その稀血うさぎは鬼との生活を謳歌する   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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 本編軸にあったかもしれないうさぎ達のお話




番外編
2025年 年末特別番外編


 鬼の根城となる城、無限城。

 城主たる鬼の始祖、鬼舞辻無惨は、目の前にいる自身の義理の娘である少女、うさぎの姿を見つめながら、しばしの間、無言になっていた。

 

「ん?どうかなさいましたか、無惨様?」

 

「いや・・・・・・随分と丸くなってないか、うさぎ?」

 

「まる・・・・・・・・・?」

 

 自身を見つめてくる育ての親を見て、うさぎはコテンと首を傾げる。

 その意識は、太ったかな?と言う疑問が浮かんでおり、自らの頬をムニムニと触り始めた。

 その姿を見た鬼舞辻は、そうじゃない、と呆れた表情を見せる。そう、彼が口にしていたのは、彼女の肉付きに関してではなかった。

 

「明らかに普段以上の厚着になっているではないか。何があったらそうなるのだ?」

 

「ん・・・・・・?あー・・・・・・そう言うことでしたか。」

 

 鬼舞辻から告げられた言葉により、ようやくうさぎはガッテンが言ったと言わんばかりの反応を見せる。

 そして、自身の体をこんもりとさせている服に視線を向け、すぐに口を開く。

 

「いやぁ、私もまさかこのようなことになるとは思わず、驚いてます。大晦日ともなれば、冬が深まる年の瀬ですからね。かなり冷え込むと言いますか・・・・・・まぁ、これらは全部、他の皆さんがもたらした結果でもあるのですが・・・・・・」

 

「他のものがもたらした結果だと?」

 

「はい。」

 

 鬼舞辻からの問いかけに、うさぎは小さく頷き、自身が着ている上着を一つ一つめくっていき、一番下にあるものを見せる。

 それは、鬼舞辻からしたらあまりにも見覚えのある紫色の羽織だった。

 

「いつものように、掘り炬燵を使ってぬくぬくしていたところ、人間が体を冷やし過ぎてはならぬと、まず黒死牟が上着をかけてきまして。

 その次に童磨が悪ノリして、だったら俺の上着も貸してあげるよと黒死牟の羽織の上に重ねてきたのですよ。

 そしたら、何を思ったのか、堕姫と妓夫太郎が拠点としている遊郭から羽織をかっぱらってきまして、私の上にかけてきちゃいました。

 結果的にこのようなまんまる厚着になってしまい、重たくて動けなくなっております。」

 

「・・・・・・・・・・・・。」

 

 うさぎから説明を受けた鬼舞辻は、少しの間黙り込み、程なくして深く溜め息を吐いた。

 目の前にいる幼子に、まさか、自身の手駒としている上弦の鬼達が、ここまで絆されてしまうとは思いもよらなかったのだ。

 

 ─────・・・・・・いや、この娘の稀血の特異性から、このようなことが起こり得ることはある程度予測していたが、ここまで、私の部下共がうさぎに世話を焼き始めるとは思いもよらなかったな・・・・・・。

 

 なぜこのようなことに・・・・・・と鬼舞辻は再び溜め息を吐きたくなりながらも、目の前にいるうさぎに歩み寄る。

 そして、羽織が重くて動けなくなっていると申告してきたうさぎに手を伸ばし、その体を軽々と持ち上げた。

 だが、彼女が申告してきた通り、普段のうさぎとは明らかに重さが変わっており、どれだけあれらはうさぎに羽織を羽織らせたのだ・・・・・・と呆れた表情を見せた。

 

「本当に重たくなっているな・・・・・・」

 

「やっぱりそう思いますよねぇ・・・・・・。まぁ、流石に四枚も重ねられている以上、仕方ないとは思うのですが・・・・・・」

 

 “皆さん過保護ですよね〜”・・・・・・と呑気に言葉を口にしながら、自身の腕の中に収まるうさぎに、鬼舞辻は再び溜め息を吐く。

 相変わらず、この娘は人喰いの鬼を前にしているくせに大人しく抱かれているなと呆れながら。

 

 “危機感はないのか?”・・・・・・あまりにものんびりと安心し切った様子を見せる無防備な幼子に、鬼舞辻は少しだけ頭が痛くなるようだった。

 自身の手にかかれば、この細腕も、目の前にある首も、小さな頭も軽々と握りつぶし、小枝のように折ることができると言うのに、無防備を晒してヘラヘラとしているのだから、思わず人間を食らう鬼舞辻であっても、“少しは危機感を持たぬか間抜け”と口にしたくなるほどであった。

 

 しかし、自身の腕の中を完全に安全圏として見做しているであろううさぎに、それを言ったところで、頭に疑問符を浮かべながら、“あなたが私を殺すとは思えませんが”・・・・・・とあっけらかんと言われてしまうのも目に見えていたため、複雑な感情を抱きながら、鬼舞辻はうさぎを抱きかかえることしかできなかった。

 

「あ、無惨様。こんばんは。」

 

「こんばんは、無惨様!」

 

 全く・・・・・・と呆れながらも、うさぎを抱えている鬼舞辻。そんな彼の前に、上弦の鬼達が現れる。

 各々はすぐに鬼舞辻への挨拶を行い、そして、揃って彼に抱えられているうさぎの方へと視線を向けた。

 

「ちゃんと羽織は羽織ったままのようね、うさぎ。」

 

「人間はすぐに病気になっちまうからなァ・・・・・・。オレ達が人間だった時代に比べりゃ、よほどいい生活になってんだ。風邪引かねェように温めねェとなァ。」

 

「信者の子達から、神使い様へって甘酒をもらってきたよ。オレ達が人間だった頃は、甘酒は夏場の定番の飲み物だったのに、最近は冬に温かくしたものを飲む傾向が出始めたよねぇ。」

 

「おそらくだが・・・甘酒を商売に使おうとした店が増えたことが・・・関係あるかもしれないな・・・。小耳に挟んだが・・・どうやら・・・夏場に出す甘酒の管理を怠り・・・腹を壊す者が増えたとのことだ・・・」

 

「あー・・・確かに甘酒はちょっと傷みやすいって話だからね。温度が高い環境だと、すぐにダメになっちゃうのかも。

 あ、うさぎちゃん用の甘酒は、丁寧に管理されていた物だから安心してね。年明けをお祝いする時、御神酒が飲めない子達用に用意された物だから、新鮮だよ。」

 

「甘酒を新鮮と言うのはどうかと思いますが・・・・・・」

 

 堕姫、妓夫太郎、童磨、黒死牟と順番にうさぎに話しかける。彼ら、彼女らに話しかけられたうさぎは、いつもの調子で対応しながらも、甘酒という言葉に、少しだけ興味津々の様子で反応を示す。

 

「あ、猗窩座殿も来たね!玉壺殿と半天狗殿も!」

 

「「ゲッ」」

 

「ヒィィィイイ!?」

 

「ヒョッヒョッ!相変わらず堕姫殿とうさぎ様は半天狗を嫌っておりますなぁ!」

 

「うさぎを見た瞬間、恐ろしいだのなんだのとそいつが言ったからだろ。堕姫は無惨様と妓夫太郎の次にうさぎにつくようになったしな。」

 

 いつもの顔ぶれが集まる中、遅れるようにして集まった猗窩座、半天狗、玉壺の三体。

 うさぎと堕姫の二人が表情を歪めながら、半天狗を毛嫌いする様子を見せれば、半天狗はいつものように悲鳴をあげる。

 それを見て愉快そうに笑う玉壺と、呆れた様子の猗窩座は、悲鳴をあげた半天狗に視線を向けていた。

 

「まぁ、堕姫はうさぎちゃんを妹分と思ってるみたいだからね。無惨様と妓夫太郎の優先順位はあるけど、それでも彼女を大切にしてるから、いいじゃないか。

 俺は嬉しいよ。あの時拾った女の子が、こうも成長してるんだから!」

 

「前に比べたら、だいぶ感情を乗せれてますね。まぁ、それでも相変わらずの下手っぴさですけど。」

 

「うさぎちゃ〜ん・・・・・・サラッと評価しないでほしいなぁ・・・・・・」

 

 賑やかになった無限城に、鬼舞辻は少しだけ表情を歪めながらも、腕の中で楽しげに笑ううさぎに視線を向け、何かを思いついたように鳴女へと合図を送る。

 それによりあたりに琵琶の音が鳴り響くと同時に、酒を保管する際に使う甕が現れた。

 

「・・・・・・どうせ貴様らが来ることはわかっていたからな。太陽を克服する鬼を探すついでに見つけた稀血の人間から採取して来た血がある。

 本来ならば、あまり出さぬが、流石に量が多過た故、貴様らにもくれてやる。」

 

「「「「「「「!!?」」」」」」」

 

「なんだ?何か言いたいことでもあるのか?」

 

「「「「「「いいえ、滅相もございません!!」」」」」」

 

「いいえ・・・。何も・・・言葉はございません・・・」

 

 上弦の鬼達が揃いも揃って鬼舞辻に畏まる中、鬼舞辻の腕にいたうさぎは、甕を見つめながら瞬きを繰り返す。

 しかし、稀血が鬼にとってご馳走になることや、時には酒の代わりになることを思い出しては、嬉しげに口元を緩めた。

 

「わぁ・・・・・・!これならみんなで年越しできますね!私の元々のクズ親父は自分ばっかりが酒浸りで、私はちっとも楽しくなかったので、皆さんと一緒に過ごせそうで楽しみです!」

 

 笑顔で言葉を紡ぐうさぎに、鬼達は揃って瞬きを繰り返し、無意識のうちに彼女へと視線を向ける。

 自身に視線が向かってることに気づき、うさぎはハッとしたような表情を見せた後、その場でワタワタと慌て始めた。

 

「す、すみません私だけはしゃいじゃって・・・・・・。その・・・・・・誰かと一緒に楽しく年越しすることが、いつかできたらって思っていたので・・・・・・」

 

 語尾に向かうたびに声音を小さくしていくうさぎに、しばらくの間鬼達は、無言になったが、程なくしてその沈黙は破られた。

 

「ふ・・・・・・何よそれ。なんでアンタが謝ってんのよ。」

 

「そうだぜ、うさぎちゃん。むしろはしゃぎたい時にはしゃげばいいんだよ。それが子供って奴じゃないか。」

 

「この場でよくそのようなことが言えたな・・・・・・。だが、お前は度々子供のくせに妙に大人びてるところがあるからな。まだそっちの方が年相応なんじゃないか?」

 

「まァ、お前も無惨様に引き取ってもらえるまでは、相当苦労してたって話だしなァ・・・・・・。そういや堕姫。なんかうさぎを知ってるっぽいジジイが来たって言ってなかったかァ?」

 

「ああ、確かにいたわよ。こっちの敷居が跨げるほどの金は持ってなかったから別の店に入ってったみたいだけど、遊女達の間で白子の娘がいたとか、裕福な家に物珍しい容姿していたから売っぱらったんだとか、それで金があるんだって言いふらしてる不細工がね。

 あれってうさぎの元親父なんじゃない?綺麗な見た目をしていたんだとか、なんか色々言ってたみたいだけど。」

 

「なるほどなァ・・・・・・まァ、取り返そうって言ってるわけじゃねェから無視でいいかァ・・・・・・」

 

「え、あのクソ親父、酒浸りだけでなく女遊びまで始めたんです?」

 

「気にする必要は・・・ないだろう・・・。お前はすでに・・・無惨様の娘なのだからな・・・」

 

「・・・・・・まぁ、そうですね。野垂れ死にしてないのは意外でしたが、気にする必要はないですね。」

 

 目の前で繰り広げられる日常会話に、鬼舞辻はしばらく無言になったが、すぐに自身の腕の中にいるうさぎに視線を戻す。

 彼の視線に気づいたうさぎは、申し訳なさそうな表情を見せながら、鬼舞辻に視線を返していた。

 

「すみません、無惨様。はしゃいでしまって。ですが、誰かと一緒に年を越すという経験を、いつかしてみたかったんです。

 まだ、母がいた時はクソ親父もマシだったのですが、やはり、年越しを賑やかにするような家系ではなかったので、このように大人数で過ごせるのが楽しくて・・・・・・。

 本当は、このようなことを言っては迷惑になるとは思っているのですが、今年だけでも、大人数で年越しをさせてくださいますか?」

 

 眉をハの字に下げながら、首を傾げて問いかけてくるうさぎに、鬼舞辻は深く溜め息を吐く。

 しかし、すぐにその視線は鳴女へと向かい、一つの合図をする。それにより、彼らの前には、複数の盃が現れた。

 

「・・・・・・今回だけだからな。」

 

「!はい!ありがとうございます、無惨様!」

 

 それが彼なりの許可であるとわかり、うさぎは笑顔で頷いた。

 はるか昔に眺めていた、眩い太陽の如き笑顔を見せる純粋無垢な幼子の笑顔に、少しだけ焼かれそうになりながら、しかし、どことなく不気味なほどに穏やかな温もりを抱きながら、鬼舞辻は静かに視線を逸らすのだった。

 

 

 

 

 




 

うさぎが鬼殺隊に入ったよ!入る経緯は・・・・・・

  • 産屋敷への間者として送り込まれた
  • 無断で鬼舞辻から離れ、鱗滝を訪ねた
  • 無能な鬼に見つかり鬼殺隊に助けられた
  • 迷子のうさぎ、鱗滝に拾われる
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