その稀血うさぎは鬼との生活を謳歌する 作:時長凜祢@二次創作主力垢
無惨様から【意訳:私の物ならば私を優先しろ】と怒られた日から再び時間は経ち、転生した日から一ヶ月後。
無惨様に言われた通り、私は遠慮なく彼の前でも表情を崩すようになった。
時には無惨様の言葉に呆れ、時には苦笑いを溢し、時には笑顔で話し、時には拗ねる・・・・・・最初、こんなに表情を変えても良いのだろうかと内心ビクビクしながら過ごしていたが、思っていたよりも無惨様は、私の様子に対して特に気にしていなかった。
むしろ、これまでよりハッキリと感情を見せ、その上で言葉を紡ぐからか、常に穏やかな感情のみが揺らいでおり、これまで以上に無惨様から可愛がられているような気がする。
なんせ、時折食事以外にも無惨様がお菓子をくれるようになったからね。
取引先からもらったのは良いが、私は食わんって、上等なカステラを渡された時はまさかの出来事過ぎて固まってしまったのは記憶に新しい。
まぁ、食べる量は気をつけないといけないけど。砂糖が入ってるから、食べ過ぎちゃったら血液に影響が出るからね。
ちなみに、無惨様からは自主的に食べるのを控えてることに関して言及されることがあったけど、甘いものを食べ過ぎたら、血液に影響が出そうなので、って素直に自主的に抑えている理由を伝えていたりする。
無惨様は納得していた。
さて、そんなこんなで生活が一変した私だけど、実はもう一つ遠慮しないようにしていることがある。
それは、イライラしてる無惨様の懐目掛けて、「突撃!!お前の懐テラピー!!」をかましていると言うものだ。
本来ならば、イライラしてる無惨様に突撃するなんて命知らずにも程がある行動だけど、あるタイミングを見計らい、しっかりとそのタイミングで突撃すれば、無惨様は呆れはするけど怒らないことがわかったのだ。
観察を重ねてみると、イライラにも割と種類があって、完全にブチ切れモードなら、刺々しさと禍々しさが混ざりに混ざった赤と黒の光が激しく揺らいでおり、イライラの始めの方は、赤が徐々に鮮明な色を帯び、揺らぎ方が少し大きくなると言うことに気がついた。
そこで、徐々に赤色が鮮明な色を見せ始め、揺らぎが大きくなり始めたところで、「突撃!!お前の懐テラピー!!」をかませば、イライラが一瞬にして霧散され、無惨様が落ち着きを取り戻すのである。
「チッ・・・・・・今日も誰一人として成果を上げぬ・・・・・・!!」
それでは、ちょうどイライラしているご様子の無惨様がそこにいるので、無惨様を落ち着かせ隊を実行してみましょう。
現在の無惨様は、絶賛イライラ中。どうやら、昨晩も「青い彼岸花探し」と「日の光を克服する鬼の試行」を行ったようですが、思っている以上に苦戦し、なんの成果も得られなかった模様。
オレンジと黄色が混ざり合った穏やかな光はまとっておらず、徐々に徐々に赤へと変色しております。
揺らぎは少しだけ大きめ。このまま私の血の研究も行おうとしているご様子ですが、間違いなく癇癪を起こしてしまうでしょう。
と、言うわけで・・・・・・無惨様を落ち着かせ隊、出動!!
何て、誰に実況しているのかもわからないまま、無惨様の方へとトテトテ走って近寄れば、私の気配が近づいていることに気がついたらしい無惨様が、振り向いた。
振り向いたタイミングでその懐に思い切り突撃すると、無惨様の光がイライラを示す赤から、ビビビッと電気が走るような黄色へと変わる。
しかし、程なくしてその光は呆れを示す灰色っぽい青へと変化して、頭上から深い溜め息が聞こえて来た。
「・・・・・・何をしておるのだうさぎ。」
「いやぁ・・・・・・何やら無惨様が苛立っているご様子だったので。イライラ良くない。研究をするとしても、それじゃあ、集中力が途切れて余計に苛立っちゃうだけですよ。」
揺らぎが落ち着くのを見計らいながら、イライラしたって良い結果を得ることはできないと口にしながら、無惨様のふわふわした癖のある頭をゆるりと撫でる。
私に頭を撫でられた無惨様は、一瞬目をまんまるに見開いたが、深く深く溜め息を吐いては、私をそのまま抱き上げた。
「全く・・・・・・感情を見せろと言ったのはこっちだが、ここまで無遠慮で図々しくなるとは思いもよらなかった。」
「嫌ですか?嫌ならやめますが・・・・・・」
「誰も不愉快だとは言っていない。」
「あ、はい。」
私の行動に呆れながらも落ち着きを取り戻した無惨様は、すぐ側にあった椅子に腰をかけ、抱き上げていた私を膝の上に乗せる。
そのまま大人しく無惨様の膝の上に座っていれば、彼はコテンと私の首元に顔を埋め、動かなくなった。
稀血の中でもさらに特異な稀血・・・・・・どう言うわけか鬼の精神に作用するとか言う副産物すらも持ち合わせてしまったらしい私の血の匂い。
無惨様曰く、金木犀のような花の匂いは、出血していなくても、私の体を巡りに巡っているせいで、立派なお香のような役割を果たしてしまっているとのことらしい。
まぁ、人間である私にはよくわからないけど、鬼側からしたら、程よい加減で香っているようで、無惨様も度々精神を安定させるために嗅いでいることがある。
それを知ってるからこそ、わざと突撃して自らアロマテラピーを担ってみているのだが、意外にもこれが効果覿面だったのだ。
もちろん、どうしても無惨様の怒りを抑えることができない時もある。そう言う時は、こんなことはしないで、ただ無惨様の様子を見つめるだけ。
ある程度大人しくしていれば、無惨様の苛立ちは少しずつ落ち着くため、それを確認してから近寄り、彼を見上げれば、穏やかな光に戻るのである。
「無惨様は、鬼は疲れないと言ってましたけど、苛立ちが強く出るってことは、それだけ精神を擦り減らしていることだと私は思うんですよね。
肉体的な疲労ではなく、精神的な疲労・・・・・・みたいな?なので、敢えてお疲れ様ですと言わせてもらいますね。今日もいっぱいいっぱい頑張りました。」
「・・・・・・童扱いをするな。」
「すみません。でも、大人の人って褒めてくれる人いないじゃないですか。
私の個人的な意見ではありますが、沢山頑張ってる人にお疲れ様って声をかけるのは、おかしくないと思うんですよね。
まぁ、知っての通り、私は年端もいかない小娘ではありますが、無惨様が沢山のことをこなしているのは、一番見てるつもりですよ?」
“だから、労わせてくださいね”、と小さく笑いながら、首元に頭が降りて来ていることにより、触りやすくなった天パな頭をゆるゆると撫でる。
何と言うか、一緒に過ごしている間に思ったのだが、無惨様は割と子供っぽいのである。
気に入らないことがあればすぐに八つ当たりの癇癪を起こすし、とにかく自身の感情を素直に表に出してしまう。
そして何より、彼は死にたくないと言うただ一つの願いのためだけに動いている人だ。
ある意味で捻くれていて、ある意味で純粋。まぁ、生存本能に何もかも振り切っているせいで、本能の側面がひたすら強く、おかげで作者からも無惨様は人ではなく昆虫に近いとまで言われていたんだけど。
でも、元を辿れば無惨様って生まれつき病弱で、死産認定からの荼毘行き、火葬直前での奇跡的な息の吹き返しによりなんとか生存したことで、お屋敷の中で過ごすことができた。
でも、お医者様からは20まで生きれないなんて短命宣告を受け、死という絶対的な終わりから逃げたいと願った。
そこまで考えて私は、無惨様ってちゃんと褒められたり、労われたりしたことないんじゃないかな?と思ったのである。
短命の宣告を受けた結果、性格が悪い方へと傾いてしまったけど、宣告だけで、目の前にある天パの如く性格って捻じ曲がるか?と言う疑問があったのだ。
もしかしたら、荼毘に伏せられそうになったギリギリで息を吹き返したことに、気味の悪さを感じた人がいるかもしれない。
平安の時代ならば、なんらかの呪いか、妖のせいだと噂されたかもしれない。
死産から蘇ったことから、無惨様自体が呪いだと言われたかもしれない。お前がいると呪われると言われたかもしれない。
もちろん、これらは全て憶測に過ぎない・・・・・・けど、この人がここまで狂ってしまったのは、生きて来た環境も合わさってんじゃないかな?と私は思ってしまったのだ。
この人はただ、普通を生きたいと願っただけ。普通を過ごしたいと望んだだけ。
まぁ、その結果、阿鼻地獄行きが免れないレベルの殺戮を行なった厄災になっちゃったし、擁護する気もないけど。
「落ち着きました?苛立ちがなくなってるといいのですが・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・無惨様?」
「少し黙ってろ。」
「あ、はい。」
そんなことを思いながら、私は無惨様の頭を撫でつつ、大人しくお膝の上にライドオンしておく。
首筋に当たる吐息の感覚からして、間違いなく首筋付近で呼吸を繰り返しながら匂いを嗅いでいる。
まぁ、別にいいけどね。OLとして生活してる時、推しキャラのフレグランスをハンカチや推しキャラぬいに吹きかけて、イライラを吹き飛ばすために度々嗅いでいたオタクだし、私。
それと似たようなものだと思えば別に気にならない。むしろ、無惨様に親近感湧きそう。
「・・・・・・本当に、お前の行動には驚かされる。」
「ん〜?だって無惨様が言ったんじゃないですか。遠慮されるのは不愉快だ〜って。だから、無遠慮に突撃したんですよ?」
「それくらいはわかっている。だが、普通はそこまで振り切るか?」
「無惨様がわかりやすいのが悪いのです。」
「・・・・・・そこまで、私は感情が表に出ているか?」
「地味に落胆しないでくださいよ。ちなみに、質問への答えは“はい”です。」
正確には、私の目が妙に感情を把握しやすい特殊な目だから、隠そうとしている感情がハッキリわかるというのが答えだったりするが、なんか、目を抉られそうだから黙っておこう。
多分、このラスボス、感情を指摘されるのあまり好きじゃないと思うし。
そんなことを思いながら、腕の力が緩んだのを確認し、スルッと拘束から抜け出して床に降りる。
・・・・・・一瞬だけ、無惨様の手がこっちに伸ばされそうになったが、その動きはすぐになくなり、その手は膝の上に置かれた。
「それじゃあ、私は一旦離れますね。無惨様もやることがありますし。」
「・・・・・・そうだな。いつも通り部屋で大人しくしていろ。何かあればすぐに呼べ。わかったな?」
「は〜い。まぁ、余程のことがない限り、無惨様がいらっしゃるすぐ近くの部屋で問題が起こるとは思いませんが。」
わずかな動きに、少しだけ首を傾げそうになったが、すぐに意識を無惨様から離し、私は自身が与えられている部屋の方へと足を運ぶ。
私が移動したのを見計らったように、襖は静かに閉められた。
うさぎ
感情をハッキリ見せろ?わかりました〜と言わんばかりに、自由奔放な行動を取り始めた稀血の白ウサギ。
無惨様のイライラ段階を把握しているので、時と場合によって、そんな彼を落ち着かせるために突撃出張テラピーをかましている。
遠慮していたため、控えめでお淑やかな娘のように振る舞っていたが、実際は割と引っ掻き回すことが好きなマイペースちゃん。
鬼舞辻無惨
イライラが初期段階の時、度々うさぎに「突撃!!お前の懐!!テラピー」をかまされるようになってしまった鬼の始祖。
イライラが怒り寸前に到達している際は、うさぎも近寄らないため彼女に八つ当たりをすることもない。
感情がわかりやすいと言われ、地味にショックを受けるが、無遠慮に、だけど、自身が不愉快だと思わぬ程度に、ちょっかいを出してくる様子や、労いの言葉をかけてくる姿には、不思議と起こる気にならず、むしろ心地良さを覚えている。