その稀血うさぎは鬼との生活を謳歌する   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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稀血のうさぎは花を探す

「うさぎ。こちらに来い。」

 

「?はい、無惨様。」

 

 無惨様に、“青い彼岸花”は日中に咲く花であることを示唆する情報を告げた日から三週間。

 無限城の中でのんびりしながら、何かやることないかなぁ、なんて考えていると、無惨様から名前を呼ばれた。

 すぐに無惨様の元に歩み寄れば、彼の紅梅色の瞳が私に向けられる。

 

「手を出せ。」

 

「?わかりました。」

 

 短く出された指示に従い、静かに手を出せば、彼は私の掌の上に何かを落とす。

 それは、赤い石が組み込まれている指輪のような物だった。

 

「・・・・・・これは?」

 

「西洋の装飾品を元に、試しに用意したものだ。赤い石があるだろう?それは、私の血液を固めたものだ。

 私の手駒の中に、血液を氷にする鬼が一体いるのでな。あれの記憶を元に、血液を変異させ、氷ではなく石のようにしてみた。

 試しに日の下へと投げ込んでみたが、そこそこ硬質なのか丈夫らしく消失までにかなりの時間を有した。

 どこに放り込んだかも把握することができたため、お前の位置を把握するための印になる。」

 

「な、なるほど・・・・・・?」

 

 童磨の血鬼術を参考にしてるんだけどこの人・・・・・・とビックリしながらも、視線を指輪のような物へと戻す。

 真鍮の型に、無惨様の血液を硬化させた謎の石・・・・・・三週間でこんな物を作り上げるなんて、この人、知識とか技術は本当にたくさん持ち合わせているんだな・・・・・・。

 

「えっと・・・・・・丈夫ではあるけど、消失は免れないとなると、何か布のような物に入れておくべきでしょうか?」

 

「それに関してだが、これにでも入れておけ。鳴女に作らせておいた。」

 

 混乱しながらも、受け取った無惨様の血液が硬化した物が嵌る指輪のような物を見つめていると、彼はもう一つ、何かを私に手渡してきた。

 それは、小さなお守り袋で、首から下げられるようにしてあるのか、長めの紐がつけられている。

 

「持ち歩く大きさとしてはそれくらいがちょうどいいだろう。入れて服の内側の方へと隠しておけ。

 それと、これを着用しておくといい。着物よりは動きやすかろう。」

 

 続けて無惨様から渡されたのは桜の刺繍が散りばめられている薄桜色の着物と、青紫色の袴だった。

 何度か瞬きを繰り返した私は、手渡された袴を静かに受け取る。

 

「これも持って行け。お前の目では、日光が照りつける大地を見るのもかなり苦戦するだろうからな。」

 

 そして、最後に一本の和傘を手渡された。よく見ると和傘には、薄黒いベールが組み合わされているようで、なかなか不思議な見た目をしていた。

 

「・・・・・・このような和傘、初めて見ました。」

 

「当然であろう。お前用に人間に作らせたのだからな。」

 

「え゛!?」

 

「何だ?不満でもあるのか?」

 

「いえ、そう言うわけではありません。ただ、かなりお金がかかっているなと・・・・・・大丈夫なんですか?」

 

「問題はない。わかったらさっさと着替えて来い。」

 

「あ、はい。」

 

 あまりにも至れり尽くせり過ぎてドン引きしてしまったが、無惨様は、“青い彼岸花”の手がかりを何か得ることができるかもしれないと思っているようで、そのための準備ならば怠るつもりはない様子を見せている。

 “彼岸花が咲く時期”、“太陽の光が降り注ぐ時間帯”、“咲くのはそのうちの数分から数十分のみ”、“環境によっては咲かない季節もある”、これらの条件から、発見することも、手に入れることもかなり困難な花なのだが、さて、何年で見つけることができるのか・・・・・・。

 

「・・・・・・もし、本当に咲くのが限定的な時期、環境、時間で咲く花だとしたら、かなり時間はかかってしまいそうですが、少しでも早く無惨様に届けられるように頑張りますね。」

 

「それくらい、一々宣言しなくともわかっている。だが、私にそのように情報を与えたのだ。成果はなるべく上げて来い。」

 

「わかりました。あ、私の血液の研究も続けられるんですよね?」

 

「当然であろう。今回、私の血を硬質化する実験を試してみたからな。やりようによっては、お前の血と私の血を混ぜた場合、日の光からどのような影響を齎されるかを確認することもできるはずだ。」

 

「なるほど。では、採血の際はいつでも呼んでください。もちろん、無惨様が息抜きしたい時も必ず言ってくださいね。

 私のような小娘でよければ、いくらでもお付き合いいたしますので。」

 

「・・・・・・ああ。」

 

 無惨様の短い返事に、笑顔を見せた私は、鳴女さんの元に向かう。

 無惨様はと言うと、鳴女さんに私を移動させてほしい場所を、地図を駆使しながら教えており、鳴女さんはその話に頷き返した。

 

「鬼を配置していない洞窟がある。そこには、昼間に隠れている鬼もおらん。まぁ、余程の莫迦でない限り、お前に攻撃をする鬼はいないであろうが、お前を失うわけにもいかぬからな。

 お前がいなくならぬよう、最低限の保証はしておいてやろう。」

 

「ありがとうございます、無惨様。」

 

「・・・・・・さっさと行け。数年は猶予を与えてやるが、そのうちに成果を出すことができぬようであれば、二度と城から出さんからな。」

 

「わかりました。」

 

 なんとなく、無惨様の光の色から、彼が少しだけ私を気遣ってくれていることを察する。

 言葉にも含まれているようではあるが、どうやら、私が城の中やお屋敷の中で退屈にしてることが増えているから、少しばかり自由に過ごせるようにしてくれたようだ。

 まぁ、首には令和で言うGPSの役割を持ち合わせてる首輪をつけられている状態ではあるが、これは私が自ら提案したことだから気にしないことにして、多少なりとも退屈凌ぎができる環境を会得することができたのは、喜ばしいことである。

 

 ─────・・・・・・よし、頑張ろう。青い彼岸花・・・・・・何年後に見つかるかわからないけど。

 

 それだけが不安だと苦笑いをこぼしたくなりながらも、鳴女さんに視線を向けてみれば、彼女は小さく頷いて、手にしていた琵琶を奏でる。

 独特な音が辺りに響くと同時に、私の視界に映る景色は違法建築無限城ではなく、一つの洞窟の内部へと変わっていた。

 

「よいしょ・・・・・・ってうっわ。何も見えない!!」

 

 いそいそと洞窟の外を眺めてみれば、真っ白に染まった世界しか見えない。

 洞窟の中は、程よく光が入り込んでいたため、見ることができていたが、外の世界はそうもいかないようで、あまりの眩しさに少しだけ頭痛を覚えそうになった。

 

「アルビノで生まれちゃった人が、光に敏感になり過ぎることがある話は聞いていたけど、まさか、ここまでひどいなんて・・・・・・」

 

 トホホ・・・・・・とかなり沈んだ気持ちになりながらも、無惨様から手渡されたベール付きの和傘を広げる。

 少しだけ大きめで、重さがある傘だったが、黒死牟に持たせてもらった刀に比べたら全然軽いと思いながら、少しの間目を閉じて、ゆっくりと瞼を開けてみれば、ベールにより日の光の眩しさがかなり落ち着いていた。

 

「・・・・・・これ、絶対海外から輸入した布を使ってるじゃん。」

 

 どんだけ私にお金かけてんだあの人はと呆れそうになりながらも、日の光の下へと私は足を踏み入れる。

 直に太陽を浴びることができないのは、何とも不便でならないが、歩けるだけまだマシだと言えるだろう。

 なんせ、鬼だと一歩踏み出しただけでも消失してしまう光の世界・・・・・・彼らの・・・・・・そして、何より、無惨様の苛立ちを思うと、複雑な気持ちを抱いてしまう。

 

 ─────・・・・・・彼らが悪なのはわかってる。わかってるけど・・・・・・

 

 “太陽の光をいっぱい浴びて、自由に動き回れないのは辛いよね”・・・・・・。

 脳裏を過った言葉に、少しだけ表情を曇らせる。

 

 だけど、すぐに頭を切り替えて、私は彼岸花が咲き誇る山の大地を踏み締める。

 鬼と悲劇に終止符を打つことが必要であることと、それでも無惨様が少しでも穏やかに過ごせるようにと言う願い・・・・・・二つの想いを抱えながら。

 

 

 

 

 

          ܀ꕤ୭*

 

 

 

 

 

「・・・・・・うーん・・・・・・これは違う・・・・・・これも違う・・・・・・これは・・・・・・蕾だね。花びらは赤だから違うけど。」

 

 色々な想いを抱きながら、傘を差しての花探し。彼岸花が咲き始める時期だからか、花が咲いてるものや、蕾のもの、明らかに葉っぱでしかないものなど様々な彼岸花が咲いていた。

 念の為、かぶれないようにとそこら辺にあった二又に分かれた枝を使いながら、沢山ある彼岸花やその蕾を見てみるが、青い花びらは見つからない。

 

 まぁ、すぐに見つかったら駄目な代物だもんね・・・なんて思いながら、地面から生えている彼岸花を確認していく。

 うーん・・・・・・ここには咲かないのかな?青い彼岸花の実物を見つけることができたら、土壌とか環境を参考にできるんだけど・・・・・・。

 

「・・・・・・何て、簡単に行くはずないか。」

 

 深く溜め息を吐きながら、私は近くにあった川辺へと向かい、傘を差したまま、ちょうどいいサイズの岩の上に座り込む。

 出来上がった体内時計により、そろそろ昼食を食べろとお腹がくーくー鳴いていた。

 

「くぅくぅおなかがなりました・・・・・・なんちゃって・・・・・・」

 

 どこかの女の子のようなセリフを口にしながらも、無惨様から昼に食べろと手渡されたおにぎりをその場で広げる。

 傘はすぐ側にある岩に立てかけて、簡易的な屋根を作れば、太陽の光が降り注ぐ中でも、眩しさで不快になることなく食事を済ませることができる。

 

「おにぎりを食べた後は、一旦洞窟に戻らなきゃだね。無惨様が採血するために来る時間帯になるだろうし。」

 

 むぐむぐとおにぎりを食べながら、昼食を終えた後の計画を脳裏に浮かべる。

 最初の洞窟からかなり離れたところに来ちゃったけど、まぁ、何とか戻ることはできるでしょ。

 

 そんなことを思いながら、おにぎりをしっかりと食べていると、何やらザザッと脳内にノイズが走るような感覚を覚える。

 

「んえ?」

 

《うさぎ。私の声が聞こえているな?随分と遠くまで歩いたようだが、一旦洞窟の方へと戻って来い。》

 

 なんぞ?と首を傾げながら固まっていると、頭に響くように無惨様の声が聞こえて来る。

 思わず何度か瞬きを繰り返した私は、まさかの状態に目を丸くした。

 

「え!?無惨様!?何で声聞こえてるの!?」

 

《お前に私の血を固めた物を託したからだ。袋の中に入れたまま、そのまま服の中へと忍ばせたであろう?

 私は自身の血を分け与えた者に対し、このように声を届けることができるのだ。

 無論、その逆も然りだ。お前の声も把握することができる。まぁ、直接血を与えたわけではなく、外部的干渉による物のため、精度は少々落ちるがな。

 試しにこちらに意識を向け、脳内に言葉を浮かべてみよ。人の気配がないとしても、何らかの拍子に見られでもしたら、いよいよ持って頭がおかしい人間の仲間入りになるぞ?》

 

 無惨様からの指摘に、思わず無言になる。

 確かに、今の状態だと独り言を口にしてるやべー奴になってしまうな。

 

《えっと・・・・・・こう、ですか?ちゃんと声は届いてるでしょうか?》

 

《ああ。届いている。飲み込みが早いのは良いことだ。では、さっさと私の元へ来い。昼食は済ませたであろう?》

 

《わかりました。すぐに向かいますね。》

 

 まさか、無惨様の血の石を持ってると他の鬼同様、念話ができてしまうとは・・・・・・少しだけ混乱しながらも、おにぎりが入っていた木箱をささっと片付けて、改めて傘を差しながら山の中を移動する。

 少しだけ、道を間違えそうになったけど、すかさず無惨様が呆れながらのツッコミついでに、道をナビゲートしてくれたおかげで、短時間で辿り着くことができた。

 

「お前は何をしているのだうさぎ?」

 

「すみません・・・・・・地元の森や山じゃないので、結構迷子になりました・・・・・・」

 

「全く・・・・・・随分と世話の焼ける小娘だな・・・・・・」

 

 灰色のモヤモヤした光が、無惨様の周りに揺らぐ。

 だけど、穏やかで優しさのある緑の光も、一緒にゆらゆらと波打っており、呆れと困惑を抱きながらも、感情自体は落ち着いており、不快感など一切抱いていないことがわかった。

 彼にとって私は、随分と変わった知識を披露して来る変わり者だが、世話をしてやっても良い小娘程度の認識にはなっているようだ。

 

「・・・・・・多分、これからもご迷惑をおかけすると思います。すみません。」

 

「一々謝るな、鬱陶しい。腕を出せ。かなり動き回っていたであろう?運動による稀血の変化を調べるついでに、お前を鬼にするために必要な血量も確認する。」

 

「おっふ・・・・・・無惨様、そんなことまでされているんですね・・・・・・」

 

「当然だ。お前の血は未知数ゆえ、調べ甲斐があるのでな。」

 

 そう言って、無惨様はて慣れた様子で私の腕から採血していった。

 最後にしっかりと消毒も施してくれる辺り、医学の知識も長く蓄えていたと言うことだろう。

 

「私の血は、無惨様の悲願に貢献できそうですか?」

 

「まだわからん・・・・・・が、日の光を克服できる可能性がある物は徹底的に調べ上げ、利用するつもりだ。

 お前はその間、“青い彼岸花”を探すことに集中しろ。手間をかけ過ぎるようであれば、二度と外での自由はないと思え。」

 

「わかりました。」

 

 外での・・・・・・と言うことは、無惨様の目に留まる範囲であれば、自由にしていいが、目が届かないところでは自由は与えられないと言うことだろう・・・・・・と、冷静に分析しながらも、しっかりと止血を行った。

 

「私は拠点に戻る。夕暮れには呼び戻すが、それまで少しでも情報を探せ。麓に村もあったからな。そこでの聞き込み等も、行える範囲で行うように。わかったな?」

 

「はい、無惨様。」

 

 そんな中、無惨様から村での聞き込みも行えと命じられたため、素直にその指示を承諾すれば、無惨様が目の前から姿を消す。

 まぁ、琵琶の音も聞こえていたから、鳴女さんが呼び戻したんだろうなぁ・・・・・・。

 

 ・・・・・・それはそれとして、だ。

 

「・・・・・・無惨様に見張られるどころか、念話による脳内会話までさせられるとはね。」

 

 これは、かなり気をつけないといけないかもしれない・・・・・・。

 

 

 

 




 うさぎ
 無惨様に監視されるのは問題ないし、それくらいしても構わないと言える程に彼を慕う稀血の白ウサギ。
 ただ、念話に関しては予想外だったので、指輪がある時は気をつけようと決意する。

 鬼舞辻 無惨
 うさぎの提案を聞き、試しにうさぎにどうやって監視の目をつけようかと考えていたところ、ふと、自身の駒である一人、童磨の血鬼術を思い出し、自身の一滴の血を石に変えてみたところ、うまく目の役割を果たすことに気づいた鬼の始祖。
 持ち運びやすいだろうと言う安直な理由から真鍮のリングにそれを組み込み、うさぎに持ち歩くように指示を出した。
 念話ができることは予想外だったのだが、嬉しい誤算だったため、そのまま利用する。
 血を直接与えるよりは精度が低いため、かなりの近距離でなくては声は届かず、うさぎの内面や小さな独り言も拾うことはできない。
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