決め手になったのが店主の料理を食べている私達の顔を見てこんな笑顔になれる料理を作りたいと思い継いだらしい
正直美味しく食べていただけだからそこまで誰かの心に残る表情をしていたなんて思っていなかった
「だから、今度の休みに一緒に行こうか?」
「そうですね、私達の表情で店を継いでくれたのなら是非味を堪能したいです」
この会話をたまたま職員室に行く途中に聞いた木場裕斗はこう語る
「えっ、2人は付き合ってるの?店で写真撮られるってどんだけ一緒に食事に行ったのさ?」
こうしてある意味誤解が広がっていく
当の本人は全くその噂を知らない
短編だと5話までしか投稿できないんだけどもう少し続けた方がいい?
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もう少し
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まだまだ行ける
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どっちでも
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満足したから大丈夫