その稀血うさぎは鬼との生活を謳歌する 作:時長凜祢@二次創作主力垢
無限城での生活もかなり長期化し、早くも一年の時が経った。
この一年の間、無惨様は息抜きを挟みつつも研究、仕事、研究、仕事の繰り返し。
だけど、いくら研究を繰り返しても、いくら試行を重ねても、青い彼岸花も、太陽を克服する鬼も見つからず、何より、弱い鬼ばかりが生まれるせいで、イライラしない日は全くと言っていい程にない様子だった。
鳴女さんや黒死牟曰く、これでも息抜きを挟むようになってからかなり穏やかになった方だとのことらしいが、それでも、天性の物か、彼の苛烈さはかなり根強く体に刻まれてしまっているのか、完全に押さえ込むことができない。
どうしたものかと思いながら、私はうつ伏せの状態でこちらの膝を勝手に枕に使ってる無惨様に視線を向ける。
彼がこんな行動を取るようになったのは、つい最近のことだ。
相変わらずのイラ辻無惨様な無惨様を心配して見ていたところ、彼に名前を呼ばれたため、近寄ったところ、座椅子に座るように指示を出され、そのままぺたんと崩れた正座で座ったところ、背中を伸ばすと言ってうつ伏せに寝転んできたのである。
背中を伸ばすだけならば、普通に寝転んでも問題ないのでは?と聞いてみたところ、こっちの方が私がまとう花の香りを感じやすいからと一蹴され、そのまま背中に腕を回し、ダウンしてしまったのだ。
この間、無惨様は基本的に文句垂れている。なぜ私の命令一つこなせる者がいない?とか、一体いつまで作りたくもない鬼共を作ればいいのだ。とか、下弦も上弦も、なぜ青い彼岸花を見つけてこない?何をしているのだあの莫迦どもは。などなど、ブツクサ言いながら唸っているのである。
その間の私は無惨様に相槌を打ちながら、目の前にあるフワフワな髪を撫でているのが仕事となっている。
時にはこうではないか、ああではないかと言ったりもするが、大体は相槌でいい感じだ。
もしくは、無惨様の頑張りを褒めたり、労いの言葉をかけたりしていたりもする。
イライラ気味だな。よし、「突撃!お前の懐テラピー!」を繰り返してしまったからだろうか?
完全に私は、彼にとっての精神安定剤になってしまっていた。
「せめて産屋敷の情報くらいは持ってこいと言うのだ。だと言うのに、何故あやつらはそれすらできない・・・・・・!!」
「産屋敷・・・・・・?」
無惨様が私に依存してしまう流れになってないといいけど・・・・・・なんて考えながら、彼の頭や背中をよしよしと撫でていたら、無惨様の口から、お館様の名前が出て来てしまった。
うん・・・・・・まさかここでそれが出てくるとは思いもよらなかったな・・・・・・。
「鬼狩り共を統率している忌々しい人間だ。あれがいるせいで、鬼狩り共は一向に失墜することがない。
故に、産屋敷は早く始末するに限るのだが、あやつめ・・・・・・巧妙に姿を隠しておる・・・・・・。」
“さっさと消え失せればいい物を・・・・・・!!”と、怒りを抱いたまま呟く無惨様。
相当お館様にはお怒りのようで、どうした物かと考える。
可能であれば、私も探りを入れやすいようにしたいところだが、お館様は先見の明に長けており、仮に鬼殺隊に入ることができたとしても、私と無惨様の繋がりを把握されてしまう可能性は十分すぎる程にある。
ただ、お館様って無惨様の尻尾を掴むためなら、普通に炭治郎と禰豆子が鬼殺隊にいることに関して黙認するくらい策略家なところもあるしなぁ・・・・・・。
「相当鬱憤が溜まっているご様子で・・・・・・」
「当然だ。末代まで追ってくるのだぞ?鬱憤が溜まらぬ方がおかしいだろう。」
“まぁ、彼は無惨様を滅殺することを目指してますからね”・・・・・・なんて思いながらも、相槌を打つ。
自身が鬼殺隊に紛れ込む提案を出そうと思ったけど、この様子からして、絶対に許可を出してもらえないんだよなぁ・・・・・・。
「早く見つけることができればいいですね・・・・・・。」
「全くだ・・・・・・」
ある程度イラつきが落ち着き始めた無惨様を見つめながら、私は少しだけ思案する。
この一年で、ある程度お屋敷の中にあった本は読み進めてしまい、やることが少しずつ減って来ている。
だからこそ、新しく何かできることを探したい上、無惨様の手伝いができればと思っていた。
・・・・・・ふと、そこで私はあることを思いつく。
無惨様の目が届くように、何かしらの首輪とか目印をつけられる可能性はあるけど、それに関しては仕方ないとして、外に出る口実には使えるのではないか?
「あの、無惨様。少しだけ思ったのですが、一つよろしいですか?」
「なんだ?言ってみろ。」
これは、殆ど一か八かの賭けだが、単独行動をすることができるチャンスを掴むには、これくらいしか考えが思いつかなかった。
「無惨様はいつも夜に“青い彼岸花”を探していますよね?それで、結局は見つからず、どこにあるのかと頭を悩ませている。
それで、なんとなく思ったのですが、千年の時を生きていても、“青い彼岸花”が見つからないと言うことは、日中に、限定的に咲く花である可能性はないでしょうか?
世の中には月下美人のように、年に一回か二回、夜の間だけ咲き誇る花もありますし、その逆もあり得るとは思いませんか?」
私の言葉を聞き、無惨様が絶句して固まる。
目を見開き、口を半開きにしているせいで、口元から鋭い牙の先端がこんにちはしてしまっているんだけど、この人、こんな反応もするんだね・・・・・・?
「・・・・・・えっと・・・・・・もしかして、考えたことがなかったのでしょうか・・・・・・?」
「・・・・・・・・・全くもって考えていなかった・・・・・・」
「おっふ・・・・・・・・・。」
私の言葉に、無惨様が頭を抱えてしまう。
うん・・・・・・なんか申し訳ないことをしてしまった・・・・・・。
「その・・・・・・話を続けても構いませんか・・・・・・?」
「・・・・・・ああ。」
とりあえず、無惨様から許可を得るために、自分がやりたいと思っていることを告げるために口を開く。
「もし、仮説として、日中にしか咲かないとしたら、日の光に弱い鬼が見つけることができないのも仕方ないことかも知れません。
仮説である以上、違う可能性ももちろんありますが、千年もの間、何千、何万回の夜を過ごし、手駒となる鬼が複数いるにも関わらず、誰一人として見つけることができないとなると、可能性は高いと思います。
それに、限定的な時間と期間、および、限定的な場所と言った要素や、環境によっては咲くはずだが花をつけることなく咲かないと言う事象が混ざり込む可能性すらあるでしょう。
だから、私が、無惨様の代わりに日中に“青い彼岸花”を探す機会を持てば、その仮説の答えを見つけることもできると思うのですが、どうでしょうか?」
もちろん、無惨様がこれに反対する可能性は十分あるが、彼の見解を聞いてみる機会に恵まれているなら、話を切り出す価値はある。
それに、無惨様が何かしら私の位置を把握することができれば、やりようはいくらでもあるかもしれない。
「もちろん、無惨様が反対するのであればそれに従います。ただ、私ができそうなことはこれくらいですから。
何か、無惨様が私の位置を把握することができる術があれば、日中は彼岸花を探させ、夕暮れ時に呼び寄せることも可能ではないかと・・・・・・。
まぁ、その把握する術が鬼化以外無いとしたら、実行はできないのですが・・・・・・。」
「ふむ・・・・・・。」
私の話を聞き、無惨様が少しだけ考え込む。
どんな返答が来るかはわからないが、言いたいことは言えたし、あとは彼の判断を待とう。
「・・・・・・本来ならば、確定していない話をするな、と叱咤するところだが、お前の話は一理ある。
もし、日中に咲く物であり、尚且つ限定的な場所でしか咲かぬのであれば、確かに、日中を歩き回れる存在の協力は必要か・・・・・・」
そこまで口にすると、無惨様はうつ伏せの状態をやめ、起き上がる。
「お前の発想には度々驚かされるな、うさぎ。だが、新たな見解を得ることができるきっかけになる。
少しだけ考えてみよう。お前を鬼にした場合の結果もわからぬ以上、私の血を与えることはまだできんしな。」
そして、私の言葉に対する賞賛と感心を向けながら、無惨様は思案し始める。
その姿を見つめながら、意外にもあっさりと話を聞いてくれたな・・・・・・と考える。
とは言え、これで少しでも動ける時間ができれば、無惨様の役に立つために何かをこなすことができるかもしれない。
そんなことを思いながら、私も一緒に考え込む。
「・・・・・・確か、無惨様は、その血で鬼にした存在の位置を把握することができましたよね。
体内に取り込ませないで、何か、装飾品に血液を閉じ込めて身につけることができたりしないのでしょうか・・・・・・。」
「なかなか変わった考えを持っているな。だが、候補としては入れておく価値があるやも知れん。」
“少しだけ試行してみよう”と口にして、無惨様は研究室の方へと足を運んでいく。
その背中を見送りながら、私は何度か瞬きをしたのち、小さく息を吐く。
─────・・・・・・無惨様にずけずけ意見を言って殺されない私って何なんだ・・・・・・。
そして、自身が置かれている状況に苦笑いをこぼしたくなりながらも、私は部屋に戻る。
殆ど本を読み進めたとは言え、まだ読めてない本もあるからね。無惨様の判断が来るまで、もうしばらく読書と勉学に励むとしよう。
うさぎ
だんだん暇になって来たので、次々と物語に干渉し始めている稀血の白ウサギ。
ほぼ青い彼岸花の答えを口にしているが、どれだけ見つかりにくい花かを理解していることもあり、かなり長期になるだろうなと考えている。
あわよくば、鬼殺隊に関われたらと思っているが、それはナイショの話。
鬼舞辻無惨
うさぎから言われるまで、日中に咲く可能性が完全に頭から抜けていた鬼の始祖。
しかし、すぐに彼女の具体的な話を聞き、彼女を動かすことを考え始める。