トラッシュ秘譚:仮面ライダートラッシュ オープン・ザ・パンドラ   作:秋塚翔

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今やってる大人の仮面ライダーごっこアニメ、ちょっと舐めてたけど面白い。特にショッカー戦闘員。ライダーでもなければ、怪人ほどでなくても一般人相手じゃ戦闘員ってとんでもなく強いんだなあって再認識できた件。


残酷な真実

 時間は少し遡って――

 

「「「「「ギイィィィッ!!」」」」」

 

 混沌と化した街中にハードゴミリオンがひしめき合う。奇声を上げ、狂気を盛らせ、今にここだけに留まらず世界に溢れそうなほど。魔界と喩えて過言ではない光景がそこにあった。

 その現場に駆け付けてきたのは、玲二らの後に拠点を出たヒカリたちだ。

 

「なんて数なんですの!?」

「逆に考えれば分かりやすく纏まってくれてるな」

「玲二さんたちに追いつきたいけど、ここも放っておけません……!」

 

 玲二たちとは別行動でやって来たヒカリ、ルイ、サラの三人はハードゴミリオンの群れに直面する。レナの件も無視できないが、街を占領するハードゴミリオンもどうにかしなければならない。レナのことは玲二に任せる形でこちらの対応に当たっていた。

 並び立つ三人の少女はそれぞれのドライバーを操作する。

 

「「「変身!」」」

 

『エコードレス、響け……エコー……エコー……エコー……エコー……!

 

『マゼマゼ……! ベノミックス……!』

 

(サイ)クル! ()ル! クル! リサイクル! ……サイクルーインズ!』

 

 ヒカリはエコー、サラはベノムに変身。そしてルイはルーインズドライバーで自らの縄張りと仲間を責任持って守るべく戦う仮面ライダー、ルインに変身して怪人の一群に殴り込む。

 

「こんな奴らが暴れてる未来になったのは私とドッくんのせいみたいだけど……それは私が倒されることで解決するなんて思わない。それは、私に仲間として手を差し伸べてくれた玲二さんやヒカリさんたちの信頼を裏切ることになる。だから私は、私の意思でその未来を否定する!」

「よく言った相棒! 自分の意思で他の意見を否定する。それも一つの立派な悪意だ! 俺はその悪意に従って力を貸すぜぇ!」

 

 汚染能力のあるハードゴミリオンに悪影響を受けないため直接殴りかかるベノムは、決意を胸に戦う。

 レナに向けられる敵意の度合いから、自身の先にあるかもしれない罪科は少なからず理解できる。――けれど、ならばと素直に滅ぼされる気はないのも本音だ。当然に死にたくはないし、それは言葉の通り自分なんかを受け入れてくれた玲二たちへのアダ返しになる。だから、その先の罪の結果たるハードゴミリオンを駆逐していく。正しき悪意として、力を揮う。

 

「はあぁッ! ですわ!」

 

 一方、エコーもまた汚染に抗する浄化で対峙する。

 しかし一定の効果こそあれ、やはり決定打とはいえない。エコーの攻撃を受けたハードゴミリオンはすぐに起き上がり猛然と襲い掛かってきた。

 その予想内の結果を見て、腰部のエコちゃん様から助言が賜れる。

 

『ヒカリ。ボクたちの浄化とベノムの毒、合わせてぶつけてみるんだ。物は試しだけど、ベノムの猛毒で汚染を相殺して、そこにボクたちの力を叩き込もう』

「なるほど、分かりましたわ! ……サラさん!」

 

 提案を解したエコーはベノムを呼び止め、同意したベノムと共に息を合わせる。

 まずベノムが渾身の攻撃にてハードゴミリオン群を力押し。そこに隙を見出したエコーが最大パワーの浄化を駆使して攻撃を打ち込む。

 

「ギ……ッ!? ギイイイィッ!!」

 

 すると、目論見は見事に当たった。ベノムの攻撃で抵抗力が打ち消されたハードゴミリオンは、エコーの浄化に拮抗しきれず、貫通された内部から浄化のエネルギーを喰らい爆散する。

 喜び合う少女たち。だが敵はまだまだいる。二人は力を合わせて挑みかかった。

 

「ちッ……!」

 

 他方、ルインは若干の苦戦を強いられていた。

 元よりベノムやエコーのように、汚染に対抗する術は持ち合わせないルイン。直接的に攻撃すればたちまち汚染浸食されるとあって、他二人のようには立ち回れない。

 

「ギイィッ!?」

 

 なんとか渾身の一撃で撃破する。だが、流石に厳しい戦いだ。もう一押し、贅沢な要求だが有効な手段が欲しいところなのが正直な話なのだが――

 と、ないものねだりしていた時。ポーン、とハードゴミリオンが爆発した方向から小さな何かがルインの許に転がり込んでくる。

 

「ん? これは……」

『サイラとかいうライダーのものと同じジャンクキューブですね』

 

 手に取ったそれは、なんと昨日出くわしたサイラの使っていたのと同型の『化石』のジャンクキューブだった。

 さっきのハードゴミリオンから出てきたのか。いや、そんなまさか。というよりまるで、誰かが爆発に合わせて意図的に放り込んだように思えるが……

 

「って、考えてる場合でもないか。こいつを使わせてもらうぞ」

『お嬢の望むままに!』

 

 掃除屋との情報交換で、このジャンクキューブに汚染耐性があるのは把握していた。好都合とばかり、ルインはそのキューブをドライバーにセット、発動する。

 

「おらぁ!」

 

 そのままハードゴミリオンを殴りつければ、ルインの拳から棘鰭肉食恐竜(スピノサウルス)の頭部化石が出現し、大あごを開いて共に食らい付く。汚染はやはり受けない。続けざま複数体を相手取り立ち回る。

 更に地面へと拳を打ち付けると、巌頭草食恐竜(パキケファロサウルス)の化石が現れ、その頭突きで一団を蹴散らす。矢継ぎ早に腕を振るえば、鎧草食恐竜(アンキロサウルス)の鉄槌の如き尾が叩き込まれる。

 

「ルイさん! 一緒に!」

「ああ!」

 

 ある程度押し込んだところでエコーらと合流。揃い立った三人のライダーは、一気に片付けるため各々の必殺動作を取る。

 

『ホーキーヴォルテックス!』

 

『マゼマゼ……! ベノミックス……! ベノムクルセイドッッ!!』

 

『サイケデリックライシス!』

 

「「「「「ギイイイィィィッ!?!?!?」」」」」

 

 タイミングを合わせた三人同時キック。『化石』を利用するルインは、プテラノドン・トリケラトプス・ティラノサウルス三つの化石を組み直し、一体の合成恐竜となったようなエネルギーを纏った蹴りを放ち、ハードゴミリオンを纏めて一掃した。

 

「よし! お掃除完了、ですわね!」

「他のとこにも蔓延ってるかもしれないな。逃すと面倒だ、とっとと処理するぞ」

「はい、そうですね」

 

 一件落着しても未来からの汚れはとめどなく。三人は頷き合い、何処かで奮闘しているはずの玲二の無事を想いながら次の戦いへと身を投じるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これは、『八多喜麗奈』という人間の記憶。

 未来においてはとうに死した者の残滓。

 

 ベノムの暴走により絶望的な世界で生きる彼女は、何の力も持たないが故に父や母のようなそれを覆し護れる力を欲していた。

 ただ望むだけではとても得られようのないもの――しかしほんの偶然、チリヅカ・コーポレーション跡地を漁って見付けたデータで彼女は知っていた。この世界の何処か、ある陰陽師が封印を施したパンドラの箱なるオーパーツが眠っていることを。彼女はそれに希望を賭けた。

 幸運にも探し出せたそれに施されている封印を、彼女は解いた。

 

 結果――全てが裏目に出る。

 

 とめどなく溢れ出した力の奔流は彼女の心身を蝕み、いとも容易く命を刈り取った。

 それだけに飽き足らず、噴き零れた汚染のエネルギーが世界を覆い尽くし、人類という種に終止符を打つ。地球はもはや自らを浄化する余力もなく死に絶え、星そのものが処理不可能なゴミと化してしまう。その大地を跋扈するゴミリオンは、まるで恩恵かのようにその汚染によって進化を来し、新たなる支配種――『ハードゴミリオン』として台頭することとなった。

 一人の少女が引き起こした惨事。決定的に世界が終わった顛末。少女が護りたいと願った純粋な想いは残虐にも反転し、後には何一つも残らないゴミの惑星が出来上がったのだった。

 

 ――『っ、う……?』

 

 否。一つだけ、残ったものがあった。

 肉体も跡形なく消し去られた少女の最期の地。そこに、文字通り身を滅ぼしたはずの少女が生まれたままの姿で意識を取り戻す。地に伏していた身体を起こすと同時、失われた衣服をも無意識に再生させつつ、少女は事態すら分からぬ様子で周囲を見渡した。

 

 ――『……そうか、あたしは……』

 

 辺りの状況、思い浮かぶ記憶、宿る力……それらから少女は、自分がどうなったのかを自己解釈する。不可解なことなどは記憶の奥底へとしまいこんでしまいながら。

 そう。彼女は『八多喜麗奈』などではなかった。パンドラの箱――パンデミッキューブが本来の八多喜麗奈である人間の姿形を模倣した存在。長き封印で自我を持たぬパンデミッキューブが、コピーした少女の意識のまま目覚めたに過ぎない人ならざるものだ。

 八多喜麗奈として目覚めたそれは、そのままの既に亡き彼女と成り替わって立ち上がる。外見はそのまま、意識もそのまま、彼女は彼女のまま生まれ変わった形で行動した。仮面ライダーパンドラとなり、人々のため世界のため戦う少女――その中身は、対峙する怪人とそう変わりのない存在であることを自覚することなく。

 

 それが、『麗奈(レナ)』という者の正体。

 現在において玲二の娘を名乗る少女の、残酷な真実であった。

 

 

 

 

 

「思い、出した」

 

 そして現在。

 ゼモンの口より告げられたその真実を受けて、パンドラ――レナは茫然と自覚した。

 

「あたしは――八多喜麗奈じゃない。命を落とした八多喜麗奈の姿をコピーした偽者だ。そして、他でもない世界を壊した張本人。それが本当のあたしなんだ……!」

 

 否定するでもなく、困惑するでもなく。レナは無理やりに掘り起こされた真なる記憶をなぞって自ら事実を述べるように言う。これまでの意識、パンデミッキューブとしての意識、それらがない交ぜとなってレナの精神を本来のものへと整えていった。

 玲二はただただ言葉を失う。掛ける言葉が浮かぶはずもない。

 一方。依然変わらぬ態度で語り掛けるのは――ゼモンだ。

 

「やれやれ、ようやっと思い出したか。そうだ、お前はパンデミッキューブが生んだ疑似存在。八多喜麗奈の残留思念を読み取り、それを模倣した創造生命だ。その在り方は我らゴミリオンに近しい」

 

 故に、と慮る風は微塵もなくゼモンは言葉を紡ぐ。

 

「お前は我らと同じなのだ。人間などではなく、人ならざる誕生を果たし、人の世を終わらせたもの……ましてや我らを新たなステージに導いたパンドラの箱の申し子と来ている。それはまさに我らにとって福音であり、王たる私の伴侶にこの上なく相応しい」

 

 仮面で覆われていても分かる下卑た笑みを籠めた声色で、酷薄に言い放つ。

 

「さあ、目を覚ませ。お前はこの世の元凶であり、新たな世の女神だ。我が許に降り、今の世をも滅ぼして、未来に我が王国を築くため身を捧げろ。それがお前に与えられる選択よ」

「っ、何を勝手なことを……!」

「聞いていただろう、八多喜玲二。そして分かっただろう。この者はお前の娘などでもない。お前にとっては敵に等しい存在だ。それでもまだ父親紛いのマネができるのか?」

 

 その言葉に、玲二は二の句を継げない。

 意味を解したのでなく、正しさを見失ったがために。

 ゼモンの言を真に受けるなら、レナは玲二にとって庇えない存在となる。人類の敵、未来の世の破壊者、人ならざるモノ……たとえ意識はまだ見ぬ実の娘のものだとはいえ、それを護ることは彼の信念から憚られる。

 ならば、どうする。何をするのが正しい?

 蹲り、意識の混濁に苛まれるレナの姿を見下ろし、玲二は選べない。

 

 その最中だった。

 ドンッ、と重い着地音と共に、一つの影が襲来する。

 

「――ふは、いたいたー。ゼモンにパンドラだっけ? 良いとこで見付かったわぁ」

 

 見覚えのない茶褐色のライダーが、軽薄に笑いながら乱入してきた。

 その特徴から、ルイが接触したサイラなる謎のライダーと理解する玲二。そんな玲二には目もくれることなく、サイラはその傍のパンドラに好戦的な気配を向ける。

 

「今ちょっとむかっ腹立って八つ当たりたい気分でもあるからさ。とりあえずここで狩らせてもらおっかな。ついでにホテルで仲直りしようよ!」

 

 勝手に言いつつ、サイラは未だ蹲っているレナ――パンドラに迫る。咄嗟に庇おうとする玲二。ゼモンはといえば、目の前で起きた茶番を見守るように静観の構え。

 と、そこでパンドラが徐に動く。

 

「あたしは――」

 

 意味為さぬ声を零し、腰のドライバーに手を伸ばして操作する。

 

『オープン! ガサゴソ……

 

 オオアタリ!!』

 

 不穏な音声が轟いた途端、パンドラの肩部にある箱――『パンデミボックス』が震え上がり、質量を伴うかのような濃密な黒い靄(パンデスモッグ)を噴き出した。

 それは長い体躯の黒竜の如く舞い踊り、渦巻いてパンドラを包み込む。更にそれがぎゅうぎゅうに凝縮されていき、見た目からも分かるエネルギーを練り上げていっていた。

 ぞっ、と。本能で危機を覚えた玲二、即座に先のベノムトラッシュに緊急的な変身をする。危険性が高い形態だが、それをせざるを得ない警戒感が彼の中で鳴り響く。

 

 それは、直後に的中した。

 

パンデモニックレッシェンド!!

 

 瞬間、弾けた靄の奔流が全てを呑み込んだ。

 世界そのものを塗り替えるようにして、黒い波動が爆発する。トラッシュはそれに耐える余地なく吹き飛ばされた。

 一方で、サイラは真っ向からその奔流を受け止める。

 

「は――?」

 

 が、それはサイラの予想を遥かに超えた。

 汚染に耐性あるはずのジャンクキューブ『化石』。それを用いたダイナソーフォームで悠々と受け切るはずだったサイラは、黒い靄の炸裂波で逆に易々と弾き飛ばされてしまう。

 勢い凄まじく、後方の壁に激突してようやく止まったサイラ。しかしそのボディは規格外の汚染により致命的に浸食され、変身者の生命にも容易く牙を立てていた。

 

『損傷、重度……機能、不、ゼン……システム、ヲ、停止シマ――』

「……ふ、はは……こりゃあとんでもないや。ち、くしょ……っ」

 

 苦し紛れの嘲笑と恨み言を遺し、サイラ――ルカはそのまま沈黙した。

 乱入者のそんな末路に気にする風なく、一人問題なく立つゼモンが悠然と口を開く。

 

「素晴らしい。これこそパンデミッキューブの力、その一端だ。全てを侵し、蝕み、汚し染める。それでこそ我が伴侶に足る力だぞ、パンドラよ」

「…………」

「ッ、レナ……!」

 

 地に伏すトラッシュがなんとか立ち上がる。サイラと同様に攻撃を受けるも、範囲外に飛ばされたことで最小限に抑えられたトラッシュ。パンドラと同系統故のベノムトラッシュの耐性力にも助けられた。

 そんなトラッシュに、パンドラは無言のまま意識を向け――あろうことか、標的と定めたように襲い掛かってくる!

 

「な、レナ!? なにを……!?」

 

 まるで自身にある運命を受け入れたかのように、感情なき攻撃を繰り出すパンドラ。トラッシュは戸惑いながらもこれを受け止め、いなしていく。

 

「ほう。これまた一興な。偽者の親子による殺し合いか。いいぞ、元の時代に帰る前の余興として父と呼んでいたその男を仕留めてみるがいい」

 

 ゼモンが面白げに言い、一歩下がって事態を見届ける姿勢を取る。

 何も語らず、だからこそそこに秘められ、籠められた感情が伝わってくるパンドラの無機質にすぎる攻撃を、トラッシュは反撃する気もなくただひらすらに受け続けるのであった――




なんか作為を感じるアイテムゲット。音声はドライバー遊びである非対応アイテムの汎用音声を考えてましたが、特に決まってなかったので泣く泣く省くことに。サイラでもそうだけど恐竜好きのノリ全開にできるので楽しい戦闘でした。

そんなサイラはこれにて退場となります。正体を自認したパンドラの力が耐性を上回っての返り討ち。小物キャラ好きでもあるので、ルカのキャラ性を定めた段階でこの最期は決めてあったりしてました。力持って調子乗った悪役小物がしてやられて、その腹いせしようとしたら返り討たれる…これが書いてみたかったんですよ。

そしてレナ。正体はパンデミッキューブがコピーした玲二の娘の偽者でした。イメージはドライブ劇場版のエイジといったところ。それの本当に自分が本人だと思い込んでいたパターンですね。捻りすぎですがそんな感じ。

スパートかかりました。次回もお楽しみいただければ。
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