貞操逆転世界で湿度高めヒロイン達を無自覚に沼らせる転生者~死にゲー世界で鬱エンドを迎えるヒロイン全員救う、全員が曇る 作:しば犬部隊
◇◇◇◇
~月の宮到達から1000年目~
とりあえず拠点を確保した。
灰クソゲームと同じように、月の宮にある建物は全部空き家だ。
真っ白の無菌室みたいな内装に、家具が並べられている。
良い感じの一軒家を見つけたのでしばらくここに棲む事にする。
1000倍の重力下、ハイハイが可能になった。
二足歩行を目指して頑張るぞ。
ちなみに今日は天使に1000回くらい殺された。
とりあえず、2足歩行できるようになったら本格的にあいつらをぶちのめす方法を考えよう。
ここにきて経過した時間は、部屋についている時計を見れば確認出来そうだ。
地上ではカレル滅亡から1年が経過……竜暦201年か。本編開始が竜歴210年。あと9年か。
月の宮では時間は1000倍の速さで流れるなら、およそ9000年はレベリング出来る訳だ。
まあ、余裕を以てなるべく早く地上に戻れるように頑張ろう。
とりあえずの目標はそうだな。
1、天使の撃破
2、その為のクリア後オーパーツの入手
この2つが大きな目標だろう。
ラスボス級に強い天使を倒せるまで鍛える事が出来れば本編でどんな敵が来ようとも問題ないだろう。
そのために、まずは、この1000倍の重力下で動けるようになるまで鍛えなければ……。
まあ、コツコツやっていこう。
~月の宮到達から2000年目~
だいぶこのハイハイ生活にも慣れてきた。
だが、2足歩行には程遠い。
立ち上がろうとすると頭が重いためバランスを崩す。こけると衝撃により即死する。
この前はなぜか家の中で補充されていく食糧を食べた瞬間、内臓が破裂した。
地面に腰かけた態勢で勢いよくパンを飲み込んだせいか、食道を突き抜け、内臓を破壊したっぽい。
クソ異世界がよ
~月の宮到達から3000年~
しにたいしにたいしにたいしにたいしにたいしにたいしにたいしにたいしにたいしにたいしにたいしにたいしにたいしにたいしにたいしにたいしにたいしにたいしにたいしにたいしにたいしにたいしにたいしにたいしにたいしにたい
うお、前のページを見るとだいぶ精神がやられているな。
こんな感じで、たまに精神がおかしくなる。
そんな時は仕方ないので外に出て、天使に殺されている。
心が壊れても1度死ねば30年くらいはまともでいられる。
なるべく自害は避けるようにしている、アレは人間がやる事ではない。
2足歩行できるようになれば、だいぶ変わるのだろうか。
だが、四つん這いにもだいぶ慣れた。最近では、噴水がある広場までハイハイで移動し、そこで魔術の訓練も行っている。
だがこれも中々難しい、そもそも魔術の練習してると、天使がわいてきて殺されるしな。
そういえば、あいつら、何故かこの家には入ってこない。
……ゲームでは確か、安全地帯や拠点にも侵入たり、破壊してきたりしていたような。
~月の宮到達から4000年~5000年~
まいにちしんでいきかえっているだけです
あたまがおかしくなりそうだ。
でも、しねばまたもとにもどる。
かれるにかえりたい、しのう。
ふ~すっきりした!
ああ、今回の精神崩壊は中々尾を引いたな……。
おそらく、天使達に囲まれて何度も刻まれたのがダメだったのだろう。
だが、成長の兆しを感じる。
最近、なんと中腰が出来るようになってきた……。
このまま行けば、あと100年もあれば二足歩行が可能になるかも。
1つ最近感じてきたのだが、俺の不死にはもしかすると灰から再生できる以外にも特質があるのかもしれない。
死ぬ度に、なんとなく頑丈になってきているような……。
オルデランと戦った時も、死ねば死ぬほど奴の攻撃は俺に通りにくくなっていた気がする。
検証したいが……二足歩行もままならないしなあ……。
~月の宮到達から5001年~
祝二足歩行。
成長とは一気に訪れるもので、同時に1000倍の重力下での走るや跳ぶ事にも成功した。
やったぜ。
~月の宮到達から5002年~
ローリング回避、ローリング回避、ローリング回避。
灰クソの回避アクションであるローリング回避の練習を最近している。
前転で敵の攻撃を躱す技術、ゲームではローリング中には0.433秒の無敵時間が与えられる。
……ここまでゲームと似ている世界なら、もしかすると……。
早速天使で試してみる。
ゴロンゴロンゴロンゴロンと奴らの目の前で転がって……ああ、ダメだ、数が多すぎて意味がない。
普通に天使のビームで焼き尽くされた。
~月の宮到達から5003年~
そうだ、重力問題をクリアしたのならそろそろ始めるか?
オーパーツ集め……。
◇◇◇◇
「本当にあった……悪竜(ドラゴン)シリーズ……」
白い空間に、ぽっかり浮かぶ漆黒の鎧。
ここは、月の宮の領域にいくつか存在する宝物庫の1つ。
月の宮にきて5003年、天使に何度も殺されつつ、灰となって逃げながらゲームの知識を頼りについにたどり着いた。
見るだけで異常な意匠。
黒と紫の配色。
少し溶けた騎士兜に、竜の肉体を思わせる胴鎧、爪をそのまま継いだような籠手。
中世の騎士鎧を竜が浸食している、そんな中二病大好きセットなデザインだ。
「完成度高っ……」
灰クソにおいてバランスブレイカー、開発陣の悪ふざけ、壊れ装備、配信者用ネタ装備、数々の悪名を持つ最強装備に数えられるものの1つ。
悪竜ラミレルアス。
古い時代、神に逆らい、天に戦いを挑んだとされる不死の竜。
俺が扱う血の魔術も、古代の魔術師がこの竜の技を模して作ったものらしい。
その鱗や甲殻などを素材として神の鍛冶師が造った神造装備。
それが、灰クソ最強装備の1つ、悪竜シリーズだ。
……覚悟を決めるか。
原作通りなら、この装備は一筋縄では行かない。
ゲームのフレーバーテキストでは装備した人間は必ず発狂するだの、竜の呪いで虐殺者になるだの、使用者が死んでも勝手にその肉体を奪うだの……。
要は呪われた装備という奴だ。
でも、その性能は破格。
その攻撃は海を割り、駆ければ空を渡るというバカ機能。
おそらくこの世界にあるどんなアイテムよりも有用なはずだ。
「お前は力だ、俺の平穏の為の力になってもらう」
その鎧に、触れる──。
ドクン。心臓が、焼けた。
「あ、がっ……」
ドロリ……鎧が一瞬で溶け、その姿を変える。
スライム状になった鎧が、俺の身体に張り付く。
『フヒッ。お、お、男だ、男の、不死、ふひひ……男に、ワガハイ、触られちゃった……』
頭に響く低めのハスキーボイス少女の声。
こんな要素、原作には無かったぞ……!
『おとこ、おとこ、おとこの、血っ。ワガハイに、ワガハイに触ったんなら、コレ、ワガハイのだあ』
じゅるっ、くっあ。身体に張り付いた鎧に血を吸われている……!?
『こ、こ、怖がっても、も、もう、お、遅いからっ、お前、お前は、ここでワガハイの血奴隷になって、ふひっ、死ぬまでずっと一緒に、ふひひひ、もう、もう家に帰さないからあ!! こわい? 怖い? ふひひひ、怖がれ! ワガハイは悪竜、血を啜り、不在の神を喰らった──」
「素晴らしい……! 原作通りだ……!」
『……は?』
原作での装備時にHPが減る仕様の実態は、鎧に血を吸われていたのか!
だが、問題ない。
「お前を探していたんだ、悪竜ラミレルアス」
鎧に人格? があるのは予想外だが、この事態は想定済みだ。
灰クソの原作でも、この鎧は使用者に憑りつき、その命を吸うイベントがあったはず。
不死の俺には正直問題ないのだが……もっとスマートなやり方がある。
『え……なんでワガハイの名前を知って……』
「我、血の導きに従い悪竜に至らん、共に神を喰らおうぞ」
『!!?? え、え、え、嘘!!?? 血が!!??』
しゅるるるるるる。
血の矢を作る応用で、鎧に吸われている血を操作。
逆に、鎧の中で俺の血を暴れさせる。
ぼっ、ごっ、身体に纏わりついた鎧が苦しむように悶え始めた。
『ぎゃっ!!?? ああああああああああ!!?? 血の、魔術!? まだ、魔術を使える男が生き残ってんの!?』
悪竜シリーズにはデメリットがある。
装備している間、永遠にHPが減り続ける。
対策は原作でもいくつか存在する。キャラクターの技能やビルドによってもとれる対策が代わる。
体力に秀でたキャラなら鎧と戦って自分を主と認めさせるやり方や、魔力に自信のあるキャラなら魔力で操ったり。
男キャラの場合は、アルケミスト錬成手袋というオーパーツを使えば鎧に干渉したりも出来る。
もしくは、特殊な魔術スキルを使用するか、だ。
これはそのうちの1つ、血の魔術による鎧への干渉。
「いきなりで悪いが、力を貸してもらう! 手段を選んでいる暇がなくてね!」
このまま、血の魔術で鎧を消耗させ続ける。
根競べだ。悪竜装備が俺の命を奪うのが先か、血の魔術の干渉が勝つのが先か。
とにかく、鎧に俺を使用者だと認めさせてしまえばいい。
こちとら5000年以上死に続けているんだ、根競べでは負ける気がしない。
「はは、ははははははは!! 悪竜、このままではお前は破裂するぞ!! さあ、どうする!」
『あ、ぎ、痛い、痛い痛い!! なんで、人間が、こんな──ひいいいいいん!!」
この鎧だけは絶対に手に入れる!!
これから始まる
「悪竜! 俺のものになれ!!」
『エッ』
「ん?」
ぴゅるるるるる、ぽふん。
……なんだ? 一気に鎧からの抵抗が消えた……。
『そ、そんな急に俺のものになれとか言われても……え、と、ワガハイも困るっていうか……』
……思った反応と違うな。
原作通り、今は……生存競争的な戦いの最中のはずだったが。
俺とお前、どっちが滅びるのかな? みたいなノリで原作のイベントは進んでいたはずだが……。
『ま、まだお互いの事も分かってないのに……そのいきなり、そういうのって……いや、べ、別に嫌いって訳じゃないんだけど……ふひ』
まさか、君──。
『せ、せめてそういうのってお互いに名乗ったり、好きな街の焼き方とか嫌いな神のタイプとか互いの理想の巣作りのお話とかで意気投合したりしてからじゃないの……カナって……』
──チョロいドラゴンなのかい?