我慢できなかった。
本当にすまなかったと思っている。
『星核ハンター』
それは、星を滅ぼしうる程の危険物である星核を収集することを目的として活動する組織。
その活動から、スターピースカンパニーに多額の懸賞金をかけられている指名手配犯の集まり。
そんな星核ハンターは今日も今日とて、とある星にて。
「カフカ〜、喉渇いた〜」
「奇遇ね、私もよ」
「…言っておきますが、駄目ですよ?そこら辺の店を襲うなんて」
「……。」
絶賛金欠中であった!!!!
エリオの予言により、とある星を調査することになった一行だったが…ちょっとした手違いにより現地の資金がすくなくなってしまったのだった!!
「でもさー、普通こんなピンポイントでこの星の物価が上がるなんておかしいと思わない?」
「確かに、何かしらの影響によるものだとしてもあまりにもこれは…」
現在、この星が置かれている状況に不信感を抱く銀狼とサム。
「本当に、いいバックを見つけたのに…台無し」
気に入ったバックが予想の10倍高くて買えなくてすこし不満げなカフカ。
各々は別のことを考えていたが、ふと刃が壁に貼られているポスターを立ち止まって見つめていることに気付いた。
「……。」
「刃ちゃん?」
「どうかされたので…これは…」
「…レース大会?3位以上で賞金獲得…車は運営が用意…?」
「………。」
いち早くカフカは思い付いた。
ちょっとした、悪いことを。
「刃ちゃん、こっち向いて?」
「…待ってくださいカフカ。まさかとは思いますが」
いち早くカフカの考えていることに気付くサム。
「…え?嘘、まさか…」
遅れて気付くが、まさかそんなことするわけないと考える銀狼。
「“聞いて?”いい?刃ちゃん」
目を瞑って指示を待つ刃。
「この大会に出て3位以上をかっさらって賞金を獲得、資金を確保してきて?」
それを聞いて、何も言わずにただ黙って受付に行く刃。
そんな様子が銀狼には、半分くらい諦めているようにしか見えなかった。
そうして刃を送り出した彼女達は、大会会場の観戦席に向かい前に広がるコースと大画面のスクリーンを一望出来る場所を確保しつつ入場特典として貰えた飲み物を片手にくつろいでいた。
特に銀狼は『ちょっとした休憩タイム』くらいにしか考えてなかった。
「大丈夫なの?」
「ええ、大丈夫よ」
一応カフカに聞くも、返ってくるのは意味深な返答のみ。
よって銀狼は完全に休憩タイムに入るつもりだった。
もちろん銀狼は知る由もない。
これから起こる最高のショーのことなど、知る由もないのだ。
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(俺はカイシス、世界を股にかけるレーシングドライバーだ。
メジャーな星から辺境の星まで、様々な場所で行われるレースグランプリに挑み賞金をかっさらってき生計を立てている。
ストリートで培った技術を武器にドッグファイトを仕掛けていくスタイル。
横並びした状態のスタートから、思いっきりスタートダッシュを決めて先行をぶんどる。
そっからひたすら攻めまくってそのままゴール。
それが俺の勝ちパターンだ。
今日のこの大会だって、軽く優勝してやろうと思っていた)
カイシスはシフトチェンジをしながらピッタリと後ろを走る車、ナンバー86号車を苦虫を噛み潰したような顔をしつつバックミラー越しに見ていた。
(それがどうだ?
コーナーに突っ込む時、曲がる時、立ち上がる時…俺はギリギリまで攻めているんだ…!
なのに、離すどころか引っ付いてくる!)
直線で距離を離すが、コーナーで差が詰まる。
決してカイシスがコーナーを攻めていないわけではない。
しかし、それでも付いてくる。
後ろに張り付いてくる。
(俺は今日調子も良いんだぞ…!
付いてこれるはずがないッ!何故まだソコにいるッ!!)
彼は今、どんなに攻め込んでもまるで背後霊みたいに後ろをついてくる86号車を前にして…。
(クソッタレ!俺は翠緑の流星と呼ばれたドライバーだぞ!そこら辺の無名のアマチュアに負ける!?それも大会用のレンタルの車に!?ふざけるなッ!!)
これ以上ないほどに焦っていた。
ゆえに、徐々に乱雑になっていくアクセルワーク。
しかし、腐ってもプロはプロ。
寸前のところで破綻しない走りを続けてはいた。
そして、この先にある急カーブを前にブレーキを冷静に踏んでコーナーに差しかかる。
そんなふうに速度を落とす彼の車−−−−−
(チィ!この曲がりは難所も難所!ブレーキの踏み具合で曲がれるかが決まる場所だ!だが、俺だってバカじゃない!きっちり強化されたブレーキで速度を落としてやれば…なっ!?)
−−−−−その横を1台の車は駆け抜けていく。
(嘘だろ!?ノーブレーキでつっこみやがった!!)
そう思わせるほどにブレーキを踏むタイミングは遅かった。
カイシスには少なくともそう見えた。
そんな速度で曲がれるはずがない。
プロですらそう思わせるつっこみ。
そして、そんなことお構い無しと言わんばかりに目の前の86号車は、
「なっ!?」
イン側に傾けたドリフトを使い、タイヤのグリップをフルに使って曲がっていった。
コーナーの出口は極端に狭くなるこの低速域の急カーブをなんなくこなしていく86号車の姿が、そこにはあった。
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目の前のモニターで映る光景を前に、銀狼は開いた口が塞がらなかった。
「…なにあれ。
ゲームでしか…いや、ゲームですら出来るか怪しい動きをしてるんだけど…刃って元々レーシングドライバーだったりするの…?」
そんな銀狼の独り言を横で聞きながら素敵な笑みを浮かべるカフカ。
そんなカフカを呆れながら見るファイアフライ-IVを解除したサムことホタル。
まだまだ終わらない。
彼女たちが勝手に始めたこの祭りは。
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抜かれた後、86号車に引っ付きながらプレッシャーをかけていくカイシス。
しかし…
(なんて精神力の強いやつだ。
これだけプレッシャーをかけているんだ、なのに…なにも反応が返ってこない。
涼しい顔して前を走ってやがる。
つくづくムカつく奴だ…ッ!!)
しかし、こうして86号車の後ろに付いて走ることでカイシスも徐々に理解しつつあった。
(そうか、そういうことだったか!
冷静になれたからか、ようやくわかった。
なんでさっきまで、あんなに俺が焦っていたのか。
遅いんだ、俺のほうが…!
コーナーに入ってを曲がっていく、そして立ち上がる…その一連の動作を完結するまでの速さはあっちの方が速いんだ!
まっすぐではこっちが速いから距離を離せる。でも、コーナーで詰められる。だから溜まってたんだ、俺のフラストレーションが!!
認めたくねぇ…認めたくねぇが…!)
目の前の車を悔しそうに見ながら
(お前のほうが…速い…ッ!!!!)
二人はゴールラインを越えていった。
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余談だが、カフカ達が居る惑星は確かに辺境。
しかし、そこは宇宙規模で有名なレースのグランプリが数多く開催されるレースの聖地とされる星だった。
…つまるところ、それなりに宇宙規模で有名な星であるということ。
各地でレースの映像が放送されているということ。
ある一方は宇宙を翔けるとある大きな船で、ある一方は開拓の旅を巡航する列車の中で。
「「いったい何をやっているんだ!?」」
ある二人の叫び声が響き渡ることになったのであった。
ノリ、勢い、思いつき。
その全てをもって書き殴りました。
本当にすみませんでした。
でも、不思議と清々しい気分なんです。
期間限定で頭文字DのアニメがYoutubeにて無料公開されているらしいので是非。