その稀血うさぎは鬼との生活を謳歌する 作:時長凜祢@二次創作主力垢
光の揺れ方や色合いから、珍しい検体を見つけた上、独特な血液を持ち合わせている稀血を持つアルビノ娘の登場により、内心、ウッキウキな状態の無惨様を見ることになり、数日。
相変わらず無惨様は私の世話をしっかりとこなしており、勉学も教えてくれている。
何と言うか、かなり引いてしまう程に世話を焼いてくれるなこの人。私が自身の目の前から逃げないようにするため、自分に従順な娘のままにするため、めんどくさがることなく相手をしてくれているようだ。
「彼女があなたの養子の娘さんですか。なんともお淑やかなお嬢さんですな。」
「そうでしょう?数週間程前、路上で途方に暮れている姿を見かけたため、養子として迎え入れたんですよ。
どうやら、彼女の話によると、自身の見目により、実親からあまりいい扱いを受けていなかったようでしてね。
我慢の限界が来て家を飛び出してきてしまったようで。」
「確かに、見目は渡来の者達にどことなく似ておりますが、何とも可哀想なことで・・・・・・。
月光のような白髪に、紅色の瞳・・・・・・白い肌・・・・・・雰囲気も落ち着いており、神秘的すらも思えてしまう美しさは確かに畏怖してしまいたくなる気持ちもわからなくもないですが、愛らしい娘さんであることは間違いないと言うのに・・・・・・」
「私は、最初こそその容姿に驚いてしまいましたが、畏怖までは抱きませんでしたね。
まぁ、世の中、自身が持ち得ないものを羨み、妬み、傷つけることで優越感を満たそうとする存在もいないわけではありません。
どうしても、差別的な意思は出てしまうでしょう。彼女には、そのような外の声に負けないよう、私の元で健やかに育ってほしいものですね。」
現在、無惨様は人間に紛れてお仕事中である。
どことなく豪勢な洋風のお屋敷で、貿易会社の社長のような仕事をしているのだ。
彼が売り捌いているのは、様々なものが含まれているが、やはり壺が少しばかり多い気がする。
─────・・・・・・これ、全部玉壺が作った壺なのかな?血鬼術で壺作れたもんね、あの変態芸術家。
そんなことを思いながら、私は部屋にあった小説に視線を落として読み耽る。
すると、不意に「かぐや」と声をかけられる。
かぐや・・・・・・それは、無惨様が人間に擬態して生活する際、私に名乗るように告げてきた偽名だ。
月のような月魄の髪を持ち合わせているため、月にちなんで名付けたと教えられた。
なんでも、貿易商を仕切る社長としての立場に、見た目から散々な扱いを受けてしまった幼子を引き取り、育てている優しい親と言う立場を追加することにより、信頼と信用をさらに向けられやすくすることができるからとのことだ。
それにより、資金面を補うための手をさらに広げることができれば、様々な人脈を用意することも可能になるため、情報を会得するための手段をさらに増やせると教えられた。
まぁ、無惨様からも役に立てと言われているし、この身なりが役に立つのであれば、養子の娘のフリも問題なくこなせるけどね。
「仕事の話は終わったよ。お客様が帰るからお見送りしよう。」
「わかりました、お父様。」
そんなことを思いながら、無惨様に視線を向ければ、お客様のお見送りをすると言う名目で私のことを呼んだのだと告げられる。
すぐに頷き、無惨様の近くに歩み寄れば、彼は私の体を軽々と抱き上げて笑顔を見せる。
そして、取引先の人と和やかに話しながら歩みを進め、程なくして見送り場所となる位置まで辿り着いた。
「素晴らしい商談になりましたな、有意義な時間でございました。」
「いえいえ、こちらこそご贔屓にしていただきありがとうございます。また、何かいい品が入りましたら、ご連絡いたします。」
「それはありがたい。では、私はこれで。お嬢さん。優しい養父に拾われたようだね。君は幸せ者だよ。」
「そう・・・・・・ですね。お父様に引き取っていただけたことは、私にとっての何よりの幸運だと思います。」
「ほう・・・・・・これはまた・・・・・・随分と丁寧な・・・・・・」
「ええ。とても地頭がいいものですから、教えたことをしっかりと覚えてくれるのですよ。
そのため、時間がある際は勉学を教えておりましてね。性別のこともあり、地位はどちらかと言うと低いものとなってしまいますが、頭が良い分、いつかは仕事を手伝ってもらいたいと思っております。」
うーん・・・・・・嘘と本当を交えながらの言葉選びは流石、性格に問題あれど、鬼の始祖であり長をしているだけあると言える。
まぁ、カリスマ性はそれなりにあるんだろうし、飴と鞭の使い分けや、その気にさせる煽て性能、人心掌握術などに関しては、かなり得意分野になるのだろう。
最悪な性格をしている人だけど、人を惹きつけるための魅力はかなり高いとか、なんとも悪質である。
なんて、鬼だったら即刻処分されてしまいそうなことを考えながら、いくつか言葉を交わし、挨拶を済ませて別れるお客様を見送る。
・・・・・・なんか、精神的に無惨様がお疲れ気味な気がする。光の色的に。
「・・・・・・人の相手、お疲れ様です、無惨様。」
「私は疲れてなどいない。めんどくさくて敵わんだけだ。」
「ですが、資金のためには必要なこと・・・・・・なのですよね?」
「ああ、そうなるな。騙されやすい連中は資金源にしやすいため、めんどくさくても利用するには十分な資材だ。」
しばらくして、辺りが静まり返り、話は終わったのだからさっさと帰れと言わんばかりのイライラを抱いていた無惨様の光・・・・・・刺々しい赤い光が落ち着いたのを見計らって、声をかければ、無惨様の表情から笑顔が抜け落ちる。
いつもの無惨様に戻った・・・・・・と思っていると、無惨様が不意に軽く鼻を鳴らし、私の方へと視線を向ける。
「・・・・・・無惨様?」
「・・・・・・少しだけ大人しくしていろ。」
こちらに目線を向けてきた無惨様に、少しだけ疑問の声を漏らしていると、彼は私に短く命令をして、鼻を首筋へと埋めてきた。
びっくりして固まっていると、無惨様は人の首筋に鼻を埋めたまま少しの間呼吸を繰り返す。
「・・・・・・やはりな。ここ数日、お前を側に置いていたが、ほのかに香る金木犀の匂いは多少なりとも苛立ちを和らげる。
どうやら、お前には他にも役割を与えることができそうだな、うさぎ。」
「はぁ・・・・・・えっと、ありがとうございます?」
それって私にアロマテラピーをしろって言ってます?と思わず口に出そうになった言葉を飲み込みながらも、無惨様の腕の中で大人しくしていると、不意に、部屋に風が入り込むのを感じ取る。
驚いて背後を振り向こうとしたが、すぐに後頭部には無惨様の手が回され、そのまま頭を固定された。
「動くな。」
「あ、はい・・・・・・」
勢いよく掴まれなくてよかったと思いながらも大人しくしていると、無惨様は部屋にある椅子に座り込み、そのまま私を膝の上に乗せた。
それによりようやく体が自由になったため、少しだけ無惨様から離れていれば、彼は私の両脇に手を入れ、そのままぐるんと私を反転させた。
無惨様のお膝の上にライドオンした状態で、風が入り込んだ方角を向くことになった私は、静かに視線を前に向ける。
同時に私は固まってしまった。
そこにいたのは、十二鬼月上弦の壱・黒死牟だったのだ。
「でか・・・・・・」
「ん?ああ。確かに、今のうさぎでは、この男は巨大にしか見えんな。」
思わずポカンとして固まっていると、黒死牟の巨体にビビる私の姿を見て、無惨様は、幼い私なら仕方ない反応だと返してくる。
どのような表情をしているのかはわからないが、私の腹回りに回されている手から見えているものが、明るい青と緑が混ざったようなエメラルドグリーンとも取れる色の光で、軽く明滅している様子から、私の様子に珍しいものを見たと思っているのかもしれない。
これまで、驚いたような反応をしていなかったからだろうか・・・・・・?
「お呼びですか・・・無惨様・・・。」
「ああ。この娘に関して共有しておこうと思ってな。」
そんなことを思っていると、無惨様が黒死牟に私のことを話すと告げる。
黒死牟は一瞬、顔にある六つの目を軽く丸くしたが、すぐに視線を私へと向けてきた。
同時に、先程の無惨様のように、鼻を小さく鳴らしたのち、何度か瞬きを繰り返した。
「この匂い・・・稀血ですか・・・」
「ああ。だが、本来ならば腹が空くはずの衝動がないであろう?」
「確かに・・・。稀血である・・・と言うことはわかりますが・・・喰らおうと言う考えは・・・出てきませんね・・・。」
「それは、この娘の稀血に含まれている効能が関係あると見ている。どうやらこの娘の稀血は、私の血の効果や成分を一部分解してしまうようでな。」
「分解・・・ですか・・・」
「そうだ。ゆえに、この娘は現在、私の所有物として手元に置いている状態だ。日の光を克服するための手立てになるやもしれぬからな。
稀血の影響により、喰らおうとは思わないのは事実だが、中にはそれを知っていながらも手を出す愚か者も現れるだろう。
基本的には、私が常に側に控えさせるつもりだが、どうしても外せぬ用事が発生する場合もある。
その時は、貴様がこの娘の護衛と世話をするように。人間であろうとも、鬼であろうとも、私の所有物に手を出すことは誰一人として許さぬ。」
「御意・・・」
黒死牟に直接私の話するんか〜い・・・・・・とまさかの邂逅原因に軽く引いていると、無惨様と黒死牟は、淡々と目の前で会話を行う。
情報共有と言うビジネス的なやり取りではあるが、やり取りからして、黒死牟ならば私と言う珍しい生き物を任せられると言う無惨様の考えがハッキリとわかるものだった。
「うさぎ。」
「はい、無惨様。」
「この男は黒死牟。私が目を離さなくてはならない時もあるため、お前の世話を行うことがある鬼だ。
弱視のせいで今は見え難いだろうが、城に戻った際、改めて顔合わせをさせる。」
「わかりました。えっと、一応、よろしくお願いします、黒死牟様。」
「・・・うさぎ。」
「え、あ、はい?」
「黒死牟は呼び捨てで構わん。」
「え?は、はぁ・・・・・・わかりました・・・・・・。」
あれ?なんで普通は敬称をつけるものじゃないの・・・・・・?と軽く混乱しながらも、無惨様がまとう光が苛立ちや怒りを示す赤のトゲトゲになっていることに気づいてしまい、素直に従うことを口にする。
それにより、無惨様の苛立ちは落ち着き、一瞬感じたピリピリとした気配がなくなった。
「・・・・・・弱視・・・ですか・・・。」
な、なんだったんださっきの苛立ちは・・・・・・と困惑しながら、返事を返していると、黒死牟が無惨様が口にした弱視と言う言葉を復唱する。
無惨様は、未だに首を動かして後ろを向く私の顎を掴み、前を向かせた上でぐいっと顔を上げさせてきた。
それにより見えた無惨様の赤い瞳と、私の紅色の瞳が重なる。
「そうだ。どうやら、この紅玉の目は先天的に視覚が上手く機能しない状態に陥っているようでな。
明るい場所では光の刺激と眩しさにより機能はせず、暗闇ではほとんど視界が潰されてしまっている状態にある。
無限城内部のように、明る過ぎず、暗すぎるわけでもない場所でならば、正常に機能するようだが、それでも、生まれつき視力が悪いようだ。」
「それは・・・
「可能性として高いであろうな。しかし、些か事例が少な過ぎるせいか、詳細までは把握することができない。」
「そうですか・・・」
上を向かされ続けているせいで首が痛い・・・・・・と少しだけ思うが、無惨様の手があるせいで前を向くことができない。
そんな私のことなど気にすることなく、無惨様は黒死牟との会話を続けていた。
・・・・・・光の波長を見る。苛立ちの赤はなく、穏やかなオレンジだけが揺らめいているようだ。
これならば、意見を口にすることもできそうだ。
「あの、無惨様。」
「何だ?うさぎ。」
「無惨様の綺麗な赤い目を見続けるのも悪くはないのですが、少しばかり首が痛くて・・・・・・。前を向いてもよろしいでしょうか?」
「ん?ああ、構わん。」
とりあえず確認するだけ確認しようと言葉を紡げば、無惨様の手が顎から外される。
よかった・・・・・・あのままだと首にダメージが蓄積されるところだったと思いながら、黒死牟に目を向けると、彼はポカンと間抜けツラを晒していた。
うさぎ
無惨様の感情を光と色で判別しては、平然と自身の要求等を通していく稀血の白ウサギ。
綺麗な赤い瞳、という言葉は本心からの言葉ではあるが、それはそれとして無理矢理頭を上げさせるのはいただけない。
養子として引き取られた少女のフリですか?ええ、それくらいならばお安い御用です。
黒死牟
目の前でサラッと自身の主に意見を通しているうさぎを見てかなりびっくりしていた上弦の壱。
この娘・・・やりおる・・・と思いながらも、時と場合によって、うさぎの世話を引き受けることを伝えた。
鬼舞辻無惨
時に自身が面倒を見ることができないことを想定し、とりあえず信頼はしている上、子育ての経験がある黒死牟に、いざと言う時のうさぎの面倒と護衛を依頼した鬼の始祖。
最近、うさぎが持つ金木犀の匂いが、イライラを抑えることに気がついた。